間章:卒 倒 (Side:アンジェラ)
これで食材は確保できた。あとは適当に調理すれば……。
「アンジェラ! 何をやってるの! 早く作りなさい!」
「国王陛下が待っているんだぞ! いつまでぼんやりするつもりだ!」
お母様たちがキッチンにやってきた……。ウンザリして気絶しそう。
「今ちょうど食材を見つけたところです。さあ、お母様どうぞ」
凍った魚をお母様に差し出す。だが、受け取らない。お義父様に差し出す。こちらも受け取らない。
「あんたが調理しなさい、アンジェラ。私は料理なんかしないわよ」
「そうだ、そうだ。アンジェラがやりたまえ。レベッカの妹なんだからできるだろ」
「……はぁ!?」
二人は揃ってあたくしに料理しろと言いまくる。この役立たずどもがぁ。とはいえ、調理しないことには何も始まらない。何より、このまま出したら、不敬罪と言われる危険だってある。魚を丸ごとだもの。ぐぅ、どうする。
しばし考えた結果、焼くことにした。魚なんて火を通せばいいのよ、火を通せば。加熱しとけば、とりあえずは食べられるでしょ。かまどに火をつけフライパンを載せ、ドカッと魚を置いた。そのまま、焼き上がるまでジッと待つ。少しすると、お母様たちが
「……アンジェラ、これでいいの? ただ焼いているだけじゃない」
「うまくもなんともなさそうだが……」
「うるさいわね! 料理なんかやったことないのだから仕方ないでしょ!」
お母様たちの
「あら、意外と良さそうじゃない。アンジェラもやればできるのね。感心したわ」
「ふむ、悪くないな。これなら王様も満足するかもしれん。できるんなら早くやればいいんだ」
お母様とお義父様が、地味に嫌味のある評価を下す。……いちいち腹立つわね。
「お待たせしました。お料理を持って参りました」
「おぉ、今か今かと待っておったぞ」
「どうぞ」
お皿をテーブルに置くと、王様は嬉しそうな
「ほぉ、ずいぶんと大きな魚じゃの。これは何という名前の料理なんじゃ?」
「……え?」
料理名? そんなものあるわけないでしょうが。
「そうですねぇ……えっと、〝魚のソース焼き〟でございます」
「見たまんまじゃの。まぁ、名前より大事なのはもちろん味じゃ。では、さっそくいただくとしよう」
王様は軽くお
「ずいぶんとしょっぱい味付けじゃの。魚もなんだか冷たいし……」
王様は文句を言いながら魚を食べる。もしかして、食べ終わるまで待ってなきゃいけないの? はぁ、めんど。さっさと食べてよね。気がついたら、お母様とお義父様があたくしの
は? なに、良いとこどりしようとしてんのよ。
この調子の良さは
「ふぅ、ご
王様は立ち上がろうとした体勢で、ピタリと止まった。今度は何。デザートが食べたいとか言うんじゃないでしょうね。そんなもの用意してないわよ。やれやれと思っていたら……王様はゆらりと
「「お、王様? ……王様!?」」
衛兵たちが
「「レベッカ嬢ー、レベッカ嬢ー! 大変ですぞ! 王様が卒倒しました!」」
衛兵たちはキッチンになだれ込む。ドタドタと激しい音がしたと思ったら、数分も
「「レベッカ嬢はどちらに!?」」
「「あっ……」」
あたくしたちは返答に
「も、もういませんわ。先日追放しましたから」
「「いないだって!? じゃあ、この料理は誰が作ったんだ!?」」
「「アンジェラです」」
打って変わって、お母様とお義父様は
「「いったい何を食べさせたんだ!」」
「さ、魚よ! 魚! それよりも、あたくしには回復スキルがあるのよ! 王様を治してあげるわ! その名もなんと~?」
「「早くしろ!」」
《傷の癒し手》と言う前に、王様の前に
「く、苦しい…………こんなに苦しいのは……生まれて初めてじゃ……」
王様は消え入りそうな声で
具合が悪くなったのだって、どうせ古傷が痛んだとかでしょ?
王様の胸に手を当て魔力を込める。
「《傷の癒し手》!」
あたくしの手が緑色に光った。うん、いつも通りだ。
「「おお……回復スキルの光だぞ」」
衛兵たちの
ど、どうしよう……全然治らない……。