それじゃあ、行こうか?
その頃。バッシュ公爵領では、最強家令と最強(最凶?)婚約者が共に睨み合い……いや、見つめ合っていた。
互いに表情は微笑んでいるが、その身体から立ち昇る魔力と鋭い視線が互いを探り合い、牽制し合っているようにも見える。
そんな緊張感漂う張り詰めた空気を受け、エレノアとクライヴだけでなく、バッシュ公爵家の召使や騎士達も、二人の様子を固唾を呑んで見つめていた(その後方では、「セドリック様ー!」「聖女様ー! リアム殿下! お気を確かに!!」と、ウィルや近衛達の声が響いていた)。
そんな緊張感の中。先に動いたのはイーサンだった。
スッと胸元に手を入れ、大きめな手帳サイズの何かを取り出すと、そのままオリヴァーへと差し出す。
「これを。お納めくださいませ」
「……?」
訝し気な表情を浮かべながら、差し出されたそれを受け取ったオリヴァーの両目がカッ! と大きく見開かれた。
「──ッ! こ……これは……っ!!」
ワナワナと、ソレを持つ手が震える。
イーサンから渡されたもの……。それは、艶やかで重厚な額縁に入れられたエレノアの肖像画だった。