皿でも洗うかと思ったところで、リーダーさんの声が聞こえた。食堂へ戻る。エルフの御一行は、スッ……と背筋をばして座っていた。教会みたいにおごそかなふん。……緊張しますね。

「な、なんでしょうか」

『私たちはあなたの料理にいたく感動しました。私はミレーヌと申します』

「あっ、どうぞよろしくお願いします」

 リーダーさんはミレーヌというお名前だった。名前までお美しい。

『そして、こちらが父と母です』

『父です』

『母です』

「こんにちは」

 ミレーヌさんの横に座る二人がしやくしてくれた。お二人ともむすめさんとそっくり……。

「って、父と母ですか!?

『はい、れっきとした私の両親ですわ』

「ず、ずいぶんと似てらっしゃいますね」

いつしよに暮らしていると顔が似てくるのです』

「はぁ、そうなんですか……」

 ミレーヌさんはサラリと言う。エルフは長生きだから、何百年単位の話なのかもしれない。娘が自分とうりふたつなんて嬉しいだろう。……ちょっと待って。

「他の方々はどちら様で……?」

『父方の祖父母と母方の祖父母。さらに奥に座っているのがその両親です』

 エルフは長生きで有名だけど、まさかそうにあたる方々までご存命とは。いやはや、おそれ入りました。

『実は……私はエルフの試練を受けていたのです』

「え! そうなんですか?」

 突然、ミレーヌさんはしようげきてきなセリフを告げる。エルフの試練とはいったい。

『我々の国では一族に美味しいゲテモノを食べさせることで一人前と認められます』

「ゲ……ゲテモノを……」

『難しい食材を美味しく調理できるお店を探すことも、エルフの実力の一つとみなされます。情報収集能力が高くないと見つかりませんから。私はなかなか良いお店が見つからず、何十年も困っていたのです』

 裏でそんなことがあったなんて。だから、ミレーヌさんは入店してから不安そうな表情になったりしたのか。彼女の様子の変化が、すとんとに落ちた。

『レベッカさんのおかげで、無事試験をクリアできました。これで一人前のエルフとして一族を導いていけます』

「お力になれて私も嬉しいです。すみません、そのような事情も知らずさわいでしまって」

『いえいえ。これは心ばかりのお礼です。どうぞお受け取りください』

 ミレーヌさんは、鞄から輝き光る宝石を出す。ルビー、サファイア、トパーズ、ダイヤモンドなどなど。またこんな貴重そうな物を……。

「いや、さすがに貰いすぎ……」

「ありがとうございます! いただきますね!」

 いつの間にかロールちゃんが真横にいて、宝石を全て回収してしまった。はわわ……と大変にごまんえつなので、今さらへんきやくすることなどできない。

『それではレベッカさん。私たちはそろそろ失礼いたします。美味しい料理を本当にありがとうございました』

「こちらこそご来店ありがとうございました。また来てください。……数百年後には消えてるかもしれませんが」

 がおのミレーヌさん御一行を見送る。ロールちゃんは相変わらずの手のひら返しだけど、今回のお客さんも喜んでくれてよかった。

「数百年後には消える……あひゃひゃひゃっ」

 ……そんな変なこと言いましたかね?