間章:辺境伯夫人になれるチャンスが!(Side:アンジェラ)
「お義姉様は今ごろどうしているでしょうか、お義父様」
「さあな。
お義姉様を追い出してから、あたくしは夫探しの日々を送っている。超レアスキル《傷の癒し手》と聞けば、色んな男性が寄ってきた。が、いざ顔見せの段階になると、なぜか逃げられるのだ。世の中には、見る目がない男ってたくさんいるのね。
「アンジェラ、早く金持ちと結婚しなさい」
「だから、わかってますわ」
「おや? 今日は休みだったか? 定休日じゃなかったはずだが……誰かいないかねー?」
お茶会の予定を整理していたら、外から男の人の声が聞こえた。すかさず、お父様がカッ! と指を鳴らす。
「アンジェラ、出なさい」
「えぇ~」
「早くしなさい。あんたが一番年下でしょ」
お母様まで
「お待たせいたしました。何用でしょう」
「き! ……みは誰だね……? サ、サンデイズ家の者か?」
「……はい、あたくしはアンジェラ・サンデイズと申します」
紳士は何も言わず、オジサンが話す。……なにこのオジサン。人の顔を見てギョッとしてるんですけど。失礼過ぎない? オジサンは引きつった顔のまま話を続ける。
「サンデイズ食堂は今日は休みかね?」
「もう閉店しました」
「閉店!?」
うるさいなぁ。閉店ったら閉店よ。何がそんなにおかしいの。
「も、もしかして、レベッカ嬢の具合が悪いのか? 今はどこにいるのかね?」
なんでお義姉様の名前が。
もういないって言ってやろう。
「先日追放しました」
「追放!?」
オジサンはなぜか強いショックを受けていた。ええ、なに。
「どうしたんだ、アンジェラ。サンデイズ食堂は閉店だと伝えないか」
「家の中にまで話し声が聞こえてうるさいわ」
オジサンが
「「……マーグレイブ辺境伯!?」」
「え! 辺境伯!? このオジサ……ぶごっ!」
最後まで言い切る前に、勢い良く口を
マーグレイブ辺境伯は、北の国境に広がる〝ダリブナ山脈〟一帯の防衛を任されている。小国にも
「サンデイズ殿、閉店とはどういうことでしょうか。というより、なぜレベッカ嬢を追放したのです」
「あ、いや、あのような外れスキル持ちを置いておくと、男爵家の尊厳に関わるので……」
「尊厳……? レベッカ嬢が働いていたのは、サンデイズ家のためではなかったのですか? サンデイズ殿はずいぶんと
辺境伯の言葉はチクチクとあたくしたちに
「辺境伯閣下! ここにいるアンジェラはすごいスキルを持っているのです。なんと……《傷の癒し手》なのですよ! これほど強い回復スキルはなかなかないでしょう。どうでしょう、ご子息と一度お食事でも……」
「結構です。お
あたくしが何か言う前に、息子はニッコリと告げる。ぐっ……先手を打たれた。
「まさか、あなた方がこのような考えの持ち主とは知りませんでした。せっかくレベッカ嬢に息子を
「そ、そうだったのですか!? でしたら、食堂を再開して……」
「ですから、レベッカ嬢がいなければ意味がないでしょう。もう二度とこちらへ来ることもないですな。それでは、失礼」
「失礼いたします」
マーグレイブ辺境伯は、息子と一緒にスタスタ歩きだしてしまった。お金が逃げていくようなすごい
「お、お待ちください、辺境伯閣下!」
「どうかお待ちになって!」
「お義姉様が向かったかもしれない場所をお教えしますわ!」
三人で必死に追いかけていると、辺境伯はピタリと止まった。よし、お義姉様を
「ご心配なく。レベッカ嬢の
「今度こそさようなら、サンデイズ殿」
そう言い残すと、辺境伯親子は馬車に乗って帰ってしまった。ヒュウウと冷たい風が吹く。そんな……うまく立ち回れば、あたくしは辺境伯夫人になれたかもしれないのに。三百年を
「アンジェラ! なんてことをしてくれたの!」
「ええ!?」
突然、お母様の厳しい声が
「あんたが余計なことを言ったからよ!」
「はぁ!? なんであたくしが!」
「レベッカの追放なんていくらでも
なぜあたくしの責任になるのよ。おかしいでしょう。さらには、お母様の発言にお義父様まで乗っかってくる。
「そうだそうだ! アンジェラのせいだ!」
「ああ、もう! 子どもみたいなことを言わないでください!」
しばらく、あたくしたちは