(これはもう……オズくんにも話を聞かないと……)

 ザザの話によると、幸いにもオズくんの部屋も同じ敷地内。北側の棟、その五階なのだという。

 モヤモヤしたこんな状態では、落ち着いて眠ることなどできはしない。

(命の保障はできないって言われましたけれど……まあ、大丈夫ですよね)

 私はベッドを降りると夜着の上からショールを羽織り、わずかに開いた扉の隙間から廊下を覗き見る。

 深夜の王宮は、シンと静まり返っていた。人の気配はない。

 窓から差し込む月明かり。冷めた月光に浮かび上がる蒼い風景の中、床の上に窓枠の形に影が落ちている。

 私は大きく深呼吸すると、足音を殺して部屋から歩み出た。

 ひんやりとした空気。周囲はシンと静まり返って、そのあまりの静けさに自分の心臓の音が聞こえるような錯覚にとらわれた。

(三階で繋がってるって言ってましたっけ……)

 中庭を取り囲む四棟は、三階部分で全て繋がっている。雑談の中で、ザザがそう言っていた。だから私は、まず上階へと続く階段を探す。

 壁に背を預けるようにして慎重に移動。階段を上って三階へ。そして、そのままオズくんの部屋があるという北棟に足を踏み入れた。

(……誰も居ませんね)

 結局、北棟五階に辿り着くまでに、衛兵の姿は一度も見かけなかった。

 不用心過ぎはしないかとも思ったが、むしろ王宮のこんな奥にまで侵入されることの方が想像しにくい。

(……歌?)

 五階に上った途端、誰かが歌っているような声が微かに聞こえた。オズくんの声ではない。女性の声だ。

 私は、声の聞こえてきた方へと足を向け、慎重に歩みを進める。隙間から僅かに光の洩れている扉を見つけて歩み寄り、音を立てないように慎重に扉を押し開けた。

 そして、僅かに開いた扉の隙間から中を覗き込んだ途端──

「っ!?

 ──私は、思わず息を呑んだ。

「あぁっ! 激しいっ! あ、あ、あんっ!」

 荒い吐息と嬌声。間接照明に浮かび上がった絡み合う男女の影。

「あぁっ、もう、許してぇ! あ、あ、あぁあああああああっ!」

 目尻に涙を浮かべながら、髪を振り乱す四つん這いの姫殿下。その腰を掴んだオズくんが、背後から激しく彼女を突き上げていた。

(う、嘘っ……な、なんで?)

 心臓が激しく脈打っている。初めて目にする男女の営み。歌だと思ったのは喘ぎ声だった。私は思わず口元を押さえて驚愕のあまり漏れ出しそうになる声を噛み殺す。

「アーヴィン、本当に反省してる?」

「あんッ、し、してるぅ! あ、ああっ! そ、そんなに激しく突かれたら、ンンッ! んあッ、すごいッ、ゴリゴリ擦れてっ! でもぉ、あれはザザが……はあっ、ダメぇ、あああっ!」

「人のせいにするな! この淫乱姫!」

「ひぁあぁあああっ!」

 シーツをギュッと握りしめ、雄々しい抽送に乱れる姫殿下。そのあられもない姿を楽しげに見おろしながら、オズくんが杭を打つかのように激しく腰を打ち付けた。

(セックスしてる!? セックスしてるっ……嘘、なんで!?

 私は、確かに姫殿下とオズくんの関係を疑っていた。

 だが、それは姫殿下が将来的にオズくんの下へと降嫁することを狙っていると想定したのであって、まさか今現在、二人が肉体関係にあるとはつゆとも思っていなかったのだ。

「アーヴィン、お前は誰のモノだ? 言ってみろ!」

「あ、あぁっ、オズ、オズのぉ……」

「オズぅ? いったい、何様のつもりなんだろうね?」

 途端にオズくんは腰の動きを止める。すると、姫殿下は焦るような素振りを見せた。

「いやぁああっ、ち、ちがう、旦那さま、旦那さまのモノですぅ!」

「わかればいいんだ」

 オズくんが勝ち誇ったような顔をして、ねっとりと内側を擦り上げるかのように腰を動かすと、姫殿下の口から切羽詰まった叫びがほとばしる。

「ひぃいいいいっ!」

「こうやって擦られるとすごいだろ?」

 淫猥な腰遣いを繰り出しつつ、オズくんは嗜虐心に塗れた表情を浮かべた。

「んぁっ、ひっ! すごいのぉぉぉお……こ、こんなのわたしっ……ひっ、あぁああっ!」

「いい顔だ、アーヴィン。いつもの偉そうなお姫さまとは別人みたいだな。もっと擦ってやる、ほらほらほらっ」

「あっ、ダメぇっ! あっ、はああっ! あああぁああっ! はあぁあああぁああ!」

 オズくんが腰の動きを速めると、姫殿下は髪を振り乱し、開きっぱなしになった口から涎を垂らして獣染みた大声でよがり啼いた。

「愛してるよ、アーヴィン!」

「ああぁ、ああっ、あぁあああっ! 旦那さまぁ、愛してるぅ、わらひも愛してますぅううう! ああっ、らめぇっ! イクッ、イクイクッ、イクイクイクぅううううぅうう!」

「っ!」

 オズくんが短く呻くと、大きく身を仰け反らせる姫殿下。

(え……ウソ!? 中に射精してる!?

 二人が身を強張らせる光景を、私は呼吸することすら忘れて見入ってしまっていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 二人の荒い吐息が響き始めるのと同時に、私も大きく息を吐き出す。頬が熱を持っていた。心臓が痛いほどに脈打っている。

(ど、ど、どうしよう。すごいもの見ちゃった……)

 興奮のままに胸の内で呟いたその瞬間、突然、誰かが私の耳元で囁いた。

「出歩けば命の保障はできないと……そう申し上げたはずですが?」

 それはあのメイドさんの声。慌てて振り向こうとした私の唇を柔らかな感触が塞ぐ。

「むぐっ!?

(え? キスされたっ!?

 その途端、急速に意識が遠のき始める。やがて、私の意識は深い闇の中へと呑み込まれた。


  第二章 傍観者でいられなくなった日  


「はぁ、はぁ……オズぅ、早くベッドに戻ろうよぉ、もう限界だってばぁ」

「アーヴィン、もうちょっと我慢して」

「ありゃりゃ……姫殿下、完全に出来上がっちゃってるねぇ」

「そろそろ効果が戻る頃とは思っておりましたが……。まあ、媚薬は明日にでも処理するといたしまして、今はクロエさまの処遇をどうするかというのが問題でございます」

 ぼんやりした意識の向こうで、誰かの話し声が聞こえている。

「う、うぅ……」

 重い瞼を開けば目の前が一瞬白み、私を見下ろしている四人の人物のシルエットが浮かび上がった。明るさに慣れるに従って、それは私の知る人たちへと像を結んでいく。

 冷たい目で私を見下ろしているのは王宮メイドのジゼルさん、その隣には困ったとでも言いたげな表情のザザ。苦笑するオズくんの足に縋りつくように座り込んでいるのは、下着姿の姫殿下。そして私は、後ろ手に拘束されて椅子に座らされていた。

(……ここは、オズくんの部屋……かな?)

 状況が呑み込めず、霞がかった頭のままに私は首を傾げる。

「えーっと……おはよう?」

「まだ、夜中でございます」

 クスリともしないジゼルさんに、ばっさりと切り捨てられた。

「出歩かれたら命の保障は致しかねると、そう申し上げましたよね?」

 彼女のその一言で私は、自分が何を目にしたのかを思い出す。そして、それが何を示唆しているのかも……だ。

「えーと……つまり、オズくんは復活した大英雄オズマだってことですね」

「な!?

「え!?

 その瞬間、オズくんとザザがビックリしたような顔をした。

 いや、そんなに驚くようなことでもないと思う。

 王族は伴侶を持たず精霊王と契って子を宿す。この国における常識中の常識だ。だが、姫殿下はオズくんと性交していた。王族を抱くことが許される者、例外中の例外。そんなの大英雄オズマしか考えようがないのだから。

 だが、一瞬走った緊張感を姫殿下が台無しにする。

「オズぅ、ち○ぽ出して、ち○ぽぉ……」

「ちょ、アーヴィン、やめて、ズボンずらさないで、こ、こら! そんなとこ握っちゃいけません」

(……姫殿下、いったいどうしちゃったんだろ?)

 正直、どんな顔をしていいのかわからない。

「クロエさまは頭の回転の早い方でございますね」

 私の戸惑いを他所よそに、ジゼルさんが感心したような口ぶりで呟くと、ザザが慌てる素振りを見せた。

「どうすんのよ、これ?」

「どうもこうもございません。殺すというのも選択肢の一つではございますが、それがマズいということであれば、記憶の消去措置をとるしかありませんね」

(あ、殺すっていう選択肢もありなんですね?)

 今一つ現実感がなくて、私はまるで他人事のようにそう思った。

「いやいやいや、記憶の消去措置って負荷高いんでしょ? クロエは対抗戦の記憶消したばかりだけど、そんなに連続してやっちゃって大丈夫なの?」

 ザザの疑問に、ジゼルさんがニッコリと微笑んで答える。

「高確率で、パッパラパーになりますが、大丈夫です」

「全然、大丈夫じゃないじゃん!?

 殺されるよりはマシだとは思うけれど、流石にパッパラパーは笑えない。

 私は、ザザを仰ぎ見る。

 オズくんの正体を知っても彼女は殺されていないし、記憶を消されてもいない。ならば、私にとれる生存戦略は、たった一つ。ザザと同じ立場になることだ。貧乏くじでしかないので、オズくんには申し訳ないけれど、それしか思いつかなかった。

「じゃあ、私もオズくんに嫁入りするってことで」

「は? え? えぇえええっ!」

 ザザが、またビックリしたような顔をする。

 ちなみにオズくんは、ズボンを脱がそうとする姫殿下を押しとどめるのに必死で、今の話は聞いていなかったらしい。

 突飛なアイデアのように聞こえるが、オズくんが精力絶倫の大英雄オズマなら、妻は何人いても足りることはない。なにせ、これだけ巨大な後宮を用意するぐらいだ。そして、妻になれば問題は解決する。実に単純明快な発想である。私を妻にすることに何の旨味もないことを脇に置けばだが。

「もしかして……クロエもオズくんのこと」

 ザザが戸惑いがちに、私の方へと視線を向ける。

「いいえ、オズくんには、これっぽっちも興味はありませんけど」

「ないんかい!」

 というか、殿方全般に興味がない。繰り返すようだが、私には恋愛する資格がない。だから、恋に葛藤する男女、その恋愛模様にしか興味はないのだ。

「オズくんの妻ということにしておけば、この先も男女のあれやこれやを間近に見られるわけですし、そのポジションはおいしいですから」

「…………あー」

 ザザが理解したと言わんばかりに肩を落とす。流石はマイバディ。わかってくれて嬉しいです。

 すると、胡乱な者を見るような目をしたジゼルさんが、私をじっと見据えた。

「確かに大英雄オズマは誰が妻になろうと、一律にヤリまくるだけの下半身が本体と言ってもさしつかえのないセックスモンスターでございます。確かに問題はございません」

「ちょ、ちょっと待って! 俺が聞いてないうちに話がおかしなことになってない!? なんだよ、セックスモンスターって!」

 この謂われようには、流石にオズくんも抗議の声を上げる。だが、ジゼルさんはどこ吹く風、オズくんの抗議をさらりと聞き流し、あらためて私を見下ろした。

「ですが、クロエさまは処女でございましょう? 匂いでわかります」

「匂い!?

「伝説の大英雄オズマはおチ○ポも大英雄でございます。あなたは穴だらけにされる覚悟があるとでも?」

「ちょ! おま! 俺は別に──」

 オズくんが何やら喚いているが、とりあえず無視する。穴だらけとはまた大袈裟な表現だとは思うが、絶対にそうはならない。私には、穴だらけにするほどの価値がないからだ。

「うん、まあ、別にかまわないけど……私を抱いても楽しくないから、すぐ飽きるだろうし」

「楽しくない?」

 怪訝そうに片眉を跳ね上げるジゼルさんからザザへと視線を移して、私はこう告げる。

「ザザ、私の腋、くすぐってみて」

「え? あ、うん……」

 戸惑いながらも私の腋をくすぐり始めるザザ。だが私は一切、何にも感じない。別に我慢している訳でもない。

「ご覧の通り、極度の不感症なんですよね。だからセックスとか言われても、全然夢のない話で……」

 そうなのだ。性欲がないわけではないのだけれど、なにせ触覚が鈍い。とんでもなく鈍いのだ。

「まあ、感じなくても子供は出来る訳だし、親の決めた結婚相手と義務を果たす程度に子供を産んでって……それぐらいに考えてたんですけれど。それなら、オズくんの近くにいて色んな女の子とオズくんの恋愛模様を観察出来た方が、私にとっても都合が良い訳です」

 どこか憐れむような顔をするザザ。憐れまれるのは不本意だが、私自身は大して気にしていない。すると、ジゼルさんが呆れたとでも言わんばかりに溜め息を吐いた。

「大英雄を舐め過ぎですね。オズマさま、どうなさいますか? クロエさまを娶られますか? 拒否するということであれば、クロエさまはパッパラパー一直線でございますけれど」

「いやいやいや、普通に口止めすれば……」

「いいえ、そういう訳には参りません。オズマさまの存在は絶対秘匿情報でございます。娶るのは嫌、パッパラパーも嫌ということであれば、もう殺すしかなくなりますけれど」

「流石に殺されるのはイヤかな」

 私が口を挟むと、オズくんは苦渋に満ちた表情を向けてくる。だが、その股間を姫殿下が弄りまくっているので、今一つシリアスさに欠けた。

「クロエは本当に、それでいいの?」

「うん、他の人なら嫌ですけど、オズくんなら、まあいいかなって。名目上、妻ということにしていただければ、別に無理に抱く必要はありませんし」

 私が苦笑気味にそう告げると、ジゼルさんが静かに首を振る。

「いいえ、そういう訳には参りません。娶るというのであれば、ちゃんと務めを果たしていただかないと、女王陛下にご報告もできませんので」

「今すぐでなくても……」

 オズくんのその一言に、ジゼルさんは、なぜか口元に薄い笑みを浮かべた。

「いいえ、今がその時でございます。オズマさま、丁度良いではありませんか。セックスに夢を持てないのは、あまりにも残酷でございます」

「あ、ああ……なるほど処置前だから……か」

 弱り切った顔をして、オズくんがザザへと目を向ける。すると彼女は、苦笑しながら「クロエならいいよ」とそう言った。

 ジゼルさんが、パンと手を叩く。

「決まりでございますね。では本日がお二人の初夜ということで。ザザさま、姫殿下、我々は退散いたしましょう」

 ところが、姫殿下は子供みたいに頬を膨らませて、オズくんの脚にぎゅっとしがみついた。

「やだっ、やぁっ! チ○ポ、チ○ポ欲しいの! チ○ポっ!」

 これには、私も流石に言葉を失った。

 姫殿下は本当にどうしてしまったのだろう。まるで小さな子供のようにダダを捏ねながら、子供には聞かせられない卑猥な言葉を喚き散らしている。本来なら性行為をすることのない王族だけに、頭に何らかの不具合が起こっているのかもしれなかった。

「はいはい、姫殿下、聞き分けてくださいませ」

「やぁあっ! やだぁあああっ!」

 ジゼルさんは、オズくんの脚にしがみついて泣き喚く姫殿下を力ずくで引き剥がし、見た目からは想像もつかないような腕力で、暴れる彼女を苦も無く小脇に抱えて出て行った。

 最後に、ザザはちらりと私に目を向けると、どこか複雑な顔をしてオズ君の方へと向き直り、苦笑気味に口を開く。

「オズくん、クロエをお願い」

「ああ」

 そして、彼女はオズくんと頷きあうと静かに部屋を後にした。

 残されたのはオズくんと私。なんとなく漂う気まずい雰囲気の中で彼が口を開く。

「と、とりあえず拘束解くから」

「あ、それは、大丈夫です」

 私は水触手ウオーターテンタクルを発動し、触手を使って縄を解いた。我ながら実に器用だとは思う。この程度の拘束ならいつでも抜け出すことは出来たのだけれど、話をややこしくする必要もないので大人しくしていただけだ。

「その……クロエ、本当にいいのか?」

 オズくんは、まだ戸惑うような顔をしている。

 正直に言って、我々王国民が持っている大英雄オズマのイメージとは程遠い。だが、こんなオズくんだからこそ安心して、妻になるとか斜め上なことを言えるのだ。

 私は返事もしないで、ベッドに大の字に横たわり口を開く。

「さあ、どうぞ!」

「いや、どうぞって言われても……」

「あんまり、焦らされると怖いから、早く」

 なんだかんだ言っても、怖いものは怖いのだ。

 誰に聞いても、初めては痛いとしか言ってくれない。私の場合、何をされてもほとんど濡れもしないから、たぶん人並み以上にめちゃくちゃ痛いはずなのだ。痛覚だけ大して鈍くないのは、本当に理不尽だと思う。

 オズくんは真剣な顔をしてベッドに上ると、寄り添うように横から上体だけを重ねてのしかかり、私を抱き寄せた。

「なんでこうなったっていう気はするけれど……娶るからには大事にする」

「うん、その……よろしくお願いします」

 私が緊張気味に頷くと、彼は静かに唇を重ねてくる。

「んっ……」

 初めての口付け。

 彼は、上唇を持ちあげて舌を挿しこむと、歯茎の部分を舐めまわすように舌を蠢かせた。吐息と一緒に舌先が侵入してきて、素早く舌を絡めとられ、かすかな息苦しさに私は身を震わせる。

 物語で見るようなロマンティックさは、そこには無かった。

 良く耳にする頭がジンと痺れたとか、気持ちいいとか、そんな感覚は全くない。たぶん、私は舌や口の中の感覚も鈍いのだろう。

 互いの唾液で口の中がいっぱいになって、(なんだかなぁ……)と思いながら、私ははやむなく喉を鳴らしてそれを嚥下する。

 しばらく口腔内の柔らかな粘膜をねぶっていた舌が退散したと思ったのも束の間、今度は私の舌先がオズくんの口のなかへと誘い込まれた。

 チュウチュウとわざとらしく淫らな音をたてて、オズくんはちぎれるほどに私の舌を強く吸いたて、嬲り尽くそうとする。

 だが、私の表情に大して変化がないことに戸惑ったのか、彼は口を離して問いかけてきた。

「気持ち良くなかった?」

「うん、まあ……大丈夫」

 世の女の子は気持ちよさそうな演技をするものだと聞くけれど、残念ながらそういうことが出来るような人間でもない。凹んだ顔をするオズくんには申し訳ないけれど、これはもう仕方のないことなのだ。

「別に愛してほしいとか言わないから。私は私でみんなの恋愛模様を楽しむし、オズくんが私の身体を道具みたいに扱って楽しめるなら、それでチャラってことで」

 オズくんはなんとも言えない複雑な顔をする。そして彼は悔しげに奥歯を噛み締めながら、私の夜着を乱暴に捲り上げた。

「あっ……」

 ぽろっと乳房がまろび出て、私は思わず羞恥に顔を背ける。触覚の鈍さと羞恥心は関係がない。カッと頬が熱くなるような気がした。



 クロエに、俺を馬鹿にするつもりがないのはわかっている。

 それでも、俺は感情的になってしまった。

 性行為は男女の全てではないが、大事な要素の一つには違いない。だが、触覚が人より鈍いばかりに、彼女はそれを諦めてしまっていた。

 人の恋愛を眺めることを代償行為として消費し、それを継続するための試練として、自分の男女関係を貶めている。

 あまりにもいびつだった。いびつ過ぎた。

 妻として娶ろうという女の子に、そんな想いを許して良いのか? 良い訳がない。

(そうだ、良いわけないだろ! 大英雄なんだろ、オズマ!)

 夜着を剥ぎ取り、ショーツ一枚になった彼女の肢体は美しかった。

 着やせするのか胸は大きく、形良くツンと上を向いている。男ならだれでも揉みしだきたくなるような魅力的な乳房である。

(感じさせてやる……恋愛は見るものじゃないってことを思い出させてやる!)

 俺は意気込みながら両掌を乳房に押し当てる。クロエは、その俺の手をじっと見つめていた。

 ねっとりと柔らかな感触。シルクのような、なめらかな肌が吸いついてくる。甲乙付け難いが、シャーリーほど大きくはなくとも筋肉量が少ない分、彼女の胸は一層柔らかく感じられた。

 少し力を入れれば指は肉に沈み込み、その指の動きに合わせてムニムニと形を変える白い肉鞠。だが、そのなまめかしい変化とは裏腹に、クロエの表情には全く変化がなかった。

 変化どころか吐息に乱れもなく、声の一つも洩れはしない。それどころか、まるで何が楽しいのだろうと言わんばかりに、彼女は俺の手をじっと眺めていた。

「ク、クロエ、どう?」

「どう? あ、うん……おっぱいだね」

 表情に出なくても少しぐらいはという俺の淡い期待は、あっさりと打ち砕かれる。

(くっ……これなら、どうだ!)

 ギュッギュッと強弱をつけながら揉みしだき、人差し指と中指で乳首をつまんでおいて、親指の腹でぐりぐりと撫でまわした。

 だが、やはり変化はない。それどころか彼女の目つきが、少し眠たげなものになっている。

(……マジか)

 ここまでの不感症というのは想像がつかなかった。

 何か性質タチの悪い呪いにでもかかっているんじゃないだろうか?

 だが、ここで諦める訳にはいかない。

 俺は乳房を揉む手は休めずに、顔を伏せて薄桃色の初々しい突起を口に含む。そして、上下の唇でそれを挟み、舌先でコロコロと転がすように責めたてた。

 だが、やはりほとんど反応はない。

 頬が赤く染まっているのは、おそらく感じているからではなく羞恥から。

 俺は焦りにも似た思いを抱えながら、彼女のショーツに手を伸ばした。

「あ、やだ……恥ずかしい」

 クロエは抵抗するように脚を閉じる。だが、俺は力ずくでそれを押し広げ、足首からショーツを抜き取った。

 両脚を押し開いてその間に座りこみ、股間に顔を近づけて覗き込む。恥毛は薄く、ふっくらと丸みを帯びた恥丘の中心に、ピンクの秘裂が顔を覗かせている。だが、まだ男を知らないそこは、全く濡れもせずに固く閉じられていた。

(なんというか、自信を失うな……これは)

 それはつまり、今まで行ってきた前戯が、何一つ効果がなかったということに他ならない。

 前世は童貞だったとはいえ、転生して以降は妻たちを相手にセックス三昧の日々を送ってきたのだ。それなりに自信を持った矢先のこの有様である。

(ジゼルが『今なら』と言っていたのは、媚薬の効果でこの不感症を何とかできるってことなんだろうけど……)

 それには、兎にも角にもクロエの胎内に精液を注ぎ込まなければ始まらない。

 まるで瓶の中に入ったコルク抜きのような話である。

(仕方がない。可哀想だけど……せめて……)

「このままじゃはいらないからね」

 俺は、ベッドを降りて戸棚から香油を取り出し、クロエの股間へと垂らす。トロリと粘度の弱い液体が彼女の白い肌を滴り落ちて、シーツに染みを造った。

「……え? あ、うん」

 首を傾げる彼女。俺は再びベッドに上って、指先で彼女の股間へと香油を擦り込みながら、下着ごとズボンを下ろす。途端に、バネ仕掛けの玩具のように跳ね起きる勃起。雄々しく屹立した逸物に、彼女の視線が釘付けになった。

「ひっ!? うそ、そんなの入るわけ……」

 瞳の奥に怯えの色が浮かんで、クロエが声を震わせる。

「ちょっとだけ、我慢してくれ」

 俺は自身のモノにも香油を纏わせて、有無を言わさずクロエの秘部へと押し当てた。

「や、やめ……」

 今の今まで平然としていた彼女が恐怖に顔を歪ませる。だが、ここでやめる訳にはいかない。俺は体重をかけて彼女の身体を押さえ込みながら、グイと腰を押し進めた。

「っ!? ちょ、無理! オズくん、や、やめて、やめてください! ひぐっ!? い、痛っ……」

 固く閉じられていた花弁を強引に押し開いて、俺のモノが彼女の中へと侵入する。強張る身体、見開かれた目、歯を食いしばる必死の表情。

(くっ……きつい……)

 濡れてもいない狭い膣孔は抵抗が強く、挿入というよりは掘削するといった雰囲気。少し進むだけで、ズリっと引き攣るような感触があった。

「ぎゃぁあああっ! 痛っ、痛いっ! 痛いっ!」

 ご令嬢にあるまじき悲鳴を上げて、痛苦に泣き叫ぶ彼女。その膣孔を強引にこじ開け、秘肉を軋ませるように捲り上げながら、俺は剛直を捻じ込んでいく。

「ぐっ、あぁあああああっ、痛いっ、死んじゃうっ、オズくんっ、や、やめてっ!」

 メリメリと音を立てて掘削される狭隘な雌穴。ピクンピクンと上半身を仰け反らせて悲鳴を上げる姿に、今まさに彼女を襲っている強烈な痛みが伝わってくるような気がした。

 たとえ処女であったとしても、日常的に自慰行為でもして指を押しこんでいれば、これほどの痛苦はないのだろうが、感覚の鈍さゆえに、クロエにはそんな経験もほとんどないのだろう。

 そんな彼女に、人並み以上に大きな肉棒の洗礼はショックが大きすぎた。

「う、うぅう、うぇぇ……お願い……もう、やめてぇ」

 ボロボロと泣きながら懇願するクロエ。罪悪感は凄いが、ここでやめる訳にはいかない。痛いだけで終わらせてしまったら、性行為そのものがトラウマになってしまいかねない。

 押し戻してくるような強い抵抗を受けながらも、俺は半ば力まかせに剛直を根元まで突き入れる。そして先端が子宮の壁に届くほどに彼女を深々と貫いた。

「うぅ……ひっく、ひっくっ、うぇぇ……痛いよぉ、痛いよぉ」

 痛苦に顔を歪め、クロエは子供のように泣きじゃくっている。繰り返すようだが罪悪感が酷い。だが、それ以上に興奮が収まらなかった。どうやら俺は、相当サドっ気が強いらしい。

 普段は澄まし顔の上品なご令嬢。そんな彼女の股間に、俺のモノが突き刺さっている光景をあらためて目にすると、益々昂っていくような気がした。

「う、うぅ……も、もう終わりでしょ、抜いて、抜いてよぉ」

 ボロボロに泣き崩れた顔で訴えるクロエ、だが、残念ながらそのご要望にはお応えできない。まだ、挿入を果たしただけ。セックスはここからなのだ。

「終わりじゃないよ。これからだ」

「うそ……無理、無理だよぉ」

 絶望的な表情を浮かべる彼女に体重をかけて押さえつけながら、俺は抽送を開始する。

 嘗て経験したことのないような締め付け。手で力いっぱい握りしめられているような錯覚すら覚えた。

「ひぃいいいいいいいっ! 痛いっ! 痛いっ! やめてぇええええええ!」

 秘肉を捲り上げながらズボズボと抜き差しすると、クロエが嗚咽交じりに耳に痛いほどの悲鳴を上げる。

「ぐぅうううううっ、うぅううううっ!」

 それはやがて、色気の欠片もない獣の唸り声のような声へと変わって、彼女は俺の背中へと爪を立てた。眉間に深く刻まれた縦皺と、歪んだ目もとが痛苦を訴えている。鼻腔がふくらみ、上唇が少し捲れて、必死に食いしばった白い歯が覗いている様子が酷く痛々しかった。

「ぐっ、あぁっ……お願い、もう動かないで、酷いことしないで……」

「悪いけれど動かないと、いつまで経っても終われないから」

 彼女の懇願を素っ気なく振り払って、俺は益々荒々しく腰を揺すりたて、秘孔の奥深くへと剛棒を捻じ込む。

「ううっ、こんなのどこがいいのよぉ、辛いだけじゃない……」

 クロエは、恨みがましい目を向けてくる。痛みしかなければ、そういう感想にもなるだろう。

「もうちょっとだけ、我慢してくれ」

 だが、彼女にとっては救いと言ってもいいだろう。この締まりの良さでは、俺もさほど長くはもたない。その上、痛みのせいか先端から根元までまんべんなく、キュッキュッと膣肉が肉棒を締めつけるように細かい蠕動を繰りかえし、それが俺の性感を押し上げていった。

「ううっ……早く、早く終わってぇえええ」

 苦しげに顔を打ち振るたびに、ベッドに広がった艶やかな髪が乱れ、一房の紙束が唇の端に貼りついた。その痛々しい表情に胸の奥でドクンと心臓が脈を打つ。嗜虐心、征服欲、呼び方は何でも構わない。そんな思いが俺を更に昂らせた。

「っ、クロエ、もうすぐだ。もうすぐイクっ……」

 呻くようにそう口にすると、彼女はどこかほっとしたような表情を浮かべる。一刻も早くこの凄絶な責め苦から解放されたかったのだろう。

 俺は身を起こし、彼女のくびれに手をかけて、腰の動きを小刻みなものへと変えた。

 荒々しく剛棒を秘孔の奥深くへと捻じ込み、腰を捩って秘肉を捏ねまわすと、クロエは大きく身を仰け反らせて喉に詰まったような声を漏らす。

「あ、あがっ!? う、うううっ、ひっ! あぁああああっ!」

 俺ももう限界だ。彼女の苦悶の表情を見下ろしながらぴったりと腰を密着させて、俺は深々と根元まで押しこみ、溜まりに溜まった精を一気に吐きだした。

「くっ!」

 ピクッピクッと跳ねる太幹が肉襞を叩き、熱い奔流が秘孔の奥深くで爆ぜる。

「ああぁあああっ!」

 クロエは弱々しく左右に首を打ち振って泣き叫び、俺は力を込めて彼女の腰を惹きつけながら、鋭い快感に頬を歪ませる。

 ドクドクと胎内に精を注ぎこみながら、俺は小刻みに腰を揺すりたて、征服感に酔った。孔内に精液を送りこむ瞬間、これでこの女は自分のものになったのだという荒々しい実感が胸の奥から湧き上がってくる。

 全てを彼女の中へと注ぎ込み終えて、俺は息を荒げながら彼女の上へと身を倒した。

「はぁ、はぁ……終わったよ、クロエ」

 耳もとで囁かれて、彼女は力なく頷く。どうやら返事をする気力も残っていないらしい。

「抜くよ」

 乱れた息を整えて俺は肉棒を引き抜いた。肉笠に掻き出された処女喪失の鮮血と精液が入りまじり、ヌルッと淫唇に溢れだす。

 ついさっきまで恥ずかしげに閉じられていたピンクの扉は、無惨にこじ開けられたまま、すぐには閉じる力もなくぽっかりと穴を開けていた。

 クロエは脱力しきったような状態になって、ピクリとも動かない。痛苦に歪んだ表情が戻り切っていないのは、それだけ痛みが大きかったということなのだろう。

(さて……媚薬の注入は終わったけど、これで効果が無かったら、今度こそ本当にお手上げだぞ)



(やっと、終わった……)

 初めての性行為は、一言で言えば拷問でしかなかった。

 身体を真っ二つに引き裂かれるかのような壮絶な痛み。あらためて、私には恋愛をする資格がないのだと思い知らされた。

(もう二度とセックスなんてしない!)

 オズくんならセックスを拒否しても、見捨てたりはしないだろうし、姫殿下やザザがいるのだ。彼も、痛がるばかりの私を抱かねばならない理由なんてない。

 彼が、精力絶倫の大英雄オズマである以上、この先も沢山の女性を妻として迎え入れることになるのだろう。痛みと引き換えに、そんな極上の恋愛模様を間近で鑑賞できる権利を得たのだと思えば、さほど割の悪い取り引きだったとは思わなかった。

 痛み以外の感覚は異常なまでに鈍いので、オズくんが私の上から退いて股間から血混じりの白濁液が垂れ落ちているのを目にするまでは、本当に胎内に射精されたのかどうか、半信半疑だった。

(うわぁ……こんなにいっぱい射精るんだ)

 疲労困憊で薄目気味に目にした股間の状態には、正直少し驚いた。

 だが、その瞬間のことである。

 いきなり、ドクンと胸の奥で心臓が大きく飛び跳ねた。

「かはっ……!」

 息がつまるような跳ね方に、思わず喉の奥から空気が押し出される。そしてふいごで風を送られたの如くに、身体の奥で激しく炎が燃え上がるのを感じた。

(え!? な、なに、なに、これ!)

「クロエ、大丈夫か?」

 オズくんが、私の顔を覗き込んでくる。だが、今はそれどころではない。震える指先、乱れる呼吸、凄まじい速さで心臓が脈打って、血の巡りの速さに頭がクラクラする。そして、狂おしいほどの欲望が身体の奥の奥、そのまた奥からせり上がってきた。

(あぁ……ほ、欲しい。欲しい? な、何が……)

 恐ろしいほどの飢餓感。だが、いったい自分が何を欲しているのかがわからない。苦しみに耐えかねて彼の腕を掴んだその瞬間、私の目が彼の股間を捉える。

 射精したばかりだというのに逞しく屹立する肉の棒。私の初めてを奪い、苦しみにのたうち回らせた凶器。そこから目が離せなくなってしまったのだ。

「あ、あ、あぁ、ああ、あっ……」

 考えていることが言葉にならない。一点を凝視しながら、ただただ呻き声を漏らす私を眺めて、オズくんがホッとしたような顔をした。

「良かった、効いたみたいだね」

(効いた? 効いたってなに?)

 彼は、抵抗するいとまも与えずに、戸惑う私の股間へと手を伸ばす。

 彼の指先が割れ目に触れたその瞬間──

「ひぃいいいいいっ!?

 ──私の頭に、稲妻が落ちたかのような衝撃が走った。

 背筋を電流が走り抜け、ブリッジするかのように身が反り返る。そして、ボトボトボトっと股間から信じられない量の淫液が零れ落ちた。

「え、あ、あ、あ、あぁああっ!」

 狼狽する私を楽しげに見下ろしながら、オズくんは淫唇に指を差しこむと、くねくねと指先を動かしながら、肉襞を刺激する。

「あっ、あ、あ、あ、あ、あ、あっ、ひぃいいいっ! あぁあああっ!」

 さっきまでは痛みしか感じなかったというのに、彼の指の動きに合わせて脳みそを突き刺すかのような快感が、次から次へと襲い掛かってきた。

 彼は股間を弄りながら身を寄せると乱暴に乳房を揉みしだき、首筋を舐めあげてくる。

「な、なに、あぁっ! こ、これ、あぁあああああっ!」

 それは今まで味わったことのない感覚。それが気持ちいいと思うのが怖かった。

「いやぁああっ! いやっ……やめてぇ……やめてぇ……」

 必死に指先でシーツを握りしめながらそう訴えると、オズくんはピタリと動きを止める。

「本当にやめていいんだね?」

 荒い呼吸に上下する胸。答えることも出来ずに黙り込む私。だが、彼が動きを止めてから、一秒ごとに狂おしいほどの物足りなさが募り始める。まるで中毒症状。彼の指先に触れられていないことが苦しくて、私は無意識にも、甘える猫のように彼の胸に頬を擦り付けていた。

「やぁ……やだぁ……やめちゃいやぁ……」

 支離滅裂なことを言っているのは自覚している。だが、この未知の感覚が怖くて仕方がないのに、それが欲しくて仕方がないのだ。

 苦笑するような吐息を洩らして、彼が再び指を動かし始める。

「あ、ひっ、あぁっ、あんっ、あぁああっ!」

 彼の指の動きに合わせて、目の前に極彩色の星が飛び散った。声が抑えられない。凄まじい快感の奔流に押し流されて、私はとうとう我を忘れた。

「あぁああっ、オズくんっ、オズくぅん、あ、あ、あああっ、いぎっ! ひっ! ああぁああっ!」

 自分でも、とんでもない量の愛液が滴り出ているのがわかる。快感に強張る身体をこじ開けられる感覚。彼が指を蠢かす度に新たな蜜液が湧きだして、腿を伝い、お尻の割れ目を伝って、シーツを濡らしていた。

「オ、オズくん、おかしくなるっ! おかしくなっちゃうぅうう!」

 必死に訴える私の目の前に、見せつけるかのように彼が逸物を晒す。

「これが、欲しくなってきただろ?」

 否定したかった。だって、あんなに痛い目を見たのだ。二度とセックスなんてしない。そう決めたのだ。だが、血管の浮き出た逞しいその肉棒を目にした途端、頭に霞が掛かって、凄まじい渇望が私のお腹の奥で疼き出した。

「ううっ、欲しい……欲しいよぉ……」

 私は我慢できずに、やるせなく腰を揺する。いったい私の身体はどうなってしまったのか? 何一つわからないままに、オズくんの責めに屈していた。

「でも、そうだな……まずは、こっちで味わわせてあげる」

 彼は私の胸を跨いで、屹立した肉棒を口元へと突きつけてくる。

(あぁ……この匂い……あらまが蕩けひゃぅ……)

 くさいと思ったのは一瞬だけ。途端に頭の中が蕩けだして、眼前の赤黒い切っ先が愛おしくなった。私が無意識にもその先端に口づけると、オズくんはぐいっと腰を押し進める。

「むぐっ……」

 唇を割って、先端が口内へと侵入。そのまま亀頭部が喉もとにまで届くほど、深々と口中に埋まり、ジャリッとした陰毛が唇を圧した。

「おいしいだろ、クロエ」

 普段とは全然違う鼠をいたぶる猫のような目をして、私を見下ろすオズくん。怖いと思いながらもその眼を見ていると胸がときめくような気がした。

「ほいひぃ、ほいひぃひょ……」

 私は浅ましく舌を太幹に絡ませて舐めあげ、チュパチュパと淫靡な音をたてながら吸うように唇で肉棒を扱きたてる。

「くっ……上手に出来てるよ、クロエ」

 呻くようにそう口にすると、彼は腰を揺らして口内を荒々しく捏ねまわし、喉の奥まで切っ先を突き入れてきた。

 そして、散々私の喉奥を蹂躙した末に、唇にぴったりと腰を押しつけて、いきなり精を放つ。

「んんっ!? うぐぅううううっ!」

 太幹がピクンピクンと跳ねて、ドピュッ、ドピュッと熱い奔流が喉奥目掛けて注ぎこまれてくる。思わず目を白黒させる私。あまりの量に溺れてしまうと、本気でそう思った。

「んぐっ、んぐっ、んぐっ……」

 私は喉を鳴らして、必死にそれを呑みくだす。苦くて生臭くて喉に引っかかる体液。美味しくなんてないけれど、味わえば味わうほどに身体が熱を持って、もっともっとそれが欲しくなった。気が付けば、最後の一滴まで吸いつくそうとでもするように、チュウチュウと音を立てて彼のモノに吸い付いていた。そんな自分の浅ましさにゾクゾクした。

「ぷはっ……オズくん、オズくぅん……私、私ぃ、もう我慢できないよぉ」

 腰を揺すって、恥ずかしげもなく哀願する。瞳孔が開き切っているのが、自分でもわかった。もはや令嬢と呼ばれるのもおこがましい。今の私は、ただの淫らな牝でしかなかった。

「ああっ、おち○ちん欲しいよぉ……挿れてえ、挿れてよぉ」

 口を開けば唇の端から、注ぎこまれた精液の名残が胸元へとしたたり落ちる。きっと、今の私はとんでもなくいやらしい顔になっているのだと思う。

 私は捲れあがった上唇を舌先で舐めあげながら、小刻みに腰を震わせる。セックスなんて痛みの記憶しかないのに、どうしてこんなに身体が疼くのか、自分でも全く訳がわからなかった。

 ただ、とにかくあの逞しい肉棒で無茶苦茶に掻き回して欲しいと、そればかりを考えていた。

「はあ、欲しい、おち○ちん欲しいよぉ……なんでもするからぁ……」

 意識と無意識の境は曖昧で、頭の片隅で自身の発言を恥じながらも、上目遣いに彼へと必死にこいねがう。

「今度こそ気持ちよくしてやるからな」

 彼は、私の両脚を抱えるように掴むと一気に肉棒を押しこんだ。

「あぁあああああっ!」

 力強く侵入してくる硬い肉の塊。だが、その感覚はさっきとは全然違う。

 痛くない訳ではなかった。だが、ズリっと内側を擦り上げられた途端、痛みなど気にならなくなるほどの快感が生まれたのだ。

 声と一緒に肺の中から空気が押し出され、肉棒が私の胎内を行き来する度に、頭の中を滅多刺しにするかのように鋭い性感が突き刺さる。

「あぁあああっ! あぁあああああっ!」

 それは、初めての感覚だった。

(これが……これがセックスなんだ)

 みんな、私に黙ってこんな気持ちいいことをしていたんだと思うと、嫉妬めいた思いが湧き上がってくる。

「ひっ、あ、あ、あ、あ、あ、ああああああああああっ!」

 リズムをつけて奥まで突き上げられると、あまりの刺激に背中が仰け反った。溢れかえった蜜液が太腿まで垂れ落ちて、彼が抜き差しする度にグチョッ、グチョッと卑猥な音を立てる。

「気持ちいいか! クロエ!」

「うん、あ、あ、あっ! ああっ、きもちっ、あんっ、気持ちいいよぉおおおお!」

 激しく腰を揺すりながら、彼は私の胸を揉みしだく。触れられた場所から次から次へと波紋のように快感が広がって、私は我を忘れて声を上げた。

「クロエも俺のモノになったんだから、これからずっと気持ちよくしてやるからな」

 ヌポヌポと肉棒を出し入れしながら、オズくんが耳もとで囁きかけてくる。

「あんっ、あんっ! うれしいっ! うれしいよぉ、オズくんのモノになれてうれしぃいい」

 正直、最初はどうでも良かったのだ。ザザや姫殿下、私の大切なお友達の恋模様を間近で見届けることができるなら、相手がオズくんでなくても良かった。

 だけど、今はもう違う。心の底から、オズくんの妻になれたことが嬉しかった。

 自分には、一生縁のないことだと思っていた恋愛感情、そしてセックス。それを味わっていることで、もう胸がいっぱいになっていた。

「ひっ、ひっ、あ、あ、あ、あっ、あぁっ!」

 喘げば喘ぐほどに彼は、さらに荒々しく腰を使って抽送を強めていく。私は私で、もっとこの快感を貪ろうと、腰をくねらせて必死に肉棒を更に奥へと咥えこもうとしていた。

 眉間に深い縦皺が寄っているのがわかる。閉じきれない唇から涎が零れ落ちているのがわかる。貴族令嬢にあるまじきだらしない顔。でも、表情が笑み崩れるのを止められない。

「あぁっ、溶けちゃう、わらひ、溶けちゃうよぉ、あ、あ、あ、あ、あっ!」

 快感を口にすればするほどに、身体が敏感になっていくような気がした。

「あ、ああっ! オズくん、も、もうダメっ! ダメなのっ!」

 快感は堆積するかのように身体の内側で渦を巻いている。このままでは溢れ出してしまう。そんな切羽詰まった思いを私は必死に訴える。

「もうちょっとだけ我慢してくれ! 一緒にイクから!」

 バスンバスンと下腹部を叩きつけるような荒々しさで抜き差しをくりかえされると、私は益々乱れた。あられもない声を張りあげて、狂ったように腰を揺すりたてる。

「あぁああっ! イクっ! イっちゃうぅううう!」

 必死に限界を訴えると、彼は私の乳房を握りつぶして身を支え、小刻みに腰を動かして最後のスパートに入っていった。

「あ、あ、あ、あ、凄い、イクっ、イクっ、イクゥウウウウ!」

 やがて、私が絶頂の叫びを上げたその瞬間、彼は下半身をぴったりと密着させて、膣奥深くに溜まりに溜まった精を吐きだした。