ロールと名乗った少女と
「ここはあなたの宿屋さんなの?」
「うん。今はほとんど開店休業状態だけど……まずは中に入って。助けてくれたお礼もしたいし」
お言葉に
「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」
「ありがとう……はぁ、おいしい」
『あちゃちゃちゃちゃっ!』
ネッちゃんはさっそく
「ねぇ、レベッカ。旅人って言ってたけど、こんな辺境に何しに来たの?」
「ああ、それはね。外れスキルのせいで実家を追放されて……」
例の一件を話す。ロールちゃんは
「まさか……そんな辛い過去が……」
『レベッカは苦労人ニャんよ。ネッちゃんも涙なしには聞けなかったニャ』
過去というには最近過ぎるような気もするけど、まぁこれくらいは誤差か。お茶を
「あっ、ごめんなさい」
「ロールちゃん、お
「う、うん。いつからか、この辺りは毒魔物だらけになっちゃって……
どうやら、宿の周囲に広がる森は〝毒の森〟というらしい。ロールちゃんのご両親は森の中へ
「一人で宿屋なんて大変だったね。でも、女の子一人じゃ心配でしょう。変な人とか来たら」
「大丈夫。そういう人はナイフを
「そ、そうなんだ……」
思いの外、ロールちゃんはたくましかった。
「レベッカも貴族なのに食堂やってたってすごいね」
「別に大したことじゃないよ。……そうだ、このクッキーも無毒化した毒食材から作ったの」
持ってきたおやつを出す。細かく切った〈ポイズンハーブ〉を混ぜて焼いたお
「へぇ、これが」
「毒消ししてあるから食べても大丈夫。お腹
「あ、いや……」
スッと差し出したけど、ロールちゃんは
「ごめん、ちょっと
「ち、違うの。一人で暮らすようになってから、すっかり
ロールちゃんは顔の前で、手をパパパッ! と振りながら否定する。
「たしかに、そりゃそうか」
「でもお腹は空いているわけでして、
「『えぇ!?』」
〝ポイクッキー〟をかじった瞬間、ロールちゃんは
「ハーブの
「そ、そんなに喜んでくれて良かったよ」
『
「ねえ、レベッカ! ここでカフェ開いたら!?」
「カ、カフェぇ?」
ロールちゃんは衝撃の一言を放つ。
「毒食材からこんな美味しい料理が作れる人なんて初めて見た。わたしも
『それは名案ニャね。レベッカの経験が存分に
二人の言うことには一理あるけど、新しい場所はやっぱり不安になる。
「う~ん、それはそうかもだけど……上手くできるかな。家賃のお金もないし……」
「レベッカならできるって。もちろん、タダでここに住んでくれていいよ」
「よし、やりましょうか」
迷いは一瞬で消え去った。
「掃除とかは後にして、カフェの名前だけでも先に決めとこうよ。レベッカの新しい人生が始まる場所でもあるんだし」
「何がいいかな」
『レベッカを連想させるような名前がいいニャね』
私を連想なんて
「〝カフェ・アンチドート〟!」
「『…………いい(ニャ)!』」
生きていくため、私は最果ての地にてカフェをやっていくことを決意した。