腕を治したところ、ロイルは見るからに大人しくなった。

 静かにミドルトンの言葉を聞いている。護衛の女達はミドルトンが現れてから何も言わなくなったので、本当に裁判所のような雰囲気である。

「我が国で犯した罪を考え、ロイルは十年の投獄となる。なお、金貨千枚で一年の刑期短縮が可能だが、どうする?」

「……金貨一万枚払いましょう」

「ふむ。では、刑期は無くなったが、国外追放という罰は取り消すことは出来ない。以降、我が王国の領土に足を踏み入れることは出来ぬと思え」

「……承知いたしました」

 粛々と罰を受け入れるロイルの姿に、また何か企んでいるのではないかと不安になる。しかし、どうやら本当に諦めてしまったようだ。ミドルトンがロイルの持つ魔術具を押収する際にも、一切抵抗を見せなかったからだ。

「さて、賞品はこれらの魔術具であろう? そこの女どもが持つ魔術具も合わせて全部で十だ。受け取るが良い」

 そう言われて魔術具を受け取る。オークションに出品される珍しい魔術具一つを競り落とす筈が、気が付けば予想外の数の魔術具を手に入れてしまった。

 そう思った時、ふと重要なことを思い出す。

「……あ、そういえば、ロイルさん」

「……なんだ」

 ロイルが力無く返事をした。普段の姿は見る影も無くなっている。

「金貨一万枚を差し上げますので、オークションで落札されたドラゴンを返してもらっても良いですか?」

 そう尋ねると、ロイルは小さく笑った。

「……どうせ、あの町の店も閉鎖だ。好きにしろ」

 それだけ言って黙ったロイル。その話を聞いて、ミドルトンが腕を組んで口を開いた。

「ふむ、ドラゴンか。素材としてなら王家で買い取っても良いが……」

「いえ、私もお金を持て余している状態なので、山に返してあげようかと思います」

「分かった。ならば、その辺りは任せよう」

 私とミドルトンがやり取りを終えると、呆れた様子でコートが呟いた。

「金貨一万枚で生きたドラゴンの購入をして、山に返すとは……アオイ先生らしいスケールの大きさですね」

 苦笑交じりにそう言われて、首を傾げる。

「教員として十分なお給金を受け取っておりますので」

 そう言うと、グレンが何とも複雑な顔で顎を引いた。

「……わしも休みの日に出稼ぎに行こうかのう」

 と、グレンは遠い目で呟いた。一体なににそんなにお金を使ってしまっているのか。

 苦笑するミドルトンとレアは理由を知っていそうだったが、今度本人に確認してみようか。いや、やはり、先に手に入れた魔術具の研究からにしよう。こんなに研究材料が集まったのだから、必ず何か新しい発見があるはずである。

 私は久しぶりにウキウキしながら手に入れた魔術具を見比べていたのだった。



 ちなみに、ロイルは国外追放を受けた後、各国に点在していた支店も閉鎖となり、ロイルの経営する商会はコート・ハイランドにある本店のみとなってしまったらしい。魔術具に関してもその殆どを各国に没収されてしまったとのこと。流石に魔術具の殆どが違法に取得したものなのかと思い、ロックスに調査を依頼した。

「どうやら、各国の貴族や商会やらに随分と恨まれていたみたいでな。色々と証言されて違法性が少しでもあれば全て没収となったようだな。まぁ、各国の王家は労せず貴重な魔術具を手に入れることが出来たわけだし、裏事情がありそうだが」

「なるほど……普段の行いから起きたこととはいえ、少し可哀想ですね」

「俺は死にかかったからな。同情する気にもなれん」

「そうですか……あ、護衛の人達はどうなったんでしょう?」

「ん? あの女達か。どうやら奴隷制がある小国で買い集めていたらしく、今は商人見習いとしてロイルの下で商売に励んでいるそうだぞ」

「魔術具同士の戦いで傷つけ合うより良いかもしれませんね」

「俺ならロイルの部下になるくらいなら逃げだすがね」

 と、色々と情報を教えてもらい、ロイルの現在の状況も知ることが出来た。

「……あまり、恨まれるようなことをしてはいけませんね」

 世界一、二の大商会を作りあげたロイルの現在を聞き、何となくそんな感想を抱く。

「……アオイがそんなことを気にしてるとは思えなかった」

「どういう意味ですか?」

 ロックスから言われた言葉に首を傾げて聞き返すと、ロックスは曖昧に笑い、午後の講義に出席すると言いながら歩いて行ったのだった。