それはクリア報酬。


 俺が一万年かけてまで、このダンジョンをクリアした理由がこれである。


 完全攻略の報酬は事前にわかっていた。

 ダンジョン報酬がわかるユニークスキルによって、何が出るか解明されていたからだ。

 このダンジョンの報酬、それは──

「これがクロノスの懐中時計か」

 時間を巻き戻すことのできる、神話級アイテム。

「これで、やっと救える」

 かつて失った、守れなかった家族。

 その家族を救うため、俺はこのアイテムを求めたのだ。

「このボタンを押せばいいんだよな……」

 俺は宝箱から取り出した懐中時計を迷わず始動させる。

 すると時計から立体的な幾何学模様が浮かび上がり、俺の視界を埋め尽くした。

 その中央には巻き戻す時間が表示されており、それは俺の意思に反応して数字が変わっていく。

「家族が死ぬ前。一万以上前に……ん?」

 中央の数字は、一万飛んで二年の所で止まってしまう。

「一万二年が限界なのか……」

 もし俺がこのダンジョンの攻略にそれ以上かかっていたら、このアイテムが完全に無駄になるところだった。危なかった……

「まあ……二年あればなんとかなるだろう」

 本当は余裕を持ってもう何年か欲しかったところだが、ダンジョン攻略開始から二年前ならなんとでもなるはずだ。

 何せ今の俺には、あの当時の俺が持っていなかった力があるのだから。

「発動!」

 俺はクロノスの懐中時計のボタンを再び押し、その効果を発動させる。

 するとダンジョン内の景色が、まるで絵の具を混ぜたかのようにグニャグニャと歪み、俺の体から感覚が失われていった。


 ──母さん。


 ──うい


 ──今度は絶対二人を守ってみせるよ。