間章:魚があった!(Side:アンジェラ)



「アンジェラ、何をやっているの。騒がしくしないでちょうだい」

「そうだ、そうだ。子どもだからってうるさくしていいわけじゃないんだぞ」

 さらにめんどうくさいことに、お母様たちが出てきた。ああ、もう。いつしゆんウンザリしたけど、名案が思いついた。お母様たちに押し付けちゃえばいいのよ。きちんと対応していただきましょう。そう、大人なのだから。ほくそみながら、そっと気配を押し殺す。

「「こ、国王陛下! どうして、こちらに!」」

 王様を見るや否や、おどろきの表情となるお母様とお義父様。かいで仕方ないですわね。

「レベッカじようの食事を食べたくて来たのじゃよ。ついさっき、アンジェラ嬢からサンデイズ食堂も再開したと聞いたのでな」

「「なっ!?」」

 目を見開いて呆然とたたずむ二人。まさか、王様が来るなんて思いもしなかったんでしょう。お母様たちはあせった様子で王様に話す。

「こ、国王陛下。お言葉ですが、レベッカの料理などお口に合うはずはありませんわ」

「妻の言う通りでございます、陛下。あんな娘が作った食事より、王宮の料理の方が何倍も美味しいでしょう」

「いいや、それが違うのじゃ。ワシは一度レベッカ嬢が作った料理を……と言ってもじゃがの、食べたことがあるんじゃよ。部下が土産みやげに持ち帰ったのじゃ。あのクッキーは本当に美味かったのぉ。いつまでも忘れられないのじゃ」

「「そ、そうなのですかっ!?」」

 ふーん、王様はお義姉様の料理を食べたことがあるんだ。別にどうでもいいけど。

「というわけでの、ワシは今日サンデイズ食堂を訪ねたんじゃ。まずはレベッカ嬢にあいさつしたいの」

「お待ちくださいませ!」

 すかさず、お母様が叫ぶように言った。お義姉様を追放したことが知られたら困るもの。ククク、どうするのかしら?

「ひょっとして、レベッカ嬢はいないのかの?」

「い、いえ、います! どうぞお入りくださいませ。食堂は奥の部屋でございます」

「失礼するぞよ」

 王様は衛兵と一緒に食堂へ向かう。それを緊張した様子で見送るお母様たち。ざまぁ見なさい。あたくしに雑用をし付けまくるからよ。ハーッハッハッハッ! 心の中で高笑いしていたら、お母様がキッ! とこちらを向いた。

「アンジェラ、あんたがどうにかしなさい! 料理を代わりに作りなさい! レベッカがいないことがわかったら、サンデイズ家は大変よ!」

「そうだ、そうだ! アンジェラが何とかしろ! 料理を作れ! レベッカを追放したことを隠し通せ!」

「ええ!?

 お母様が告げ、お義父様が賛同する。またこのコンボ……。いい加減にしてちょうだい。しかも、お義姉様の追放を隠し通せってどういうことよ。

「ええ!? じゃ、ありません! あんたが一番若いんだから、あんたがどうにかするべきでしょ!」

「そうだ、そうだ! アンジェラがどうにかしろ! 一番若いんだから!」

 だから、さっきからなんなのそのくつは! 一番若いって、子どもだから当たり前でしょうが。というか、若いとどうしてやらなきゃいけないの。自分たちでやんなさいよ! お母様たちはさらに腹立たしい言葉を続ける。

「ちょうどいいわ、これをアンジェラのはなよめしゆぎようにしましょう。こんならしいチャンスをもらったこと、感謝しなさい」

「うむ、そうだな。ちょうどいい機会だ。王様の食事が作れる機会なんてそうそうないぞ。感謝したまえ」

「はぁ!?

 なに勝手に話を進めてるのよ。この人たちは本当に横暴極まりない。

「あたくし、お料理なんか作ったことありませんわ! 無理です!」

「つべこべ言わずやりなさい! 子どもは大人の言うことを聞きなさい! 子どもなんだから!」

「そうだ、そうだ! 言われた通りにするんだ! 子どもなんだから!」

「子どもかどうかは関係ないでしょうが!」

 右からはお母様、左からはお義父様のとうの声がおそかる。……ぬあああああ! ストレスで精神がほうかいしそうだ。

「どうしたのかの~? なんだか騒がしいようじゃが~。ワシは魚料理が食べたいの~」

 お母様たちと言い争っていると、王様ののんびりした声が届いた。あたくしたちはそろってビクリとする。

「な、なんでもございませんわ! ……ここは私たちがどうにかするから、早く料理を作ってきなさい。魚料理をね!」

「そうだ、そうだ。急いで料理を作らんか。魚料理をな!」

 お母様に背中をぎゅうう! とつねられる。そのまま、お母様とお義父様は食堂へと向かった。仕方がないので、あたくしはとりあえずキッチンへ来た。

「ああ、もう。お母様は横暴なのよ! ねんれいは関係ないでしょうがっ」

 そこら中のたなや箱の中をひっくり返す。すぐに料理できそうな食材を探しまくる。残っているのは、野菜のはしとかよくわからない粉とかだけ。お肉とかお魚みたいな食材はないの? ガサゴソ探していたら、お義姉様の言葉を思い出した。そういえば……

(いつも食材を使い切るようなレシピを考えているの。余って腐らしちゃうともったいないからね)

 とか言っていたっけ……。

「少しくらいは保存しておきなさいよおおおお! あたくしが困るでしょうがああああ!」

 お義姉様に対するぞうき上がる。追放されるとわかったら、後のことも考えて準備しておくべきでしょう。でも、早くしないと王様が……。焦りながらかたすみにある大きな箱を開けたときだ。中にこおった何かが入っていた。

 ……これはなに?

 お腹のところがふっくらとしたお魚だ。凍っているから硬いけど、生きているときはタプタプしてそうな雰囲気。背中には小さなむらさきはんてん模様。初めて見るお魚だった。ふーん、めずらしい魚じゃない。王様もきっと喜ぶわ。この魚を使いましょう。食材が見つかってホッと一安心。ああ、良かった。

 これで料理を作ればいいじゃないの。