悪役令嬢は男装して顔を突き合わせる

夜、底冷えする風が人々から体温を奪っていく。

ランタンの明かりを頼りにレンガ造りの階段を下りていくと、いやに暖かい空間があった。

階下に着いた頃には、寒さが一歩遠のくほどだ。

目の前の広い空間には闇が佇んでいる。

ためらわず、煌々とオレンジ色の光を発する一室を目指して進んだ。

部屋に着くと、石で造られた炉で木がぜ、火の粉が舞っていた。

中には男性が二人。

火かきを手にしていた端整な顔立ちの青年は、満面の笑みを浮かべ、つるりとした頭部が特徴の大柄な男は、深くお辞儀をして、自分たちのトップを迎える。

犯罪ギルド「ローズガーデン」の地下アジト。

男装し、顔を隠したクラウディアはローズとして、同じ装いのヘレンを従えて訪問した。

アラカネル連合王国の王太子スラフィムと瓜二つの顔を持つルキが、いつもより少し高めの声でローズに話しかける。

「聞いたぜ、姉御。聖女様がこの町に来るってな。補佐役だっけ? それも決まったらしいじゃん」

「そのようだ」

表向き、クラウディアとローズは別の人間である。

直接的な表現は避けつつ、祝福してくれていた。

トップ代理として実務をこなしてくれているベゼルからは、そっと花束を差し出される。

「こちらは構成員からの日頃の感謝です」

花束の持ち手部分には、どこから聞いたのか白猫──キャンディ──を模した小さなぬいぐるみが付けられていた。瞳部分にはオレンジ色のビーズがあしらわれている。