巨木の内部
翌日、俺達3人は『ハートダンジョン』第一層、中央にある巨木へとやって来ていた。アキとマキの2人は現在、協会でヘルプ作業に入っている。彼女達が昨日一緒にいたのはデートの一環に過ぎないからな。今日はアヤネとアイラの3人での行動なのだ。
その巨木は見上げてみれば、宝箱が設置してあった周辺の木々よりも一回り樹高が高く、更には枝から枝への距離も離れていた。これ、登るのが大変じゃないか?
「ご主人様、マップの方はどうでしょうか」
「……反応はない。けど、俺の『直感』は怪しいって言ってるな」
「映るにも、何かしらの条件があるのでしょう。普通の宝箱も、恐らく以前の探索の時に近くまで来ていたのかもしれません」
「かもね。昨日もそんな感じだったし。……アイラ、俺も登りたいところだけど」
「はい、こんな事もあろうかと、グラップリングフックを持って来ております」
「用意周到なメイドだな……」
「アイラの想定は、いつだって完璧ですわ!」
俺とアヤネが少し離れると、アイラは遠心力を使って、フックを頭上10mくらいの高さにある枝に引っかけた。
「ではお先に失礼します」
そう言ってアイラは、木の幹を足場に、垂直の壁を駆けあがっていった。
ほとんどフックに結び付けてるロープを使ってないじゃん……。
枝に辿り着いたアイラは、フックを外して、改めて枝に別のロープを結びなおした。そしてまたフックを頭上に投げる。つまりこの新しいロープで登れと。
これくらいなら、アヤネを背負いつついけそうだな。
「アヤネ、掴まって」
「はいですわ!」
アヤネと一緒にロープを登り、到着すればまたアイラが用意してあったロープで次の枝に。その工程を何度も繰り返し、俺達はついに天辺へと辿り着いた。大体、目算で80mくらいは登ったと思う。
ここまでくると、下を覗く気にもならない。
いくら4桁ステータスがあったとしても、落ちたらひとたまりもないだろうな。なんだか『直感』的に、大丈夫のような気もしてるけど、怖いし試したくはない。
「ご主人様、お疲れさまでした」
「さすが旦那様ですわ!」
一息ついていると、2人から労いの言葉がかけられる。
「ああ、ありがとう。……で、目当ての物はなし、と」
俺は、到着した部屋を見渡す。
巨大な木の天辺。今までなら宝箱が鎮座していた開けた場所だったのだが、人が来ることを想定していたかのような作りに驚きを隠せない。木はくり貫かれ、天井は葉っぱで覆われている。窓は無いが葉っぱ天井のお陰で採光には問題なさそうだ。
いかにもな雰囲気のこの部屋は、ガランとしていて、本当に何もなかった。
「滅茶苦茶怪しい。ということしかわからんな」
「こんなあからさまな場所ですからね、なにかあってもおかしくはないのですが……」
「何もないですわね? でも、こんな場所、秘密基地にはもってこいですわね!」
「そうだな、あとは立地さえよけりゃな……」
流石に、毎回あの長いロープを昇り降りするのはしんどいぞ。浪漫はあるけど。
「でも怪しいのは確かだし、調べてみよう。アヤネ、危ないから入口付近には近づかないようにな」
「はいですわ!」
そうして部屋を動き回っていると、何かボタンらしきものが壁に設置されていることに気が付いた。ボタンの色合いは木と同色の為分かりにくいが、触れれば確かにそこにある。念の為2人を隣に呼び寄せてからボタンを押した。
「ポチッとな。……おっ」
部屋の中央に、下へと続く階段が音を立てて現れた。
「隠し階段ですわ!」
「凝った仕掛けだなぁ。こういうのって、他のダンジョンでもあったりするの?」
「ギミック型ダンジョンであれば見かけますね。ですが、この様な平和なダンジョンに仕掛けられているとは……」
俺とアヤネが『炎魔法』で明かりを灯しフォーメーションを取る。俺が先頭、アイラが
「扉……?」
「旦那様、このマーク!」
「ああ」
扉にはレリーフが刻まれていた。『黄金蟲』だ。
けど、その扉にはドアノブらしきものがない。これも恐らく、対応する『トロフィー』が無ければ開かない物なんだろう。
「『真鑑定』」
名前:810-1
説明:810ダンジョン第一層配置の??? 対応する虚像を捧げよ。
「やはり同じか」
そして、いつまで経っても緑のアイコンが出なかったのは、ここにあるのが宝箱ではなく扉だったからだろうな。
「ご主人様、『トロフィー』は目に見える物なのですか?」
「いや、ステータスに映るだけだ。だから俺が近付けば、何か反応があるはず……」
レリーフに、ゆっくりと手を伸ばす。
すると、扉に触れた瞬間ピカッと光った。光が収まると、扉はすでにそこにはなく、中には小さな箱が置いてあった。箱には鍵がかけられておらず、無造作に開けると中にあった何かが、俺に向かって飛び込んできた。
「うわっ!?」
慌てて顔を覆うが、いつまで経っても痛みや衝撃を感じることはなかった。ゆっくりと目を開けると、空になった箱がゆっくりと消えていく光景が目に入った。
「何だったんだ?」
「旦那様、大丈夫ですか?」
「ああ……」
「私には、何かが旦那様に入っていったように見えたのですが……」
「けど、身体に異常はないな。……なら、ちょっとトロフィーを見てみるか」
トロフィー:ホブゴブリン
管理者の鍵:810(1)
「鍵……?」
ステータスからは、トロフィーが消え、代わりに『管理者の鍵』なるものが表示されていた。これは、一体何の鍵だ?
念じてみるも、特に何かしら特殊技能が使えるものではないらしい。トロフィーが消えて代わりに手に入った以上、対になっているのは間違いないだろうけど……。
よくわからないけど、こんなのがあるなら全部集めたくなるよな。
その後、巨木の最下層を探ったが、他にはもう何もない事が分かった。俺達は螺旋階段を登り、ロープで下ってようやく地上へと辿り着いた。
「ご主人様。ご指示通り、帰りのロープは全て回収しました」
「ご苦労様。他の人に入られても面倒だし、もう来ることは無いと思うけど……。もし来ることがあれば、その時はまた宜しくね」
「お任せ下さい」
「じゃあ、ちょっと早いけどお昼ご飯にしようか。ここからは『黄金蟲』と『黄金鳳蝶』との連戦予定だ。英気を養っておこう」
「はいですわ! 旦那様、何処で食べますの?」
「んー。すぐ近くに広場があるんだ。折角だし、そこにしよう」
マップで見る限り、その広場には先客はいないようだ。安心して食べられるな。
◇
昼食を終えた俺達は、さっそく狩りを始め、『黄金蟲』と対峙する。
『黄金蟲』が『金剛外装』を張るが、アイラが即座に引っぺがす。そしてガラ空きとなった胴体に、限界まで引き絞られた矢が突き刺さった。
『黄金蟲』はその瞬間硬直し、全身から煙を噴きだした。
「うーん、余裕だな。レベルも上がらなかったし」
「この程度の相手であれば、武技スキルを使うまでも無いようですね」
「流石旦那様ですわ!」
「ほんの1週間ほど前は、苦労してたんだけどなぁ……」
初デートの事を思い出す。あの時はすごい苦労したはずなのに、随分と遠くへ来たものだ。このアーティファクトが強いというのもあるだろうけど、安全な後方からの『力溜め』による狙撃。このコンボは本当に強いな。
「ご主人様はあのスキルによるステータス増強もそうですが、レアモンスターばかり討伐していますからね。成長速度は他者とは比較になりません」
「だよなー……。自分でも、驚いてる」
「ふふ。では、こちらを」
そう言って、アイラはマスクを配った。今回は緊急事態ではないためか、前回とは異なり特徴的な刺繍入りのマスクだった。アヤネは可愛らしいリスの刺繍。アイラはシックな柄物。そして俺のには、なぜか金貨が山程入った宝箱が描かれていた。
「……なんで宝箱?」
「ご主人様ですから」
「言いたいことは分からないでもないけど……」
控えめに言っても、めちゃくちゃダサい。
「アイラの好意はありがたいけど、俺にはこの指輪があるからね。使いそうにないから返しておくよ」
「残念です」
「それにしても、何処で売ってたのさ、こんなの」
「手作りですが」
「えっ?」
アイラの手作り? この……どうしようもなくダサい、これが?
「ふふ。その反応が見たいがために作りました」
「なんだ、冗談だったのか」
「ええ。流石にコレを着けて回る人は、私も憐れみの目で見てしまいます」
自分で作っといて、この言い草である。
そんな風に彼女達と雑談をしていると、煙が膨張を始めた。
「湧いたか」
煙の中から湧き出た『黄金鳳蝶』は、鱗粉をばら撒きながら浮かび上がる。その光景は蛹が羽化するかのようで神秘的だが、倒す気概は一向に薄れない。それは、アヤネもアイラも同様だった。よし、魅了の効果は出ていないな。
「2人とも、外装を剥がしてくれ」
「「はいっ!」」
「『紫電の矢』」
2人が攻撃をするさまを眺めながら、『力溜め』で『紫電の矢』の威力を引き上げる。『黄金鳳蝶』の外装は1枚、2枚と順調に削られていき、狙いすまされたアイラの攻撃により薄い金の膜は消失した。
「そこだっ!」
紫の光が放たれ、寸分違わず『黄金鳳蝶』の中心を貫く。
『黄金鳳蝶』は地面に墜落し、煙となった。
【レベルアップ】
【レベルが58から61に上昇しました】
『金剛外装Ⅲ』は1発ごとに3秒の無敵時間があり、3発まで耐えられる。なので最低でも初撃から6、7秒ほどはダメージを与える事ができない。だから、溜めるのに5秒の制限がある『力溜め』とは、かなり相性が良い。
狙えば無駄なく攻撃出来るという目論見だったのだが……。
「作戦通りとはいえ、あまりにも呆気ない」
「一撃でしたわね。弓矢が弱点なのでしょうか?」
「速さと幻惑を得意としたモンスターは、総じて耐久面に難があるものです。近接では難しくとも、ご主人様の遠距離攻撃であれば、この先も楽が出来そうですね」
「あんまり楽を覚えると、後で泣きを見るからほどほどにするけどね」
「そうですね……。ご主人様のおかげで、私達もスキルが充実していますし、あまり頼り過ぎては地力が必要な相手と遭遇した際、後れを取る事になるでしょう。折角ですから、次の『黄金鳳蝶』からはまた剣だけで戦いますか?」
「……そうしよっかな」
今日のところは、弓は封印しよう。弓の強みは、昨日と今日で大体理解できたし。
そして俺達は、目の前に散らばったドロップアイテムを、囲むようにして座った。
「とりあえず、ガチャの前にこのスキルの処理だな。まずはアイラ。『金剛外装Ⅲ』と『風魔法Lv4』を覚えてくれ。アイラが被弾する瞬間というのは想像できないけど、覚えていてくれると俺も安心できる」
「感謝します、ご主人様。しかし、魔法もですか?」
「攻撃手段はあるに越したことはないでしょ」
「畏まりました」
アイラは『統率』を抜きにしても魔力が350ほどある。
『金剛外装Ⅲ』を使っても攻撃魔法を行使するには十分すぎるだろう。俺達と違って『魔力回復』のスキルはないけど、魔力って数時間眠れば全快するみたいだしな。
「アヤネは『魔力回復Lv1』を。俺は『魔導の叡智』を貰う」
「はいですわ! あの、旦那様は『風魔法』を取らないのですか?」
「『元素魔法』とかち合うみたいでね。通常の4属性魔法は、覚えられないみたいなんだ」
「残念ですわね……」
「そうだなぁ……。今のところ『元素魔法』を覚えた意味があんまりないんだよな」
「それでしたら大丈夫ですわ。たしかLv3から専用の魔法が使えたはずですの!」
「あ、そうなんだ? じゃあ、圧縮したのも無駄では無かったか」
まあ圧縮は、使ったら最後、手持ちのスキルは全部圧縮の対象にされるから、止めようがなかったけど。でも俺、魔法については昨日覚えた『泡魔法』くらいしかまともに使ってないよな……。
そうして、残った『黄金蟲』のドロップスキルと、それ以外の各種アイテムは全てアイラに収納してもらい、『レベルガチャ』を召喚した。
「さーて、何が出るかな」
『ジャララ、ジャララララ!』
出たのは、赤5、紫3、緑2だった。
『SR 腕力上昇+35』『SR 器用上昇+40』『SR 頑丈上昇+40』
『SR 俊敏上昇+35』『SR 俊敏上昇+40』『SSR 腕力上昇+100』
『SSR スキル:騎乗』『SSR スキル:二刀流』
『UR スキル:真鑑定Lv1』『UR スキル:鑑定偽装Lv1』
「お、『UR』が2つも。それに回した瞬間、朝になっても暗いまま押せなかった『無料ガチャ』が明るくなったぞ」
「となると『無料ガチャ』は『10回ガチャ』を回す事が条件でしょうか?」
「たぶんね。……ぽちっと」
そして出て来たのは、青色のカプセルが3個だった。
『R 器用上昇+15』『R 俊敏上昇+18』『R 知力上昇+18』
「個数は5個固定じゃなくて、ランダムだったか」
つまり、ガチャ1回おきに『R』が複数ついてくるのか。
小さな変化だけど、増加する数値も増えているし、単純にありがたいな。
*****
名前:天地 翔太 年齢:21
レベル:1
腕力:1248(+828)(+416)
器用:1077(+714)(+359)
頑丈:1065(+706)(+355)
俊敏:1187(+787)(+396)
魔力:1121(+745)(+374)
知力:998(+663)(+333)
運:1722
*****
「まずは、『知力』が2足りない状態だけど、『統率』のおかげでほぼほぼ4桁は問題なさそうだな」
「おめでとうございますわ!」
「ご主人様の場合、お嬢様の『統率Ⅲ』と私の『統率Ⅱ』で、上昇値は1・5倍ですからね。それでも、出会った頃と比べれば格段に強くなられました」
「うん、2人のお陰だよ」
1人だったら、強敵の相手もそうだし、アイテムの回収もままならなかっただろう。
「次にスキルだけど……。『騎乗』、『二刀流Ⅱ』に『真鑑定Lv3』か。色々とあるけど……。まずはどこから確認しようかな」
「あの……旦那様? 昨日取得された『空間魔法』はどうだったのですか? 使われている様子もないですけれど」
「ああ、あれか。使える魔法は1種類だけなんだけど、使い方が思い浮かばなくてね。ちょっと放置してたんだ」
「それでしたら、私達にご相談ください。微力ながらご主人様のお力になれればと」
「魔法の事なら、わたくしも一緒に考えますわ! 3人いるんですもの。何かいい案が浮かぶかもしれませんわ。えっと、3本の矢……でしたかしら?」
「……文殊の知恵か?」
「それですわ!」
アヤネを撫でつつ思案する。
確かに、俺1人で考えても限界はあるよな。それなら、経験豊富なアイラや、魔法知識のあるアヤネも交ざってくれたら、活用方法が見つかるかもしれない。
「とりあえず見せるね。『エアウォーク』」
魔法を行使するも、見た感じ何も変化は起きなかった。2人は不思議そうにしているが、俺にだけは魔法が行使されたという漠然とした感覚と、目の前に俺が呼び出した無色透明な物体が存在している事が知覚出来た。
俺は『跳躍』のスキルを駆使して飛び上がると、その物体の上に乗る。
「えっ?」
「……なるほど。やはりこの魔法でしたか」
アイラは知ってるみたいだな。使い手が知り合いにいるのかな? 傍から見れば、俺は空に浮いているように見えるだろう。だが実際は、見えない足場がそこにあるのだ。2人がペタペタと見えない足場に触れて、その存在を確かめる。そうして、現状判明している仕様と強度について説明すると2人からの質疑応答が始まった。
「ご主人様、これはどの程度維持できるのですか?」
「大体1、2分かな? アイラは知ってるんじゃないの?」
「特別仲が良い相手ではないので。では、魔力の消費はどの程度でしょう」
「わからない」
「3枚目を出そうとするとどうなりますの?」
「1枚目が消えるかな。その前にちょっと頭痛がする」
「頭痛が起きるのであれば、魔法のレベルが足りないかもしれませんわね」
「ご主人様。移動しながら使えますか?」
「ん? この足場は1度出したら消すまでは動かせないよ」
「いえ、そうではなく。空中を移動しながら足場をどんどん作って行き、空中移動することは可能でしょうか?」
「うーん……。それはちょっと、厳しいかな」
魔法は、呪文名を言わなくても一応行使は出来るが、口に出した方が圧倒的に速度が速い。だが、いちいち移動しながら『エアウォーク』と唱え続けるには舌が回らないし、先んじて使おうにも毎回頭痛に襲われていたら戦いに集中できない。
「この魔法の使い手と仲はよくありませんが、戦い方は存じております。その方は上空に足場を作っては、遥か下方にいる敵へと魔法を降り注ぎ、一方的に攻撃する事を得意としております。ご主人様も無限に矢が撃てますので、同様の事が可能かと」
おお、なるほど。
「面白そうだし、練習してみたいな。けど失敗して落ちたら真っ逆さまだろ……?」
「それなら、第二層の砂浜や海なら問題ないのではないでしょうか」
「あー、確かに」
砂ならダメージも少ないし、アリだな。海に落ちるのは罰ゲームみたいでちょっと嫌だけど。絶対、鼻に海水入るじゃん。
「旦那様ならバブルアーマーがありますから、へっちゃらですわ!」
「……あー、その手があったか」
うーん、やっぱ、1人じゃ浮かばない案ばかりだな。次からも困ったら相談しよう。
「次は『騎乗』だけど……。何の役に立つんだ?」
「旦那様、もしかして馬を想像されてますの?」
「え、違うの?」
『騎乗』って単語から連想できるのは、馬だと思ったんだけど……。
「いえ、違うという事はないですわ。ただこの『騎乗』というスキル、とても万能だという話ですわ。なんでも、跨るタイプの乗り物であるならば、対象に制限がないそうなのです」
「それって……」
「はい。一般的な動物だけでなく、モンスターに乗る事も可能なようですわ」
聞いたことがある。
モンスターを操ったり、意のままにする特殊なスキルがあるって。
確かとある国にあるダンジョンでは、比較的簡単に手に入れることができて、上流階級の人間や一部冒険者は、モンスターをペットにして街中連れ歩いているとかなんとか。なんともまあ夢のある話だけど、国外への流通は制限されてるらしい。んで、この『騎乗』スキルがあれば、どんなモンスターでも簡単に乗り回すことも可能だと。
そういったスキルもガチャで出て来るんだろうか? それとも、宝箱か?
「ご主人様、もちろん相手は動物やモンスターだけに留まりません」
「ん?」
「女性に乗っかることでも効果を発揮します」
「おいメイド」
「いつでも使ってくださいね」
良い笑顔でアイラが告げた。乗って欲しいのか……? 時折見せるけど、アイラってMっ気があるというか、強く迫られるのが好きっぽいんだよな……。
「わ、わたくしも……」
「アヤネは真似しなくて良いんだぞ」
「は、はいですわ……」
「おほん、それじゃ次に『二刀流Ⅱ』だけど……。これは多分、純粋な技術力向上かな。まだ直接振るってはいないけど、剣を持つだけでも感覚が研ぎ澄まされていく感じがする」
弓から切り替えたばかりだっていうのに。本当に狙い澄ましたかのように来るな。
「最後に『真鑑定Lv3』だけど……。これは色々見ていけば変化があるかな? 『真鑑定』」
目に映る物を手当たり次第に見ていく。
アヤネやアイラ。彼女達が身に付けている特注の防具に、アヤネの杖。更には足元の草花やダンジョンの壁、ダンジョンの空まで。だが、見えている情報に変化はない。
「何も変わらないな……」
「では、他の物を見てみましょう」
「他って何かあったっけ」
「そうですね、例えば……。お嬢様、ファイアーボールを」
「?? わかりましたわ。ファイアーボール!」
アヤネがファイアーボールを呼び出し、頭上で停止させる。
「んん?」
「ご主人様、コレを『真鑑定』してみて下さい」
「魔法を!?」
「はい。人、防具、武器、ダンジョンと見て何も変化がないのであれば、次はスキルを視て頂こうかと思いまして。ですが、スキルそのものは目に見えるわけではありませんから、スキルを行使して出現した物であれば可能なのではないかと判断しました。さあさあ、物は試しです」
「どーんと見てくださいまし!」
「……分かったよ、やってみる。『真鑑定』」
名前:ファイアーボール
品格:《通常》ノーマル
種別:炎魔法Lv1
説明:使用する度、魔力を3消費する。術者の知力100毎に同時に使用可能な数が増加する。
「うわ、本当に見れた……」
「凄いですわ旦那様! 今仰った同時使用可能数は、数年前に解明されたばかりの情報ですの!」
「そうなの? 発見に何年も掛かった物が一瞬で読み取れるとなれば、確かに有効なスキルかも」
「このような情報が見れるとは想定外でしたが、このスキルはかなり有用ですね」
アヤネはファイアーボールをその辺に放り投げると、ワクワクを抑えられない顔で飛びついてきた。
「旦那様! 今度は、旦那様の武技スキルを見てみませんこと?」
「お、そうだな。……じゃあ、『紫電の矢』」
名前:紫電の矢
品格:《固有》ユニーク
種別:武技スキル《弓》
説明:使用する度、魔力を200消費する。使用者の腕力、器用、俊敏が威力に上乗せされる。
「消費魔力えぐっ!?」
「あの破壊力ですから、相当な技だとは思っていましたが……納得ですね」
「流石旦那様ですわ~」
よいしょしてくれるアヤネを撫でつつ、疑問を口にした。
「ところでこの、さっきから出てくる『品格』ってなに?」
「はい。実はスキルや、アーティファクトを始めとしたダンジョンで得られるほとんどの物には、レア度が存在しているのです。そして、そんなレア度を判別する為のアーティファクトもまた、存在しています」
「へえ」
「ただ、この判別用のアーティファクトはそれなりに見つかりはしますが、希少な物であるため、各国の協会本部やオークション会場などにしかありません。ですので、個人で『品格』を見られるのは特別な事です。また、そのアーティファクトは『品格』を見ることは出来ますが、ご主人様のように対象の効果などの説明を見ることは出来ません。現状判明している効果は全て、研究所やご主人様のような方が検証を重ねた末に発見された物になります」
「そうか……。まあ、そうだよな」
それにしても、スキルやアイテムにはレア度があったのか。
いや、そりゃあるだろうなとは思ってたけど、それは人間が勝手に決めた価値であって、ダンジョン側で定められていたとは思わなかった。この前の珍味表記と言い、何かしらの意思は介在していそうだな……。
「……ん? 今、オークション会場にもあるって言った?」
「はい。出品されたスキルなどは漏れなくチェックされ、商品名と共に大々的に周知されていますよ。ご主人様は、微塵も気にされていなかったようですが」
「……はい、まるで気にしてませんでした」
じゃあ今まで俺が出品してきたスキルも、『品格』が公開されていたのか。
……本当に気が付かなかったな。次からは気をつけておこう。
「ご主人様は興味がある事以外、とことん情報をシャットアウトしますね。それも無意識に。……まあいいです、そこは私達の方でサポートしていきましょう」
「頑張りますわ!」
「よろしくお願いします……。あれ、でもさっきアヤネやアイラの防具を見たときには『品格』が見えなかったんだけど、なんでだろ」
「この特殊服の事ですか? これらはダンジョンからのドロップアイテムではなく、その素材を元に外の世界で作られた物ですからね。『品格』はダンジョン産限定のはずです。ただ、ダンジョン素材の比率が高い装備はその限りではないそうです」
「なるほど。じゃあアイラの武器なら……」
名称:パラゾニウム
品格:《遺産》レガシー
武器レベル:49
名称:ライフスティール
品格:《固有》ユニーク
武器レベル:43
「すごい事しか分からないな。ちなみに、この品格はどんな種類があるの?」
「はい。上から順番に『
「おお。格好良いな!」
じゃあ俺の弓や槍なんかも……。
名称:魔道弓・カイザーヴェイン
品格:《希少》レア
武器レベル:38
説明:使用者の魔力を1消費して魔法の矢を作成する。装備者の腕力と器用にボーナス。
名称:激流の三叉槍
品格:《最高》エピック
武器レベル:32
説明:使用者の魔力を10消費して、武技スキル『激流槍』が使用可能。装備者の腕力にボーナス。
「……ん? カイザーヴェインはレベルが上なのに『品格』が下だな」
「武器レベルというのが、ご主人様でしか見れない情報ですから詳細はわかりかねますが、恐らく攻撃能力の高さを表しているのだと思います。そして『品格』は、備わっている能力で変動します。ですので、武技スキルが付与された事で槍の方が格が上としているのでしょう」
「なるほどねー」
あと、弓や槍は説明文が見れるけど、アイラのメイン武器は説明が見れない。
これももしかすると、『真鑑定』のレベルが足りないからかもしれないな。Lv1の時は、カイザーヴェインの説明が見れなかったし。うーん、奥が深い。
そうして色々と検証してみた結果、『炎魔法』や『風魔法』は『
覚えるだけ無駄とか思ってごめん。ちょっとデメリットがあるけど、魔力は余りがちだし、ちゃんと有用だったわ。
それにしても、見える情報が増えるって楽しいな。
「さ、ご主人様。色々と検証したくなる気持ちはわかりますが、そろそろ切り上げましょう。奥方様の分も、『金剛外装Ⅲ』を集められるのでしょう?」
「そうだった!」
アイラの言葉を受け、俺は目的を思い出し狩りを再開した。念のため、トロフィーの再取得が可能なのかも検証したかったので、2個目の角へと向かう。
【レベルアップ】
【レベルが4から37に上昇しました】
【レベルアップ】
【レベルが37から71に上昇しました】
そして2体目の『黄金鳳蝶』を倒した時、アヤネが何かに気付きハッとなった。
「そうですわ! 旦那様、アイテムの『品格』や魔法の効果が見れるようになったんですもの。スキルオーブから直接、情報を読み取れたりしませんこと?」
「おっ! そういえばそうか。どうして思い浮かばなかったんだろう。盲点だった」
「流石です、お嬢様」
「アヤネは凄いなー」
「えっへんですわ!」
2人でアヤネを褒め倒す。もしかしたら、アイラは気付いていたかもしれないけど、討伐を優先してあえて言わなかったのかもな。もしくは、アヤネに花を持たせるためか。さて、目の前にあるスキルをチェックしていくか。
まずは金剛シリーズだけど、『金剛力』と『金剛壁』は想定通りの効果内容で、ランクは『─
名前:金剛外装
品格:《固有》ユニーク
説明:魔力を50消費し、どんな攻撃も1度だけ弾くシールドを術者に付与する。
「『
「納得の性能ですね」
「すごいですわ~」
名前:金剛外装Ⅲ
品格:《固有》ユニーク
説明:魔力を200消費し、どんな攻撃も1度だけ弾くシールドを3回分術者に付与する。また、シールドが1度壊れた際、3秒間全ての攻撃を無効化する。
「『Ⅲ』になってもランクは変わらないのか……」
「性能としては『─
「それにしても、効果内容が旦那様の検証結果と同じですわね! 旦那様の考察通りで、わたくしも鼻が高いですわ!」
「あはは、ありがとう」
他のドロップ品も確認する。『魔導の叡智』と『魔力回復Lv1』は『
『黄金』系のアイテムは『
ここもスキルのレベル不足か……。
名前:風魔法Lv4
品格:《通常》ノーマル
説明:風を操るスキル。
風魔法はたったそれだけしか記載されていなかったが、よく考えればおかしなことではなかった。使用者の取得レベル次第で、操れる魔法の種類が変わるのだから。
そうして、『風魔法Lv4』を取得したアヤネは、『風魔法LvMAX』に成長した。『魔力回復Lv1』は、アヤネが魔力を持て余しているという理由から俺が取得することになった。んで、肝心の『金剛外装Ⅲ』なのだが……。
「わたくし、無印で大丈夫ですわ」
「え? でも……」
「『金剛外装Ⅲ』は、この先余ったらで大丈夫ですの。アイラは前衛で被弾する危険があるから優先して取得するのもわかりますわ。ですが、旦那様が一番大事に思っている方々は先輩達ですもの。2人よりもわたくしが先に受けることは出来ませんわ」
「アヤネ……」
確かに2人の事は大事だけど、今となってはアヤネも同じくらい大事なんだが……。
「お願いしますわ、旦那様」
そんな目で見られると、俺が折れるしかないよな。
「わかった。でも、3個目が取れたらちゃんとアヤネが取得するんだぞ」
「はいですわ!」
彼女の頭を撫でてあげると、子犬のように喜んだ。
「さて、他のスキルの処理についても決めとこうか。次以降の『風魔法』は、オークション行きで大丈夫かな」
「そうなるかと。ただ、レベルが高いからといって必ずしも売れるとは限りません」
「そうですわね。『風魔法』4回分と考えるにしても、お得とはあまり思えませんわ。知力がなければ、絶対に持て余してしまいますもの。本当に必要とする方は、必要レベルまで確保しているでしょうし」
「ですので、単純な『風魔法Lv1』を4つ分買うよりも、少し値下げして出すべきかもしれません。ただそこは、奥方様がよくご存じでしょう」
「そうだね。あの2人に任せておけば、問題ないね」
さて、話はついたし、ガチャを回すか。
『ジャララ、ジャララララ!』
出たのは、赤5、紫4、緑1だった。
『SR 腕力上昇+35』『SR 器用上昇+40』『SR 頑丈上昇+35』
『SR 俊敏上昇+40』『SR スキル:視力強化』
『SSR 魔力上昇+100』『SSR 知力上昇+100』
『SSR スキル:暗殺術Lv1』『SSR スキル:跳躍Lv1』
『UR 知力上昇+180』
「『視力強化』……。また随分と直球なスキルが来たな。んで、こっちのスキルは、相変わらず『真鑑定』では読めないか」
「元が、特殊なスキルから生まれた産物ですからね。私達は相変わらず視認することすら出来ませんし、『真鑑定』で見えなくても、仕方がないのかもしれません」
「あ、そうですわ! 旦那様、この箱の方ならどうでしょうか?」
アヤネが『レベルガチャ』の筐体を指した。
「お、確かに。『真鑑定』」
名前:???
品格:《幻想》ファンタズマ
「うわ、名前すら見れないのか。けど『─
「はい。世界でも2個しか発見されていません」
おお、すごい!
……けど、それは本当にそうなのか?
「なあアイラ。でもそれ、申告制なんじゃないの?」
「……そうですね。ご主人様のように隠されている方もいらっしゃるでしょうし」
「じゃあ10個以上あってもおかしくはない訳か」
「上に行くほど、秘密を抱えている人でいっぱいなのですわ」
「だよなぁ。強くなればなるほど、公開しづらい情報が増えて行くよなー」
さて、次は『無料ガチャ』か。やっぱり再点灯してるし、再使用条件は「10回ガチャ」を回す事で間違いなさそうだ。
「ぽちっとな」
今度は、青色のカプセルが4個だった。
『R 器用上昇+18』『R 頑丈上昇+15』
『R 頑丈上昇+18』『R 魔力上昇+18』
「今回は4個か。このランダム性は、本当にアキが言ったように、『黄金の種』みたいだな……。それじゃ、引き続き狩ろうか」
「はいですわ!」
「承知しました」
3匹目の『黄金蟲』撃破。
【レベルアップ】
【レベルが11から40に上昇しました】
『黄金鳳蝶』は出ず、そのまま本日4カ所目の角で、4匹目の『黄金蟲』撃破。
【レベルアップ】
【レベルが40から44に上昇しました】
と、ここで出現した『黄金鳳蝶』を撃破。こちらは3匹目。
【レベルアップ】
【レベルが44から67に上昇しました】
そしてガチャを回し……。
『ジャララ、ジャララララ!』
出たのは、赤4、紫5、緑1。「無料ガチャ」では青色のカプセルが5個だった。
『SR 頑丈上昇+35』『SR 俊敏上昇+45』『SR 魔力上昇+40』
『SR スキル:聴覚強化』『SSR 器用上昇+90』
『SSR 頑丈上昇+100』『SSR 腕力上昇+70、器用上昇+70』
『SSR スキル:魔力回復Lv1』『SSR スキル:魔力譲渡』
『UR スキル:縮地』『R 腕力上昇+18』『R 器用上昇+15』
『R 俊敏上昇+18』『R 魔力上昇+18』『R 知力上昇+18』
*****
名前:天地 翔太 年齢:21
レベル:7
腕力:1442(+951)(+481)
器用:1436(+947)(+479)
頑丈:1379(+909)(+460)
俊敏:1283(+845)(+428)
魔力:1394(+921)(+465)
知力:1454(+961)(+485)
運:1974
*****
「更新後のステータス増強効果値が高いお陰で、『統率』なしで4桁が目前だな」
「おめでとうございます」
「おめでとうございますわ!」
「ありがとう。アイラ、『縮地』って知ってる?」
「はい。歩法技術の一種ですが、それをスキルに落とし込んだものになります。私やご主人様ほどのステータスがあれば、スキルなしでも真似出来る可能性があります」
「え、そうなの? じゃあスキルで取った意味って……」
「ですが、的確に指南できる人間など限られております。私も残念ながら、そのような伝手は持ち合わせておりませんでしたので……。ご主人様が取得してラッキーですね」
「な、なるほど?」
「ですから、ご主人様もスキルを使い熟し、やり方をマスターすればスキルを行使せずとも自由に使えるかと思いますよ」
それはつまり、スキルとして使えば魔力を消費するけど、技術として身に着けてしまえば魔力は消費しないってことを言ってるのかな?
「流石ご主人様。意図を理解して下さったようですね。ただこういった技術系統のスキルの場合、魔力を消費する事自体稀のようですが」
うん。アイラが心を読んでも、俺はもう驚かんぞ。
「それで、マスターしたらアイラに教えれば良いんだな」
「いえ、その前に何回かスキルで見せていただければ、あとは自分で身につけます」
「まじか」
いや、アイラなら出来そうではあるが。
「その後は、私が付きっきりで伝授いたしますね。……あっ、先にマスターしたご主人様に教えてもらうのも、悪くありませんね」
「そこはまぁ、好きにしてもろて」
うっとりするアイラを軽くあしらい、俺はマップを開く。
『黄金鳳蝶』との戦闘で、周囲の綿毛虫もだいぶリポップしているようだった。
「とにかく、もう1匹『黄金蟲』を倒そう。次が強化体になるはずだ」
「はいですわ!」
「承知しました」
そうして、俺は再び綿毛虫を100匹討伐し、『黄金蟲』を湧かせた。
出てきたのは想定通り強化体の『黄金蟲』で、『真鑑定』にもトロフィー情報はあったのだが……。
【レベルアップ】
【レベルが7から54に上昇しました】
煙はすぐに霧散し、次は現れそうになかった。
「で。トロフィーのドロップはしない……と」
「そもそも、トロフィー自体に実体は無いのですよね?」
「ああ、いつの間にかステータスに反映されるタイプみたい」
「旦那様の持つ鍵に反応したのでしょうか?」
「その可能性もあるが……。そもそも俺の『鑑定』だけにしか表示されないっていうのも気になるんだよな」
俺以外の誰がみても強化体のステータスにトロフィーが存在しないのだ。最初は偶然かと思ったが、3回ともそうなのだし、何かしら理由があるに違いない。
「旦那様が特別だから、というわけにはいきませんわよね」
「恐らくは、出現させた当人でしか見る事も取得する事もかなわず、またその取得にも重複は認められない。といったところでしょうか」
「そうなるかな。それに、もし再び手に入れたところで、今日得た鍵が補充されているとも限らないし……」
「でしたら、数日は様子を見たほうが良さそうですわね」
通常の宝箱ですら再出現に時間がかかるんだ。あの特殊な宝箱も、もし再出現するなら相応の時間がかかると見ていいだろう。
「さて、時間がちょっとアレだな……」
アヤネの分の『金剛外装Ⅲ』は取っておきたかったところだが、時刻は16時過ぎ……。ここから100匹くらいなら狩れるけど、沼にハマると300や400戦う事になるんだよな。
「旦那様、わたくしは大丈夫ですわ」
「わかった。……それじゃ、帰ろうか」
「はいですわ!」
「お疲れ様でした、ご主人様」
◇
その後、協会で仕事を手伝っていたアキとマキを迎えに行き、協会内で全力で抱き合って注目を集めたり、色々あったのちに別荘へと帰宅した。
そんな俺達を出迎えたのは、昨日よりも眩い輝きだった。
「きゃっ」
「うおっ!?」
「め、目が眩みますわ~」
「これは強烈な輝きですね」
「ショウタ君、早く回収しちゃってー!」
「ああ!」
俺が急いで駆け寄り手をかざすと、これまでと同じように黄金の実は俺の手に落ちてきた。そのサイズはスイカくらいはあり、ずっしりとした重みがあった。
そして巨大な実は、輝きを失うと同時に複数のアイテムへと変化した。
『腕力上昇+15』1個。『知力上昇+15』1個。『魔力上昇+18』1個。
「これって、今の『R』と同格じゃないか」
それが3つも。そしてこの巨大な黄金の実は……残り9個。4つ植えた『黄金の種(大)』は、これまた2~3個の実を付けていたのだ。
合計10個の実を収穫した結果、以下のような状態になった。
『腕力上昇+15』2個。『腕力上昇+18』2個。『腕力上昇+20』2個。
『器用上昇+15』2個。『器用上昇+18』2個。
『頑丈上昇+15』1個。『頑丈上昇+18』3個。
『俊敏上昇+15』3個。『俊敏上昇+18』3個。『俊敏上昇+20』1個。
『知力上昇+15』2個。『知力上昇+18』1個。『知力上昇+20』1個。
『魔力上昇+15』2個。『魔力上昇+18』3個。
「巨大な実は、無料ガチャで出てくる『R』と同格かつ、1つの実に必ず3つ入っている。そして1つの種に2~3個の実がなり、48時間ほどで収穫可能となる……。なるほど、これはヤバイ」
「ヤバイわね」
「ヤバイです」
「ヤバイですわ」
「ヤバヤバですね」
「で、このヤバイ物を2人に分けると……」
アヤネは『頑丈』+69、『知力』+68、『魔力』+84。
アイラは『腕力』+106、『器用』+66、『俊敏』+119。
「となる訳だ」
「ヤバヤバですわ……」
「やばたんですね」
「もうそれは良いって」
さっきからボケようとするアイラに釘をさす。真顔で言うからシュールなんだよな。
「こ、こんなに頂いて良いのでしょうか……」
「お嬢様、この借りは身体で返しましょう」
またなんかメイドが不穏な事を言いだしたぞ。
「そ、そうですわね! 旦那様、このお礼は身体で払いますわっ!」
「昨日はアキで、今日はマキの番だから、アヤネは明日な」
「「……」」
アキとマキが顔を赤らめる。アキは昨日からこんなだし、マキも何があったか聞いてるんだろう。帰ってからずっとこんな調子である。
「それはさておき、アイラ。ひとまず、今日のスキルについて精算を済ませたい」
「畏まりました」
後回しにされてしょんぼりするアヤネを宥めつつ、並べられていくアイテムを見る。
「今日の討伐は、『黄金蟲』は5匹討伐。『黄金鳳蝶』は3匹討伐。湧かせるための綿毛虫はきっかり500匹だったかな」
「はい。まずスキルですが、『金剛力』『金剛壁』『金剛外装』が5個ずつ。続いて『金剛外装Ⅲ』『風魔法Lv4』が2個ずつです」
「これの割り振りだけど、アキ、マキ。前に出ないとは言っても、俺が安心するために『金剛外装Ⅲ』を覚えてくれ。悪いけど、決定事項だから」
「ショウタさん……」
「もう、私達の彼氏は心配性なんだから」
「2人を守るためならアイテムもスキルも惜しまないよ」
そう言って2人に直接手渡しする。
「もう、ショウタ君。これの価値解ってる?」
「えーっと、単純計算で『金剛外装』4個分の3倍効果だから……60億くらい?」
「そんな単純な物じゃないわ。『黄金鳳蝶』を出現させられるような『運』の持ち主はショウタ君くらいしかいないの。だから、値なんてつけられないわ」
「効果も凄まじいですし、100を超えるかもしれませんよ?」
「そうなんだ」
まあ、実際に出品をすればそんな値段になりかねないけど……。
出すつもりは毛頭ないんだよね。『金剛外装』くらいならいくらでもばら撒いて良いと思ってるけど、『外装Ⅲ』はしばらく流すつもりはない。『直感』としてもそうだけど、俺達はその先の『Ⅳ』も必要になって来るだろうし。
「……はぁ、軽い反応ね」
「そんなお金なんかより、2人が怪我する方が重たいよ。だから受け取ってくれ。心配しなくても、これ以降の有用スキルは俺が優先して取得していくから」
「「……はい」」
そこまで言ってようやく、彼女達は受け取ってくれた。
「ところで、支部長達に『黄金鳳蝶』の事は伝えた?」
「ええ。お母さんもヨウコさんも、データベースへの公開は控えるって。おじいちゃん……協会長も許可してくれたよ」
「おおー」
「ただ、『黄金香』の扱いは十分に注意する事。だって」
「そこは大丈夫だろう。アイラなら雑には……」
そこまで言った所で、アイラに対する不安が過った。そういえばこのメイド、効果がわかっていてあえて俺に使わせたんだった。ちらりと見ると涼し気な顔をしている。
「ご安心ください。ご主人様以外には使いませんから」
「それのどこに安心要素ある??」
「冗談です。ご主人様も、その『魅了耐性の指輪』を常に着用しているでしょう?」
「『直感』が外すなって言ってるからね。『直感』はアイラを警戒しているのかもしれないぞ?」
「誠に遺憾ですね」
「……」
まあいいや。アイラはこういう奴だってのはこの数日で身を以て思い知ったから。
「そういえばアキ様。昨晩は使われなかったのですか?」
「ゔっ……! 流石にその、使うのは違うかなーって……」
「やはり使えませんでしたか。ではマキ様、こちらを」
「あぅ……。私も、それを使うのはちょっと……」
アイラが唐突に『黄金香』の押し売りを始めた。
「こらこらそこのメイド、自重しなさい」
「残念です」
そんな衝動に任せなくても、俺達はちゃんとできるんだから不要だろ。まったく。
「んで、話は戻すけど、残りのスキルについてだ。『金剛力』『金剛壁』『金剛外装』5個ずつと、『風魔法Lv4』の2個は、もう出品しちゃってもいいと思う。次の開催は……3日後かな?」
「いえ、ショウタさん。『黄金鳳蝶』が非公開となった為、それに準じて『風魔法Lv4』も出品は出来なくなりました」
「ああ、そうか……。でも、アヤネはMAXだし、俺も取得できないし……。となると、わかるよね?」
2人に目配せすると、観念したように溜息を吐かれた。
「わかりました。そのようにします……」
「こうしてどんどん、あたし達のスキルも増えていきそう……」
「あはは」
「笑いごとじゃないー。……で、金剛シリーズの値段はどうする?」
「前回と一緒でも良いし、数が多いから低くても構わない。そこは任せるよ」
俺にはスキルに値段なんて付けられないしね。
「じゃ、急ぎ処理しておきたいのはこんなところかな。何かほかにあったっけ?」
「旦那様、『真鑑定』の事忘れてますわっ」
「ああ、そうだった」
「え、なになにー?」
「何か変わったんですか?」
「ふふーん。旦那様、物の『品格』が見れるようになったのですわ!」
「「ええーっ!?」」
『品格』って、2人がそんな反応を見せるほどなのか。まあそれが見えるのって、貴重なアイテムを使う必要があるみたいだし、それが自前のスキルで済ませられるのは凄い事なのかな?
そうして今日あった出来事として、宝箱やステータスなどで盛り上がり、夜は更けていった。今日獲得した種については、思うところがあり一旦植えずに保留とした。
そうして夕食の時、俺は今後の事を踏まえてとあるお願いをすることにした。
「アキ、マキ。2人にお願いしたいことがあるんだけど」
「なーに?」
「はい、ショウタさん」
「初心者ダンジョンの一層封鎖の件、そろそろ支部長にお願い出来ないかな」
「強化体の件ね?」
「うん。元々の予定としてはトロフィーが取れたらなー。って感じだったけど、例の宝箱も探しておきたくなったしね」
「わかりました。今から連絡をしますね」
「ちょっと待っててねー」
そう言ってマキが支部長に電話をかけ、アキと一緒に母親へ都合を聞き始めた。
マイクはスピーカーモードだったので会話内容はこっちにも聞こえているんだけど、そこは支部長もわかってるだろうな。それにしても、娘との会話中の支部長って、いつも以上に声が柔らかい気がするな。
『アマチ君、そこにいますね?』
「え? あ、はい」
話しかけられるとは思わなかったので、ちょっと反応が遅れた。
『あなたが望むなら、明後日にでも可能だけどどうする?』
「あ、それじゃ、それでお願いします」
『わかったわ。午前9時~12時の間でいいかしら』
「それで大丈夫です」
『こっちの通達は任せておいて。当日は、入る前に一声かけるように。ああそれと』
「ん?」
『アキもそうだったでしょうけど、マキも当然初めてだから。優しくしてあげてね』
「ぶほっ!?」
そう言って、支部長は電話を切った。何日か前にお願いしていた事ではあったが、すぐに動いてくれるのはありがたい。けど、最後のは余計だろ。何でばれてんだよ。
「ピュ~♪」
アキが下手な口笛を吹いて誤魔化すように視線を逸らした。
どうやら、犯人が見つかったようだな。
「……姉さん?」
「ひょえ!?」
凄みのある笑顔を向けられ、アキは蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった。
やれやれ。明日の内に『ハートダンジョン』でやりたい用事は全部済ませるとするか。念のため、追加の『黄金の種』を植えないで正解だったな。