騎士として在るべき姿

「お嬢様の御前で、騎士である貴方がたがなにを騒いでいるのですか。まずは全員下がりなさい」

静かに言い放たれた言葉。だがその中に宿る憤怒に気圧されたように、先程まで私を取り囲んでいた騎士達全てが、一斉にその場から退き居住まいを正した。

「イーサン……」

何故ここに? と続けたかった言葉は、こちらに向いた顔を見た瞬間止まってしまった。

何故なら、その目は真っ赤に充血しているうえに血走っており、眉間の縦じわも、かつてないほどくっきりと刻まれていたからだ。

しかも自分を目にした瞬間、彼は何かを耐えるように唇をギュッと引き結んだ。

『お……怒ってる!?

そういえばクリス副団長、フローレンス様が演習場に来て迷惑だったと言っていた。

だから同じように演習場にお邪魔してしまった自分に対し、怒っているのだろうか……?

「……」

見上げながら、ビクビクしている私の姿にキュッと眉間の縦じわをもう一本増やしながら、イーサンは鼻の上に掛かった眼鏡のフレームをクイッと指で押し上げた。

「……エレノアお嬢様……」

「はっ、はいっ!?

つ、次の台詞は、「淑女たる者」でしょうか!?

「……ご成長、あそばされましたね」

「はい?」

一瞬、何を言われたのか理解出来なかった私の目の前で、それは起こった。

なんと、イーサンの目からツゥーと、涙が一筋流れ落ちたのである。まさにリアル「鬼の目にも涙」。