序章
遠く
光のカーテンの向こう側で、何百何千という人々が待っている。
今か今かと待ちわびている。
期待と興奮をはらんだ
「はあぁ……いよいよね……」
ステージの
頭の中にまで
ぎゅっと
(これから歌うんだ……あの光の中で……)
考えるだけでものすごくワクワクして、でも、ものすごく
光と闇が入り交じる中に立つ
「
おまじないのように何度も
大丈夫、大丈夫、大丈夫──
「どうしたの、詩穂?」
トンッと背中をたたかれ、詩穂は我に返った。
「か、
「ひょっとして
「うん、分かってる……つもりなんだけど……」
頭では理解していても心が従ってくれない──詩穂の右手は震えたままだ。
「もう、詩穂ったら……ほら」
花音は詩穂の正面に回ると、不安に
「絶対に大丈夫。私が言うんだから
花音が
まるで泣きじゃくる子供をあやすように、何度も何度も。
「…………ね?」
ニコッと笑った花音を前に、詩穂の手の震えはいつの間にか消えていた。
「……ありがとう、花音ちゃん」
「ふふっ……どういたしまして」
花音は安心したように詩穂の手を放すと、詩穂が見つめていた先──光あふれるステージの方に向き直った。
その横顔を詩穂がそっと
自分に微笑んでいた花音とは違う、
不安に震えていた自分と、なんら怖がる様子のない花音。
そんな花音が
「……ん?」
気づけば花音に逆に見つめ返されていた。
詩穂は照れたように視線を外す。
少しの
「……ありがとう、花音ちゃん」
「もう、それはさっき聞いて……」
「ううん、さっきのことじゃないの」
不思議そうに首を
「私は歌が好き。歌うのが大好き。でも……ずっとひとりで歌ってきた。
自分に自信がなくて、誰かに聞いてもらうなんて思いもしなかった。
ずっとそうだった。
だけど──
「花音ちゃんが私に手を差し
詩穂は両手で花音の手を握った。
「だから……ありがとう、花音ちゃん。こんな私と
呟く詩穂にしばらくキョトンとしていた花音は、
「…………なーに言ってるのよ」
軽く微笑んで、自らの額を彼女の額にコツンと当てた。
「詩穂のためだけじゃない。詩穂の歌を
「花音ちゃん……」
「だから、詩穂がここにいる理由の半分は私のワガママみたいなものよ。そんなふうに自分で全部を背負い込まないで」
花音の手がそっと詩穂の
アルファベットのFをかたどったヘアピンをそっとなでた。
「約束したでしょう? 私たちは二人でトップを目指すって。二人で羽ばたくんだって」
そこには同じ、Fをかたどったヘアピンがあった。
「うん……うん……」
どこまでも自分を許容して、
「ありがとう……本当に……」
「もうっ、そういうのはこのステージが成功してからでいいの!」
「わっ、あいたた……」
やがてどちらからともなく、クスッと笑みをこぼす。
「……じゃ、行くわよ」
「うんっ!」
花音と詩穂が
暗いステージの袖から、光り輝く
『それではご