平和を求めて
普段通りにしていたつもりなのに、ここ最近はとにかく忙しかった。
まず、新たに従者となったファラ師のため、義眼を作ろうという話が持ち上がった。彼女が目を失ったのは、クロゥレン家に貢献すべく強大な敵へ立ち向かったことが原因だ。そんな理由もあって、俺も師匠も乗り気で仕事に着手した。
しかし、ただ普通に作っただけでは面白みに欠けてしまう。何か工夫の余地は無いかと考えた末、俺達は工房近くに住む薬師に協力を仰ぎ、義眼の内部に薬剤を仕込むこととした。
結果は大成功。なかなかの作品が仕上がり、ファラ師も満足してくれた。
さて、依頼はそれだけでは終わらない。続いて俺達は薬師から、身内のために義指を作ってほしいとの依頼を受ける。薬師の孫は先日の内乱に巻き込まれ、魔獣に襲われ負傷していた。
構造としては単純なものなので、簡単に終わる仕事だ。
しかし気の毒な少年は、指を失ったことや元々抱えていた悩みから、義指の作成に前向きではなかった。精神的な問題はすぐには解決しないだろうと、俺は見込んでいたが──ミル姉はそんな甘えを許さなかった。
ミル姉は強引に少年へ迫り、抱えている問題を白状させると、最終的には魔術の指導まで請け負ってしまった。
……まあ思い悩んでいた少年が、将来のために動き出したこと自体は喜ばしい。
ここまでは良かった。
ここまでなら、俺だって苦笑い程度で話を済ませられた。
そうして指導をしつつも生活していると、ある日、特区で知り合った近衛兵が工房を訪れる。どうしたのかと問うてみると、彼はヴァーチェ伯爵家がクロゥレン家を狙っていると警告してくれた。
とはいえ、こちらに心当たりは無い。何故にと首を捻れば、昔よく俺に絡んできた侯爵家令嬢が殺されたため、その仇討ちではないかとの返答だった。
……犯人は俺達ではない。完全な誤解である。
ただそうは言っても、この状況を見過ごす訳にはいかないこともまた事実ではあった。
俺は伯爵家と接触し、彼等の内情を探ろうと決める。そうして、問題が伯爵家次男にあることを突き止めた。
彼は侯爵家令嬢と深い関係であり、彼女が死ぬ原因となった理由に執着していた。もっと言えば、彼にとって都合の良い、解り易い悪役を求めていた。
愚行を止めるため、俺は国と連携し、どうにか伯爵家を領地へ送還した。
……どたばたを経て、ようやく平和が戻って来た。
充分過ぎるくらい、やりたくもない仕事をこなした。もうそろそろ、好きなだけ創作活動に勤しんでも良い頃合いだろう。
魔核を掌で転がしながら、俺は首の骨を鳴らした。