新手のペットブーム
「ふぅー……」
俺はソファーで寝転んでいた。
通常サイズの『黄金の実』と比べれば量こそ少ないが、その分重量と体積が大きすぎて、輝きの度合いがヤバい。なので、収穫には疲労が溜まった。ただでさえ今日は昨晩のアレとか、ゴーレムのレアⅡとかで疲れてるというのに……。
これでもしも、帰還せずに何戦もゴーレムと戦いを続けていた後にこれが待っていたとしたら、どうなっていただろうか。
……考えたくもないな。
「ふふふ」
「よしよし」
「なでなでですわ」
力尽きた俺を気遣って、彼女達が甘やかしてくれていた。膝枕だったり、頭を撫でられたり、手を握られたりと。
うーん、幸せ。
「ご主人様、統計が完了しました」
そんな中、律儀に収穫したアイテムをチェックしていたアイラから報告が来る。
目は未だにチカチカしていたので、億劫だった俺は目を閉じたその体勢のままに続きを促す。
「ん」
「まずは植えられた数ですが、『黄金の種(大)』が16個でしたね。その内12個の種が3つの実をつけ、残り4個の種が2つの実をつけておりました。総じて、収穫された実の数は44個。更に全ての実から3つずつ成長アイテムが出たため、最終的にブーストアイテムは132個獲得となりました」
「結局、植えた数は少なくても、得たアイテムは通常の種と同じくらいと。けど、疲労度はこっちの方が上かも……」
1つ1つが、ほんと眩しいんだもん。
「次からは、事前にご主人様用のサングラスをお渡ししましょう」
「……ん?」
その言い方に違和感があったのでふとアイラを見たら、彼女はサングラスを着用していた。
「……おまっ」
「ご主人様が悪いのです。私を信頼してサングラスが欲しいと仰って下さればすぐにでもお渡ししましたのに……。何も言わずにズンズン進むのですから」
「え、俺が悪いの?」
「私はご主人様のメイドです。無茶振りにお応えするのが本懐なのです。ですので次からは、欲しいものがあればすぐにでも仰っていただければと」
「……」
こやつめ。俺がその発想に至ってなかった事を知った上で黙ってただろ。
「アイラさん、あまりショウタさんを虐めないで下さい」
「マキ、ほっときなさい。こんなのじゃれ合いみたいなものよ」
「……はぁ、アイラ。俺の地頭じゃ思考が追いつかないことが多々あるから、これからはお前から率先して動いてくれ。俺も思いついたらちゃんと言うから」
「……致し方ありませんね」
アイラは渋々といった表情でそう言うと、俺のズボンに手を掛け始めた。
「おい待て、なにをしている」
「ナニとは?」
「……なぜ、ズボンに手を掛ける必要が?」
「奥方様に囲まれてムラムラされていたようなので、発散を──」
『ゴッ!』
おふざけが過ぎるアイラの脳天にチョップを入れる。
「よーし、次からは率先して動く前にまず空気を読もうか」
「冗談です」
アイラは頭をさすりながら立ち上がった。ホントかよ……。
「では改めて、これが実から出た成長アイテムの一覧です」
そう言って何事もなかったかのように、アイラは手元にあったリストを差し出してきた。切り替えが速すぎて頭が追いつかんぞ。
えーっと、なになに……。
『腕力上昇+15』×2、『腕力上昇+18』×16、『腕力上昇+20』×5。
『器用上昇+15』×3、『器用上昇+18』×15、『器用上昇+20』×4。
『頑丈上昇+15』×3、『頑丈上昇+18』×14、『頑丈上昇+20』×4。
『俊敏上昇+15』×5、『俊敏上昇+18』×12、『俊敏上昇+20』×4。
『魔力上昇+15』×3、『魔力上昇+18』×17、『魔力上昇+20』×4。
『知力上昇+15』×4、『知力上昇+18』×12、『知力上昇+20』×5。
で、これを分けると……。
アヤネは『頑丈』+377、『魔力』+431、『知力』+376。
アイラは『腕力』+418、『器用』+395、『俊敏』+371。
になる、と。
「これはひどい」
「見ようによっては『レベルガチャ』よりもヤバいわね」
確かに。やろうと思えば、これは誰にでも与えられる恩恵なんだもんな。
「じゃ、数が多いけど2人とも全部獲得して。それから先日しっかりと見た時から、どれくらい変わったかを見たい」
「分かりましたわ!」
「承知しました。以前見られた時のデータは念のため残しております」
流石アイラ。準備が良い。
「あ。あたし達の『統率』はどうしよっか」
「あー……。一応オフにしておいて」
「わかりました」
現在の『統率』スキルは、アヤネとアイラ、それから俺が『Ⅲ』。アキとマキは無印だから、彼女達も有効にしていたら倍率は現在1・8倍になってしまうからな。これだと、ダンジョン内とのデータに違いが出てしまう。そうして、2人のデータを見ながら、現在のステータスを見比べてみる。まずはアヤネだ。
*****
名前:宝条院 綾音 年齢:18 身長:146㎝ 体重:35㎏
スリーサイズ:75/52/78
レベル:70
腕力:119(+45)
器用:234(+88)
頑丈:138(+12)(+52)
俊敏:232(+87)
魔力:816(+17)(+306)
知力:1045(+22)(+392)
運:10
*****
*****
名前:宝条院 綾音 年齢:18 身長:146㎝ 体重:35㎏
スリーサイズ:75/52/78
レベル:104
腕力:173(+65)
器用:343(+129)
頑丈:1007(+521)(+378)
俊敏:341(+128)
魔力:2135(+603)(+801)
知力:2344(+528)(+879)
運:10
*****
「ああ、アヤネも強くなったな」
魔力、知力も相当だが、この頑丈値の上がり幅がエグい。
これなら、ちょっとやそっとの攻撃じゃ傷つかないだろ。
「うぅ……旦那様のおかげですわ。ありがとうございますわ」
涙を零す彼女を抱きとめ、背中をさする。聞いた話だと、彼女は実家で落ちこぼれ扱いを受けてたって聞くし、これだけあれば十分見返せるだろ。それに、知力が2000を超えたのなら、更に上位の魔法も使えるようになってるはずだ。今後もダンジョンでは、彼女の魔法と知識には頼る事になりそうだな。
続いてアイラだな。彼女は元々の数値が高かったけど、どうなっただろうか。
まず前回がこっちで……。
*****
名前:犬柴 愛良 年齢:23 身長:170㎝ 体重:56㎏
スリーサイズ:90/60/89
レベル:174
腕力:1592(+14)(+531)
器用:1590(+12)(+530)
頑丈:1050(+350)
俊敏:2112(+14)(+704)
魔力:525(+175)
知力:530(+177)
運:6
*****
*****
名前:犬柴 愛良 年齢:23 身長:170㎝ 体重:56㎏
スリーサイズ:90/60/89
レベル:180
腕力:2701(+605)(+1013)
器用:2600(+541)(+975)
頑丈:1159(+435)
俊敏:3215(+567)(+1206)
魔力:583(+219)
知力:588(+221)
運:6
*****
「うっわぁ……」
もっとどえらい事になってる。
「ご主人様にステータスを全て抜かされたと思いきや、『黄金の実(大)』のおかげで挽回できましたね」
「まあ、この後ガチャを回すんだけどね」
「ああ……短い返り咲きでした」
よよ、と泣き真似をしてみせる。とりあえず頭を撫でておくか。それにしても、やっぱりアイラが強い事を実感すると、安心感が増すな。2人の成長具合に彼女達が盛り上がっている中、俺は次に片付けるべき事項を思い出していた。
「アキ、マキ。会議までにスキルが余るか判断しておかないといけないんだよね?」
「あ、そうそう。一応獲得済みスキルとは別に、今後余りそうになるスキルも算出しておきたいかな」
「それはこちらで判別しますので、ショウタさんは気にせず必要そうなスキルを振り分けておいて下さい」
「了解。それじゃ、まずは『俊足』から何とかしていくか……」
そう言ったところで、アイラがスキルを種類別に並べて行ってくれる。まずは目の前に山と積まれた『俊足』127個と『俊足Ⅱ』4個だ。
これを良い感じに圧縮すると……。『俊足』3個『俊足Ⅱ』3個『俊足Ⅲ』8個だ。
「俺とアイラで『俊足Ⅲ』を3つずつ使って『俊足Ⅳ』にしておこう。他の皆はいらない?」
そう聞くも彼女達は首を振った。なんなら、アキとマキは余ったところで使い所がないと断られてしまった。そう思っていると、アヤネがおずおずと手を挙げてくれた。
「で、では旦那様。『水魔法Lv2』を頂けますか?」
「ああ、そうだね。じゃあせっかくだし、『頑丈』が大きく伸びた事も考慮して『鉄壁』『城壁』を3つずつ。それから『身体強化Lv1』『剛力Ⅱ』『金剛力』『金剛壁』も取得しておいて」
「は、はいですわ!」
必要そうなものを自発的に求めてくれたことが嬉しくて、ついあれもこれもとあげてしまったが……。多かったかな? まあ、アヤネなら大丈夫だろ。
「アイラは追加で『怪力Ⅱ』を」
「はい」
俺は『迅速Ⅲ』を使って『迅速Ⅳ』にして、と……。これで残りは。
『剛力』×5個、『剛力Ⅲ』、『怪力』×13個、『怪力Ⅱ』×2個。
『怪力Ⅲ』、『阿修羅』、『鉄壁』、『鉄壁Ⅳ』、『城壁』×2個、『城壁Ⅳ』。
『金剛体』、『俊足』×3個、『俊足Ⅱ』×3個、『俊足Ⅲ』×2個。
『迅速』×5個、『統率』×13個、『水泳Lv1』、『金剛力』、『金剛壁』。
『金剛外装』×2個、『砂塵操作Lv1』、『砂塵操作Lv3』、『破壊の叡智』。
……うん。山が消えたから、減ったように見えるが……まだまだあるな。
「例のレアⅡから出た『鉄壁Ⅳ』と『城壁Ⅳ』は取得されないのですか?」
「ああ、それかぁ……。どっちも『Ⅲ』が今(2/3)でさ。あと1個ずつで『Ⅳ』になるんだよ。だからここでそれを消費するのは勿体ないから……キープで」
あ、そういえば。
「この『阿修羅』と『金剛体』ってなに?」
「おっ、ようやく? ショウタ君忘れてるのかと思ったよ」
「いや、正直忘れてた。この量を前にするとどうしても埋もれちゃうというか……」
「ふふ。これは『腕力』と『頑丈』の三次スキルなんですよ」
「三次スキルって……もしかして」
「はい。『剛力』『怪力』の上が『阿修羅』。『鉄壁』『城壁』の上が『金剛体』になります」
「おおー!」
あのクソデカゴーレム、そんなスキルを持ってたのか。
どうりで滅茶苦茶強かった訳だ。
「じゃあ当然覚えなきゃな」
「あ、旦那様。『真鑑定』で性能チェックをお忘れなくですわ!」
「おお、そうだった。ありがとなアヤネ」
「えへへ」
アヤネを撫でつつそれぞれの性能を確認した上で、下位スキルの性能も端末で確認する。
『剛力』:効果時間3分00秒 再使用20分。効果中腕力1・5倍
『怪力』:効果時間1分00秒 再使用10分。効果中腕力2倍
『阿修羅』:効果時間3分00秒 再使用10分。効果中腕力3倍
『鉄壁』:効果時間3分00秒 再使用20分。効果中頑丈1・5倍
『城壁』:効果時間1分00秒 再使用10分。効果中頑丈2倍
『金剛体』:効果時間3分00秒 再使用10分。効果中頑丈3倍
今のところ、これらのスキルはレベルが1上昇するごとに効果は1割増し、効果時間1・5倍、再使用時間1割短縮。といったところだったが……。
うん、完全に上位互換だな。これは。あとは『砂塵操作』と『破壊の叡智』も視て、取得もしておいた。
「ああそうだ。前回の『お願い』分の『迅速』は、残り何個だったっけ?」
「最初は8個だったけど、以前おじ様に直接1個渡しに行ったでしょ? だから、残りは7個ねー」
「手持ちは5個か。なら、あと2個に関してはまた次回にって伝えといて」
「わかりました。ショウタさん、残りのスキルはもういいんですか?」
「うん、今はいいかな」
「……わかりました。ではそのように準備しておきますね」
マキが以前言っていたように、『統率』はステータスへの恩恵が大きいから出来れば取っておいてほしいんだろうけど……。各協会にいる支部長に恩を売るなら早い方が良いと思うんだよね。
それに、ここからさらにステータスが上がっても、使いこなせる気がしないし。
「ありがと。いつも助かるよ」
「それが私達の役割ですから。では、残りの仕事を片付けてきますね」
そう言うとマキは、アキと一緒にパソコンを端末と接続して、動画の編集作業を始めた。進捗としては、俺がゴーレムと戦っている間に『ワーウルフ』までの分は編集済みらしく、残るはゴーレム系2種のみらしい。
そんな2人を横目に、俺はガチャを回す事にした。
『ジャララ、ジャララララ!』
結果は赤3、紫5、緑2。「無料ガチャ」では青色のカプセルが5個だった。
『SR 器用上昇+45』『SR 魔力上昇+45』『SR 知力上昇+45』
『SSR 頑丈上昇+110』『SSR 腕力上昇+75、器用上昇+75』
『SSR 魔力上昇+75、知力上昇+75』『SSR スキル:力溜め』
『SSR スキル:看破』『UR 腕力上昇+200』
『UR 頑丈上昇+130、俊敏上昇+130』『R 頑丈上昇+18』
『R 俊敏上昇+18』『R 魔力上昇+18』×2『R 知力上昇+18』
*****
名前:天地 翔太 年齢:21
レベル:32
腕力:3136(+1925)(+1176)
器用:2869(+1758)(+1076)
頑丈:2925(+1793)(+1097)
俊敏:3146(+1931)(+1180)
魔力:2855(+1751)(+1071)
知力:2772(+1699)(+1040)
運:2744
武技スキル:紅蓮剣、紫電の矢
*****
ほんと、強くなったなぁ……、俺。
そう言えば、進化してた『雷鳴の矢』は、このリストには表示されて無いんだな。でも、感覚としては呼び出せば使えそうな気配がある。ひょっとしたら『紅蓮剣』も、進化の余地があるのかな?
ガチャを回した後、俺達はそれぞれで残りのタスクをこなす事にした。
アキとマキは動画作成。アイラもその技能を遺憾なく発揮し、2人を手伝っている。
俺はというと、そんな技術を持ち合わせているはずもなく、アヤネと一緒に端末で情報収集に励んでいた。探している情報はもちろん、新しく取得したスキル『魔石操作』『砂塵操作』『看破』だ。
ちなみにアヤネは、俺の膝の上でちょこんと座り込んでいて、自前の端末で俺の手伝いをしている。もはや彼女にとっては、定位置といっても過言ではないな。
「『看破』はある程度情報はあったし、『砂塵操作』もある程度『真鑑定』で読み取れたけど……『魔石操作』は一切情報なしか」
「わたくし達にとって身近な存在である魔石。その操作となれば、かなり重要なスキルとなるはずですが、ありませんわね」
「それが無いっていうのは、怪しいとみるべきか。それともガチャの特異性が高いだけと考えるべきか」
「悩ましいところですわね」
2人してうーんと悩む。
ガチャから出たスキルということもあって、『真鑑定』の対象外だったのが辛いところだよな。まあ、レベルで効果の変わる『砂塵操作』も、曖昧な事しか書いていなかったんだが。
「なら、手持ちの魔石で試してみれば良いんじゃない? 幸い、一般的な魔石は全部ここにあるわ。極小から特大まで、様々な魔石が溢れるほどにあるんだからさ」
パソコンと向き合っていたアキが、振り返りながらそう言った。
「え、良いの?」
「良いも何も、ショウタ君が取ってきたものだもん。好きに使っちゃっていいに決まってるでしょ」
「いや、そういうんじゃなく……」
「ショウタさんは、私達の査定の事を心配されてるんですよね?」
「うん」
「それなら問題ありません。協会としては魔石の収穫が何よりも重要視されていますが、元よりショウタさんの収穫量は飛びぬけて高いんです。なにせ、たったの数日……下手すると1日で、他チームの1ヶ月分の魔石を納めてくれるんですから。更にはオークションに高額スキルを毎回出品されています。ですので、影響はないですよ」
「そっか」
それなら、問題ないかな。
「それではご主人様、いくつ要りますか?」
気配なく隣に座っていたアイラが、鞄の中に手を突っ込みながら聞いてきた。……うん、やっぱりステータスで勝っててもこの動きは真似できないし、何故か『予知』も発動しないんだよな。
このメイド、規格外過ぎる。
「とりあえず3つずつ。あ、極小は30個くらい出しといて」
「承知しました」
そう言ってアイラは並べ出すが、魔石とは違う物も置いていった。
「アイラ、それはなぜ?」
「『ゴーレムコア』は、ゴーレムにとっての心臓部。他のモンスターにとっての魔石に該当します」
「でもあいつら、魔石も落とすよ?」
「その理由は私もわかりません。エネルギーの貯蔵場所に使われているのかも知れませんね」
貯蔵、ね。
「……そう言えば、魔石ってモンスターのどこに内包されてるんだ? 今まで散々戦ってきたけど、生きたモンスターの中に、その存在を見た試しがないぞ」
「モンスターを生きたまま解剖するという実験は行われた事があります。ですがモンスターの体内からは発見されず、煙になる事で初めて現出すると、記録に残っていますね」
「え、生きたまま……? どうやって?」
ダンジョン内でそんな事をやるなんて、かなりぶっ飛んだ事をする奴も居たんだな。
「いえ、勿論ダンジョンの外でです。他にモンスターがいる中、解剖用の器具もなしにそんな酔狂な真似は出来ません」
「でも外って……」
「はい。本来ならモンスターは外には出られません。ですが、自発的に出てきた場合は異なります」
「……ああ、ダンジョンブレイクか」
「はい。連中の構造を研究するため捕らえたそうですが、結局わかった事は、奴らの体内に魔石は存在せず、死ねば煙となり、その際に確率で魔石をドロップするという事だけでした」
「そっか。ありがとな」
アイラはお辞儀をして、再び動画編集の作業へと戻っていった。『魔石操作』のスキルがどんな効果を発揮するにせよ、生きている限りモンスターの体内に魔石が存在しないのなら、戦闘中に直接影響を与える事は出来そうにないな。
……でも、常に物体として存在し、剥き出しにしているゴーレムなら? 何かできないだろうか。
とりあえずは、目の前にある『極小魔石』から試してみるか。
◇
「うーん、これも反応なしか」
俺は極小から特大まで。全ての魔石を手に持ち『魔石操作』と唱えたり念じてみたり。手に一杯詰め込んだり頭におしつけたりと、色々と試してみたが何の反応も示すことは無かった。
傍から見れば怪しい事をしている変人だが、今は自宅であり周囲にいるのは理解ある婚約者達だ。その辺りを心配する必要はない。
「なぜ反応しないのでしょう?」
「やり方に問題があるのかな? まあ、その辺はこっちも試してから考えよう」
俺の目の前には3つのアイテムが残されていた。
『ゴーレムコア』『ゴーレムコアⅡ』『ゴーレムコアⅣ』だ。見た目としては赤いスキルオーブのような感じで、宝石の代わりとして飾られていてもおかしくない輝きを放っていた。
「まずは普通のを……」
そうして手に持った瞬間、今までの魔石とはどこか違った感覚を受けた。まるで、俺と『ゴーレムコア』との間で、何らかの力が繋がったかのような、漠然とした感覚。
ダンジョン内ではアイラが全回収していたから、俺が直接触れるのはこれが初めてだった。
「……『魔石操作』」
縋るように念じてみれば、確かにパスのようなものが繋がったように感じた。しかし、同時に何かが足りないように感じた。
なんだ……? 一体、何が足りない……?
「旦那様?」
俺が違和感を感じている事に気付いたのか、アヤネが俺の顔をじっと見つめて来る。そんな彼女に、漠然とした今の感覚を伝えてみた。
「……旦那様、それはこれがゴーレムの心臓部だからではありませんの?」
「というと?」
「身体を形成するモノがないのですわ。ゴーレムといえば……アイラ」
「はい」
またしても突然隣に現れたアイラは、大きな袋を抱えていた。その袋には見覚えがある。確か、俺が『黄金の種』用に買っておいた園芸用の川砂のはずだ。
……ああ、なるほど。
「『砂塵操作』」
スキルを行使すると、袋の中にあった砂が自動的に俺の周りへと集まってきた。その中から一定量の砂を『ゴーレムコア』に纏わせ、改めて『魔石操作』と念じる。
すると、『ゴーレムコア』を中心として身体が自動的に構成されていき、少し経てば身長30㎝ほどの、ちょっとばかし不格好な砂の人形が誕生した。
「おお?」
彼は俺の言葉に反応したのか、ぴくりと顔と思しき部分を傾け、こちらを見上げているような動きを見せる。その姿や動きは、材質や大きさは異なるが、第二層でみかけたゴーレムそっくりだ。
「か、可愛いですわ!」
『!』
ゴーレムはまるで意思を持っているかのように、感謝するかのようにアヤネに向かってぺこりとお辞儀をしてみせた。
もしかしてこれ……命令とかできるのか?
「え、なになに?」
「ショウタさん、その子は?」
アヤネの歓声を聞いて、2人も様子を見にやってきたので、現状を伝える。
「ああ、スキル名称にあった魔石って『ゴーレムコア』の事だったんだ」
「つまり、ショウタさんのスキルは言い換えれば『ゴーレム作製』スキルだったという事ですか。確かにこんなスキル、聞いた事がありません」
アキとマキも、興味深そうに小型ゴーレムを眺めている。……そう言えば、こいつにも名称があるんだろうか? 確認したら出てくるかな。
「『真鑑定』」
名前:川砂ゴーレム
品格:希少《レア》
説明:20の魔力を糧に生み出された仮想生命体。魔力を与える事で半永久的に動き、命令に従順で、戦闘も可能。注がれた魔力に応じて体積と能力の上限が変動する。
「名前はそのまんまだな。にしても、魔力量で性能が変わるのか」
となると、こっちは……。
名前:ゴーレムコア
品格:希少《レア》
説明:周囲の魔力を貯める貯蔵庫としての役割と、与えられた属性の力を使う機能が備わっている。最大200まで魔力を保持可能。
名前:ゴーレムコアⅡ
品格:最高《エピック》
説明:周囲の魔力を貯める貯蔵庫としての役割と、与えられた属性の力を使う機能が備わっている。最大400まで魔力を保持可能。
名前:ゴーレムコアⅣ
品格:固有《ユニーク》
説明:周囲の魔力を貯める貯蔵庫としての役割と、与えられた属性の力を使う機能が備わっている。最大1600まで魔力を保持可能。
ほうほう。
試しに、新しく別の『ゴーレムコア』に魔力を送り、同じ要領で川砂を集めて多めにボディを整えてあげると、少し大きめの『川砂ゴーレム』が誕生した。そして身体の大きさは可変式らしく、1体目に合わせて縮める事も可能だった。
その結果に満足し、皆に鑑定結果を伝える。
「旦那様、この子、もっと大きく出来るんですの?」
「第二層に出てきたゴーレムみたいに、ってことだよね? 出来るとは思うけど、その為の砂や土がないかな」
「残念ですわ……」
しょんぼりするアヤネを宥めつつ、代わりに魔力を満タンまで注ぎ込むことにした。性能は中途半端よりMAXの方が良いだろうしな。そうやって注ぎ込んだ後にもう1度『真鑑定』してみたら、問題なく200の魔力が籠められていた。
しっかりできた事に満足していると、物思いに耽っていたアキが、何やら笑みを浮かべた。どうやら、何か思いついたらしい。
「ねえショウタ君。この説明通りなら、別にこの子達の身体は土である必要はないんじゃない? ほら、君にはもう1つ扱える属性があるじゃない」
「……水か! ああいや、でもなぁ」
「何か問題?」
「スキルレベルがね。『砂塵操作』はLv4だから距離や量を気にせず動かせたんだけど『水流操作』はLv1。こっちは本当に、俺が触れられる程度の距離や量しか動かせないんだ」
「そうなのね。でも、別にゴーレム作製には関係ないんじゃない? 水道からならいくらでも水は出せるし、最悪『水魔法』でなんとかなるでしょ」
「そ、そうですわ! ゴーレムの土は『土魔法』でいくらでも用意できますわ! わたくし達は覚えてないですけど、旦那様の『元素魔法』なら可能ですわ」
なるほど、他のスキルとの併用か。
確かに、それならどこでもゴーレムが作れるかもしれない。魔法は攻撃に使った後も、消えてなくなる訳じゃないもんな。
でもなー。
「面白い案をありがとう。けど『土魔法』を使ったら、家の中が汚れるから今日はなしでな」
「ガーンですわ!」
「水道の方は……。うん、汚れても良いように風呂場で試してみようかな」
そうして『川砂ゴーレム』と同じく、2体の『浄水ゴーレム』が誕生した。しかし、スキルレベルの低さからか、『浄水ゴーレム』は身体を人型に保つのに難があるらしく、常に流動的だった。
……いや、水のゴーレムなんだし、こういう物なのかもしれないけど。
「「「可愛い~!」」」
うん、皆にウケてるみたいだし、これでいいか。
やろうと思えばゴーレムをもっと量産出来るだろうけど、管理するのも大変そうだし、少ない方が愛着も湧くだろう。まずはお試しで2体ずつ運用して、何が出来るのかを見極めていこうかな。命令権は俺にあるようだったが、一言付け加えれば彼女達の言う事も聞いてくれるみたいだったので、1人1体ずつ任せてみる事にした。
その結果、アキとマキは『浄水ゴーレム』。アヤネとアイラは『川砂ゴーレム』を担当する事となった。
「旦那様。わたくし、リヴァちゃんを大事にしますわ!」
「足取りはしっかりしていますし、家事も覚えられそうですね。ご主人様と思って可愛がります」
「……変なことしないでね?」
てかアヤネ、もう名前付けたのか。川だからリバー? それとも、リバーとサンドで海の怪物リヴァイアサンとか? 土属性のゴーレムなのにな。
「この子、抱きしめるとひんやりしてて気持ちいいわ」
「そうだね。担当じゃない日は抱き枕にちょうどいいかも」
アキとマキは『浄水ゴーレム』を胸に抱いて顔を埋めている。ちょっと羨ましい。
「あ、ショウタさんの子はどうされるんですか?」
「え、俺?」
そういえば、皆には1匹ずつ与えたけど、俺は……。うん。
ダンジョン内で戦闘用に、『ゴーレムコアⅣ』を使って新たに作るかもしれないけど、私生活までは必要ないかな。
「俺には皆がいるから必要ないよ」
そう伝えると、皆から熱の籠った視線で見つめられた。少し気恥ずかしくなりそっぽを向いて、どうにか誤魔化す方法を考える。
「あ、あー……。そろそろお腹が空いて来たかな」
「ふふ。はい、すぐにご飯にしますね」
「腕によりをかけてお作りします」
「あたしも、久々に手伝おっかなー」
「わたくしも頑張りますわ!」
そう言って彼女達は、キッチンに向かった。
しかし、その場に残されたゴーレム達は、何か言いたそうにこちらを見上げていた。
「ん、どうした?」
『グッ』
彼らは器用にもサムズアップをし、彼女達の後を追っていった。
お前ら絶対感情あるだろ。