昼を回り、太陽が傾きかけた頃。侯爵家王都邸では、使用人たちが忙しく立ち働いている。

 大量の文書の作成と処理とを任された祐筆はもとより、それをあちこちへ届けねばならない従僕、出立のための準備をしなければならない馬丁や御者にも休んでいる暇はない。

 侯爵領へ出向かない者たちも同様で、屋敷での仕事を辞めて出ていく者は己の仕事のほかに荷物をまとめて支度をせねばならない。屋敷に残る者たちだけが、辛うじて普段の仕事を普通にこなすことが許されている、というような状況だった。

 とはいえ、だからといって己のみ安穏としているような使用人はこの屋敷にいない。

 執事として屋敷の管理を任されているスチュアート・スティーブンスにしてからがそういった性格であったし、彼や彼の女主人であるアリアレインが面談でもって採用を決めた使用人たちも、おおむね似たような仕事への熱意を持っている──無論、そういった熱意を持たせるだけの待遇があればこそ、ではあるのだが。

 スチュアートがフェリクスに──若い庭師に行き合ったのは、小さな中庭でのことだった。籠にいっぱいの香草や野菜、根菜を抱えている。キッチンガーデンの管理も庭師の仕事の一環で、彼はそれを今日も忠実にこなしているのだった。