(もう10年前……か……)

 あの後、俺は師匠に連れられてこの国……アマツキ皇国に身を寄せることになった。

 てっきり母上の父上が領主を務める地、リンゼント領に向かうと思っていたのだが、俺の消息は行方不明扱いにしておいた方が都合がよかったらしい。

(当時はなぜ……と、思っていたけど。今のこの大陸を見れば、まぁ正解だったよな……)

 皇宮から出たことのない俺は、外の世界のことを何も知らなかったのだ。

 戦線を拡大し過ぎた帝国が、大陸に多くの敵を作っていたこと。そして財政がひつぱくし、民たちに重税を課す領地が多かったこと。俺の生活はそうした多くの苦しみの上に成り立っていたことを。

 これに関して罪悪感とかは覚えていない。生まれと立場の違いの話……そう割り切っている。

 そう。だからあの日、俺と母は新皇帝の手の者に襲撃され、生き残った俺は生まれを隠して生きていくことになった。

(年々賊が増えてきているし……嫌な世の中になったもんだ)

 右目は眼帯で塞がれているため、左目だけで地面を見る。視界には2人の賊が血を流しながら地に伏せている様子が映っていた。

 この手に握る刀で急所を斬ったし、もう助からないだろう。

「おいヴィル! 1人で突っ込むなといつも言ってるだろう!」

「そうよ! 刻印術の使い手が10人くらい待ち伏せしてたら、どうするつもりだったのよ!」

 後ろから1組の男女が姿を現した。2人とも俺と同い年で、付き合いの長い武人だ。

 大柄ではつらつとした印象のある男はマサオミ。もう1人の茶髪ポニーテールはキヨカだ。

 マサオミは顔つきがいかつく、俺よりも年上に見える。

 対してキヨカは細身ではあるものの、キリっとした目つきもあって凛々しく見え、髪型と合わせて活発な印象を抱かせる外見をしていた。

「いや、さすがにそんなに刻印持ちがいれば、もっとひどいことになっていただろ……」

 俺たちは森に流れてきた賊の集まりを取り締まりに、皇都からこの地までやってきたのだ。

 大人しく捕まってくれなかったので、こうして戦闘になってしまったが。外のかんせいは静かになっているし、向こうも片づいたらしい。

 俺は両手にけんげんさせていた黒い手甲を消すと、刀も鞘に納めた。

「さぁ。ご当主に報告しなくちゃ。死体の後始末は兵士たちに任せて、皇都に戻ろう」


 国が違えば貴族の在り方も変わる。アマツキ皇国では刻印持ちの騎士……〈武人〉の運用の仕方や領主の在り方がゼルトリーク帝国と大きく異なっていた。

 帝国では刻印に目覚めた者でも、平民であれば騎士にはなれない。だが皇国ではたとえ平民であっても、実力さえ認められれば武人として生きていくことができる。

(もっとも武人に求められるものは実力だけでなく、どの家も武家として存続し続けるにはそれなり以上に努力が求められているのだが……)

 武人は民の税で生活していくぶん、数多くの義務が生じる。いざという時には民たちの矢面に立って命を懸けることも求められるのだ。

 また平民にはない特権が認められているものの、その立場に相応しくないと判断されれば、武人としての地位を剥奪される。基本的に武人には民たちの模範となり、武芸はもちろん勉学にもある程度精通していることが求められている。

 実力次第で平民でも特権階級になれる一方で、その地位を維持するには相応の努力が必要になるのだ。

 しかし一度武人と認められれば、自分を当主とする新たな武家を興すこともできる。子が刻印に目覚め、武人として認められれば、家を存続させていくことも可能なのだ。

 とはいえ皇国には武家が乱立しているわけではない。誰でも当主となって家を興せるわけではなく、新たな武家として認められるには功績が必要になる。

 それにせっかく家を興しても一族の中から犯罪者が出ればその地位を追われることになるし、三代にわたって存続させられた武家は名家と言われるくらいだ。

 マサオミとキヨカは2人とも武家の生まれだ。中でもキヨカは名家の生まれになる。

 そして俺はここではキリムネ師匠が連れてきた戦災孤児という扱いになっていた。

 扱いは平民だったものの、15歳の時に武人としての実力が認められて、それ以降こうして皇国の武人として生きている。

 ヴィルガルドという、いかにも貴族らしい響きの名は捨て、皇国ではヴィルという名で通していた。

「しかしヴィル、お前やっぱ強いよなぁ。さすがはあの【四剣崩し】キリムネ様に幼少期から師事していただけはあるってぇか……」

「でも、いくら実力に自信があるからと言って、単独先行はいただけないわ」

「……悪かったよ。あの時はあれが一番早くケリをつけられると思ったんだ」

 キリムネ師匠は、この国では伝説的な剣士だった。皇国内で名を馳せている武人の中には、キリムネ師匠の弟子も多い。

 そんな師匠だが、皇国である程度後進を育てたあと、諸国漫遊の旅に出ていた。その途中で、まだ嫁ぐ前の母上とリンゼント領で出会ったらしい。

 皇宮暮らしになったあとも縁があって母上と会う機会があり、その時に息子である俺に剣を教えてやってほしいと頼まれたと言っていた。

(たしかに帝都を出てからというもの、ずっと師匠に鍛えられていたからな……)

 帝都を出てすぐに、この国に来たわけではない。当時の帝国領はどこも争いが激しく、簡単に移動はできなかったのだ。そのためまっすぐにアマツキ皇国を目指すことができず、1年以上師匠と旅をしていた。

 その間も師匠は俺を厳しく鍛えてくれた。俺も……もうあんな思い……急に剣を向けられ、抵抗もできず大切なものを奪われるのは絶対にいやだった。

 少なくともあの時、俺に師匠と同等の力があれば、母上は殺されることもなかったのだ。

 強くなりたい動機と決意は十分だった。それに俺の刻印術は両腕に手甲を顕現させるものだが、これは腕力も上げてくれる。剣術との相性もいい。

 そうした環境も手伝い、俺は強くなるのに必死だった。

(その成果というか……帝国生まれの俺が武人になれたのは幸いだったな)

 師匠の帰国を皇国人はもろ手をあげて喜んだ。そして戦災孤児である俺を憐れむと同時に、久しぶりとなる【四剣崩し】キリムネの弟子ということで、変な注目も集めていた。

 まぁ今のところ、師匠の弟子として恥ずかしくない結果を出せているだろう。

 師匠からは俺の生まれや本当の名を言うことを固く禁じられている。理由はとても簡単だ。もしこの地に俺がいると帝国が知ったら、国家間の争いの種になりかねない。

 それに俺も自分が原因で皇国が争いに巻き込まれるなんてことはどうしても避けたい。

「しかし最近俺たちがこうして賊討伐に出ることも増えたよな。賊が皇都近くまで流れてきているんだ、国境沿いはもっと大変なんだろうが……」

「ああ。難民も多いって聞くな」

「全てはあの日……ゼルトリーク帝国が身から出たさびで崩壊したからよ。迷惑な国だわ」

「………………」

 俺は皇宮にいながら何も知らなかったのだが、10年前に帝国では大陸を揺るがす大事件が起きていた。簡単に言えば父……前皇帝が死に、新たな皇帝が誕生したのだ。

 しかしこの新たな皇帝に対し、忠誠は誓えないとはんひるがえした領主や貴族が多く、内乱に発展していった。当時の帝国はどこも財政が厳しい。また飢えに苦しむ民も多く、民衆の貴族に対する忠誠心もかなり衰退していた。

 そしてこの荒れた地を狙うものの中には、これまで帝国に苦汁を舐めさせられていた隣国もあった。それらのある国は侵攻を開始し、またある国は反乱領主や新皇帝に援助を行い、帝国はますます荒れていった。

 今は大きく3つに割れて争いは相変わらず続いている。その影響は大陸に広く現れており、アマツキ皇国にも難民や賊となった民が入ってくるようになっていた。

(弟妹たちはどうなったかな……。母方の実家がどの陣営についたか次第だろうけど……ま、俺が心配することでもないか)

 今の俺は皇国の武人だし。それに皇族の血をひいているからといって、何かするわけでもできるわけでもない。このまま一生、武人として生きていくのだ。


 皇都に戻ると、賊を討伐した報告を行う。武人としての任務を終えたので解散となったが、夕食にはまだ少し早い時間だった。

「マサオミ、キヨカ。よければこの後、道場で一汗かかないか?」

 皇都には至るところに道場がある。キヨカの家のように、歴史ある武家だと敷地内にわざわざ道場を建てているほどだ。武に打ち込む者が多いのも、アマツキ皇国の特徴だと思う。

 賊も大した相手ではなかったし、このまま試合でも……と思ったのだが、マサオミはボリボリと頭をかいた。

「わるいな。せっかくの誘いだが、今日は弟が成人を迎える日なんだ。早く帰れたし、このまま実家に向かうよ」

「そうか。それは弟を優先してくれ」

 マサオミの弟か……。武人としての才もあると聞くし、いずれ同じ任務に就く日もあるかも知れないな。

「それにこういう自由な時間を作れる機会は貴重だろ? 俺のことは気にせず、2人で楽しんでこいよ」

「ちょっとマサオミ!?

 からかうようなマサオミの視線を受けて、キヨカがわずかに頬を染める。キヨカとの付き合いも長いからな……俺とキヨカがそういう関係だというのは、マサオミは当然のように気づいていた。

「そういうことならマサオミの言葉に甘えようか」

「お、言うねぇ」

「ヴィルまで何を……」

「ん? キヨカもこの後、何か予定があるのか?」

「……ない、けど」

 恥ずかしいのか、キヨカはやや視線を下に落とす。そんなキヨカの手を引いてマサオミに別れを告げると、そのまま道場に向かって歩き出した。

 キヨカはやんわりと手を握り返してくる。

「うぅ……もしかして私たちのこと、みんな知ってるのかな……?」

「どうだろう。特に言いふらすようなことはしていないけど……幼馴染みみたいなものだし、マサオミには誤魔化せないさ」

 武人は主に〈理心館〉という広大な屋敷を中心にして動いている。ここは武人がよく出入りする屋敷であり、新たな任務をたまわる時や会合にも使われている場所だった。

 他にも俺のように平民上がりの武人が多く住んでいるが、所帯を持ったら出て行く決まりがある。その敷地内に道場はあった。ここは武人であれば、いつでも誰でも使用できる。

「さすがにこの時間だとそれなりに人がいるな……」

 道場内ではいくにんかの武人たちが木刀を振っていた。俺とキヨカは空いているスペースへ移動し、木刀を手に取る。そして自然と向かい合った。

「ルールは?」

「刻印術なしの一本勝負でどうかしら?」

「分かった、それでいい」

 俺もキヨカもこれまで何度も試合を行ってきている。事前ルールの確認もすぐに済む。

「こうして木刀を持って向き合うと、初めて会った日のことを思い出すわね」

「ああ……たしかキヨカが俺にケンカを売ってきたんだったか」

「ちがうわよ!? ただ異国人なのに、キリムネ様の弟子というだけでチヤホヤされているのが目についただけよ!?

「それ……ちがうのか……?」

 キヨカとの出会いは俺もよく覚えている。皇国に来てすぐ……まだ成人も迎えていない幼少の頃だった。

 俺の外見には皇国人にあまり見られない特徴があるし、師匠のこともあってやたらと注目を集めていた。キヨカは武人の中でも名家の生まれであり、当時はよそ者の俺が人気者みたいな扱いを受けていることに対し、子供ながら反発心のようなものを抱いていたようだ。

『キリムネ様の弟子なんだもん。異国人でもカタナを扱えるのでしょう? 私がどんなものか確かめてあげるわ!』

 そんなこんなでキヨカと試合を行うこととなった。当時の俺は同年代ならまず負けないと考えていたのだが、それは思い上がりだったとすぐに気づくことになる。

「懐かしいわね。あの時は私の圧勝だったけれど……」

「いやいや。まさか刻印術有りとは思ってなくて不意を突かれただけさ。そのあと仕切り直しの試合では俺が勝っただろ?」

「あら。そうだったかしら?」

「そこは覚えておいてくれよ……」

 初戦は俺の負けだった。キヨカは刻印術で身体能力を上げて挑んできたのだ。だがその次の試合は俺が勝った。

 それからキヨカは何かにつけて俺に絡んでくるようになり、今ではイイ関係になっているのだから、縁とは不思議なものだと思う。

「おしゃべりはこれくらいにしておきましょうか」

「ああ。……いくぞ」


 試合は3回行われた。第一試合は俺の勝ち、それにくやしがったキヨカが二回戦を希望。第二試合は俺が負けてしまった。

 こうなるとお互い白黒ハッキリつけなくては気が済まない。そうして第三試合も行い、なんとか勝利することができた。

 3回も試合を行うとさすがにそれなりに時間は過ぎている。というか賊討伐から帰ってきて連続試合なんて、かなりの運動量ではないだろうか。

 空もすっかり暗くなったところで、大衆浴場で汗を流し、そのままキヨカの家へと赴く。キヨカは成人するとすぐに実家を出て、今では1人で暮らしているのだ。

 キヨカの家では、成人後に家を継がない者はすぐに自立を促されるのだとか。そういう武人は他にも多いと聞くが、いわゆる名家と呼ばれている武家ほど多い印象がある。

 俺自身は理心館の一室に部屋を持っているが、こうしてたまにキヨカの家で厄介になっていた。とはいえ理心館はしっかりと武人を管理している。外泊時には別途許可を得なければならないし、入館記録もあるので帰りが遅くなると管理課に目をつけられてしまう。そのためキヨカの家に長居できるわけでもない……が。

「ん……っ」

 今日くらいは少しばかり遅くなってもいいだろう。お互いに食事を済ませたところで、俺はキヨカを敷布団へ押し倒し、彼女の上に覆いかぶさりながら互いに舌を絡め合わせていた。

「んむぅ……ん、んん……っ」

 キヨカと初めてキスをしたのは3ヶ月ほど前になる。ただ性行為の経験はない。キヨカはまだキスにも慣れないのか、両目をしっかりと閉じて耳まで赤く染まっていた。

 そんな彼女の頭を撫でつつ、舌先で彼女の口腔内をなぞっていく。上あごを押し込みながらスライドさせると、キヨカの舌が俺の舌の動きを止めるように絡んでくる。それを無視して今度は歯茎の裏側を舐っていく。

「んぁ……ん、ふ……」

 口腔内を舐めまわされることが恥ずかしいのか、キヨカは舌を使って抵抗するように俺の舌を絡めとってきた。そのせいでより密着して舌を擦り合わせることになっている。

 互いに唇の角度を何度も変え、息も荒くなっていく。興奮のままキヨカの唇を貪っていたが、呼吸を整えるためにゆっくりと唇の結合を解き、顔と顔の距離を離した。

「はぁ、はぁ……」

 舌と舌の間に透明な糸が引いている。キヨカはトロンとした目で俺を見つめていた。興奮が冷めない俺は、そのままやや乱暴な手つきで、服越しにキヨカの胸を両手で握る。

「んぁっ」

 皇国と帝国では文化がまったく異なっており、それは服装にも表れている。皇国では帝国の貴族令嬢が着るようなドレスは存在していない。

 礼服の類はあるが、それもきらびやかなものではなく、どちらかと言えば動きやすさに重きを置いたデザインになっている。

 キヨカも家ではやや大きめのシャツと飾り気のないスカートをはいていた。あまり色気がある恰好とは言えないが、キヨカが着ていると気にならないから不思議だ。

「ちょっとヴィル……胸、がっつきすぎだってぇ……っ」

 服越しでもしっかりとキヨカの胸の柔らかさを堪能できる。乳首があるあたりを狙って指先を立てて円形になぞると、キヨカは背中をビクリとのけぞらせた。

「んんぁ……っ! 動き……いやらしぃ……」

 濃厚なキスを繰り返し、胸を揉みしだいていると、当然ながら興奮はさらに増していく。俺は欲望のままに右手をキヨカの下腹部へとスライドさせていく。

 腹を撫で、ゆっくりとした動きでそのさらに下……キヨカの陰部へと向かった。キヨカも俺の狙いが分かったのだろう。抵抗するように俺の右手を掴んでくる。だがこれに構わず、俺は指先をスカートの中へと潜り込ませる。そして下着越しに彼女の女性器をなぞった。

「ふうぅ……っ! そ……そこ、は……」

 中指を立ててキヨカのスジを往復する。薄布一枚隔てた先にある女性器からは、しっかりと体温が感じられた。

 ある程度スライドさせたところで、彼女の最も敏感な部分の真上に指を置く。そのまま押し込み、わずかに上下させてみる。

「あぁんっ! や……そこ……だ、だめぇ……」

 キヨカの反応が可愛らしくて、ついついいじわるをしたくなってしまう。俺はクリトリスを押し込んでは円を描くようになぞり、また立てた中指を上下にスライドさせて弄り続けていた。

「はぁぁ、んっ! や、はぅんっ!? ひ……ぁ、やぁ……っ!」

 キヨカは腰をビクつかせ、俺の指の動きに合わせていちいち反応してくれた。今では下着もしっかりと濡れているし、部屋に漂うメスの香りが鼻腔を刺激してくる。

 これにたまらず、俺はいよいよ下着の中へと指を滑り込ませた。

「ひ……っ!?

 直に熱を持った女性器に触れることで、こうふんがピークに達する。既に肉棒も痛いくらいに腫れあがっている。

 指を動かす度に女性器の柔らかな肉質を感じることができた。手触りで薄い陰毛と愛液のぬめりがよく分かる。そこからさらに中指を伸ばし、スジを探るようにスライドさせる。そして目的の場所……膣口を捉えると、ゆっくりと指先をうずめていった。

「んんんん……っ! ヴィル……そこ、だめ……んっ、はうぅぁっ!?

 秘穴の奥は固く閉ざされており、第一関節までしか入らない。それに指一本だけとはいえ、かなりの締め付けだ。

 そんな狭穴をほぐすように、俺は入り口付近の膣肉をねっとりと擦っていく。最初こそ探るような手つきだったが、その動きもだんだんと速くなっていき、俺は欲望の赴くままにキヨカの女性器を摩擦していった。

「あ、ああんっ、や、はあぁっ!? んぃ、ひ、いううぅ……っ!」

 キヨカの甘い声を聞く度、全身にビリビリとした刺激を受ける。彼女は腰をくねらせ、途中から自分の左中指を噛んで声を押し殺していた。

「んん、ふ、んんっ! ん、んひゅうぅ……っ!」

 いつまでも乱れる彼女の姿を見ていたい。いや、もっと乱れるキヨカを見たい。

 だがそんな俺の欲望を食い止めるように、キヨカは右手で俺の腕を強めに掴んでくる。同時にただでさえ狭い穴が強烈に締まり、俺の中指をきつく締め付けてきた。

「んん…………っ! ~~~~……っ! ん、くぅぅ……っ」

 ビクンと背中をのけぞらせ、キヨカは両目をギュッとつむる。しばらく動かなかったが、ゆっくりと目を開けると、掴んでいた俺の腕にやや強めの握力を加えてきた。

 そのまま促されるように俺はキヨカの膣穴から指を引き抜いていく。下着の中からも手を抜くと、そこにはキヨカの愛液がべっとりと付着していた。

「はぁ、はぁ……。もう……こっちはずっと恥ずかしいんだからね……?」

「ごめんごめん。キヨカが可愛かったからつい……」

「もう……」

 仰向けで寝転ぶキヨカの股下へと移動し、俺は下着を下ろした。怒張しきった肉棒が露わになり、キヨカは両目を見開く。

 彼女の視線を受けながら、俺の肉棒はドクンと強く脈を打っていた。血管もはっきりと浮き出ており、目の前のメスに欲情しているのがまったく隠せていない。

 俺はキヨカの両足を掴むと左右に開き、肉棒を下着に付着させた。

「だ……だめ! ヴィル、それはだめだからね……!?

 女性器を包み隠す一枚の薄布。これを今すぐ剥ぎ取って、その奥にある穴に肉棒を挿入したい。オスの欲望をねじこみたい。キヨカという魅力的な女を俺のものにしたい。犯したい。

 そうした感情を肉棒に伝わらせ、俺はゆっくりとした動きで腰を前後に動かし、下着越しに肉棒でキヨカの性器を擦る。

「……ちょっとだけでも?」

「だめって言っているでしょ……! 庶民ならともかく、武家の女は結婚するまでそういうことは禁じられているんだから……!」

 そう。これが理由で、今日までキヨカとは肉体関係を持つことができなかった。

 キスや激しめのスキンシップまではいいのに、性交は絶対に許してくれないのだ。

 ここまできたら、身体を許しているようなものだと思うんだけど……キヨカの中ではハッキリとした線引きがあるようだ。

(武家全部がお堅いわけではないんだろうけど……キヨカの家は名家に数えられているもんなぁ……)

 武家で名家と呼ばれる基準は、その家が何代続いているかだ。ただ長いだけの家柄なら意味をなさないだろうけど、皇国でそうした武家はほぼ例外なくこうめいな武人を輩出している。

 皇国は帝国と比べると国土も狭く貴族も少ないが、気質的に真面目で優秀な者が多いのだ。

(この続きはキヨカと結婚するまでお預けか……)

 俺自身は皇国人として生きていくつもりだし、この地で所帯を持ちたいという希望もある。キヨカを妻に迎えたいとも思う。

 だが、そのために足りていないものが武功と金だ。キヨカをめとるには平民出身の武人では家格が釣り合わないのだ。

 皇国は帝国ほど身分制度にうるさくはないが、それでも存在しないわけではない。それに皇族家系を含め、高位身分者に対してはある意味で帝国よりも厳しい。

 また名家育ちのお嬢様を稼ぎが少ない男が娶るというのは、なんというか格好がつかない。キヨカも「嫁の引き取り手がないから、庶民出の武人に嫁いだのだ」と、変な噂を流されるかも知れない。

 プライドの問題といえばそれまでだが、とにかくお互い成人しているとはいえ、今すぐに結婚できる状況ではないのだ。

「はぁ……」

 未練がましく肉棒を下着越しの女性器に擦りつけていると、キヨカが小さく笑いながら上体を起こした。

「そんなみっともない声を出さないでよ。ほら、ヴィル……いつものように口でしてあげるから……」

 そう言うと今度はキヨカが俺を押し倒す。仰向けに寝転がったところで、キヨカは俺の肉棒を握りしめた。そのまま大きく口を開くと、ゆっくりと咥えこんでいく。

「う……」

 肉棒がキヨカの口内に包まれる。彼女の熱い舌が敏感な部分に触れ、ねっとりと絡みついてきた。

「んむぅ……ん、ちゅぷ……」

 キヨカは口をすぼめ、やや強めに唇で肉棒を締めてくる。同時にその舌先で尿道口をほじくるように責めてきた。

「くぁ……!」

 慣れない刺激に思わず腰がビクリと震えてしまう。そんな俺の反応が面白いのか、キヨカは頬を染めながらも積極的に舌を動かしてきた。

(これは……かなりやばい、な……!)

 キヨカと肉体関係がないとはいえ、これまでお互いにこうしたスキンシップは行ってきていた。その度に彼女は口でしてくれているのだが、初めこそとまどっていたものの、今では俺の肉棒の扱いも慣れたものだった。

 亀頭でキヨカの舌が与えてくる快楽に集中していたが、ここでキヨカは深く肉棒を咥えこんでくる。そして親指と中指で輪を作ると、肉棒の根元を掴んできた。しっかりと力もこもっており、剥き出しの亀頭がキヨカの口内で固定される。

「ん……じゅる、んむぅぅ……」

「ぁ……っ!?

 この状態でキヨカは顔を上下させつつ、激しく舌を動かしてきた。うごめく熱い舌が裏スジを撫で、カリ裏をねっとりとなぞってくる。

 全方位から襲いかかってくる刺激と快楽に、俺は何度も腰をくねらせていた。彼女の狭い口内では肉棒が絶え間なくビクついている。

(か、回数を重ねる度に……うまくなっている……!)

 毎度毎度、前回の口淫を超えてくるのだ。キヨカは皇国人らしく真面目な気質の持ち主だが、それがこっちの方向にも働いているのかも知れない。

 元々キヨカの身体をまさぐって興奮していたこともあり、俺の肉棒は早く果てたくてたまらないとばかりにビクンとひときわ大きく跳ねた。キヨカもいよいよその時が近いと感じ取ったのだろう。吸引しつつ、唾液で濡れた舌を亀頭に絡め、擦り合わせてくる。

 時折上目遣いで俺の表情を見てくるのだが、それがまたなんとも言えない妖艶な目をしていた。その瞳に見入っていたのも一瞬のこと。俺の意識はすぐに限界を迎えようとする肉棒へと向かう。

 熱いキヨカの口内で剥き出しになっている亀頭は、常に彼女の舌による責めを受け続けていた。逃げ場のない快楽にとうとう降参したのか、狭い口内で肉棒が激しいけいれんを起こす。熱い塊が震える肉棒を伝い、尿道口へと向かっていく。

「くぁ……!」

 そしてそのまま彼女の口内で、なんの遠慮もなくオスの欲望を吐き出した。

「んむっ!? ん、んんんん……っ! ん、ぐぅ……っ!?

 とてつもない快楽が肉棒を支配する。肉棒はキヨカの口内で跳ね回り、その度に粘度の濃い欲望をぶちまけていた。

 キヨカは喉奥まで咥えこむと、暴れる肉棒をしっかりと押さえつける。そして喉を鳴らしながら俺の吐き出した欲望を飲み込んでくれた。

「んくぅ……ん、んぐ……」

 キヨカが俺の肉棒を咥え、子種を飲み込んでくれているという光景に征服欲が満たされる。そんな彼女が愛おしくて、俺はそっと頭を撫でた。

 その間もキヨカはずっと放出される俺の精を飲み込んでいる。さらに射精を促すように、舌先で裏スジを撫で、強めに吸引してきた。

 快感の絶頂を迎えている肉棒にこの刺激はかなり効く。長い長い射精が続くが、肉棒の動きが落ち着いてからもキヨカは解放することなく、俺の亀頭を労わるように優しく舌を絡ませてきた。

「く……」

 思う存分にキヨカの口内に欲望を吐き出し終え、ようやく肉棒が少し柔らかくなったか……というタイミングで彼女はゆっくりと顔を離していく。

「ん……ん、はぁ……」

 久しぶりに外気に肉棒が触れ、ひんやりとした感触が襲いかかってきた。これまで熱を持っていただけあり、この冷気がとても心地よく感じる。

 肉棒はキヨカの唾液でしっかりと濡れていたが、吐き出したはずの精はどこにも付着していなかった。尿道に残っていた分までキヨカに搾り取られたようだ。

 そんな肉棒と俺の顔を見てキヨカは小さく笑った。

「ふふ……ヴィルのおちんぽ。満足できたみたいね?」

「あ……ああ……。ものすごく……気持ちよかった……」

 キヨカが服の乱れを直し始めたのを見て、俺も半脱ぎとなった服を正していく。

「なぁキヨカ……。俺、皇国の武人として名を上げてみせるよ。だから……それまで待っていてほしい」

 彼女を誰にも渡したくない。そんな独占欲がそのまま口から出たが、彼女は俺の正面までくると背中に腕を回して抱きしめてきた。

「私もヴィル以外の男性にこういう姿は見せたくないわ。だからがんばってくれるのはうれしいけど……きっとヴィルなら、もっと大きくなれると思う」

「もっと大きく……?」

「うん。それこそ私だけではなく、何人もの貴人を娶れるような……そんな存在に」

 皇国の貴人の一部は複数の妻を娶っている。帝国同様に一夫多妻が珍しいわけではないが、それでもお互いの家の格はついてくるものだ。

 例えば1人は名家の生まれなのに、もう1人の妻が庶民であれば、どちらにとってもよくない噂が立ちかねない。

 家柄だけで婚姻関係となったが、本当に好きなのは庶民の方だ……なんて陰口を叩かれるかも知れないし、庶民の方は性処理要員で側に置いている、なんてことを言われる可能性もある。

 そのため第三者から見ても分かりやすい理由でもない限り、複数の妻を娶る際には家格も意識したものになりがちなのだ。

 キヨカを娶り、さらに同格の名家の娘を娶るような未来は、とてもではないが想像できなかった。

「買いかぶりすぎだよ」

「あら。それくらいの気持ちと目標意識で日々を過ごしてくれないと、私を妻にするなんて夢のまた夢よ? 私、お高い女なんですからね」

 ……なるほど。言われてみればそうかも知れない。

 キヨカを妻に迎えるつもりでがんばる……というより、キヨカのような貴人を複数人娶れる武人になる、という気持ちで臨んだ方が、望む未来を手繰り寄せられるかも知れないな……。

「……分かったよ。庶民出の武人だけど……明日からはその意識で任務にまいしんしていく」

「ふふ……期待しているわよ、ヴィル」

 抱きついているキヨカの頭を撫で、顔を上げさせる。そしてそっとお互いの唇を触れ合わせたのだった。