二章 アイドルとアイドル
ステージ上で
その人気はデビュー以来、うなぎ登りで
流星のごとく現れたニューヒロイン、それが
「全力で行くわよーっ!」
国際競技場で行われたライブは、万をゆうに
はるか遠くまで
「みんな、楽しんでるー?」
ともすればあまりの数に
「ほらほらどうしたの? もっと声出るでしょ?」
花音が観衆に発破をかける。
それに詩穂が目を細めた。
「ふふっ、花音ちゃん、楽しそう」
「楽しいに決まってるわ!」
バッと花音が
「ここにいるお客さんたちは、みーんな私たち
「うん、お客さんがいっぱい……すごく、キラキラしてるわねっ!」
感
「こんな時間がずっと続けばいいのに……」
「もう、詩穂ったら……まだ始まったばかりでしょ! これから、もっともっと盛り上げていくんだからねっ!」
その勢いに詩穂は一つ
「みんなーっ! ちゃんとついてきてねーっ!!」
「ついてこないと置いていっちゃうんだからっ!」

「お
ライブを終えた花音と詩穂は、スタッフに
まだ
「ふぅ……お疲れ様、詩穂!」
控え室で二人きりになった花音が相方をねぎらう。
すると、さっきまで
「どうしたの、詩穂?」
「ごめんね、花音ちゃん……ダンス、一カ所だけミスしちゃった」
「ミス……? あぁ、あれね」
ライブの
もともと花音はダンス、詩穂は歌の方が得意だ。
「あのくらいならカバーできるから、全然
詩穂の得意不得意なんて知り尽くした花音である。
そんなこと気にしなくてもいいと、満面の笑みで応える。
「う、うん……ありがとう……」
「それよりもラストの歌、最高だったわ!」
花音が興奮した声で身体を乗り出してきた。
「なんていうか、詩穂の歌には心があふれてるのよね……私も負けてられないわ!」
詩穂の歌声に
「うん……ありがとう……」
最高級の花音の
まだダンスのミスを気にしているのだと察した花音が、仕方ないわねと
「……詩穂?」
「えっ……」
コツン──顔を上げた詩穂の額に、自分の額をくっつけた。
「あの日の約束、覚えてる? 私が詩穂をアイドルに
詩穂はハッとしたように目を丸くした。
「……もちろん覚えてる……忘れるわけないもの」
花音の手をぎゅっと
「お
「そう……このヘアピンに
花音の手が詩穂の
「
「うん……うんっ……」
詩穂もまた、花音がつけていたヘアピンをそっとなでた。
「二人で駆け上がるわよ……どこまでもっ!」
「うんっ……花音ちゃん!」
ピピピピピ──
「なによ、もう……こんな時に……」
電話の呼び出し音に花音が口をとがらせる。
そのムスッとした顔が
『やっほ~、元気~?』
花音の耳に陽気な声が飛び込んでくる。
「…………おかけになった電話番号は現在、おつなぎできませ……」
『ちょっとちょっと、急に着信
「もう……どうしたの、
二人のマネージャー的な存在であり、
『ちょっと用があってね……詩穂もそこにいるんでしょ?」
「ええ、葵先生」
電話口に口を寄せて詩穂が答える。
「言っておくけど、もうお
『そんなんじゃないって~。とりあえず、ライブお疲れ様ってことで。二人の声が聞きたかったの』
「はぁ……。分かったわよ。それでどうしたの?」
やれやれと花音は先を
『イロウスを退治しにいって休んだ授業の補習についての相談♪』
補習という単語を耳にして、しばし花音の表情が固まった。
『やっぱり学生だから、そういうところはちゃんとしないとね~』
「…………おかけになった電話番号はたった今、使用不可能に……」
『だから着信拒否にしないでってば~!』
そんな感じで葵とじゃれ合う花音を、詩穂は

全国でも有数のお
そんな学校の登校時間ともなれば、飛び
そんな中、校門の一角に黄色い声が飛び交う人だかりがあった。
「花音様!」
「ごきげんよう、詩穂様!」
「あ、あの! 昨日のライブ行きました! とっても楽しかったですっ!」
「あの……これっ、クッキー作ってみたんです!」
「あ、
「わ、私も明日、なにか作ってきます!」
花音と詩穂の周囲に女生徒たちがひしめき合っていた。
人気絶頂のアイドル二人は、学校でも注目の的だった。
「ふふっ、いつも
「これからも
しっかりとファンサービスも忘れない二人は、一人ひとりに
「はーい、みんな、そこまでー」
どこか間延びした声が近づいてきた。
「奏乃宮の生徒は、
やってきたのは、ちょうど出勤してきた女性教師、七嶋葵だった。
ショートボブでどこか幼い容姿である。
注意された女生徒たちは、後ろ
ようやく花音と詩穂に
「ふふっ、花音ちゃんってばモテモテね。ほら、クッキーの
詩穂がちょっとイジワルっぽく微笑む。
すると花音がどことなく
「そういう詩穂だってこの前、
「部活の
なんでもないと答える詩穂にジト目の花音が
「ホントに?」
「本当に。ひょっとして私が取られちゃうって心配した?」
「べ、別に心配なんか……」
ほんのり顔を赤くした花音がそっぽを向き、そんな彼女を詩穂は微笑ましく見つめていた。
「やっほ~、お待たせ」
生徒たちを教室へ
「おはよ、葵ちゃん」
「もう、葵ちゃんじゃなくて葵先生でしょ~?」
「ふふっ、おはようございます、葵先生」
「詩穂は良い子ね~、花音も見習ってほしいわ~」
「ほっといてよ、もう……」
自分はそういうキャラじゃないの、と花音が口をとがらせる。
「そうそう、お願いがあったんだった……」
葵がショルダーバッグをごそごそとあさり、取り出したのはペンと色紙だった。
「葵先生、これって……」
「うん、サインちょーだい!」
「ちょーだいって……さっき
とことん思考回路の読めない葵に、
「ん~、まあ、サインがほしいのは本当だけど……気にしてないかなって思って」
『気にする……?』
意味が分からず首を
「昨日のダンスのミス……気にしてないかなって」
「あっ……。気づかれて……いたんですね」
予想外の耳打ちに詩穂も
「まーね~。これでも一応、あなたたちの先生だからね~」
抜けているようで大事なところでは
「詩穂のことだから変に深刻に考えてないかなーって」
「大丈夫よ。ちゃんと私がフォローしておいたから」
書き慣れた様子でサインを終えると、花音は色紙を葵へと返した。
「ん、ありがと! それじゃーねー」
受け取った葵が子供みたいにはしゃぎながら校舎へと走っていった。
「葵ちゃんってば……ホント、脳天気なんだか鋭いんだか」
「ふふっ……そこが葵先生の
「まあ、葵ちゃんのおかげで私たちもいろいろ助かってるしね」
「花音ちゃん、私たちも教室に急ぎましょう」
「そうね、トップアイドルが
こうなると、二人が交わす会話も年相応のものになるわけで──
「詩穂、今日は久しぶりにオフの日だし、放課後にどこか寄っていかない?」
「ステキね。そういえば最近、
「パンケーキ! いいわね! 私もちょうど甘いものが食べたいなって思ってたの。さすが詩穂!」
「もう、花音ちゃんってば……それじゃあ放課後。一緒に行きましょうか」
そんな

『みんな、楽しんでる?』
『ついてこないと置いてっちゃうんだからねっ!』
「あの二人、ホントにアイドルだったんだ……」
モニターにしがみつくようにしてみきが見入る。
「戦ってた時もすごかったけど……」
「歌もダンスもすごいのね……」
地下空間での花音と詩穂のことは、その場にいなかった遥香たちにも伝えられていた。
「ホント……すごいね」
「すごいなんてもんじゃないのっ!」
何気ないみきの感想にうららが
「
「でも、うららちゃんもしばらく思い出せなかったんだよね……」
「それを言っちゃダメー!」
アイドルを目指す者として、人気絶頂のアイドルの名前を思い出せなかった自分を認めたくないうららだった。
「こほん! いい機会だからみんなに
誰に
「
「煌上花音は、そのカリスマ性と驚異的運動神経によるダンスで人気を集めてるの。母親も若い
「へー、そうなんだー」
「うらら、やけに
アイドルにあまり興味があるわけでもない
「ふふん、これくらいとーぜんよ♪ あと、国枝詩穂はいわゆる
「うむ、あれはなかなかのものじゃったな」
「ええ……ワタクシも感動してしまいましたわ」
「煌上花音のダンスと国枝詩穂の歌……お
『おぉー!』
語りきったうららに自然と
「でも……そんなすごいアイドルが、どうしてイロウスと戦ってるんだろう……?」
みきがふと疑問を口にする。
「確かに……不思議だよね……」
「あの時の様子だと、以前からイロウスの相手をしてきたみたいでした……」
昴と
事情はどうであれ、花音と詩穂の二人がアイドルでありながら、同時にイロウスを
「なるほど。だがそうなると彼女たちと一度、話をしてみたいな。星守ではない彼女たちがなにを考え、なにを目的に戦っているのか……」
「でも……どこに行けば会えるのかな?」
「ライブ会場なら確実でしょうけど、会って話すのは難しいでしょうし……」
「……あ」
みきがなにかに気がついたかのように声を上げた。
「どうしたの、みき?」
「ねえ、昴ちゃん。そういえばあの二人、制服着てたよね……?」
「制服……? 言われてみれば確かにそうだったかも。どんな制服だったっけ……」
「ええっと……」
心美が
「そうそう、そんな感じのやつだったわ……」
できあがっていく絵を参考に、あんこがネット上でそれらしい制服を探し始める。
「…………あった。これね」
心美のわずかな記憶を頼りに、あんこは
「そうです! これです! さすが、あんこ
「フフッ、これくらい、簡単よ」
どれどれと星守たちが画像を
「見たことあるぞ……。確か奏乃宮女学院、かなりの名門校だったはずだ」
「う~ん……前に課外授業で行った場所の近くに校舎があったかも~?」
「れんれん先輩、あずっち先輩、それってどこにあるの!?」
しばらく
「ふふっ、うららちゃんってば、ほんっと~に
蓮華が意味ありげにニンマリと
「ち、
あせあせしながら視線を泳がせたうららが、心美の
「こ、ここみがどーしても会いたいって言ってたから、うららもつき合ってあげよっかなーって!」
「うららちゃん!?」

放課後、星守一同は奏乃宮女学院へと
あの二人はなぜ、そしてどうやってイロウスと戦っているのだろうという疑問と、テレビの中で
「ごきげんよう、また明日」
「ごきげんよう、お元気で」
「ごきげんよう、今日はこれからご予定は?」
ごきげんよう、ごきげんよう、ごきげんよう──
「……ねえここみ、ここって『ごきげんよう』って最初に言わなきゃ
「わ、私に聞かないでよう……」
心美は、
「それより……視線が痛いのう……」
「みんな、カエデみたいな
桜とサドネが
制服が違う彼女たちは完全に
奏乃宮の生徒たちが
「うぅ……
「なかなか出てこないな」
「今日はお休みなのかしら~?」
みきとゆり、蓮華も
だがそんな努力も
「仕方がない。今日は引き上げてまた後日にするか……」
明日葉がみんなに呼びかけ、引き上げようとした、その時だった。
聞き慣れた、でも決して聞きたくはない警告音が聞こえてきた。
「イロウス警報!?」
まばらだった女生徒たちが、教師に
「みきっ!」
「うんっ……! よし、みんな! とりあえず今はイロウスを倒しにいくよ!」
「あっちの商店街の方だっけ!?」
「うんっ!」
息を切らして走りながら、学園から伝えられた情報を
すでに周辺住民の避難は終わり、しんとなった商店街を
「もうすぐ……あの角を曲がった向こうが現場だよっ!」
さあ行くぞ、と少女たちが
「詩穂! こいつで最後よ!」
まさに、花音が最後のイロウスを仕留めるところであった。
人型イロウスの
「花音ちゃん、お
「詩穂こそ、ケガはなかった?」
そこで星守たちが目にしたものは、先ほどまでテレビの中で
「あれが、
「また、アタシたちより先にイロウスを……」
「それより、ねえ……警報が鳴ってからどれくらい
「まだ……五分も経ってないと思うよ……」
「それなのにもうあの二人が来ていて、しかもイロウスを倒し終わっているだなんて……」
昴と遥香もにわかには信じられなかった。
あまりにも早すぎる。
確かに二人の力量は、あの地下空間での
まるでイロウスの出現を予測し、戦闘態勢を整えていたような──
「あら、あなたたち……」
星守の存在に詩穂が気づく。
「
「なぜ……そんなに早く……?」
「真実が、微笑んでくれたの」
「なっ……! なによそれっ! うららたちには、教える気はないってわけ!?」
意味深な詩穂の言葉に、うららが
「あんたたちには関係ないでしょ? ま、一言で言えば指導者の差ってところかしら」
「私たちには
「だから、警報なんかが出る前に駆けつけられるってわけ」
「そ、そんなことが本当に可能ですの?」
「むみぃ……ミミ、よく分かんない……」
楓やミシェルが疑問を持つのも当然だった。
神樹ヶ峰女学園にもそれほどまでの技術力は、まだない。
それなのに花音と詩穂を率いている教師には、それが可能だと言っている。
「二人とも……何者なんですか……?」
みきが
「何者……か。ずいぶんと直球なのね」
「だって、星守でもないのにイロウスを
「あなたたちには関係ない。私たちがどんな力を持っていようとも、別にあなたたちと協力しようだなんて思ってないしね」
「な……なんなのよ、さっきから! うららたちがなにをしたっていうのよっ!」
花音の相変わらずの厳しい言葉に、うららが反応する。
「まあまあ、花音ちゃん。別に話してあげたっていいじゃない……私たちのことを知ってもらういい機会でもあるし」
「ま、まあ詩穂がそう言うなら、別に話してあげてもいいけど……」
花音がしぶしぶ
「
「与えられた……?」
「そう……あれは、ライブからの帰り道のことだった……」

「ふーっ! 今日もお疲れ様。詩穂の歌声、とってもキレイだったわ。お客さんたちも、とっても喜んでた」
ライブを終えて、花音はまだ興奮が抜けきらないテンションでねぎらった。
「うん……ありがとう、花音ちゃん」
一方で、それに
「……どうしたの、詩穂?」
「うん……えっとね。今日の開演前、会場の近くでイロウス警報が出たでしょ? それで、開演も一時間遅れになっちゃって……。仕方のないことだけど、イロウスがいなくなってすっかり平和になったら、お客さんたちも、もっと安心して楽しめるのかなって……」
「詩穂……」
彼女の落ち込んだ声に、花音もつられて思い
「……って、そんなこと言ってもどうしようもないよね! 私たちには、私たちのできることをやるしか……」
「……どうしようもなく、ないんじゃない……?」
「えっ……?」
「詩穂の言うとおり、私たちは私たちができることをすればいい。私たちは、歌とダンスでみんなを楽しませて、それでみんなを幸せにできる。たとえ、イロウスがいたとしても……そうでしょ?」
「花音ちゃん……」

「ライブの達成感に
「人型のイロウスに……」
「でも、その時、お二人はまだイロウスと戦う力を持っていなかったんですよね……?」
詩穂の告白にみきたちも思わず息を吞む。
「ええ、だから……」
「なによこれっ!」
「花音ちゃん、逃げて!」
「私たちは
「やがて、私たちは気を失った……イロウスに追いつかれたところまでは覚えてるけど、それからのことはよく覚えていないわ……」
花音が当時のことを思い出すかのように、少し
「でも、その時だった。気を失って、なにも見えない

『コウガミカノン、力がほしいですか?』
「力……? どういう意味……? あなたは
『ふふっ、そんな
「力……そうだ、きっと今頃、詩穂は危ない目に
『では、力がほしい……ということでよろしいですね……?』
「……ええ、もちろん……。あなたが誰かなんて関係ない。たとえ……あくまであったとしても構わない。私は……詩穂を守るためなら、誰かを守るためなら、どんな力だって迷わず受け入れる……。いいわ、私に力をちょうだい!」
『いいでしょう……その言葉、忘れないように……。

「……そうやって気がついた時には、私たちはそれまでの私たちとは決定的になにかが変わっていることに気がついた。私も、詩穂もね……」
「なんとなく、分かったんです。私たちにはイロウスを倒す力が備わったことを。そして、それをどう使えばよいのかも」
「その日、私たちは初めてイロウスを倒した。そして
自分の手をじっと見つめながら花音が語る。
「あんな
言い終えた花音は、厳しい目で星守たちをキッとにらんだ。
「そんなことが……」
花音と詩穂の思わぬ告白に、星守たちはかけるべき言葉が見つからなかった。
そして同時に、自分たちの戦いについて、
だが──
「でもでもっ! だったらひなたたちと
「そうですわ、別に敵対する必要はないのではありませんの?」
「サドネ……みんなと一緒に戦いたい……」
ひなた、楓、サドネがそう疑問に思うのも当然であった。
イロウスを倒して平和を取り
なにも争う必要などないはずだ。
「なんで……私たち星守のことを、そんなに
みきの疑問に対する花音の答えは、どこまでも厳しく、そしてシンプルなものであった。
「あなたたちを信用することができないから。ただそれだけ」
「私たちを、信用……」
投げかけられた言葉をそのまま繰り返すだけの心美を、花音はキッとにらみつけた。
「五年前にイロウスに地球を
あまりの厳しい言いぐさに思わずうららも激しく言い返してしまう。
「守れるわよっ! そもそも地球からイロウスを追い
「そうね……それは感謝してる。私も詩穂も……いいえ、きっとたくさんの人たちが感謝してる……」
「それならっ!」
「でもね」
うららの言葉を
「あの時、私たちを守ってくれなかったじゃない……それに、新型のイロウスを倒すことができないのも事実でしょ」
その言葉に、
花音が放った一言は、
「で、でもっ! あれは、うららたちだって、いきなりで
「そ、そうです! ちゃんと特訓して準備すれば……っ!」
「言い切れる? 絶対に倒せるって……」
反発した二人に花音はなおも静かに問いかける。
「それは……」
人型のイロウスを思い出すと、その不気味さと
断言したい。次は絶対に
でも──そう言い切れない弱さが、心のどこかに巣くっていた。
「私は言い切れる。絶対に倒すって。すべてを守るために……」
一握の迷いも
「ね、詩穂?」
「うん、花音ちゃん」
詩穂もまた花音の決意を
花音と一緒ならどこまでも強くなれる──そう信じているかのような目をしていた。
「分かった? だから、私たちはあなたたちと協力する気はない。星守は、もう過去の存在なの。あのイロウスを
「そんな……そこまで言わなくても……」
「そうよっ! うららたちだって、別にサボってるわけじゃないもんっ!」
心美とうららの言葉にも、花音はただ黙って二人を見つめるだけだった。
「ま、いいわ……好きにすれば。私たちは私たちのやり方でやるだけ。詩穂、行きましょ」
「ごめんなさいね。花音ちゃんも決していじわるで言ってるわけじゃないの。ただ、誰も危険な目に遭ってほしくないだけ……また、なにかあったら一緒に
背中を向けてさっさと歩き出してしまった花音を、詩穂は星守たちにお
残された星守たちは、花音に痛いところを
「きぃー! なによ、あの言い方っ! 確かに、うららたちもほんのちょ~っと、あの新型のイロウスに手こずっちゃったけど、あんな言い方しなくてもいいじゃんっ!」
「う、うららちゃん、落ち着いて……」
「ま、あの二人が言ってたことはだいたい合ってたけどね」
「ん~でも~、あんなにかわいい子でも、あんなふうに言われちゃうと、さすがのれんげもちょっとショックかな~?」
「なんにせよ、私たちの
明日葉の言葉に、少女たちは力強く
だが、悔しいのであれば、それをバネにして前を向けばいい。
彼女たちの目はすでに未来に向けられていた。
「よーっし! みんな、もっともっと頑張るよー!」
みきの言葉を合図にするかのように、彼女たちは少し明るい表情で学園へと戻っていった。

「……うららちゃん、どうかした?」
「…………」
そんなうららの様子にいち早く気がついた心美が声をかけるも、うららは相変わらず険しい顔をして黙ったままであった。
どんなときでも強気で、時には
(うららちゃん、やっぱり
うららがなにを考えているのかは、心美にもなんとなく察しはついていた。
自分たちでは歯の立たなかった新型イロウスを難なく倒すことができ、おまけに、星守は過去の存在とまで切り捨てた
うららが悔しくないはずがなかった。
星守として戦いながらアイドルを目指す、
(でも……)
そんな
なぜなら、心美には痛いほど分かってしまっていたからだ。
彼女の親友にとって、こんな時に他人から心配されることが一番イヤだということを。
そんなことは、うららのプライドが絶対に許さないということを。
「うららちゃん……大丈夫?」
「……なにが?」
案の定、うららは心美の方を振り返りもせず、ぶすっとした表情で言葉少なに
「なにがって……それは、その……」
「……だーっ! もう考えるの
うららは無理矢理ひとりで自己完結してしまったかのように、走り出してしまった。
「えぇ……待ってよ、うららちゃ~ん!」
そんな少し自分勝手なうららに、心美はいつも通り後ろを追いかけていくしかなかった。
これ以上、その話題について
(友達なんだから、悩みがあるなら相談してほしいんだけどな……)
結局その日、心美はうららが心の内に

後日、
少女たちは連れ去られている間の
「新たな手がかりが手に入った」
「手がかりって……」
「救出した子たちへの聞き取り調査の結果、みんな記憶を失う前に、ある同じものを見かけていることが判明した」
注目を集める中、風蘭が一枚のイラストをテーブルに置いた。
星守全員でそれを
そして異口同音に一言、
『……なんですか、これ?』
そこに
「
『そんな得意気に言われても……』
イラストと風蘭の顔を
まさかこれを探せというのだろうか。
この──よく分からないイラストを手がかりに。
「さあ、さっそく全員で
『やっぱり……』
勢いだけは元気な風蘭に、少女たちは深いため息をついた。
星守たちによる
港地区にはうらら、心美、ひなた、桜が
「あんなイラストだけで探せって、
「そうじゃのう……」
ゴミ箱を開けたり、
「桜ちゃんは、正体はなんだと思う? わんちゃん? クマさん?」
「ウサギであり犬であり
「ぬえ?」
「日本に古代から伝わる
「でも、御剣先生のイラストはトラさんっぽくなかったよ?」
「うーむ……では鵺ではなく、キメラかのぅ」
「きめらー?」
「キメラというのは……」
ひなたと桜の
それを横で聞きながら、うららと心美も辺りを探す。
「そんな変な動物ホントにいるの?」
「
桜が変な話を始めたせいで、心美の中で謎の動物に対するイメージが悪い方へと
「
「うららちゃん!」
自信たっぷりのうららに、心美が思わず瞳を潤ませた。
「どんな
「ありがとう、うららちゃん!」
「もう、どーんとこいってやつよ! どんなのが相手でも……」
言いかけたうららの顔が固まった。
何事かと心美が首を
「う、うらら……ちゃん?」
「……いた」
うららはそれだけ言うと、勢いよく走り出した。
「えっ……」
心美がくるりと反転して、うららの視線の先を追いかける。
そこには──
ウサギのようなイヌのようなクマのようなネコのような──やはりなんとも形容しがたい生き物が浮かんでいた。
「見つけたーっ!」
うららの大声にひなたと桜も目標の
同時に、珍獣の方も声に
「
「うむ、追いかけるぞっ!」
「逃がさないんだからーっ!」
「み、みんなにも
勢いで追いかける三人に
珍獣は妙にすばしっこく、なかなか
「このっ……ちょこまかと……」
「もーっ! おとなしくしてってばーっ!」
うららとひなたが悲鳴を上げる中、心美が
「みんながもう少しで来てくれるって!」
「どっちから来るのじゃ?」
「橋の向こうからみたい!」
心美が指差した先にはサイドブリッジ──港にかかる
「……よーし! そっちに追い込むわよっ!」
四人は三方から追い込むようにして、珍獣をサイドブリッジの方へと
橋の両側から
「やった、あっちに行った!」
そのまま反対岸へ
だがその時、反対岸からみきたちが姿を見せた。
行く手を
「さあ、もう逃げられないわよ珍獣!」
うららが通せんぼしながらじりじりと距離を詰め、圧力をかける。
すると──珍獣が
「ボクはなにもしらないでしゅ!」
「うわっ、しゃべった!?」
「おおお、落ち着け望!」
「お花さんが喋るのと全然
望やゆり、くるみがギョッとしていた。
「そんなに驚くとか
「まあ……見ようによっては
「す、昴ちゃん!?」
「ほら、なんかもふもふしてるし」
「昴、眼科に行きましょう」
「遥香ってば酷いっ!」
一部に好意を
「さあ、洗いざらい喋ってもらうわよ! あんたがなにを
あんこがぐいっと圧力をかけた──その時だった。
「や、やや……やめんかいボケェ!」