ミツムネは俺に馬乗りになると、さらに口端をゆがめる。

「お前。元いじめられっこだろ」

「え?」

「やっぱりな。オレはよ。いじめられっこってやつが嫌いなんだ」

「……あ、あんたは何を言ってるんだ?」

「お前みたいな、どカスを見ると、無性に殴りたくなる。子どもの頃からな。……なのによ、殴られたカスどもは親だの、先公だの、教育委員会だのをわんさか味方につけて、オレのことをこぞって頭がおかしいだの、家庭環境が悪いだの、挙げ句病気だのと言いだす始末だ。オレはタイマンをしたかっただけなのによ。世の中、ダッせぇ奴らばかりだ」

 ヒュッと風切り音が鳴る。ミツムネの拳が俺の鼻先で止まった。拳速が速すぎて、仰け反ることもできない。野生の獣のような目を見て、俺はようやく思い出した。

 ミツムネの正体──さなみつむねのことを……。

 二年前、ネット配信限定で「日本一の不良を決める」というコンセプトで、ある格闘興行番組が始まった。その名は『リビング・ウォーリア』。過激で、ときに凄惨なシーンすら映すことも少なくなかった番組は、社会現象になるほどの超人気番組にのし上がっていった。

 その元人気バトラーの名前が真田三宗だ。

 番組内ではもっとも日本一の不良に近い男と紹介され、一躍スターダムにのし上がっていったが、一方でそのバトルスタイルは残忍極まりないものだった。何人ものバトラーを病院送りにし、さらにSNSなどに投稿した悪びれることのない言動が物議を醸し出した。しかし逆にそれがカルト的な人気を生み出し、結果多くのファンを獲得していった。

 一方で番組は三宗に対して、自重を促したのだが、三宗はことごとく無視。

 結局、あと一歩で日本一というところで、番組から追放されてしまうが、三宗がいなくなった『リビング・ウォーリア』の視聴回数は激減。社会問題として取り沙汰されることもしばしばだった番組は、結局一年足らずで打ちきりとなってしまった。

 そのミツムネ・サナダが今俺の前にいる。容貌は変わっているが、間違いないだろう。

「いつまでもビビってんじゃねぇよ。自分のことは自分の力で解決しろ。……男ならな」

「狂ってる……」

「あん?」

「な、なあ、ミツムネ。他の勇者も聞いてくれ。逃げよう。ここは狂ってる。わざわざしてきた人間を使えないからって、なんの責任もとらず追い出そうとしてるんだぞ。そんな帝国、信用できないだろう。お前たちだっていずれ────」

 突然、ミツムネは俺の頬を張る。

「黙れよ、カス! ああ……。ハズレ勇者とか言うんだっけか? まったく……、オレまで巻き込むんじゃねぇよ」

「ボクも、そこの入れ墨のお兄さんと同意見かな。そもそも逃げるたって、どこに逃げるのさ」

 聞こえてきたのは「ショウ」とだけ名乗った子どもの声だった。

 皆がミツムネの迫力に圧倒される中、一人ヘラヘラと笑っている。

 ショウのギフトは『ジャンプ』。クラスは『竜騎士』だ。こちらも『暗黒騎士』の次ぐらいにレアリティの高いクラスらしい。

 最後に俺はいちの望みをかけて、オタク系の中年と目を合わせたが、すぐに逸らされてしまう。

 俺が他の勇者の説得に失敗したのを見た後、ミツムネは皇帝のほうに振り返った。

「……おい。そこのエラそうなおっさん」

「お、おっさん……」

「ギフトってのはどうやって使うんだ」

「ぎ、ギフトは勇者専用の能力だ。余も詳しくは知らぬ。ただ御心のままに念じられよ」

 ミツムネはおもむろに手をかざした。そう。魔法を使うみたいに。

 すると、小さく黒い電撃のようなものが走ったように見えた。

「だいたいわかったぜ。この頭の中に浮かんだ文字に、スイッチを入れるような感覚だな」

「おお! 勇者殿は既にギフトを使いこなしておられるというのか」

 皇帝が身を乗り出す中、俺は必死に訴えかけた。

「おい。やめろ。嘘だよな!」

「黙れ、どカス。……お前も勇者の端くれだろ? だったら防いでみろよ」


 あんこく……。


 次の瞬間、ミツムネの手から黒い泥のような奔流が放たれる。

 俺に防御するすべも、道具もない。俺のギフト『おもいだす』が発動することもなかった。

 ただ俺は暗黒の中に飲み込まれていく。真っ暗な闇の中で、生きる気力を奪われ、腹一杯になるまで絶望を呑まされる。身も心もバラバラになり、ひたすら暗闇の中で自分が分解されていくような感覚を味わった。

 これが〝死〟か……。

 そう思ったとき、俺は生きることを諦めるしかなかった。


 ◆◇◆◇◆


 プツンと俺の中で何かが繋がった瞬間、意識が戻った感覚を感じた。

 俺は特に慌てる必要もないのに、大きく息を吸って上半身を起こす。たちまち鼻をき、喉の奥へと流れ込んできたのは、人糞と腐った生き物を混ぜたような臭い。いや、それ以上の汚臭だ。

 とにかく形容しがたい臭いに鼻を摘まむと、今度は頭をしたたかに打ち付ける。

 俺が目覚めたのはベッド上だった。それも格安宿泊施設にあるような四段ベッドの二段目。ベッドとベッドの間は狭く、ちょっと背筋を伸ばしただけでひたいが当たる。腹にかかっていた薄い布団は黄ばんでいた。

「ここは?」

「気が付いたかい」

 しゃがれた老婆のような声が聞こえて、振り返る。

 すると、本当に毒沼のほとりに住む魔女みたいな婆さんが立っていた。

「ようこそ、ハズレ勇者殿。『勇者の墓場』へ」

 そう言うと、老婆は「ひょひょひょ」と気味悪い声を上げて、笑った。




「俺、死んだんじゃないのか?」

 慌てて自分の身体をまさぐってみると、確かに感触を感じる。

 ミツムネに殴られた傷も癒やされ、腫れも引いていた。

「あんたがいた世界はどうか知らないけど、こっちの世界にはスキルや魔法って便利なもんがあるんだ。剣でられたぐらいじゃ、死にゃしないよ。まあ、だからこそまともに死ねないんだけどね、ひっひっひっ」

 笑ったのは老婆だ。粗末な抹茶色のローブに、シミだらけの大きな鉤鼻。ローブから出た手は、節くれ立ってまるで骸骨のようだった。

「お婆さんが手当を? お礼が遅くなってすみません。助けてくれてありがとうございます」

「礼なんていいよ。あたしゃ、あんたの袖の下が欲しいだけさね」

「袖の下?」

 賄賂ってことか。反射的にポケットをまさぐると、五枚の銀貨が入っていた。

 この世界の貨幣だろうか。だが、なんでこんなものが入っているのか、さっぱりわからない。

 ぼんやりしていると、老婆はその内の二枚を俺の手の平から拾い上げた。

「もらっとくよ」

「あ。ちょっ!」

「なんだい? 文句あんのかい? あたしゃ、あんたを助けた。そしてここに二日も泊めた。この二枚の銀貨は宿代だ」

「慈善事業じゃないのかよ」

「何を甘ったれたことを言ってるんだい? お前たちみたいなハズレ勇者を野垂れ死ぬ前に拾ってやってるんだ。あたしゃ、そんなお前さんらを格安で泊めてやってるんだよ。もっとありがたく思ってほしいもんだねぇ。……ん? おい! お前! いったい、いつまで寝てるんだい。とっとと仕事に行きな! 宿代を払えないなら、出ていってもらうからね」

 横で寝ていた人間の尻を叩く。「すみません」といって飛び起きると、宿房から出ていった。

 俺は周りを見る。空気も悪いが、雰囲気も最悪だ。

 皆、疲れた顔をして、泥のように眠っている。夢でうなされ、泣いている者もいた。

 俺のように黒髪、黒目の日本人らしき者もいれば、青い目をした人間もいる。

「ここはあんたみたいに勇者と認められず、帝宮から追放された者たちの掃きだめさ。さあ、もうあんたが置かれた立場は理解できたろ? ならとっとと仕事に行くんだね」

「仕事って……。何をすれば」

「決まってる。冒険者さ。それとも内臓でも売るかい、あんた?」

「内臓って……。ま、待ってください。いきなりそんなことを言われても」

 既に俺は二日間ここで寝て暮らし、二枚の銀貨を取られた。

 残りは三枚。稼ぎがなければ、あと三日でここから出ていかなければならない。

 たぶん『勇者の墓場』はハズレ勇者の期間限定のセーフティーネットだ。

 異世界の治安や、人の倫理観がどれだけ成熟しているかわからないが、俺が住んでいた日本よりいいという保証はない。内臓云々という話も決して嘘ではないだろう。そうじゃなかったら、こんな掃きだめに、人間が何人も住んではいない。

「な、なら……。元の世界に帰してください」

「ない! そんな方法はないよ」

「勝手に召喚しておいて、それはないだろう」

「文句を言う相手を間違っちゃいないかい? そもそもあんた、元の世界に帰りたいって本当に思っているのかい?」

 改めて問われて、俺は答えられなかった。

 家に帰ったところで、またニートに逆戻り。いや、その生活が保障されているかもあやしい。

 今頃、俺がいなくなったことによって家族は心配するよりも、ホッとしていることだろう。

 頼るべき友人も、親戚も、同僚もいない。まともな職にだって就けるとは思えない。

 そういう意味では、俺が元いた世界も、今いる世界も状況として大して変わりないのかもしれない。

 そして、どっちに逆転の目があるかといえば考えるまでもなかった……。


 ◆◇◆◇◆


 冒険者になる手続きはあっさり済んでしまった。

 何か試験があるわけでもない。『勇者の墓場』の管理人婆さんからもらった紹介状を渡し、自分の名前を書いただけで、簡単にライセンスが発給され、初のライセンス支給ということで特典として回復薬をもらった。ただしライセンス発行料として銀貨一枚取られてしまったが……。

 これで俺が持っている全財産は、銀貨二枚に、着ていた服と交換した革の胸当てと錆びた剣だけ。

 装備からは血の臭いがする。おそらく亡くなったハズレ勇者が着ていたものだろう。

 着ている今このときですら、薄ら寒く感じる。まるで呪いの装備だ。でも贅沢など言ってられない。

 なんとしても、俺は生き延びてやる。

 この異世界ジオラントで……。




 冒険者としての初陣は、ゴブリン退治に決まった。

 帝都北の森に棲みついたゴブリンを掃討するという、初心者向きのクエストだ。

 報酬は安いが、達成すればしばらく『勇者の墓場』から出ていかなくてすむ。

 管理人の話では、冒険者はハイリスクな分、リターンも大きいらしい。異世界で一発逆転を狙いたい俺としては、打ってつけというわけだ。

 帝都を出て数時間後、もらった地図を頼りにくだんの森にたどり着いた。

 森の中は黒い霧のようなものに覆われている。しようというそうだ。

 説明してもらったギルドの受付嬢曰く、この世界の空気の中には『魔素マナ』が含まれている。この世界の人間は魔素を吸うことによって、俺が魔法と呼んでいた『スキル』というものが使えるようになるらしい。ちなみにその上位スキルが、異世界から召喚された勇者だけが使える『ギフト』なのだそうだ。

 しかし、魔素の恩恵を受けるのは何も人間だけじゃない。魔素は動物、植物、果ては土地の神にすら影響を与えるという。特に濃い魔素の溜まりのことを瘴気といい、その力はときに空間そのものを歪ませて、迷宮を作り出す。それを「ダンジョン」とこの世界ではいうそうだ。

 時間が経てば自然に消えるらしいが、ダンジョンは魔物を生み出す。

 冒険者たちは日々、そうした魔物たちを討伐し、その報酬やドロップする魔獣の素材などを売って、日銭を稼いでいるのだという。

「いた」

 獣道すらない森の中を進むことおよそ一時間。ついに俺はゴブリンを見つけた。

 小男で頭が異様にでかく、耳も長い。瘴気でよく見えないが、ギルドで聞いた特徴と一致する。

 ゴブリンは耳が利くと聞いたが、向こうはまだ俺に気づいていないらしい。おそらく近くに沢があるおかげで、俺の足音が聞き取りづらくなっているのだろう。

 相手は一匹。周囲をうかがったが、仲間の姿はない。チャンスだ。

 茂みにひそみながら、ゆっくりとゴブリンの背後に回る。すると手が見えた。木で作った粗末な棍棒を握っている。……あれに当たったらどうなる? 骨ぐらい折れるだろうか。

 大きく深呼吸し、ざらついた柄を強く握りしめた。

(いくぞ!)

 俺はゆっくりと茂みから出ると、剣を大きく上段に構えた。

 パキッ!

 枯れ木を踏んでしまった。

 ゴブリンは振り返る。そのまま振り下ろせばいいものの、俺は一瞬たじろいでしまった。

 前に出した足を後ろに引く。すると、枯れ草に足を取られ、転倒した。

「しまった!」

 いつか感じた死の恐怖が蘇り、一瞬で俺の身体は支配される。

『自分のことは自分の力で解決しろ』

 ふとミツムネの顔が浮かんだとき、カッと頭が沸騰した。闘志が蘇り、それまで動かなかった身体が嘘みたいに動き始める。今一度、持っていた剣を握りしめ、がむしゃらに突き出す。すると、思いの外強い感触があった。

 恐る恐る顔を上げる。ゴブリンの胸に俺の剣が刺さっていた。

『ぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!

 ゴブリンはそのまま手から棍棒を取り落とす。俺が剣を抜くと、そのまま横に倒れた。

 ピクリともしないと思ったら、肉体は消滅し、小さな石だけになる。

 拾い上げてみると、黒光りした宝石だった。

「ギルドで説明を聞いた魔結晶だな」

 ギルドに持ち込むとお金になるらしい。当然、拾って回収しておく。

 小さなポシェットの中に入れると、俺は尻餅をついた。ホッとしたら身体の力が抜けたのだ。

 手を見ると震えている。ゴブリンを刺したあの感触が残っていた。

(やった! 俺、クエストをクリアしたんだ)

 喜びに打ち震える。今日の戦いはもはや博打みたいなものだ。運の勝利と言っていい。

 だけど俺は人生の博打に打ち勝った。やれる。……異世界でやり直せる。

 ドゥン……。

 突如、森に重たい音が響く。胃の底まで震える音に、初勝利の喜びは霧散した。

 再び剣を構え、足音の方向を探るが、木に反響して判別がつかない。

 そのとき、木々が倒れる音がした。そのすきから大きな足が見える。

 恐る恐る顔を上げると、一つ目のものが俺をにらんでいた。

「あれは……。もしかしてトロルか」

 ギルドではこう説明された。ダンジョン化した地形には必ず、ボスキャラがいると。

 この森で確認されているボスは、トロル。一つ目の巨人で発見したらすぐ逃げろと言われた。

 俺は素直に背を向けて逃げ出す。あんな化け物に勝てるわけがない。

 だが、絶望は続く。別方向からも同じ音がしたのだ。

 同じ種類のトロルだった。

「夢でも見てるのか。二匹どころか、五匹もいるじゃないか」

 五匹のトロルが俺を包囲するように近づいてくる。俺と目が合うなり走り始めた。

「どうしてトロルが……」

 一つ心当たりがあるとすれば、ゴブリンの断末魔だ。

 俺が中途半端に攻撃したばっかりに、仲間を呼ぶ余力を与えてしまったのかもしれない。

 そして俺は向かってきたトロルに為す術なく撥ねられた。


 ◆◇◆◇◆  そして冒頭に至る……  ◆◇◆◇◆


 トロルに跳ねられながら、俺はそれまでの経緯を思い出す。

 つまり走馬灯というヤツだろう。なに一ついいことのない、短い異世界生活だった。

 結局、俺は勇者になれず、ハズレ勇者が関の山らしい。

 別にヒーロー願望があったわけじゃない。ただ今の自分から変わることができれば、何者でも良かったのだ。ついに俺は死ぬ。もうそれでいいのかもしれない。

 身体がバラバラになりそうな痛みが襲う。

 衝撃が頭を貫通し、頭蓋の中で脳がシャッフルされる。

 死を覚悟した瞬間、空間が広がったような妙な意識が生まれた。

 トロルに囲まれ、黒い瘴気が立ちこめる背景が一変し、どこかの建物の前に俺は立っていた。

(城……)

 崩れた居城……。その中で激しくつば迫り合いをしていたのは、二人のつわものだ。

 目で追えないスピードで動き回り、互いの攻撃をブロックした瞬間、暴風が吹き荒れる。

 一人は人間。もう一人は背中にまがまがしい翼を伸ばし、頭から角を生やした異形の悪魔だった。

 二人の戦いは、もはや神と悪魔のそれを思わせる。

 俺はただただその戦いを、目に焼き付けながらも、一つのことを理解していた。

「あの人間……。あれは俺だ」

 直後、目の前が真っ白になる。

 浮かんできたのは、文字だ。

『前世の記憶を思い出したことを確認しました』

『『おもいだす』レベル1になりました。スキルツリーが解除されます』

『[魔法効果][知識][魔法]を獲得しました』

『[魔法効果]レベル1になりました。魔法の効果が3%上昇します』

『[知識]レベル1になりました。〈賢者の記憶〉を獲得しました』

『[魔法]レベル1になりました。〈魔法の刃〉を獲得しました』

『〈賢者の記憶〉の実績が解除されました』

『クラス【大賢者】を獲得。【大賢者】の固有スキルの獲得に成功しました』

『固有スキル【隕石落としメテオラ】を獲得しました』

『固有スキル【緊急離脱エマージエンシー】を獲得しました』

『呼吸、脈拍の乱れから危機状態にあると判断。また周囲に敵性反応を確認しました』

『固有スキル【隕石落としメテオラ】の発動条件を満たしています』

『発動しますか? Y/N』


 俺は迷わなかった。もはやその時間も、状況を理解している暇などなかったからだ。

 そうして俺は選択した。

「YES!」

『広域せんめつ魔法【隕石落としメテオラ】の発動が承認されました。カウント開始します。3、2、1』


 ゼロ発動……。


 赤い剣閃のようなものが、空を大きく横切っていった。

 続いて聞こえてきたのはごうおんだ。それを聞いて、寒々しい風を感じた魔獣たちが空を見上げる。

 天が光っていた。それは星の瞬きのように見えたが、輝きが違う。

 どれも赤く光り輝き、星というよりは花火の明るさに近い。

 しかし、徐々にその光の大きさは度を超えていった。

 トロルたちが騒ぎ出す。本能的に危機を察したのかもしれない。持っていた棍棒を放り投げ、再び森の奥へと逃げていく。

 もう遅い。

 広域殲滅魔法は完全に起動した。

 あとは十キロ範囲にあるもの全てを根絶やしにするだけだ。


 ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!!!


 巨大な隕石がまさしく雨あられと大地に降り注ぐ。

 トロルは口を開けて吠えたが、轟音と隕石の衝撃の中に消えていった。