三章
地下二五層と二六層には
「めっちゃ晴れてますわー……」
ヒルネがぽかんと口を開けて空を見上げる。
広がる青空、中天を
「階層降りたら、斥候は
「あ、すいません」
気持ちはわかる。地下二五層までは、屋内だろうが屋外だろうがずっと
この階層の地理的な
「あそこの集落に、採取物を預かってくださるパーティーがいるようです。ビーコンを立ててくださっています。
「わかった。ヒルネ、俺と先行するぞ。スイとトウカは、俺たちが
スイとトウカは理解していないながらも、
ヒルネと二人きりで、小走りで先行する。いくぶんか距離をとれたところで、ドローンから取り出した
「何してんですか?」
「二本の目印を作って、その間に
「なるほどですなー」
草を束ねて先端を結ぶ。単純な足
「なんでわざわざこんなモン作るのかっていうとな。この階層で出るのはコボルトとワーウルフなんだよ」
「ワーウルフって
「コボルトもワーウルフも、移動は四足歩行だ。あと、あいつら地味に知能が高い。過去に
「うわぁ、斥候泣かせですわー」
やつらは草に
ところ変われば、同じモンスターでも
:これ全探索者がやったら、この階層くっそ楽になりそう
多摩支部:探索者が仕掛けた罠の目印用の資材と、その周知の準備をします。
:秒で公式反応してんの草原生える
:腰痛くなりそう(三十路並感)
慣れれば簡単なもんよ。ガキの
「ヒルネ。斥候に大事な技能ってのは三つある」
「うす」
「単独で生きて帰ること。
「……はい」
ちまちまと草を結んでいく。地味だ。だが、この地味な作業が斥候の仕事だ。
「でも、ナガさんって知識すげー
「……ダンジョンに関係しない分のは必要ねぇんだ」
一〇〇メートルくらいは草の罠を敷いただろうか。いったん槍を立てて小休止する。
実に面倒くせえよな。これだから斥候は
「草結ぶだけなのにめっちゃ
手をぷらぷらと振りながら、後ろを振り返るヒルネを見た。こいつに経験を積ませてやらないとな。
本当に
「腰は痛くないか?」
「全然平気です!」
「若いな」
「ナガさんも体は若いじゃないですかー」
若いな、なんてつい言ってしまったが、腰が痛くない理由は他にあるだろう。シンプルに、
「それにしても、異様に静かだな。不自然な草の
「先行のパーティーが
「それにしちゃ血の匂いがしなすぎる。もっと五感全部を使え」
「すんません」
ダンジョンは広い。この階層にしたって、横へ横へと移動した場合、どこまで続いているのか見当もつかない。モンスターに意思がある以上は、好き勝手に動いた結果、たまたまここが空白地帯になる可能性もゼロじゃないが……。
「ちょっと危険な感じがするな。荷物預ける予定のパーティーと情報
「おけです!」
飛び出す小さな背中を見送る。足が草に
天才、なんだろうな。
ヒルネは斥候の才能を持っているが、経験がモノをいう斥候という業種だからこそ、才能に気づけていない感じがする。
一人でチマチマと草結びの続きをしていると、スイとトウカが追い付いてきた。
「ヒルネは
「いんや、合流予定のパーティーへの伝令だな」
「メッセージ機能でも使えばいいのに」
「メッセージな。なぁ、そのメッセージ機能ってどこまで信用できるんだ? 例えばだが、スマートウォッチを
「どうなるって……ふつうは他の人じゃ使えな……!?」
スイは息をのんだ。
「気づいたか。地下二五層には、ワーウルフが出る」
そのとき、集落の方から大声を出しながら集団が走って来た。
「「「「「大変ですー!」」」」」
視線をやると、五人のヒルネがいた。全く同じ顔、全く同じ装備。
ワーウルフ。人狼。
人と
「ナガさん、大変で」「人狼ですよ人狼!」「私が増えちゃった!」「さすがに本物わかりますよね!?」「私が本物ですー」「ごめんなさい、こんなことに」「集落もすごいことになってます!」「助けてくださいー!」
うるっせえ。要するに人狼ゲームの始まりってことだ。
「ど、どういたしますか、ナガさん?」
トウカも
「定番の解決方法があってな」
「はい」
「全員
「えーと、
「おう」
「ダメに決まってるでしょ!」
「まあいいさ。こういうことがあるから、斥候が単独で先行するんだ。
「それはそうだけど……どうやって見破るの?」
「普通は質問を重ねて、本人っぽさで判定する感じだな。だが、ドローンの映像でどうにかならないか?」
「確かに!」
「おう、お前ら全員五メートルはあけて並べ」
「はーい」「はい」「すんません、本当に」「ごめんなさい」「はいー」
「そんで、正座しろ」
見破った