「悪くない」
「そいつは期待しちまうな」
息を吸う音すら聞こえる至近距離で、互いに武器が使えない俺たち。考えることは同じだった。
ぞぶり。と。互いの歯が、肩の肉を
散々色んな命を食ってきた俺だが、それでも食われることに慣れちゃいない。
口に入った肉片を飲み下し、吼える。
「らぁぁぁぁぁぁッ!!」
全力の
「はははは、狼への理解の
腹に馬鹿みたいにデカい剣が刺さっているくせに、狼男は笑う。
「同類だってか?」
「まさしく同類だ。どうだ、頭を垂れて
「見えてる
狼男に刺さるツヴァイハンダーをずるりと引き抜く。刀身の中ほどは
「残念だ。次はこのような小勢ではなく、より大きな戦場で
「次なんてねぇよ」
振り抜く切っ先は、首を
変身を解いたのか。四つ足の狼が、くるりと体の向きを変えて走り去っていく。
オオオオォォォォン……。
オオォォォォォォォン……。
逃げる狼男の
現れるときの
残されたのはなぎ倒された草原、コボルトたちの死体、そして
今回ばかりは俺も
「やるじゃねえか」
「あ~~~」
仰向けのまま変な声を出している。生きてはいるようだ。
「
「どどどおぐにぢが」
「何言ってんだお前」
狼男の方が人間語
「喉の奥に血が?」
スイがしゃがんでヒルネの顔を
「よくわかったな」
「なんとなくね。喉に血って、仰向けだからじゃない?」
ヒルネがぴょこりと体を起こすと、鼻血がつーっと垂れた。
「あ、なおりましたー!」
「お前、馬鹿だろ」
顔面に強烈なのを
「で、お嬢様はどうなってるやら」
「一番
「おう、歩けるのか。骨折で熱出てんな、顔赤いぞ」
おでこに手を当てるまでもない。
「ナガさんはそれどころじゃないでしょう」
と、言われても
「あれ? 傷ふさがってない?」
「お、マジ?」
しっかし、そんなレベルの負傷じゃなかった気がするんだが。意を決して傷口を見た。
「なんだこれ!?」
「もしかして俺、人間やめた?」
「もとからやめてたけど、方向性変わってきたね」
みんなもドン引きだ。
これが世界樹の苗ってやつなのか? 名前の割に神聖さとかミリも感じねえし、寄生虫みたいな生態してるし、ほんとロクでもねぇな。いったいどこで寄生されたのやら。
「たまには日の光にあてたりした方がいいのか……?」
「心配するところ、
それもそうだ。なんで寄生虫の健康を気にしなきゃいけないんだ。
「その、なんていうか。本当に大丈夫、ですか?」
ヒルネが
「正直わかんねぇな」
「そんなぁ」
泣きそうな顔すんな。まだ出会ってから日も浅いだろうが。
勝手に他の生き物の体に
人間もモンスターも強化する世界樹の苗。モンスター同士の世界のダンジョンで、生態系に大きな変化が起きていること。知性のあるモンスターが地上を目指していること。
どれだけ広大かわからないこの階層のモンスターが一個の軍に
考えなければいけないことが多すぎる。そして、そのどれもが俺たちだけの手には余る。
「山里ォ!」
「はいはい、聞こえてるぞ」
「全員無事か?」
「細かい傷は
俺に自分の心配をしろと言う割に、自分の怪我を
「うちの子に
「流石に
何はともあれ、俺たちは全員無事で生き残ったようだ。
:笑うと歯が真っ赤でこわひ……
:ゴブリンさん同士の共食い怖すぎた
:家の近くにダンジョンの入り口あるから、今すげえ不安
:ゴブリンさんの体大丈夫か?
:理不尽で草
:これ、勝ったってことでええんか?
終わったと判断したドローンが近づいてくる。今となっては見慣れた、戦闘の決着を告げる景色だ。
「帰ろう、地上に」
スイの言葉に、全員が