完璧な悪女と未熟な薬師
エルフォード公爵邸の中で存在を許されるのは、超一流のものだけなのだそうだ。
「背筋」
超一流のものしか存在を許されないこの空間に、美しく、しかし威圧感のある声が響く。
「目線は上。顎を引きなさい」
「はっ……はい……!」
頭の上に乗せた数冊の本を、決して落とさないようにぷるぷると震えながら背筋を伸ばす。
一瞬ぐらりとはしたものの、なんとか取り落とさずに済む。安堵したその瞬間、一瞬のゆるみもない容赦のない声が響いた。
「そのまま歩きなさい。かかとに重心を乗せて、つま先を外側に向けるのよ」
「……!?」
ただ立つだけでこんなにもギリギリだというのに無理がある。
しかし私に拒否権などがあるはずもない。
意を決して足を踏み出し──その瞬間、頭の上の本がずるりと滑った。
「わわわわ……!!」
咄嗟に床に滑り込み、すんでのところでその本たちをなんとかキャッチする。