そんな感じで3人とイチャイチャしていると、時折魚と一緒に泳いでいるアイラが視界に映る。こうしてみると、やっぱり彼女のプロポーションは抜群だよな。惜しむらくは肌面積が少ない水着であることだけど……。あんまりそれを言うと次は何を着てくるか分からないとこが怖い。

そう思ってると彼女と目が合う。あ、そういえば。

「アイラ、今俺達の声って聞こえてる?」

彼女はこくりと頷く。

そうか、この魔法は音を防がずにきちんと届けてくれるのか。ならやっぱり、いつか水中戦を繰り広げる事になった際には、必須と言える魔法となるだろうな。そんな感じで10分ほど、水中デートを堪能したところで、本題に入る事にした。

「ちょっと皆に見てほしい物があるんだ。この先にそれがあるんだけど……。アイラ、ここから前方20m付近にそれがある。先に行っててくれるか」

頷いた彼女は、水中である事を思わせない速度で移動していった。

まるでマーメイドだな。本来は海の乙女という意味だった気がするけど、アイラの場合、海でもメイドだとか言いそうだ。そんな彼女の後を追って、とある岩場の影へと入り込む。その岩場の奥には空洞があり、空気が溜め込まれていた。先に到着していたアイラが、鎮座する宝箱の前で驚きを隠せないでいた。

洞窟内部へと侵入してからバブルアーマーを解く。

「すっごいところに宝箱があるのね!」

「ショウタさんは、これを見せたかったんですね」

「まあ、水中デートしたいってのも嘘じゃないよ?」

「ふふ、ちゃんと分かってますよ」

「とっても素敵でしたわ!」

アヤネを撫でていると、皆が改めて宝箱に視線を寄せる。すると次第に、誰もがその存在に疑問を浮かべ始めた。

「……あれ?」

「この宝箱は、一体……」

「変な模様が入っていますわー!」

その宝箱には、全体の色合いは赤がベースとなっているが、青色で『デスクラブ』のレリーフが刻まれていた。

武骨な錠前付きで。

俺はこの宝箱の存在に気付いた時、その存在に強く興味をそそられた。なので彼女達の所に戻る時に、この宝箱を持って彼女達を驚かせてやろうと思ったんだけど……。

「え、これ動かせないの!?

「そうなんだよね。地面に張り付いてるというより、不思議な力で守られてるみたいで、びくともしないんだ。その上鍵のかかってる宝箱なんて初めて見たし、皆の意見が聞きたくてね」

今の俺に持てない物はない。とまではいかなくても、それなりの重量なら軽く振り回せる自信がある。だから、宝箱が引っ付いている地面の岩部分を削れば持ち上がるんじゃないかと試そうとしたんだけど、なぜか岩に剣が刺さらない。

まるで、不壊の特性でも持ち合わせているかのようだった。

「鍵付きで、しかも持ち運びができない宝箱……?」

「聞いた事がありません。私達が聞かされていないだけで、ランクの高い支部長クラスなら知っているのかもしれないですけど……」

「そもそも、宝箱の存在自体珍しい物ですわ」

「それもそうか。俺も、少し前までは無縁だったし。アイラは、何か知らない?」

アイラは珍しく思い悩んでいた。

そういえば、先に到着していた彼女は今までずっと宝箱の前で押し黙っていたな。

「……噂であれば、国外に妙な宝箱が見つかったという話を耳にしたことがありました。ですが、情報の出所が確かでは無かった為、眉唾でした」

「へぇ、そうなんだ」

国外か……。

ダンジョンは世界中にある訳だし、最前線の冒険者はあちこちの国を渡り歩いたりしてるという。なら、こんなデート用ダンジョンとかいう平和で優しいところじゃなくて、絶望的に手強いモンスターや罠が多いダンジョンに向かう事もあるだろう。

そういった中であれば、こんな特異なモノを見つけられるのかもしれないな。

「この錠前、どうにかならないかな」

「信頼が厚いのは嬉しいですが、ご主人様。この錠前、調べましたか?」

「いや、動かせない時点で諦めたけど……。何か問題があった?」

「はい。この錠前、いえ。錠前の形をした何かですが、鍵穴がありません」

「え?」

改めて見てみると、確かに穴も無ければ開封用の番号ロックも存在しない。錠前の形をしてるから、てっきりあるんだと思って、確認すらしてなかったが……。

なら、どうやって開けるんだ?

「……じゃあ、壊すのが正式な開け方?」

「いえ、それもお勧めできません。触れて分かりましたが、ただの金属ではないでしょう。ですがご主人様なら、他の開け方を確認できると思いますよ」

「えっと……?」

「『真鑑定』です。通常の『鑑定』では調べられない物も、ご主人様のスキルなら調べる事も可能かと思います」

そうか、『真鑑定』は今まで調べられなかったものの詳細もわかる優れモノだ。

「あー……。スキルを持っていても、発想が及ばなきゃ意味ないよな……」

「そのための私達です。御存分に活用なさってください」

「そうよ、私達は5人で1つのチームだもの。ショウタ君にできない事は、あたし達でカバーするわ」

「私達はあなたを精一杯支えます。ですからどうか、この手を離さないでください」

「わたくしも、何ができるかわかりませんが、頑張りますわ!」

「……みんな、ありがとう」

それじゃ、早速調べるか。

「『真鑑定』」


名前:810-2-1

説明:810ダンジョン第二層配置の??? 対応する虚像を捧げよ。


「謎が謎を呼ぶなぁ……」

「ですが、おかげである程度の事が分かりましたね」

「そうね。まず宝箱の名前からして、他のダンジョンにあってもおかしくないわね」

「はい。この場所の宝箱自体、普通なら見つける事すら困難な場所にありますし、他も隠された形で存在していそうです」

「じゃあ『初心者ダンジョン』や『アンラッキーホール』にもあるって事!?

「そうなると思います」

それはちょっとショックな情報だった。『アンラッキーホール』を世界で一番把握しているのは俺だと、胸を張って言えると思っていたのに……。まさか、まだ秘密が隠されていたなんて。

けど同時に、まだあそこに暴かれていない秘密がある可能性に、喜びも感じていた。

「この『対応する虚像』という説明ですが、箱の模様から考えて……」

「ええ、恐らくショウタ君が集めてるアレよね」

「アレか……」

「はい。アレです」

皆が言葉を濁す中、1人理解が及ばず考え続けていたアヤネがハッとなった。

「トロフィーですわね!」

隠された物を見つけられたのが嬉しかったのか、アヤネが全身で喜びを表現した。

そんな彼女が可愛らしくて、つい頭を撫でる。

「だろうねー」

「えへへ」

「となると、『デスクラブ』のトロフィーが必要になる訳か。問題は、『デスクラブ』が移動を挟まずにその場湧きするタイプだった事だけど……」

「たまたま討伐した場所が湧きポイントだったか、海岸ごとに区別されているのか、他の理由があるのか……ですね」

「それはまあ、後日にしようか。今日はもう遅いしね」

「はい」

「ショウタさん、お疲れさまでした」

「帰ろー!」

「今日も楽しかったですわ!」

そうして俺達は『ハートダンジョン』を後にし、第二層でのデートも無事に終わらせたのだった。

「ただいまー……っと」

帰宅した俺達を、眩い光が出迎える。

「おー、見事に生ってるな」

「眩しいですわ~」

「これは確かに、ご近所さんには見られたくない光景ですね」

「アイラさん、今朝はカーテンに気付いてくれてありがと。グッジョブよ!」

「ふふ、ありがとうございます」

植えた『黄金の種』は全部で9個。それらが全て成長し、22個の実になっていた。反面『黄金の種(大)』は確かに成長しているのだが、実はまだ付いていなかった。

「もう1日必要なのかな。とりあえず、こいつらにはあとで水をやるとして……」


『腕力上昇+2』1個、『腕力上昇+3』3個、『器用上昇+2』2個。

『器用上昇+3』2個、『頑丈上昇+2』1個、『頑丈上昇+3』2個。

『俊敏上昇+2』2個、『俊敏上昇+3』1個、『魔力上昇+2』1個。

『魔力上昇+3』3個、『知力上昇+2』2個、『知力上昇+3』2個。


まずは全ての実を収穫し、それらをアヤネとアイラに分け与えた。

アヤネは『頑丈』+8、『魔力』+11、『知力』+10

アイラは『腕力』+11、『器用』+10、『俊敏』+7。

成果としてはまずまずだな。

そしてその日の夜。アキが1人で寝室にやってきた。ルーティン的に、今日はアキとマキの2人セットだと思っていたんだが、何か変更があったのか?

……それにしても。

「……」

「な、なによ」

「いや、パジャマ姿も可愛いなって」

「ば、バカ。真顔で何言ってんのよ。照れるでしょ」

やっぱり落ち着きがないよな。まあアキはマキとセットでも落ち着きがなかったが。

……1人だからか? でも、この前の抱き枕、セットにしてほしいって言い出したの、実はアキなんだよね。それが1回きりで終わるって事は、よほどの何かが……。

「……アキ、とりあえずこっちにおいで」

「うん……」

アキが隣にちょこんと座る。……これは、俺から話を掘り下げる必要がありそうだ。

「それで、今日はアキが単独で抱き枕になってくれるの?」

「だ、抱き枕だけじゃないわ。そ、その先も……」

アキの言葉尻が段々と萎んで行き、仕舞いにはゴニョゴニョとなった。

なるほど、それで1人で来たと。どうするかなぁ。ソレを女の子から言わせてるのもアレだけど、言ってくれる気持ちは嬉しくもある。俺自身興味もあるけど……。

「……こう言っちゃなんだけど、早くない? 俺達まだ付き合ってから1週間くらいしか経ってないよ」

そう伝えると、アキはきっと睨んできた。

「しょうがないじゃない! ……ずっと前から好きだったもん。急にマキと一緒に付き合う事になって、数日もしない内に人数も増えて。不安にも、なるわよ……」

「それは……ごめん」

それを言われてしまうと、ぐうの音も出ない。

「それに、アイラさんが夜伽なんて言うし。き、昨日のキスで火がついちゃったし」

アキがぼそりと呟く。やっぱりそれがあったか。

何を言うべきかで悩んでいると、アキが俺の手を取った。

「……あたし達にも色々とあるのよ。例えば、ショウタ君が他の女の子に靡かないように、身体で、メ、メロメロにしちゃおう! とか、ね?」

「メロメロって。……はあ、俺は皆以外に、気になる人とかいないよ」

「今はそうでも、ショウタ君にとって都合の良い人が現れたら、フラッとチームに招き入れるかもしれないでしょ」

「ええ? そんなこと、いくらなんでもしないよ」

「どうだか。君、案外チョロいから。アヤネ達と出会ってから、正式に迎え入れるまでにかかった時間、教えてあげよっか?」

「……」

アキ達の顔見知りだったとはいえ、大体2、3日といったところか。まあ確かに加入までが早かったといえばそうだが、あれは2人の後押しもあった訳で。

「あたし達が不安を感じてるわけ、分かってくれたかしら?」

「……ああ。けど、少なくとも俺は、2人が拒絶するようなら迎え入れるつもりはなかったよ。今となってはアヤネもアイラも大事だけど、あの時も今も、俺にとって何より優先すべきは、アキとマキなんだから」

「ショウタ君……。ありがとう、あたしもマキも大事にしてくれて……んむ!?

不安が解け、素直に喜ぶアキの姿に不意にどきりとした俺は、唇を無理矢理奪っていた。俺だって男だ。我慢するにも限度はある。

アキの顔が一気に紅潮し、沸騰したかのように煙が上がる。

唇を離した俺は、荒い呼吸をするアキと目を合わせる。

「ショ、ショウタ君……?」

「アキ」

「ひゃ、ひゃいっ」

「昨日のアレで火が付いたのはアキ達だけじゃないんだ。その証拠を見せてやるよ」

「お、お手柔らかに……望むところよ!」

アキは気合を入れる。そうして俺達の戦いは、夜遅くまで続くのだった。