第四章:〝どくどくチキンのオムライス〟



「うぅん……この数日で何か月分の収入になったんだろう……」

「ロールちゃん、金貨はしまっておこうよ。キャンデさんは狩りに行ってて不在なんだし」

『不用心過ぎるニャよ』

「はぁぁ~……」

 キャンデさんが泊まることになってから数日後。ロールちゃんは相変わらず金貨タワーに夢中だ。特に大粒の砂金がお気に入りのようで、毎日みがいてはながめていた。

「さあ、ロールちゃん。キャンデさんが帰って来る前に金貨はしまおうね。ビックリされちゃうよ」

『いくらSランク冒険者が泊まっていても、注意するにしたことはないニャ』

「ほぁぁ~……」

 金貨と砂金をロールちゃんから引きがし、いつもの場所にしまう。黄金のかがやきが消えると、ロールちゃんの表情はキリッとなった。

「よし、掃除しましょうかっ」

「『ああ、良かった(ニャ)……』」

 やれやれと一安心。ロールちゃんのためにも私がしっかりしなければ。まずは冷静に料理したい。常に平常心を心がけよう。平常心をきわめるのだ。

 そう強く決心していたら、ちょうどキャンデさんが帰ってきた。

「おーい、毒ものを狩ってきたぞー。ついでに自生していた野菜もいくらか採ってきた」

「お帰りなさいませ、キャンデさん! お手拭きをどうぞ! お水をどうぞ!」

 すかさずおむかえするロールちゃん。しくお手拭きやお水を渡していた。

「キャンデさん、お帰りなさい。おとかありませんか?」

「別に問題ない。これくらいは朝飯前だ」

「さすがSランク冒険者ですね。私だったらボロボロになってそうです」

 キャンデさんの身体には、かすり傷一つついていなかった。やはりSランクともなると、その実力は別格なのだろう。

「ついでにきや下処理も済ませてきたぞ」

「え、ほんとですか! ありがとうございます!」

「見つけだいってきたがどこに置けばいい?」

「キッチンの方にお願いします。私もお持ちしますね」

 みんなで食材をキッチンに運ぶ。中央のテーブルがまんぱいになるくらいの量だった。

「いやぁ、たくさん採取してきてくださってありがとうございました……って、〈どくどくチキン〉じゃないですかぁ!」

「い、いきなりどうした」

「レベッカは毒食材を見たり料理をしたりするときテンションが上がるんです」

『いつものことなんだニャ』

 鳥型の毒魔物代表格、〈どくどくチキン〉。キャンデさんがお肉の状態に処理しといてくれた。この魔物はいつも地面を走り回るので、身が引きまっていておいしいのだ。それでいて、火を通せばふっくら焼き上がりぜつみような塩味がにじみ出る。食べると体が少しずつにわとりに変化する毒があるけど。毒消しすればこれほど美味なとりにくはなかなかない。

「しかも卵まであるんですかぁ! んんん~、素晴らしい!」

「あ、ああ、ついでに採取しておいた。それにしてもすごい勢いだ……」

「料理しているときはもっとすごいですよ」

『まさしくハイテンションレベッカニャ』

〈どくどくチキン〉は卵もおいしい。生ののうこうあまみとコクはもちろんのこと、ゆで卵のホクホクした味わいもおすすめ。お肉より強力な毒があるけど、毒消しするから問題ないのだ。そして、卵の横にはむらさきはんてん模様をした野菜が……。

「〈トキシントマト〉ぉ! この森にもあったとはぁ!」

「だ、だから、急に大声を出すんじゃないっ」

「慣れるしかないです」

『慣れれば平気だニャ』

 真っ赤に実った〈トキシントマト〉。つうのトマトより数倍も栄養が詰まっていて、夏を思わせるさっぱりした甘さと酸味がとくちようてきだ。水分もたっぷりだから、体がカラカラにかわいていても一瞬で潤うよ。とてもじような性質で一年中育つことができる。その分毒も強く、じゆうれるとはだが焼けげてしまう。さらにとなりにはおみの米があった。

「〈迷子まいごまい〉なんて、どこで手に入れたんですかぁ!」

「か、〝帰らずのめいきゆう〟近くで自生していたぞ」

「毒食材の知識の広さは本当に素晴らしいよね」

『レベッカ以上に毒食材を理解している人は見たことがないニャ』

 最後の食材は〈迷子米〉。見た目はうすむらさきいろのお米。食べると毒で方向感覚がわからなくなり、よく知った道でもすぐ迷子になってしまう。危険な毒はあるけれど、火を通すだけで簡単にふっくらおいしくき上がるのだ。色もツヤツヤの白になる。いなのまま採ってきてくれた。