第六章:〝一 撃 いちごのたっぷり満足パフェ〟
「右も左もキラキラ~。宝箱の中にいるみたい~」
「ロールちゃん、金貨もレア
『いい加減わかってほしいニャよ』
ロールちゃんがテーブルに広げた貴重品を、ネッちゃんと集めて
「ロールちゃん、しっかりしてよ。起きて」
「起きてるぅ~」
『まだまだ夢の中ニャね』
財産が増えるほど、ロールちゃんの
「ねえ、ロールちゃん。今日は何をしようか。また片付けでもする?」
「そうだねぇ……せっかくの休みだから有効活用したいところだけどぉ……」
〝カフェ・アンチドート〟は、週に二日休むことにした。定休日を作ったのだ。休みの日は、食材調達やカフェの整理に
「……そうだ! いつもと違う場所に食材を探しに行かない? レベッカも色んな食材を使いたいでしょ?」
「いいね! 大賛成だよ」
『ネッちゃんも賛成だニャ』
相変わらず、毒食材は〝毒の森〟かキャンデさん経由で入手することが多かった。森にしろキャンデさんにしろ、毎回多種多様な食材が手に入るけど、そろそろ行動
「たしか、宿の
ロールちゃんはカウンターの奥に行き、五分ほどすると戻ってきた。手に
「ここから西に行くと、〝パルグタウン〟っていう小さな町があるよ。その近くには豊かな森があるから、珍しい食材がたくさん手に入るかも。なにせ、〝
「ふ~ん。聞いただけで豊かそうな森だね」
『〝毒の森〟とは偉い
〝パルグタウン〟は〝カフェ・アンチドート〟からちょうど真西の方角にある。歩いて片道一時間ほどらしい。食材は地域が変われば種類もガラッと変わるからね。いやぁ、楽しみ楽しみ。愉快な気持ちになったけど、次の瞬間にはある重大な事案に気づいた。ネッちゃんもまた、張り詰めた表情で
「ロ、ロールちゃん、一ついいかな……」
『大変ニャ……』
「どうしたの、二人とも。そんなに深刻な顔をして」
「貴重品が
『人っ子一人いなくなるニャ……』
キャンデさんは早朝からクエストだ。夕方までには帰ってくる、みたいなことを言っていたっけ。逆に言うと、それまでは宿が無人になる。〝毒の森〟は宿屋の周りにあるし、いつもの
「なんだ、そんなことか。レベッカの料理の方が大事だよ。わたしたちのためにも、ずっとおいしい料理を作ってね」
「『ロールちゃん……』」
予想に反して、ロールちゃんは笑顔で答えてくれた。貴重品より友達を優先してくれるなんて……。いつもは
「毒食材のない森だから、新しいメニューが生まれるかもよ」
ロールちゃんは生き生きと話す。が、私の耳は
「……え? 〝豊穣の森〟には毒食材ないの?」
「うん、昔から一つもないよ。森にあるのは、おいしい無害の食べ物ばかり。だから、豊穣なんて名前がついているんだけどね」
「そ、そんな……」
「ど、どうしたの、レベッカ!
『毒食材がないと聞いて、テンション下がっただけニャ』
「ああ~」
これまた、なぜか
『さっさと準備して行くニャ』
「そうだね。おやつに、レベッカの〝ポイクッキー〟も持っていこうか」
二人はテキパキと準備を進める。ぼんやりした視界の隅で、ロールちゃんが書き置きを残しているのが見えた。キャンデさんにも
「レベッカ、そろそろ行くからね。ほら、
『しっかりしてニャ。
ロールちゃんに
「ほら、レベッカ。ちゃんと歩いてよ~」
『いくら毒食材がないからってテンション低すぎニャ』
「う~ん……」
ロールちゃんとネッちゃんが私の背中を押す。二人に押されて、ようやく足が前に出た。なんだか、いつもより元気が出ないのだ。背中を押されながら西に向かう。疲れが溜まっているのかなぁ~?
「ロールちゃん、ネッちゃん~、なんか町が見えてきたね~」
「はぁ……はぁ……ようやく着いた……」
『まさか、ずっと背中を押し続けるハメにニャるなんて……』
宿屋から西に進むこと数時間。〝パルグタウン〟に
「レ、レベッカ……自分の足で歩い……て……」
『も、もう限界だニャ……』
「だって、力がぁ~」
〝カフェ・アンチドート〟を出てから、私の足には力が入らない。いったいどうして。
『毒食材を食べさせてみたら復活するかもニャ……』
「なるほど……」
ロールちゃんとネッちゃんと小声で話すと、おやつの〝ポイクッキー〟を渡してきた。
「レベッカ、〝ポイクッキー〟だよ」
「……え? 別にお
「いいから、食べて」
「だからお腹いっぱいなのに……」
断ったけど、ずいっと差し出される。しょうがないので一枚食べた。たちまち身体に広がるハーブの
「力がみなぎってくるよぉー!」
「ああ、良かった……」
『〝ポイクッキー〟持ってきてよかったニャね……』
ロールちゃんとネッちゃんは、息も絶え絶えに話す。なぜだろうね。どうやら、大変に疲れているようだ。いつもと違う場所だから
「ねえ、ロールちゃん、ネッちゃん。まずは市場の食材を見てみようよ。どんな食べ物が売っているか楽しみになってきちゃった」
「休む
『やれやれニャ』
「え? なにが?」
「『なんでもない(ニャ)』」
二人と一緒に町の中心部へ向かう。
「なんか……食材があまり売っていないね。売り切れちゃったのかな」
「そうだね。わたしもそう思ったところだよ」
『食べ物が少ないのは悲しいニャね』
市場にはお肉屋さんやお魚屋さんなど、食べ物を売るお店はたくさんあった。でも、
「お嬢ちゃんたちも買い物に来たのかい? 品数が少なくてごめんねぇ。でも、今はこれが精いっぱいでね」
「あ、いえ、買い物ではなくてですね。私たちは東の方に住んでいるんですが、〝豊穣の森〟を見に来たんです」
「遠いところからわざわざありがとうよ。……おや? 空飛ぶ
『
おばさんは四十代半ばくらいで、くるくるした茶色の
「お嬢ちゃんたち、せっかく来てくれたところ悪いけどね。〝豊穣の森〟に行くのは、今は止めた方がいいよ。食通オークが
「『……食通オーク?』」
「ああ、そうさ。初めて聞いたときはあたしも耳を疑ったよ。うまい物に目がないオークらしくてね。
おばさんはため息をつきながら話す。〝パルグタウン〟は魚や肉も〝豊穣の森〟に
「そんな事情があったのですね。私たちにも何かできればいいんですけど……」
「あいにくと
「いやいや、あんたらが気を
おばさんのため息が大きくなる。オークは乱暴な性格の持ち主が多いので、見かけたら近寄らないことが鉄則とされていた。
「ねぇ、ロールちゃん、ネッちゃん。キャンデさんに相談してみようか」
「うん、それがいいかも。きっと、どうにかしてくれるよ」
『
ここは下手に手出しをせずに、専門の人を頼った方が良さそうだ。三人で静かに相談していたら、おばさんがポツリと
「オークを追い
「報酬ぅ!?」
報酬という言葉を聞いた
「ただの報酬じゃなくて、純銀のメダルなんだよ。でも、
「純銀のメダルゥ!?」
「ロールちゃん、浅ましいよ」
『欲で目が
ロールちゃんの目には、もう純銀のメダルとやらしか見えていない。私たちが何か言う間もなく、彼女は
「おばさん! わたしたちがそのオークを追い払います!」
「……え? で、でも、まだほんの子どもじゃないかい。危険すぎるよ」
「大丈夫です、こっちには料理の天才がいるので! 他の人が森に行きそうだったら止めてくださいね! 報酬が横取りされたら大変ですから!」
「ロ、ロールちゃん、ちょっと話が急なんじゃ……」
『キャンデさんはどうなったんだニャ……』
私とネッちゃんが言うと、ロールちゃんはゆっくりと
「レベッカ! 町の人が困っているの! わたしたちが何とかしないと!」
「『ロールちゃん……』」
目が血走っているよ。報酬が出ると聞いた瞬間、我らがロールちゃんは守銭奴に戻ってしまった。
「さあ、行こう、レベッカ! ネッちゃんも! 〝豊穣の森〟に!」
「『はい(ニャ)……』」
元気マンマンのロールちゃんを先頭に、私たちは食通オークがいるという〝豊穣の森〟へ向かう。〝パルグタウン〟から歩くこと約二十分。私たちは
「ここが〝豊穣の森〟か……」
「やっぱり、わたしたちのいる森とは雰囲気が違うね」
『なんだか明るい雰囲気だニャ』
町からは一本道だったので迷わず来られた。森の入り口は木の枝が大きなアーチのように曲がり、訪問者を静かに待っている。おばさんの話では、森に入ろうとするとオークに追い返されるようだ。しかし、周囲にはオークどころか動物の一
「ロールちゃん、オークはどこにいるんだろう」
「レベッカッ、わたしの名前は呼ばないでっ」
「え、な、なんで?」
何気なく話しかけたら、ロールちゃんに厳しく言われてしまった。いつの間にか、私の背中に隠れるように身を
「オークに目をつけられたら大変だからっ」
私はいいのか……と思ったけど、
『何の用ダ』
「『出たあああっ』」
叫ぶロールちゃんとネッちゃん。二人とも、私の身体を
「あ、あなたがこの森を占領しているオークですか?」
『いや、違ウ』
「えっ? そうなんですか?」
違うと言われ、
『俺たちダ』
「なるほど……」
……そういうことね。なんだか肩の荷が重くなった気がする。
『さっきも言ったが、すぐに出て行ケ。お前ら人間にうまいメシは分けないゾ』
オークたちは横に並び、私たちの行く手を
「〝パルグタウン〟の人から、あなたたちはおいしい食べ物が好きだと聞きました」
『ああ、そうダ。わかっているのなら出て行ケ。俺たちはこの森のメシを食い
「でしたら、この森よりおいしい食べ物があったらどうでしょうか」
『……どういう
私が言うと、真ん中のオークは疑問を
「私たちは〝毒の森〟の近くでカフェをやっているんですが、良かったら来ませんか? おいしかったらこの森を
『ふム……』
三人のオークは
「ど、どうでしょうか」
『ダメダ』
「えっ!」
『お前のメシがうまいという
そんな……。でも、たしかに、私の料理のおいしさをこの場で証明できない。困ったね。一度町に戻ってキッチンを貸してもらう? だがしかし、毒食材がない。頭を
「レベッカ……〝ポイクッキー〟渡したら……」
「ああ~」
おやつの〝ポイクッキー〟があった。〈ポイズンハーブ〉で作った
「これは〝ポイクッキー〟と言いまして、私のカフェで作ったのですが……」
『寄越セ』
最後まで言う前に、オークたちは〝ポイクッキー〟を
『『うまいゾ! なんだ、これハ!』』
「ええっ!」
食べるや
『最初に感じるは、ハーブの爽やかサ! 口を抜け鼻を抜け、体中を
『爽やかさの中に現れるのは、ほのかな
『
「あ、ありがとうございます」
怖そうな
『よし、わかっタ。明日、お前のカフェに行ク』
「あ、明日ですか?」
『一刻も早く食べたいのダ。このクッキーみたいな甘いメシを喰いたイ』
オークたちは、ぽわぁ~っとした顔で言う。喜んでもらえて何よりだけど、明日か。間に合うかな。隠れていたネッちゃんが顔を出す。
『材料全部集まるかニャァ?』
「そうねぇ……帰ったらすぐに食材を集めないと……」
「レベッカッ、絶対明日がいいよっ」
「ど、どうして? だって、材料が……」
「報酬が横取りされたらどうするのっ」
「『ロールちゃん……』」
目が血走っているよ。結局、オークの来店は明日と決まった。〝パルグタウン〟に戻り、おばさんにオークとの一件を話す。計画を伝えたら驚いていたけど、店にはSランク冒険者がいると話したら安心していた。
目が血走ったロールちゃんを先頭に
「う~ん、どういう料理にしよう。甘い物……甘い料理……」
『まずは森に出てみようニャ。探しているうちに思いつくニャもよ』
「たしかに」
ネッちゃんの言う通り、まずは行動あるのみだ。悩んでいても始まらない。ロールちゃんも
「なんだ、帰ってきたのか?」
「ええ、みんなで〝パルグタウン〟に行ってきました。私の料理のレパートリーを増やすため、〝豊穣の森〟へ行きたかったんです」
「ああ、あそこは色んな
「ですが、ちょっと問題がありまして……」
「問題?」
オークの一件を伝える。
「……ということで、明日オークのお三方が来店します」
「へぇ~、オークに食通なんているんだなぁ」
やはり珍しいらしく、キャンデさんも驚いた。
「明日の料理を考えるので、また食材を調達に行ってきます。
「食材ならクエストついでにいくらか採ってきたぞ。見るか?」
「ほんとですか!? 見ます、見ます!」
「キッチンに置いてある」
いつの間にか貴重品チェックが終わったロールちゃんもフラフラと合流し、キッチンへ向かう。テーブルの上を見たとたん、悩みなんて
「これは〈夢ミルクルミ〉ィ!? まさしく夢のような出会い!」
「レベッカ~なんでそんな叫んでいるの~……ほぁぁ~」
「〝帰らずの
『いつものことニャ』
〈夢ミルクルミ〉は、
「こっちにあるのは〈メガ眠ト〉の葉っぱ! 良く見つかりましたねぇ!」
「だんだん意識がはっきりしてきた……夢から目覚めるような気分……」
「〝毒の森〟の東の先に小さな群生地を見つけた。少し落ち着け」
『無理な注文ニャね』
〈メガ眠ト〉は大きなミントみたいな植物。
「〈一撃いちご〉まであるんですか! こりゃあもう天からの
「いつの間にか、レベッカのテンションがすごいことに」
「〝ならず者の
『そういうことだニャ』
一見すると、普通の赤いいちご。種が
「キャンデさぁん! あなたは私の救世主ですぅ!」
「な、なんだ、どうした」
『色々あったんだニャ』
ぐいぐいと押され、体から引き
「よし! 明日はパフェを出そう!」
「『……パフェ!?』」
ロールちゃんたち三人の顔が
翌日。私たちは緊張しながら〝カフェ・アンチドート〟を開く。今日、オークたちがお店に来る。しっかり準備したけれど緊張するね。この来店には、〝パルグタウン〟の問題解決もかかっているのだ。
「オークは財宝より食事に
「レベッカ、心配するな。オークどもが暴れたら私が
「ありがとうございます。キャンデさんがそう言ってくださると私も安心できます」
たとえ攻撃されても、こっちにはキャンデさんがいる。そう思うと安心できた。
「おっ、どうやら来たみたいだな。では、私は
『あのオークたちだニャ』
「隠し金庫の場所は
みんなの言葉に気持ちが引き
『来たゾ』
「い、いらっしゃいませ。中にどうぞ」
オークたちはぞろぞろとお店に入り、一番大きな丸テーブルに
『昨日のクッキーみたいな甘いメシはあるカ』
「いちごのパフェなんていかがでしょうか」
『三つ寄越セ』
注文を聞き、私とネッちゃんもキッチンに戻る。ロールちゃんはカウンターの
「最初にやるのは〈夢ミルクルミ〉でクリームを作りましょうぅ! かき混ぜ混ぜ混ぜ混ぜまくれぇ!」
「結局、レベッカはいつも通りなんだね」
『ネッちゃんはわかっていたニャ』
「その
〈夢ミルクルミ〉を割って、果汁をボウルに集める。グルグルかき混ぜていると、ふんわりした生クリームになった。
「お次は〈一撃いちご〉をスライスカットォ! 切るとあふれる豊かな果汁ぅ! 春のような香りもご
「もうダメだ~、騒ぐの
「私もそのパフェ食べたいぞ! 一つ余分に作ってくれ!」
『気持ちが
〈一撃いちご〉はサクサクッと縦切り二回。
「〈メガ眠ト〉の葉っぱは~、温めるとチップのように
「『ちぎポイポイ(ニャ)!』」
〈メガ眠ト〉の葉を小さくちぎってフライパンに載せる。熱が加わると収縮し、それこそ
「パフェパフェパフェェ! これぞパーフェクトパフェだぁ!」
「おおお~! 華やかさが
「あひゃひゃひゃ! パーフェクトパフェ!
『だから、面白くもなんともないんニャよ!』
いちごがたっぷりのパフェが完成した。赤と白の
「お待たせいたしました。〝一撃いちごのたっぷり満足パフェ〟でございます」
『うるさい厨房ダ』
「……大変申し訳ございません」
思った通り、いきなり苦言を
『何はともあれ、うまそうなパフェだナ』
「ありがとうございます」
『では、いただク』
オークたちはあ~んとパフェを口に運ぶ。〝パルグタウン〟に食材が戻るのか、ロールちゃんが新しい貴重品をゲットできるのか、全てはこの瞬間にかかっている。
『『……おいしさの極みだゾ!!』』
「うわぁっ!」
パフェを
『こんないちごは初めて食べル。春の
「〈一撃いちご〉と言いまして、目を見張るほどの甘酸っぱさや果汁があります」
オークたちはクリームを
『このクリームも
「〈夢ミルクルミ〉の果汁から作ったクリームです。牛乳から作るより、ふんわりしっとり仕上がります」
いちごを食べ、クリームを舐め、オークたちはあのチップにたどり着く。パリパリとかじると、
『……こいつはうまイ。やや硬い歯ごたえが最高ダ。ミントのようなすっきりする感じもいイ。甘さの中で
「〈メガ眠ト〉の葉っぱをチップにしました。よいアクセントになっていると思います」
感想を述べては、ガツガツとパフェを食べるオークたち。十分も
『あぁ~うまかっタ。大変に満足できるパフェだったゾ。予想以上ダ』
「ありがとうございます」
ホッとして食器をキッチンに下げる。キャンデさんはどっしりしていたけど、ロールちゃんとネッちゃんはビクビクと震えていた。
「いきなり大きな声で騒いだりして……やっぱり
『レベッカ、
「食べられてないよ」
どうなることかと思ったけど、気に入ってくれたようで何よりだ。一息ついたところで、オークたちの声が聞こえた。
『女たち、こっちに来てくレ』
ロールちゃんとネッちゃんを背中に
『俺はオークのガルグといウ。こっちは弟のギルグとグルグという名ダ。よろしク』
「レベッカ・サンデイズと言います」
「ロールです……」
「キャンデだ」
『ネッちゃんだニャ……』
オークたちは名乗る。
『最高のメシだっタ。改めて礼を言ウ』
「喜んでいただけて私も
ガルグさんはおもむろに、純白に輝く
『これは俺の家に代々伝わるプラチナの腕輪ダ。代金として受け取レ』
「え、いや、しかしですね。そんな貴重な物をいただくわけには……」
「ありがとうございます! はわわ……」
ロールちゃんはあんなに怖がっていたのに、すごく嬉しそうにプラチナの腕輪を
「あ、あの、〝
『ああ、もちろん明け
そっと胸を
『絶対にまた来ル』
「ご来店ありがとうございました。どうぞまたお
カフェの出口までご案内し、笑顔のガルグさんたちを見送る。最初は怖かったけど、おいしいご飯があれば誰とでも仲良くなれるんだと実感する出会いだった。
「レベッカ! 今すぐ〝パルグタウン〟に行こう!」
「え……? ど、どうして……?」
『な、何しに行くんだニャ?』
ガルグさんたちが森の中に消えるや否や、ロールちゃんが私の肩を激しく掴む。ぼんやりする私とネッちゃんを差し置いて、彼女は勢い良く叫んだ。
「純銀のメダルをもらわないと!」
「『ロールちゃん……』」
目が血走っているよ。キャンデさんに留守番をお願いし、片付けもそこそこに私たちは〝パルグタウン〟へと
□□□
「……さあ、レベッカ殿。みなの歓声に応えておくれ」
「は、はい」
「「ありがとうー、レベッカちゃーん!」」
私は今、広場の中心で
あのおばさんにガルグさんたちの話をすると、町民のみなさんはすぐに〝豊穣の森〟へ向かった。森の明け渡しが確認され、町長さんへと
「
「い、いえ、そんな大層なことではございませんので……」
「
「表彰式なんて……なんかすみません」
町長さんは、豊かなカイゼル
「レベッカ殿、これが約束の報酬だ。受け取ってくれ」
「あ、ありがとうございます。高価な物をいただいてしまって恐縮です」
町民さんが私の首に純銀のメダルをかける。広場は
再度大きな
「あ、あの~、レベッカ……そのメダルだけど、もしよかったらわたしが管理しても……」
ロールちゃんはおずおずと、私の首にかかった純銀のメダルを指す。表彰式の間、
「ロールちゃんにあげるよ」
「え!? いいの!? やった! ありがとう! …………はわわ……」
首から外してロールちゃんに
『結局こうなるんニャね』
「まぁ、これもいつも通りということで」
〝カフェ・アンチドート〟への一歩を
無事、五組目のお客さんにも笑顔になっていただけた。