聞けば、カイゼンまでの運賃は大体三十万くらいが相場らしい。それがタダになるのなら、水を出すくらい大したことではない。お互いにとって有益な取り引きだった。

そうして話を終えたところで別の団体がやって来たので、邪魔にならないよう頭を下げて小屋から離れる。

さて、ひとまずこれで良し。次は宿を押さえるか。

気を取り直し、来た道をそのまま戻ろうとする──と、先程の少女が一人で何やら奮闘しているのが目についた。何かをくっ付けようとして、巧くいかずに地団太を踏んでいる。元々は釣り竿だったらしい、半ばから二つに折れてしまった棒を握り締めて、彼女は唸り声を上げていた。

「どうした? 壊れちゃったのか?」

「うん。落とした」

忙しいのではなくて、本当は困っていたのか。落としただけで折れるということは、素材が良くなかったか?

「どれ、見せてごらん」

釣り竿を借りて造りを確かめる。子供用だからなのか、中は空洞だし素材も薄い。棒というよりは筒といった方が正しい造りだ。

なるほどこれは、落とせば割れるな。

しかも欠片の一部は風で飛んでいったらしく、どうしたって元に戻せそうもない。いっそ一から新しい物を作りたくなるが、中身が詰まったものにすると、子供の力では扱えなくなってしまう。この脆さもある意味で正しかったのかもしれない。

ううん、どうしたものか。

「直る?」

「うーん……これは材料が無いと直せないな。新しいのだと駄目?」

「新しい方が良い!」

少女の目が煌めいて、俺は思わず苦笑する。確かに新しい方が良いよな。

俺は風に晒されている樹に近づき、枝を一本失敬した。振ってみるとよくしなり、簡単に折れる様子は無い。釣り竿として使えると判断する。

余計な葉や瘤を鉈で落とし、多少表面を削って軽くして……これくらいで、丈はどうだろう。

「ちょっと持ってみて」

「ん!」

少女は釣り竿を手に取ると、そのまま思いっきり振り下ろした。風を切る音がして、竿の先端が地面を掠る。身長に対して少し長いか。

持ち手と先端を少し切って調整する。先端に穴を開け、糸を通してひとまず完成とした。

「これでどうかな?」

少女は河へと竿を振り、飛んで行った針に興奮して鼻息を漏らした。満足してもらえたらしい。

「おっきいの、釣る!」

「頑張ってね」