星守とて心に闇をかかえていないはずがない。

 それがどうしたことか。

 彼女たちはイロウスになるどころか、新たな力を身にまとって戻ってきているではないか。

「うららとここみの友情を甘く見ないでよねっ!」

「うららちゃんはこれまでも、これからも、私の大切な友達だからっ!」

 がくぜんとするエヴィーナにきずなの強さを見せつける。

「くっ……しかしおまえたちだけだ! 残りの星守たちは必ずや……」

 エヴィーナは残る十六個の黒い炎の維持を優先した。

 すぐにイロウスとなった星守たちが、そのみにくい姿を現すだろう──そうなれば二人だけの星守など恐るるに足りない。

 そうわめいた──直後だった。


 十四個の黒い炎が、消えた。


「な、なぜ……っ!?

 愕然とするエヴィーナの眼前で、空間に十四個の亀裂が入る。

 ひびはすぐに大きくなり、そしてくずれ落ちる。

「みんなっ!」

 うららや心美と同様、新たなる星衣を手に入れた少女たちが姿を見せた。

「ふぅ……やっと出られましたわ」

「カエデ! サドネ、がんばった!」

のぞみ、ゆり……どうしてそんなに顔が赤いの?」

「べ、べつに! ゆりは関係ないんだから!」

「そそそそうだ! 望は全然、これっぽっちも関係ないからな!」

 少女たちはどこか達成感にあふれた──一部ではなにやら照れていたが──そんな表情だった。

「バカな……誰もイロウス化していないだとっ!?

 最悪の結果にエヴィーナが狼狽うろたえる。

 そんな彼女に、新たな力を手に入れた星守たちがようしやなくせまる。

「私たちをイロウスにしようなど、められたものだ」

「そうよ~♡ 明日あすとれんげの仲を裂くなんてむ~り♡」

「つまらないVRゲームだったわ……。こんなクソゲーさせたツケ、しっかり払ってもらうわよ?」

 じりじりとほうもうせばめられたエヴィーナが、残る二つの黒い炎をくやしげにいちべつした。

「くっ……これでは維持は不可能か……」

 エヴィーナがくちしそうに舌打ちした。

 直後、二つの黒炎はしようめつし、その中から花音と詩穂が姿を現した。

 二人ともイロウス化はしていない。

「こ……ここは……」

「私は……いったい……」

 狭間の世界からいきなり引きもどされた花音と詩穂は、事態がみ込めずに混乱する。

 それでもはっきりと分かること──それは目の前に居並ぶ星守たちの目が、これまでとは比べものにならないほど自信に満ちあふれていることだった。

「あの子たち……」

「ええ……なにかれたみたいね」

 星守たちの変化をはっきりと感じ取ったf*fフオルテシモの二人は、どこか悔しそうな、でもどこかうれしそうなみを浮かべた。

「ふふっ、やっとここまで来てくれたわね……私たちも負けていられないわ。いくわよ、詩穂!」

「ええ、花音ちゃん!」

「さあ、かくしなさいっ!」

「もう許さないからっ!」

 うららと心美がせんじんを切ってエヴィーナへとおそいかかる。

 それぞれが絶望のふちで手に入れた新たな力を手に。

 それぞれが絶望の淵で確かめた大切な想いを胸に。


「よーっし! みんな、行くよーっ!」

 みきのかけ声を合図に少女たちはやくどうした。

 自らの心の闇に打ち勝った彼女たちに、もはやおそれはなかった。


      


「くっ……ぬかったわ……」

 エヴィーナは命からがら、星守たちのついげきからげ切ることに成功していた。

 かくせいした星守の力に、今の彼女は無力だった。

 かろうじて大きな負傷はしていなかったが、逃げ落ちるために、集めておいたごまのイロウスを使い切ってしまった。

 今後の作戦に支障が出ることはけられない。

「どこかで……どこかでばんかいしなければ……」

「まったく、ひどい目にったでしゅ」

 ちゃっかりとうぼうしていたアルルがエヴィーナの前にひょっこりと姿を現す。

 その他人ひとごとじみた態度にエヴィーナがまゆをつり上げた。

「誰のせいでこんな事態になったと思ってるの……」

 そもそもはアルルが星守たちに見つかり、新型のイロウスの正体について口をすべらせたことがほつたんだ。

 もっとようしゆうとうに立ち回っていれば──エヴィーナがくちびるむ。

「な、なんでしゅか! ボクはただ……」

「うるさいちんじゆう

「その呼び方はきらいでしゅ!」

 短い手足をじたばたさせるアルルだが、もはやエヴィーナの目には映っていない。

 その目は遠く、ここにはいない誰かを夢想していた。

 自分が仕えるべきあるじおもかげを。

「必ずやぎよのままに成しげます、イリス様……」


      


「逃がしちゃったか……」

 エヴィーナが逃亡のためにばらまいたイロウスをたおし終えたみきがかたを落とす。

「けどイロウスをほうってはおけなかったし、仕方ないよ」

「ええ、街のみんなを危険にさらすわけにはいかないものね」

 すばるはるがそっとみきをフォローする。

「しっかし、あのエヴィーナがあんやくしていたなんてね……」

「これからますます、気をけなくなっちゃったわね~」

「ああ、気を引きめていかないとな」

「カエデ……サドネは……」

だいじようですわ。サドネは必ずワタクシが守ります!」

 黒幕の登場に星守たちが決意を新たにする。

 そんな少女たちを花音と詩穂が温かく見守る。

「花音ちゃん、まだあの子たちのことがたよりない?」

 何気なくたずねた詩穂に、花音はあわてたようにそっぽを向いた。

「ま、まあ、そこそこできるようになったんじゃない? けど、やっぱりまだまだね!」

「ふふっ、なおじゃないんだから……」

 そんなやり取りをしているところに、うららが近づいていった。

「あの……」

 うららはえんりよがちに、しかしぐっとおなかに力を入れて二人を見つめた。

「うらら、負けないからっ!」

 とつぜんの言葉に花音と詩穂が目を丸くする。

「星守もアイドルも……どっちも絶対、うらら負けないからっ! とっ……とにかくそれだけっ!」

 せいいっぱいの勇気をしぼったうららが、回れ右して背中を向ける。

 その後ろ姿を見つめながら、詩穂は再び言った。

「まだ……頼りない?」

 その言葉に、花音はふっと肩の力を抜いて答えた。

「まあ……今後に期待しましょ」