ネッちゃんは妖精の中でも力が弱いようで、私の迫害を止められないことをいつも
「それではお父様、お世話になりました。家から出て行きます。さようなら」
「そうだな。二度と
「お義姉様、ちょっとお待ちください」
歩きだそうとしたらアンジェラに止められた。笑っているけど、どこか不気味だ。
「なにかしら?」
「この紙がぁ~? 何かぁ? わかるでしょうかぁ~?」
また例のごとく
「お、教えてちょうだい」
「これは〝テトモモハ〟行き馬車の無料チケットでございます」
「〝テトモモハ〟……」
別名、最果ての地。その名の通り、ここからずっと東の方にある大辺境の土地だ。これを使って
「ありがとう、アンジェラ。ありがたくいただくわ」
「いえいえ」
意味深な
「次の満月の日、マーグレイブ辺境伯閣下がいらっしゃるので閉店したと手紙を出してくださいね」
「「はいはい」」
二人に適当な返事をされたところで、もう一つ大事なことを思い出した。
「キッチンの大きな箱に〈ハザードフグ〉が
〈ハザードフグ〉は毒食材の中でもかなりの猛毒で敬遠されている。でも、毒消しすれば本当に美味な魚なので確保しておいたのだ。
「「わかった、わかった」」
二人はまた適当に返事をする。本当にわかっているのかなぁ? と思ったけど、たぶん
『これから大丈夫かニャぁ?』
「まぁ、見方を変えればちょうどいい旅行かもね。いざとなったら、料理人として働けばいいわけだし」
意外なことに私の心は軽かった。思い返せば、ずっと
□□□
「お
「んぁっ……」
男の人の声が聞こえて目が覚めた。寝て起きて寝ての
え……誰、このオジサン……って、思ったら
「大丈夫? 起きられるかい?」
「起きられます、すみませんっ」
「じゃあ、馬車代を
「はい。この無料チケットでお願いします」
「……無料チケット?」
アンジェラに
ん? なんだこの反応は。
「いや、あの……〝テトモモハ〟行き馬車の無料チケットって聞いたんですけど……」
「うちはそんなのやってないよ」
うちはそんなのやってないよ……そんなのやってないよ……やってないよ……。
オジサンの言葉が頭に
んなぁ! と頭を
「お嬢ちゃん、お金は
「は、払えます! 払いますんで少々お待ちください!」
お金を必死に数える。頼む! 足りてええ! どうにか提示された金額を渡せた。
「ありがとう、お嬢ちゃん。これでオジサンはもう少し生きられるよ」
「こちらこそありがとうございました。すみませんでした」
裏では
『森だニャ』
「森しかないね」
目の前には、たくさんの木が生えている。つまり森だ。右を見ると森。左も森。後ろ! ……も森。なかなかに反応に困る。
「何はともあれ少し歩いてみようか。木が生えているのはここだけかもしれないし」
『ネッちゃんも賛成だニャ。歩いていれば街が出てくるかもニャね』
ネッちゃんと一緒に歩きだす。
「あっ! ネッちゃん、家が建ってるよ!」
『きっと宿屋ニャ。でも、ちょっと
木造の少し大きな家。家というかネッちゃんが言うように宿屋みたいだ。
「この辺りのこと聞いてみようか……すみませーん。こんにちはー」
『誰かいるかニャ~?』
トントンッと
「うっ……!」
「ネッちゃん!」
『これは大変だニャ!』
女の子がぐったりと
「大丈夫ですか! しっかりして!」
「あ、あなたは……?」
「私はレベッカ。旅人よ」
『何があったんだニャ』
少女の額からは
「食料を探してたら毒魔物に襲われて……」
「ちょっと待ってて。私のスキルで浄化するから。……《毒消し》!」
傷口に手をかざして
「え……な、何をしたの!? あんなに苦しかった毒が
「私は《毒消し》スキルを持ってるの。毒ならどんな物でもすぐに消せるわ」
「そうだったんだ……どうりで」
今まであらゆる毒を無毒化できた。地味なスキル故か、魔力の消費量も少ないのだ。
「あの、本当にありがとうございました。わたしはロールって言います」
「レベッカ・サンデイズです。こっちは猫妖精のネッちゃん」
『よろしくニャ』
「猫妖精なんているんだね。かわいい……」