第五章:〝あばれんぼうサーモンとビリビリエビの川鮮丼、サワーガニのげ付き〟



「ロールちゃん、金貨も魔石もしまおうね~」

『そんなに散らかしちゃ、ってくれって言ってるようなもんだニャ』

「うぅん……わかってるって~……」

 ロールちゃんは相変わらず、金貨をウットリと眺める毎日だ。今ではそこにレア魔石まで加わっているので、危なっかしくてしょうがない。ネッちゃんと一緒にゆかしたかくし金庫へ収納する。この光景も、すっかりお馴染みとなってしまった。

「おい、おもしろそうな魚がれたぞ」

「あ、お帰りなさい。ほら、ロールちゃん、キャンデさんが帰ってきたよ」

「そうだねぇ~……」

 貴重品を金庫にしまったところで、キャンデさんが釣りからもどってきた。彼女はクエストの合間に食材を採取してくれている。主に肉や魚など、私たちでは入手が難しい食材だ。メニューのレパートリーも増えるし、大変に助かっていた。わくわくした様子のキャンデさんから魚を受け取り、おくのキッチンへ運ぶ。ロールちゃんもフラフラとついてきた。まだ金貨とレア魔石のいんが残っているようだ。

「レベッカ、こいつは美味うまそうな魚だと思うんだ」

「ええ、ちょうど今の時期がしゆんですね。脂ものっているから、きっとおいしいですよ」

 キャンデさんが釣ってきてくれたのは、すうひきの大きな〈暴れん坊サーモン〉。どんな激流にも負けない力強さを持つ魚だ。厳しい自然の中で生き抜いた身体は大変に肉厚で、トロトロした脂がおいしい。でも、きようぼうなことで有名で、泳いでいる人間を欠片かけらも残さず食べてしまう。陸に上がっても、そのどうもう性はおとろえていないらしい。ギロリ! と私たちを睨んでいた。さらに、脂がのったその身には危険な毒が宿る。なんと、食べたら肉体がくさり落ちてしまうのだ。例のごとく、まずは毒消し。

「《毒消し》!」

〈暴れん坊サーモン〉は、ぱぁっ! と白い光に包まれ毒消し完了。目つきからも凶暴性が消え去った。早く食べて? と目でうつたえている。

「今度はどんな料理になるか楽しみだ。甘い物の他に、特に魚料理が好きでな」

「魚料理がお好きだったんですか。私はてっきりお肉かと」

「いや、思い返せば肉も全部好きだった」

 キャンデさんは私の料理を大層気に入ってくれたらしい。朝ご飯に十時のおやつ、お昼ご飯に十五時のおやつ、夕ご飯に夜食にと、とにかくたくさん食べていらっしゃる。作りがいがあり、まさしく料理人みようきるね。

『この人は見るからに肉食系ニャよ』

 キャンデさんはネッちゃんを見ると、いぶかしげに呟いた。

「おい、ネッ! つまみ食いするんじゃないぞ。ネコは魚が大好物だからな」

『失敬ニャ! そんなことするわけないニャ! そして、ネッちゃんはネコじゃなくてねこようせいニャの!』

「何も変わらんだろ」

『それと、ネッちゃんの名前はネッちゃんニャ! ネッ! じゃないのニャ!』

 キャンデさんは、ネッちゃんのことをネッ! って呼ぶ。何でも、〝ちゃん〟はけいしようだから本名は〝ネッ〟の部分らしい。しかし、ネッちゃんはそれがなつとくできないようで、二人は日々論争するのであった。別に本人(猫?)が良ければどっちでも良いと思うけどな。

「魚以外にも色々と調達してきたぞ。一緒に調理してくれ」

 キャンデさんはせまりくるネッちゃんを軽くあしらいつつ、鞄からいくつか食材を出してくれた。まずはむらさきいろの小ガニが二十ぴきくらい。なつかしさにテンションが上がる。

「こ、これは、〈サワーガニ〉じゃないですかっ」

「うろついていたからつかまえといた。300mほど南にあるさわのようだ」

「なんとまぁ」

 こいつは〈サワーガニ〉。沢の近くに生息するかにで、小さいくせに強い毒がある。食べたら三日くらい高熱でむほどね。その代わり、身にはいそを思わせる塩味が凝縮されていて結構おいしいのだ。毒消し!

「川をさぐっていたらエビもいたぞ。どんな味だろうな」

「ビ、ビ、〈ビリビリエビ〉~!?

 さらに姿を現したのはうつすらと黄色く光るエビ。ざっと五十匹くらいはいた。これはもうらんかくなんじゃ……。〈ビリビリエビ〉はその名の通り、食べるとベロもおなかも一週間くらいビリビリしちゃう。だがしかし、食材としては素晴らしい一品。普通のエビでは太刀たちちできないほどのうまみを味わえる。生でもからげでもおいしいのだ。毒消し!

「いやぁ、キャンデさんのおかげでたくさん食材が集まりましたね」

「今日も美味い飯を作ってくれ」

 さっそく下処理でも始めるか。ナイフをにぎろうとしたとき、キッチンにさけごえとどろいた。

「た、大変だよ、レベッカ!」

 ロールちゃんだ。ぼや~っと窓から外を見ていたけど、おおあわてでけ寄ってきた。

「どうしたの、ロールちゃん。そんなにあわてて」

「また変な人たちが来る!」

「変な人ってお客さんでしょ? ちょっと失礼すぎ……」

「見て!」

 バンッ! と窓に叩きつけられた。ほおにくがせり上がっていちじるしく視界がせまくなるけど、どうにか外の様子を見られた。十数人の女性が静々とこちらへ来る。やけにスラリとしているな。羨ましいぞ。そして、みなさん耳が横の方にとんがっている。彼女たちを見て、思わず心臓がドキリとした。

「そ、そろそろ窓からはなしてほしいな。というより、あの人たちは……」

「どうしてこんなところに! ……そうか! 金貨とレア魔石をうばいにきたんだ!」

ちがうと思うよ」

 ロールちゃんはもうスピードで隠し金庫へ飛んでいく。おかげで解放された。

『こんにちは~、お店ってやっていますか~?』

「はい、営業中でございます! どうぞお入りください!」

 隠し金庫の上に荷物を置くロールちゃんをよそに、ガチャッととびらが開かれる。〝カフェ・アンチドート〟の四組目のお客さんは、エルフのいつこうだった。

「いらっしゃいませ! お好きな席におすわりください!」

『は~い。カフェがあって助かりました』

 エルフの御一行は、ぞろぞろぞろと中に入る。ず、ずいぶんと大人数ですね。なんと全部で十五人。一族で旅でもされているのだろうか。ここ最近で一番多いお客さんだ。しかも全部エルフ。ロールちゃんやネッちゃん、さすがのキャンデさんも面食らっていた。とりあえず、ロールちゃんと一緒にお水やおきを運ぶ。

「お水とお手拭きをどうぞ。私、エルフにお会いしたのは初めてなんです」

『あら、そうなのですね。私も人間のお店に入るのは初めてですわ』

 お姉さんはニコニコと話す。世の中には、人間以外にも人の言葉を話す生き物がいる。彼らは〝じん〟なんて呼ばれ方もしていた。スクアーさんみたいな〝リス人族〟やエルフ、ドワーフや人魚など……。数えると結構な種族がある。基本的にフリーデン王国……というか人間は、どの種族とも良好な関係を築いていた。人間に対してあまりにも大きな危害を加えるときなどは、ギルドのとうばつ対象にもなるけどね。

 エルフの皆さんは美しいのだけど、不思議なことに……顔が一緒だ。もしかして、まいとか親子なのかな? まぁ、失礼だから聞かないでおこう。

「どのようなお料理をごしよもうでしょうか? キノコのスープや焼きリンゴ、オムライスなどありますが」

『看板で見たのですけど、ここは毒食材を使ったお料理なのでしょうか?』

 お店に入ってくるとき、先頭にいたエルフさんが話す。そういえば、さっきからこの人しか話していない。他の方々はだまってお水を飲んでいる。

「ええ、このカフェでは無毒化した安全な毒食材を使用しています。今日は魚やエビ、カニなどを仕入れできました」

『素晴らしいですわっ! わたくしたちはゲテモノが食べたくて各地を旅していたのです』

「ゲテモノ……」

 こんなキレイな方からゲテモノなんて単語を聞くとは。いやはや、人生とは不思議だ。

『毒食材はまさしくピッタリですわね。食べ応えのあるお料理がいいです』

「でしたら、〝暴れん坊サーモンとビリビリエビの川鮮丼、サワーガニの素揚げ付き〟などはいかがでしょうか」

『それでお願いします。皆さんもよろしいですか?』

 エルフの方々は目をつぶったままうなずく。なかなかにきんちよう感が高まる動作だ。

「では、さっそくご用意します」

 キッチンにかん。ロールちゃんたちはというと、すでに待機していた。キャンデさんもキッチンのすみっこにいる。

「お帰り、レベッカ。どうだった? あやしい?」

「別に怪しくなんかないよ。やけに静かだけど」

「あんなに静かなのはやっぱり怪しいね。レベッカに様子を探ってもらって良かった」

「ロールちゃん、私をダシにしないでよ。……いや、別にうまいことを言おうとしたわけじゃないんだけど」

「……あひゃひゃひゃっ。レベッカのダシ……うますぎるっ……!」

 キャンデさんは今のやり取りが笑いのツボに入ったらしく、一人でばくしようしていた。

「ネッちゃんも一緒に応対してくれていいんだからね」

『あ、いや、ネッちゃんはいいのニャ……』

 こう見えて、ネッちゃんは結構こわがりなのだ。何はともあれ、料理を作りましょうか。始める前に、もう一度チラッとエルフさんたちを見る。相変わらず静かだ。リーダーさん(さっき話した人。勝手にそう呼んでいる)も、何も話さず黙っていた。いや、さっきより表情がかたくて暗い。ロールちゃんは険しい顔で呟いた。

「きっと、隠し金庫のありかを探っているんだ……」

「違うと思うよ」

 事情はわからないけど、私にできるのはおいしい料理を作ることだけ。おいしいご飯で少しでも気持ちが明るくなってほしい。そのためには、冷静な調理が必要だ。そう、冷静な調理が。目の前には懐かしい食材たち。深呼吸して昂るテンションをおさえましょう。

 よし……冷静にいけぇ、レベッカぁ!

「まずは〈迷子米〉を炊きますよぉ! つうのお米より短時間で炊き上がるっ!」

「今回も始まりましたね」

「いつも通りだな」

『これがないとレベッカじゃないニャ』

〈迷子米〉をザックザクと洗いまくる。洗えば洗うほど炊き上がる時間が短くなるのだ。今度はモチモチになるようにしたいね。おなべで炊くぞ。炊き上がるまでは何もしない。

「今回の料理はせんが命ぃ! 先に〈サワーガニ〉を素揚げしろぉ! 水分が多いから油がねるぞ、要注意!」

「すごい熱量です。レベッカの熱で揚がっちゃいそうな」

「レベッカの熱で素揚げっ……! あひゃひゃひゃっ」

『この人、笑いのツボが浅すぎるニャね』

〈サワーガニ〉はよく洗った後、そのまま油にポチャン。この食材は、元々身に水分がたくさんふくまれている。油が結構跳ねるけど、しっかり対処すれば問題ない。素揚げにすることでカリッとするし、余分な水分が抜けて味が濃くなる。塩を振らなくても、こいつの身はしょっぱくておいしいのだ。ささっと油をきった後、みんなでちょっと味見。

「『う~ん、カリカリ食感最高 (ニャ)!』」

 うましっ。まさしくデリシャスフード。ぜつみような塩味の揚げ物だ。小さいくせにやるじゃないか。しばらく油を落とすことにして、〈迷子米〉の状態をチェック……いい感じだ。ふっくらでツヤツヤ。もう少しでき上がるかな。そろそろメインディッシュの調理に移っていいだろう。

「〈暴れん坊サーモン〉んんん! 君の出番が来たぁ!」

「見ているだけで楽しくなってくるのはどうして……?」

「奇遇だな。私もだ……」

『なんだか騒ぎたくなってきたニャね……』

 本日のメインディッシュ、〈暴れん坊サーモン〉。今の時期は身も卵もおいしさがまっている。さっと下処理をすまし、お腹をかっさばく。真っ赤な卵がたくさん出てきた。

「まるでルビーのようなきらめきぃ! つぶつぶは口の中で弾けるぞぉ! ほとばしるうまみはせきの一品! 食べ食べ食べ食べ食べてみてぇ!」

「『パチパチパチパチ弾ける(ニャ)!』」

 宝石みたいだけど、ロールちゃんは別にはわはわしてなかった。やっぱり、金銭的価値がないとダメらしい。

「〈暴れん坊サーモン〉の身はスラスラスライスぅ! 引きまった身をご賞味あれぇ!」

 ピンク色の身をナイフで分厚くカット。元々大きい魚だし、キャンデさんがたくさん釣ってきてくれた。ごうかいにいきましょう。さすがは旬の魚。切り込みを入れたしゆんかん、脂がにじみ出てくる。しかも、ただの脂ではない。うまみがぎっしり詰まった脂だ。みんなで味見。

「『はぁ~……とろけちゃうっ(ニャ)!』」

 口に入れた瞬間、おいしさがあふれでる。たった一切れですごい満足感だ。旬の物は旬の時期に食べるに限るね。特に、ネッちゃんは大変気に入ったようで、二、三枚追加で食べていた。

「おい、ネッ! そんなに食べたら私の分が無くなるだろうが。お前は本当にネコだな」

『だから、ネッちゃんはネコじゃないのニャ! 猫妖精ニャ!』

「ネコだろうが」

 激しく論争する二人は置いといて、最後の食材を調理する。そう、〈ビリビリエビ〉。毒消ししても、なお腐りやすい。ゆえに、本当にしんせんじゃないと生で食べられないのだ。

「〈ビリビリエビ〉も生で食べようぅ! こいつは相当なちんだぞぉ!」

 パリッと皮をいて、ピッとわたを取る。ぷりん! と白い身が出てきた。例のごとく、みんなで味見。

「『ジュジュジュ、ジューシー!』」

 まんべんなく広がるあまみと旨み。この食材はデリケートで、火を通すとおいしさが半減してしまう。まぁ、それでも十分おいしいんだけどね。せっかくだから、生で食べてほしい。〈迷子米〉もふっくら炊けたので、〈暴れん坊サーモン〉と〈ビリビリエビ〉を載せる。赤、白、ピンクの美しい配色。すんばらしい。では……。

「ロールちゃん、運ぶの手伝ってくれる?」

「え? あ、うん……もちろん……」

 テンションが下がったロールちゃんと一緒に料理を運ぶ。エルフの皆さんは、絵画のように黙ってお待ちになられていた。ロールちゃんは料理を運ぶと、すぐに壁際へげてしまう。

「お待たせしました。〝暴れん坊サーモンとビリビリエビの川鮮丼、サワーガニの素揚げ付き〟でございます」

 料理をテーブルに置く。リーダーさん以外は、片目を開けてながめていた…………緊張するぞ。

『ず、ずいぶんとにぎやかなお店なんですね。少々びっくりしてしまいましたわ』

「あ……すみません」

 なぜか、リーダーさんはあせをかいていた。さっきからなんか様子が変だ。いったいどうして……。しばし考えると、一つの可能性がじようした。

 も、もしかして、えらい人の御一行?

 それで、リーダーさんが接待を命じられたとか。だとするとまずい。あんなに騒いだら接待失敗じゃん。ああもう、またやらかした。ロールちゃんたちは壁際で静かにしてるし。

『それでは気を取り直して……いただきま~す』

 エルフの皆さんは揃って、あ~んとご飯を口に運ぶ。騒いだ過去は変えられない。どうかお口に合ってくれ!

『『……』』

 エルフの皆さんはもくもくと食べる。それはもう黙々と。リーダーさんも何も話さず食べていらっしゃる。ずいぶんと静かなしよくたくだな。思わず不安になる。

 ま、まずかった……かな……?

 いや、本来ならこれが普通のリアクションなのかもしれない。今までのお客さんたちがハイテンション過ぎたのだ。納得した瞬間、とつぜんエルフの皆さんが立ち上がった。な、なんだ?

『『うまエルフ!』』

「えぇっ!?

 少しもズレずに、とても大きな声で叫ばれる。まったく予期せぬことでぎもを抜かれた。というか、うまエルフってなに? ぼうぜんとしていたら、リーダーさんにガッシと手をつかまれた。

『あなたが作ったのでしょうか!?

「あ、はい、そうですが」

『まさしくあなたは天才です。こんな辺境にここまで美味おいしい料理があるとは思いませんでした。いやぁ、おみそれしました!』

 暗い表情から一転して笑顔に変わり、リーダーさんはじようげんで語りだす。お仲間のエルフも美味しそうにご飯を食べる。

「す、すみません。うまエルフとはいったい……?」

『エルフ語で最上級の褒めことです。まさしく、一世紀に一度食べられるか否かの美味しさを表します。百年に一度の素晴らしい料理のことです』

「な、なるほど……」

 エルフ語にそんな言葉があったのか。リーダーさんは流れるように料理の感想を述べる。

『このピンク色のお魚は何ですか! 口に入れた瞬間とろりとけて、凝縮されたあぶらじゆうおうじんに広がりました。その幸福感といったら、天界に行けそうな気分になりましたよ! モチモチしたご飯ともあいしようばつぐんで……もはや半分くらいされてましたね、あははは』

「そ、そちらは〈暴れん坊サーモン〉でございます。ちょうど今の時期が旬で、脂が乗りに乗っています」

『はぁーっ、そんな魚がいるんですね。世界的に有名な〈黒曜マグロ〉より豊かな味わいでした。こんなおいしい物を食べたのは、今から百五十三年前……いや、百五十四年前です』

「ありがとうございます……」

 さすがはエルフ。話のスケールが一味ちがう。リーダーさんはスプーンで卵をすくって食べる。美しいひとみの奥がキラン! とかがやいた。

『ルビーのように真っ赤な卵! まぁっ、なんてだんりよくなのでしょう! プチプチする感覚がたまりませんわっ。あふれでるうまみが、サーモンの身とまろやかにハーモニー! この卵だけでご飯が三ばいはおかわりできそうです』

「〈暴れん坊サーモン〉の卵です。栄養価が非常に高く、この時期おすすめの一品でございます。おっしゃる通り、いくらでも食べられるおいしいイクラだと思います……いや、別にうまいことを言おうとしたわけではなく……」

 皆さん、ご飯と一緒にどんどん食べる。おに召したようで何よりだ。リーダーさんは〈ビリビリエビ〉を食べると、興奮した様子で話しまくった。

『この白くてぷりぷりのエビもおいしいですわ! 目が覚めるような食感はゆいいつですね。さらに、しょっぱさの中から甘みが顔を出す感覚が素晴らしくおいしいです。ご飯との相性もこれまた最高で』

「非常に貴重な〈ビリビリエビ〉の身です。腐りやすいので、本当に鮮度が良くないと食べられません」

『このじゆうじつ感は、まさしくジュジュジュ、ジューシーですね!』

 やはり、私の声は大きいらしい。次からはとにかく冷静に調理しよう。リーダーさんは〈サワーガニ〉の素揚げを食べる。

きわめつきは、このカニの素揚げ! カリカリしていておいしいです! 余計な油も少なくて、サクサクと軽く食べられますよ。身に詰まった塩味も美味……そして、これは蟹みそでしょうか、とてものうこうな味が口いっぱいに広がります』

「近くの沢で採ってきた〈サワーガニ〉をカラッと揚げました。水分が抜けたので、味がさらに凝縮されています」

『いやぁ、こんな美味しい料理は本当に数百年ぶりですよ。ところで、あなたのお名前を教えてくださいませんか? 素晴らしい料理人の名前を覚えておきたいのです』

「私はレベッカと申します。レベッカ・サンデイズです」

 こんなに喜んでくれるなんてうれしいな。空いたお皿を険しい顔つきのロールちゃんと片付ける。キッチンに戻っても、案の定彼女はけいかいモードが解けなかった。

「さっきまでは静かだったのが急におしやべりしたり……怪しい……」

「みんないい人だよ、ロールちゃん。怪しくないよ」

 ロールちゃんが大金を見せられなくてもなおになってくれる日が早く来ますように。

「うまエルフ……! イクラをいくらでも……! あひゃひゃひゃっ!」

『いつまで笑うつもりだニャ』

 キャンデさんは一人で大笑いしている。その話はだいぶ前に終わったと思いますけど……。

『レベッカさ~ん、ちょっとこちらへ来てくださいませ~』