書き下ろし後日譚③ 誓い合う二人


 やがて、一日の作業も終わって、日が傾き、今日という日が終わろうとしているのを知らせてくる。

 私とアルは、畑の脇にある小さな小高い丘に並んで、その光景を眺めていた。

「いい村になりそうだな」

「そうね」

 すると、アルの手が私の方へ伸びてきて、地面を押さえていた私の手の上に重ねられた。

「村が落ち着いたらさ、一つ願いがあるんだ」

「それはなあに?」

 自分の希望を素直に吐露するのは、アルにしては珍しく思って私は尋ね返す。

「チセは製薬スキルがあるだろう?」

「うん、そうね」

「俺たちは竜と獣人。寿命が違うだろう? ……それを解決する薬を一緒に探したいんだ」

「……」

 私は思わず、彼と彼を産んでくれたという人間の聖女だったお母さまのことを思い出す。何と言葉をかけていいのかわからず、その先を口にするのをためらった。

「いや、そんなに暗くなる話じゃない」

「でも、アルの言うとおり、私は獣人でアルとは寿命が違う。今は女の子だけど、やがて女になって……年老いていくわ」

 言葉にしてしまうと、それは未来のように思えてしまった。そして、彼に真っ直ぐに向けてもらえる愛情は永遠のものなのだろうかと、私が発したその言葉が私を不安にさせる。

「年老いるのは関係ない。チセはチセだ。俺はチセというその魂ごと愛してるよ」

「……あ……い」

 その、初めてアルから伝えられるストレートな言葉に、私の頰がカッと熱くなる。きっと耳朶まで赤くなっているだろう。

 私は、上に重なるアルの手から逃れ、自分の手を頰に持っていく。そして、両手で赤くなっているであろう頰を隠した。

「……そういう顔も可愛い」

 なんなんだろう。今日のアルは何だか積極的じゃないかしら!?

 当惑していると、アルが夕陽に視線を戻して再び言葉を紡ぎ出す。

「チセと一緒にいたい。この村が落ち着いたら、一緒に、この世界のどこかにあるという、不老長寿の妙薬の素材を探す旅に出て欲しいんだ」

「そうしたら、……ずっと一緒にいられる?」

「ああ」

 私たちは希望溢れる表情で顔を見合わせる。

「じゃあ、一緒に探してくれる? 調合は、私が頑張るわ!」

 そう思いを伝えると、アルが力強く頷いた。

「俺の翼でどこにでも連れていこう。そして、俺の力で必ずチセを守ってみせよう」

「私は、あなたと共にあるために、薬を作るわ……!」

 今度こそ、アルとお母さまのように、そのご家族のように、そしてこの国に降りかかった悲しみが、二度と訪れないように。

 そして、私たちが、ずっと共にいられるように。

 私たちは確認し合う。

 オレンジ色の夕陽に照らされながら、私たちは、そっと触れるだけの誓いのキスを交わしたのだった。