いつものように馬車が屋敷の門をくぐり、いつものように車寄せへ止まる。

 いつものように近寄ってきた従者たちの顔は、いつもよりも随分と緊張していた。

「ご苦労様。最低限の人数だけ残して、広間に集まってちょうだい。馬車や道具の片付けはあとでいいわ」

 アーヴェイルに手を取られて馬車から降りながら、アリアレインが従者たちに声をかける。

 従者たちは黙ったまま、腰を折る丁寧な礼で応じた。

 屋敷の本館の扉を開けた従者たちにも、あなたたちもね、と付け加える。

 普段静かな館の中には、小さなさざめきとあちこちから聞こえる足音が満ちている。

 アーヴェイルが伝えた集合の号令は、もう屋敷の隅々まで行き渡っているようだった。

 緊張しながらどこか浮ついた空気。

 統制され、同時になにかに憑かれたような。

 なにに似ているのだろう、と記憶の底を探っていたアーヴェイルは、戦の前の幕営地のそれと同じ空気であることに思い至った。

 ──今は駄目、でもやりようはある。

 馬車の中で、美しい顔になにかをたぎらせながらお嬢様はそう言った。

 なにをどうやって、と不安に感じるところがないではない。

 だが、忙しくなる、ともお嬢様は言っていた。

 既にお嬢様の頭の中で、段取りは組み上がっている、ということだ。

 それがどのようなことであれ、と、アリアレインに従って廊下を歩きながら、アーヴェイルは思う。

 自分はお嬢様を、全力でお支えするのみなのだ。