『ああ、
「なるほど」
ふーん、そうなんだぁ。思えば、本物の吸血鬼に会ったのは初めて。伝承といっても、結局はただのウワサ話。真実は違うというわけだね。
『これでも私は
グリゴリーさんはとんでもない一言を放つ。
「えっ、侯爵家!? すみません、そんな位の高い方だったなんて知りませんでした。色々と失礼を……」
『いや、別に気にすることはない。そもそも、失礼なことなどなにもしてないのだから』
「ありがとうございます。でも、吸血鬼にも
『まぁ、歴史の深い〝亜人〟だからな』
「さようでございますか……」
どうりで高貴な印象があると思った。まさか、吸血鬼の貴族だったとは。
『君の料理の腕を
「はい、なんでしょう」
頼み……。これは初めての展開だ。料理系のお願いだったらいいな。私はご飯を作るしか能がないからね。グリゴリーさんは深呼吸すると、静かに告げた。
『どうかこの店を……私のプロポーズの場とさせてくれないか?』
「えっ、それはどういう意味で……?」
「『ダメーーーー!』」
『な、なに!?』
突然、キッチンで
『レベッカは絶対に渡さないニャ! ネッちゃんとずっと一緒にいるのニャ!』
「わたしに許可なく、レベッカと
「いくら侯爵家でも横暴すぎるぞっ! これはれっきとした討伐理由になるっ!」
三人は興奮した様子でまくしたてる。なんかもろもろ
「あ、あの、ちょっと、みんな落ち着いて……」
『わ、私は別にレベッカ
「『これが落ち着いていられるかぁ(ニャ)!』」
三人は私たちの言葉など聞こえないように、わあわあわあと
□□□
『私には人間の
「『あっ、はい(ニャ)……』」
グリゴリーさんから事情を聞くと、ネッちゃんたちは落ち着いた。一通り自己
「
『ありがとう、レベッカ嬢。あの
「で、二人の出会いはなんだったんだ?」
キャンデさんはあんなに討伐うんぬん言っていたのに、今や一番乗り気で質問していた。
『あれはそう、今から三年前だ。私の領地に広がる深い森で、
それから、恋人さんは不当に
「なんて……なんて感動的な話! わたし、
「そ、そんな深い話があったとは……! うっうっ、私は自分の心の
『ネッちゃんは感動したニャ! 感動したニャよ!』
ロールちゃん、キャンデさん、ネッちゃんは大号泣。涙を
『私と彼女の気持ちは通じ合っていると思う。だが……なかなか最後の勇気を持てないのだ』
そう言うと、グリゴリーさんはややしょんぼりとした。大事な関係だからこそ、踏み
『だからレベッカ嬢……私に力を貸してくれないか? 君のおいしい食事があれば、彼女へのプロポーズもうまくいくと思うんだ』
態度や言葉の端々から、グリゴリーさんの
「ええ、ぜひ任せてください。絶対に成功させてみせます」
私にできることはおいしい料理を作ることだけ。でも、
『レベッカ嬢……ありがとう……』
相談した結果、食事はコース料理を、プロポーズは来週の満月の日に決まった。決心が揺らがないうちに気持ちを伝えたいそうだ。代金を
その日は、初めてロールちゃんがはわわ……しない日となった。
□□□
「では、レシピを考えますか」
翌日のキッチン。さっそく、グリゴリーさんのプロポーズに向けてのレシピを考えることとした。
「レベッカ、どんな料理にするの?」
『やっぱり
サンデイズ食堂でプロポーズや
「味はもちろんだけど、見ているだけで楽しい気持ちになるメニューがいいね。うん、晴れやかなイメージのお料理にしよう」
「『おぉ……
プロポーズなんて、人生で一番緊張するイベントだろう。思い出に残って、グリゴリーさんの愛がしっかり伝わるような品々を作りたい。保存中の食材を見る。
〈満月茸〉、〈
「コース料理となると、ちょっと荷が重いかも。新しい食材を探しにいこうかな」
「わたしも手伝うよ。少しでも力になりたいし」
『ネッちゃんも
「ありがとう、二人とも」
出かけようと食堂へ向かうと、キャンデさんが武器の準備をしていた。
「食材を探しに行くのだろ? 私も協力するぞ」
「えっ、いいんですか? キャンデさんがいてくれたら最高です。……あっ、でも、クエストでお忙しいんじゃ……」
「あんな話を聞いた後では、力を貸さずにはいられないじゃないか」
キャンデさんは思い出し泣きしたのか、目元が
「キャンデさんって……お優しいですよね」
「さすがはSランク冒険者。心も広い……」
『こう見えても温かい心を持っているんニャね』
私が言うことに、ロールちゃんとネッちゃんも賛同した。うんうんと私たちが
「バ、バカ言うなっ! こ、これはあれだ! ついでだ! クエストのついでに行くんだ!」
照れたキャンデさんは、