一章 かげの足音



 ほしもりかつやくにより、人類がイロウスから地球を取りもどしてしばらくがった。

 地上へ戻された神樹の力により地上のしよういつそうされ、人々が暮らせるかんきようが戻りつつある。

 それまでコロニーに生活の場を移していた人々も、五年ぶりになつかしの地球へと帰郷していた。

 れた街並みは次々と復興され、かつての地上の姿を取り戻していった。


      


「うーん、平和だね!」

 海風が気持ちよい港を散歩しながら、ほしつきみきはぐっとびをした。

 青々とした雲一つない空と、そんな青さをたっぷりと吸い込んだような水面みなものきらめきに、思わず目を細める。

「地球に帰ってきたなんて、いまだに信じられないよ」

「ええ、少し前までコロニーに住んでいたのがウソみたい」

 みきのとなりわかすばるなるはるもウンウンとうなずいていた。

 彼女たちは神樹に選ばれ、イロウスと戦う力をさずけられた星守である。

 地球を取り戻すためにイロウスと戦うことが主な使命だったが、神樹を地球に戻すことに成功したいま、イロウスはその数をぐっと減らし、わずかに残った個体が散発的に出現する程度だった。

 それも、星守であるみきたちがすぐに駆けつけて退治する。

 イロウスのきようはほとんど取り除かれたと言ってよかった。

 ゆえにこうして、立ち直りつつある街並みをながめながら散歩するゆうも生まれていた。

 今は星守クラス一同で仲良く散策中である。


 みきたち三人から少し後方にて。

「カエデ、待って! もうちょっとっ!」

 波打ちぎわのフェンスに身を乗り出しながらサドネが声を上げていた。

「サドネ、あまりはしゃぐと危ないですわよ!」

「楽しそうだからいいんじゃない?」

 せんどういんかえであせったようにサドネに駆け寄る一方、つぶざきあんこがほおをゆるませる。

「サドネ、海はじめてっ!」

「海を見て喜ぶサドネちゃんも可愛かわいいわ~♡」

「私たちも、こんなにきれいな海を見るのは本当に久しぶりだな」

 せりざわれんくすのき明日あすは、まるで子供を見守るお母さんとお父さんみたいである。

 右へ左へおおさわぎのサドネを温かく見守っていた。

「見て! なんかうごいたよっ!」

 サドネが両手をぶんぶんと振り回す。

 呼ばれたふじみやさくらみなみひなた、綿わたミシェルの三人が、サドネのりようどなりから顔を突き出して海中をのぞき込んだ。

「大きな魚じゃのう!」

「なんかひらべったーい!」

「こっち見てるよ~!」

 水面の向こうでれるきよに三人の目がくぎけになる。

「なんて名前なの?」

「うーんとね……さかな!」

「カレイかヒラメあたりかのう」

「すごいすごーい! 動いてるところ初めて見た~」

 ゆうゆうと泳ぐ姿に、サドネと一緒になってかんせいを上げていた。

「あははっ、みんなではしゃいでるよ」

「コロニーでは生きた魚には、なかなかお目にかかれないからな」

 盛り上がる四人をあまのぞみむかゆりもまた温かいまなしで見つめていた。

「まあ、はしゃいでいるのはあの四人だけじゃないけどね」

「そうだな……」

 そう言いながら視線をずらした二人の先には、

「あの水草さん……初めて見たかも……」

 サドネに負けないくらいしんけんに水面を見つめる常磐ときわくるみの姿があった。


「サドネちゃんがいると、なんか自然と優しい気持ちになれちゃうんだよね……」

 じやにはしゃぐサドネと、彼女を見守る星守たち──そんな平和な様子に、みきも気づけばがおになっていた。

「そういえば……うららとここは?」

 見当たらない二人に昴が辺りを見回す。

「……あ、いたわ!」

 遥香が指差した方向に、二人の姿があった。

 固まって散歩していたみきたちよりも、かなり後方を歩いていた。

「だからね、アイドルたるもの、いついかなる時も周りの視線を気にしなくちゃいけないのよ!」

「でも、うららちゃん……アイドルじゃないよね……?」

「いいの! いつかアイドルになった時のための練習なの!」

 フフンと得意げなはすうららと困り顔のあさ心美である。

 なぜ二人が大きくおくれているかというと──

「うららちゃん……その歩き方、つらくないの……?」

「ぜーんぜんっ!」

 うららがファッションショーのモデルみたく、一歩をみ出すごとに細かくポーズを決めていて、それに心美がつきあっているからだった。