グラスを掲げ、ジュースに口をつける。

 ここでお酒ではないところがミスタリアらしい。

 グラスを置き、ケーキを一口大に切って食べてみる。

 柔らかな生地に甘いクリーム、そこに甘酸っぱい季節の果物がふんだんに使われていて、とても美味しかった。

 それと同時に嬉しくなる。

 まだミスタリアが前の婚約者と付き合っていた時は、こんなふうに過ごす余裕はほとんどなかった。

 けれども今の親友は幸せそうで、あの頃のように何かを我慢している様子もなくて、婚約破棄されたことは良くなかったけれど、アルフリード様に出会えたことは彼女にとって幸運だったのだろう。

「美味しいわ、ミスリル。……ありがとう」

 私の言葉にミスリルが親指を立ててみせる。

「どういたしまして!」

「ミスティ、フォークを持ったままはやめよう」

「あ、ごめんなさい」

 アルフリード様に注意されてミスタリアが手を引っ込める。

 二人が顔を見合わせ、微笑み合う姿に思う。

 ……私もジョエル様と……。

 互いに支え、尊重し、愛し合える。

 いつか、そういう夫婦に私もなりたい。

 その時もきっと、こんなふうにこの二人は自分達のことのように喜んで、祝ってくれるだろう。

 今日だけは心ゆくまでこの幸福感に浸ることにしよう。

「よし、今日は沢山食べるわよっ」

 そう言えば、ミスタリアが「おおー!」と握り拳を掲げて元気良く返事をした。

「沢山食べて、沢山動けば太らない!」

「そうね、ダンスの練習時間を増やせば大丈夫よね」

 アルフリード様はまるで聞こえていないかのように、黙ったまま紅茶を飲んでいた。

 ちなみに、ダンスの時間を増やしたことが功を奏したのか、体重は増えなかった。