
「マーガレット様。シンシア様のことは大変だったね」
『聖女の
「ありがとうございます。……まさかライリー様がシンシアに危害を加えるとは、いくらなんでも思っていませんでしたので
「兄上もシンシア様を守れなかったことでひどく落ち込んでいるようだよ」
「……キース
「これからの人生をどう生きていくかは、あの二人
「はい。……私は、シンシアに初めて自分の気持ちを伝えることができました。シンシアがこれからどういう
シンシアにとっての幸せは何なのか、それはシンシアにしか決めることのできないことだから。
シンシアがキース男爵を選んで二人で生きていくにしても、たとえ他の道を選んだとしても、シンシアの未来がどうか幸せであってほしいと、心からそう思ったの。そして、長いわだかまりを経て、今はそう思うことのできた自分に
過去の事実は決して消えないけれど、それでも……それでも、きっと私はやっと自分の過去を受け入れられたのだとほんの少しだけそう思えるの。
「マーガレット様。兄上は以前『マーガレットが聖女だと気付いていたのならこんな
レオナルド殿下は、その
「たった一人の婚約者も大切に出来ない王子が、ソルト王国民全員の幸せを背負えるはずがないよね」
出会った時にはまだあどけない九歳だったレオナルド殿下は、会うたびに成長していて、今では立派な十四歳の王太子殿下になっていた。それでも、そのまっすぐさは出会った時と少しも変わっていなかった。
私はいつまでもレオナルド殿下のその
いつかレオナルド殿下が『マーガレット様を「姉上」と呼べなくなったことがとても悲しいんだ』と言ってくださったように、私もレオナルド殿下のことを『弟』と呼べなくなったことをとても悲しいと思っているの。
(さっすがレオー)
(クソ元王子とは
(毎晩夢の中でいい子いい子と
「みんと。レオナルド殿下が
(私もレオと夢の中で遊びたーい)
「くっきーも。レオナルド殿下にはぐっすり眠っていつも元気でいてほしいでしょ?」
(レオにはいつでも元気でいてほしいから夢の中で遊ぶのは
そんな
「今日は、スピーチの件の返事を聞かせてくれるんだよね?」
ひとしきりレオナルド殿下と遊んで満足した妖精さん達が王宮の探検に
「はい。先日レオナルド殿下に言っていただいた言葉を私は一生の宝物にします。もしも私の言葉でたった一人でも
「マーガレット様。ありがとう。僕は、マーガレット様の存在が誰かの希望になると心から思っているよ」
レオナルド殿下が私に向けるまなざしは、私が
いつだって私のことをソルト王国の国民の一人として尊重してくださった。
だから、たとえばこの国に妖精の愛し子がいなかったとしても、レオナルド殿下が国王になるこの国なら。国民一人一人の幸せを願って、その責任を背負えるレオナルド殿下が治めるソルト王国なら。きっと何の

「ルイス! あの屋台で売っているチキンステーキも
「マーガレットのこんなにはしゃいでいる姿は初めて見たかもしれません」
「だってフェスティバルなんて初めてなんだもの。色んなお店が出ていて目移りしてしまうわ! 商品を見ているだけでとても楽しいわ!!」
(アップルキャンディーも美味しそうなのー)
(あっちのお店の
(バナナではなく全屋台にホットショコラをかけてベトベトにしてやろうか)
『聖女の儀式』当日のフェスティバルでは、教会近くの通りに数えきれないほどの屋台や出店が並んでいた。とても
私は以前オルタナ
(あっちにも楽しそうな屋台があるよー)
(行こー行こー全部見て回るのー)
(次はどの屋台にいたずらをしてやろうか)
くっきー、しょこら、みんと。屋台にいたずらしちゃダメよ? 私達も屋台を見て回るからソフィア様のお店でまた会いましょうね?
私の言葉に妖精さん達は
「何か食べてみますか? どうやら食べながら歩けるように串に刺したり色々と
笑いながら妖精さん達を見送っていた私に、ルイスが楽しそうに声を
「ぜひ食べてみたいわ! どれがいいかしら? ソフィア様はお
「そんなに笑って、どうしたの?」
「いえ。無邪気にはしゃぐマーガレットが可愛すぎてついつい笑ってしまいました」

ルイスの
「僕はマーガレットの食べたいものが食べたいです」
「それは答えになっていないわ」
ゆっくりと屋台を
広場では、
「すごい盛り上がりね!」
「ここで歌を聞きながら、串焼きを食べましょうか?」
「外で立ちながら食べるだなんて初めてだからドキドキするわ」
「僕もです」
青空の下で、
「私の知らない楽しいことは、きっとまだまだたくさんあるのね」
「これから
ルイスは
「マーガレット様。いらしてくださったんですね」
広場から戻ってきた私達に出店から明るく声を掛けてくださったのは、私と同じようにワンピース姿のソフィア様だった。
ソフィア様がフェスティバルでホワイト
(わ~い! ショコラミントクッキーがたくさんあるのー)
(僕たちのショコラミントクッキーもあるよー)
(むむ。この店だけはホットショコラまみれにするのは
「この形は……」
しょこらが言うように、売られているショコラミントクッキーの
「養護院の皆が色んな形があった方が楽しいと言うので私が作るクッキーは天使達の形にしたんです。……勝手なことをしてしまってご
(とっても嬉しいのー)
(みんなに買ってほしいよー)
(
「まさか。とても嬉しいわ」
「良かったです」
ソフィア様と笑い合う私の
「ソフィア様。念のためですが……僕達の形のクッキーはないのでしょうか?」
「ルイス様とマーガレット様の形のクッキーですか? すみません。さすがにそれは販売していません」
申し訳なさそうに言うソフィア様に、ルイスは
「いえ。決して僕がマーガレットの形をしたクッキーをまた食べたかったという
顔を真っ赤にして訳の分からないことを必死に語るルイスがなんだか可愛くて、その必死な愛情がくすぐったいほど
「マーガレット様ご本人の形のクッキーはありませんが、マーガレットの花の形のクッキーはありますよ。とても好評なのでぜひ
ソフィア様はそう言って、マーガレットの花の形のショコラミントクッキー入りの袋を差し出した。
「すごい。私は円い形のクッキーを作るだけで
お花の形のクッキーに感動した私は思わずお店にいた子ども達に声を掛けた。
「そうだよ! キレイに作るのは大変だったけど
「ソフィア様とシャーロットお姉さんとマーカスが
「色んな人が『
口々に教えてくれる子ども達が皆とてもいい
マーガレットの花の形入りの袋と、
……あの方は……。
「彼は、ロバーツ
思わず
「そうだわ! ソフィア様と新入生
私の言葉に、ソフィア様はその白い頬を赤くした。
「マーガレット様は、二年も前の私に起きたそんな
嬉しそうに言うソフィア様に、まさか『全く覚えていなかったけれどつい最近妖精さん達の
「でもなぜアルバート様がここに?」
「実は……ロバーツ子爵家からアルバート様との
「……しかしアルバート様は長男でしたよね? もしかしてホワイト男爵家は
嬉しくて思わず笑ってしまっていた私の隣からルイスの心配そうな声が届いた。
そうだわ。アルバート様はライリー様と同じでご長男でありご実家の
「それがロバーツ子爵家は、アルバート様の弟様が継がれるとのことなんです。……私は気付いていなかったのですが……アルバート様は、新入生
「もしかしてそれはソフィア様と
「あの……。はい……。アルバート様はそうおっしゃってくださっています」
あのダンスパーティーの夜にソフィア様に
「ソフィア様はアルバート様からの婚約の申し出を受ける予定なの?」
初めてのフェスティバルという大切な日にアルバート様を養護院の皆との出店に招待していることで、その答えを予想しながらも私はソフィア様に問いかけた。
「最初にロバーツ子爵家からそのお話をいただいた時はとても
照れくさそうに、だけど
「それにアルバート様は、私が作ったお
ソフィア様はそう言って、今度は飛び切りの笑顔で笑った。
ソフィア様の笑顔につられてアルバート様の方を見ると、今度はマフィンをそのふっくらとした頬
「マーガレット。僕だって……量はそれほど食べられませんが……美味しいものを食べる時は笑顔になります!」
ルイスが
「ルイス? どうしたの?」
「だからアルバート様をそんな顔で見つめるのはやめてください」
「何を言っているの? 私はアルバート様を見つめてなんて……。それにそんな顔って一体……」
あくまで真顔のルイスと、
「ルイス様は
「なっ!? 僕は嫉妬深くなどありません」
ルイスは、ソフィア様の言葉に
「ソフィア様! 私もお菓子を買いたいのですわ!」
「カナン様。ありがとうございます。
ソフィア様は学生時代と変わらない明るい笑顔でカナン様を
「私は、ショコラミントクッキーとマフィンを三
「ありがとうございます」
ソフィア様が笑顔でカナン様が
驚いた私達が視線を向けると、ベンチにいるアルバート様が勢いよくむせていた。
「アルバート様!
そう言ってソフィア様は慌ててお水を用意してアルバート様に渡した。アルバート様はソフィア様からいただいたお水をごくごく飲んで、やっと落ち着いたようだった。
「ソフィア様。ありがとうございます。養護院の子ども達と作ったというマフィンがあまりに
そう言って照れくさそうに笑うアルバート様をソフィア様はとても温かい目で見つめていた。……そんな微笑ましい二人の様子を見ているだけで、私もとても温かい気持ちになった。
「お似合いなのですわ!」
カナン様がそんなお二人の様子を見て
それからお二人の前まで歩いて行って、アルバート様に向かって堂々と宣言をした。
「アルバート様! もしもソフィア様を傷つけるようなことなどあれば、私は
アルバート様は突然のカナン様の登場に口をぽかんと開けて驚いていたけれど、すぐに
「僕はソフィア様と
その公衆の面前でのアルバート様の告白のような宣言に、出店にいた養護院の子ども達と
「皆の前で告白だなんて物語みたいー」
「くっそぉ。僕が大人になったら絶対ソフィア様を取り返すんだ」
「ソフィア様とアルバート様お似合いー」
(ぽっちゃりってばやるー)
(ソフィアと同じ温かい空気だから、僕ぽっちゃりも好きー)
(マフィンを胃の中で十倍に
皆に
「マーガレット。ここは僕もマーガレットへの愛を叫ぶべき場面でしょうか?」
そんなお二人の様子を見たルイスが、決意を固めたというような真顔で言い出すので私は慌てて止めた。
「ルイス。絶対にやめて。私達はすでに
「夫婦だから愛を叫ばなくても
「えぇと……。私はすでにルイスの愛情を感じているから、私だけがそれを知っていたいから、
私の必死の言葉にルイスは顔を赤くした。私も自分の言葉に顔を赤くして、気づけばアルバート様とソフィア様と同じくらいに真っ赤になっていた。
(めがねとマーガレットもやるー)
(ぽっちゃりとソフィアに負けないくらい真っ赤だよー)
(眼鏡を十倍に膨らませて、スーパーめがねに進化させてやろうか)
ひとしきり養護院の皆の囃し立てが落ち着いた後で、顔色も元に
「もしこれからアルバート様がソフィア様の将来の
「アルバート様。カナン様はとても
カナン様の言葉や態度にアルバート様が委縮してしまうのではないかと
アルバート様はそんなソフィア様に向かって優しく微笑んで、
「ソフィア様。大丈夫ですよ。カナン様の
「貴方は何の話をしているのですか? 意地っ張りの天使?」
衝撃発言に
だけど確かに『意地っ張りの天使に𠮟られたいの会』とは一体何かしら? ルイスから以前『「カナン様に𠮟られたい」という願望を持つ方が、男女問わず一定数いる』という
私が考えている間に、なぜかソフィア様がとても慌ててカナン様とアルバート様の間に割って入っていた。
「何でもないんです! あっ。カナン様! もし良ければマカロンもあるので試食されませんか? ほとんどシェフが作ったので売り物ではないのですが、養護院の皆と食べようと思って用意していたのです。カナン様もぜひぜひお
そんなソフィア様の
「
と叫んで『意地っ張りの天使』の件は

「マーガレット。とてもキレイです」
フェスティバルの
「……スピーチのこと、
「……どうして?」
「顔がいつもよりほんの少し
「自分では分からないわ」
「きっと
「……結婚して一年以上経っても?」
「何年経っても、僕はきっと必死でマーガレットを見つめています」
「……これから何年経っても……。どれだけ時が経っても、ルイスは変わらずに、誕生日にはマーガレットの花束を
「約束した通りです」
……そう。去年の誕生日に約束してくれた通りに今年も、誕生日当日にルイスは
そして、花束と一緒にフェスティバルでのスピーチのためだという緑色のドレスも贈ってくれた。
「ねぇ。ルイス。……どうしてこの色のドレスを選んでくれたの?」
このドレスを受け取った時、目に飛び込んできたその美しい緑色に私の心は
「……緑色に包まれていれば、マーガレットがスピーチの際に少しでも安心出来るかと思ったのです」
緑色は私にとって特別な色。
お母さまの形見のブローチの石の色。
そして、お父さまの瞳の色。
だけど、それは……。そのことは
「ルイス。……私は先日レオナルド
声が震えてしまうことを止めることはできなかった。だけど必死でルイスの瞳を見つめて、私は今度こそ何の
ずっと誰にも言えなかった私の二つの秘密が
「
私の必死の言葉を聞いても、ルイスの表情は少しも変わらなかった。
ただその言葉を聞く前と同じように私を見つめて、ルイス自身の言葉を返してくれた。
「マーガレットは、十六歳のお誕生日の時に『私が
そうだわ。私はルイスに同じ質問を……。たとえ私が公爵令嬢でなかったとしても、ルイスが変わらず私を
「マーガレット。どうか僕を信じてください。僕のマーガレットに対する気持ちは、マーガレットが何者であっても何も変わりません。マーガレットはマーガレットです。妖精の愛し子でも、聖女でも、公爵令嬢でなかったとしても。僕の願いはいつだって一つだけです。僕は、マーガレットが幸せならそれでいいのです。
ルイスのその言葉は私の心に
たまらなくなって。どうすればいいかわからなくなって。この気持ちを言葉では表すことができなくて。どんなに
私は、ルイスを
「マ、マ、マ、マーガレット!? どっどうしたのですか!? マーガレットの方から抱きしめてくださったことなどないので……心臓が……止まりそうです……」
「
「……マーガレット。ありがとうございます。どんな言葉よりもずっと伝わりました」
「ルイスは私の特別だから。言葉では表現できないけど、でも、ルイスは私の
「僕もたくさんの言葉は持っていませんが、それでもこの気持ちをマーガレットに伝えたいのです」
そう言ってルイスも私を力強く抱きしめた。
ルイスの温かい胸に包まれていると、私の胸から十六歳の誕生日にお母さまのお手紙を読んで以来誰にも言えず
「……本当はやっぱり不安なの。王族でもないのに国民の
「……
ルイスはそう言いながら、私の頭を
「マーガレットなら出来るよ。マーガレットの
「私なんかの言葉で本当に救われる誰かがいるのかしら?」
「……少なくとも僕はマーガレットの言葉が誰かに
「ドレスだって本当はさっきのワンピースのままがいいのかもしれないと不安なの」
「どうして?」
「スピーチを聞いてくださるのはきっと平民の皆さんが多いでしょう? 高価なドレスを着ていて不快に思われないかしら?」
「ありのままのマーガレットで大丈夫だよ。服装なんか関係ない。今のマーガレットがマーガレットとして
「私の言葉を聞いて不快になる方がいたらどうしよう」

「すべての人間に届く言葉なんてきっと存在しないから、もしかしたらそういう方もいるかもしれま……しれないけれど……。それでもマーガレットの言葉を聞きたいと願っている人間もたくさんいるから、その方達に向けてどうかマーガレット自身の言葉を伝えてあげてほしい」
誠実に紡がれるルイスの言葉は、私の不安を一つ一つはらってくれた。ルイスが言葉を発するたびに撫でられる頭から伝わる体温が温かくて、こんな時なのに
「……ねぇ。どうしてさっきから無理して敬語を使わないようにしているの?」
「僕は恋愛小説は読んでいませんし、きっとマーガレットの胸をときめかせることが出来るような
まだまだぎこちないけれどルイスが敬語を使わない相手は世界でたった一人、私だけ。疑いもなく私はルイスにとって特別なんだと実感できた。
私はもう何度も何度も心の中で思ってきたことを、改めて思った。
あぁ。なんて
スピーチに対する不安はもうなかった。それよりもルイスに対する愛情の方がずっと私の胸を

「私は、このような場所でスピーチをすべき人間ではきっとありません」
ルイスの
舞台の前にはたくさんの国民の皆様がいらしてくださっていた。その最前列で、ルイスと、カナン様とソフィア様にアルバート様が、
「それでも、私は今日この場所で自分の気持ちを皆様に伝えることを決心しました。もしもたった一人でも、この世界にたった一人だけでも、私の話を聞いて希望を持てる方がいるのなら、その方のために私はこの場所で話をしたいと、そう思ったのです」
「まだ幼い
私は、空を見上げた。そこには私が幼い頃からずっと寄り
(私たちはいつもマーガレットと
(ずっとずっとマーガレットと一緒だよー)
(マーガレットを独りぼっちになんてさせるはずがないと何度でも言ってやろう)
「何を幸せだと感じるかは人によって
命が
「今の私が日常を幸せだと思えるのは、愛されない
もしかしたらどこかでこのスピーチを聞いているかもしれないシルバー
……だけどもし彼らがいなかったら? 私と同じ思いをしていて、妖精さん達のいない生活に耐えている
「現状がどんなに苦しくても、必ず未来は開けます。私に手を差し

震える手のひらをそっと押さえて、私はまた前を向いた。
「この世界のどこかで苦しんでいる誰かのために、本当の意味で私に出来ることはもしかしたら何もないのかもしれません。それでも私はいつだって祈っています。どうか生まれ育ったソルト王国の皆様が、お母さまの出身であるオルタナ
つたない言葉で、気持ちの半分も
不安に思う私の耳に、溢れるほどの
全員を満足させられる言葉なんてない。誰かにとっては忘れられない大切な言葉でも、
(私たちに
(だけど僕たちはマーガレットのためならどんな魔法だって使えるのー)
(我々の愛情を形にしてやろう)
「マーガレット様。とても
「本当に。とても感動しました」
「レオナルド殿下。アリス様。過分なお言葉をありがとうございます」
「こんな風に自分の目でソルト王国民の溢れる笑顔を見ることが出来て、とても
レオナルド殿下はいつものように
(レオも舞台に行くのー)
(
(クソ王子との格の違いを思い知らせてやればいい)
「えっ? 僕は舞台には立たないよ?」
「レオナルド殿下。ぜひレオナルド殿下からも国民の皆様に言葉をかけてさしあげてください」
私はレオナルド殿下をフォローするように自然に言葉を続けた。アリス様は首を
(しょこら、みんと。手伝ってー)
(いいよー)
(レオを舞台にひとっ飛びさせてやろう)
(((せーの!!)))
妖精さん達の
「レオナルド様っ!?」
驚いて心配をするアリス様に私は出来るだけ落ち着いた声で話しかけた。
「アリス様。
私の言葉に
広場に集まっていた国民の皆様も、突然人間が舞台の上に現れたことにとても驚いて
舞台の上で、私の時よりもずっと大きい歓声と拍手に包まれたレオナルド殿下に向かって妖精さん達がまた言葉を掛けた。
(皆レオを待ってたのー)
(レオは皆のヒーローだからー)
(民衆の声を聞かせてやろうか)
歓声と拍手が大きすぎて一人一人の声なんてまったく聞こえない
そして、一人一人の声が
「ありがとうございます。ありがとうございます。フェスティバルに向けて仕事を得られたおかげで今日も食事ができます」
「養護院の皆で作ったバナナケーキがたくさん売れたから今度新しいノートを買ってくれるってシスターが言っていたの」
「自分には才能なんかないと歌手になる夢を諦めるために今日の舞台を最後にしようと思っていたけれど、才能を認めてくれる人がいた! すべては私にチャンスを
国民の皆様が
「ありがとう。僕にはまだまだ力が足りないところもあるけれど、僕が、僕の
広場には、ソルト王国の王太子であるレオナルド殿下の力強い声が響き
レオナルド殿下の言葉に、今日一番の大歓声と拍手が鳴り響いた。
「レオナルド様……」
隣でアリス様が感動したように
私はそんなアリス様を
「レオナルド殿下はとても
そんな私の言葉に、アリス様は私の顔を見て静かに語りだした。
「……最近たまにとても不思議なことが起こるのです。……信じられないかもしれないのですが、たとえば紅茶を飲んでいるのにコーヒーの味がしたり……。それはもしかしたら
いつもは

「くっきー、しょこら、みんと。フェスティバルでの私のスピーチがソルト王国の皆様全員の頭に響いていたというのは、もしかしなくても
スピーチから数日後の
(私たち悪いことなんてしてないよー)
(マーガレットの言葉を皆に届けたかっただけだよー)
(
「広場にいらした皆様の前でお話をするだけであんなに
「僕はマーガレットのスピーチが広場にいた方達にだけではなく、ソルト王国の皆様に届いて良かったと思いま……思うよ」
ルイスはそう言って私の頭を
(最近めがねが積極的ー)
(えろめがねー)
(眼鏡をピンク色に染めてやろうか。ついでにオプションで
妖精さん達の言葉に、私の頭を撫でていたルイスの手が止まった。
「くっきー様。確かに最近の僕は積極的に自分の気持ちをマーガレットに伝えていますが。しょこら様。決してえろめがねなどではありません。みんと様。僕の大切な眼鏡の色を変えようとするのはやめてください。そしてオプションも辞退させていただきます」
(めがねがまた難しいこと言ってるー)
(えろめがねはえろめがねだよー)
(ピンクが不満なら久しぶりに七色にしてやろうか)
「以前眼鏡が
(ご要望にお
「決して要望していません」
むきになるルイスを
「それからマーガレットのスピーチの後で降り注いだマーガレットの花びらは、また世界中に飛んで行ったよう……だよ」
なんとかみんとに眼鏡の色と髪の毛を七色にされてしまうことを
「そしてソルト王国内では、手元に
「ソルト王国で、
「フェスティバルは年に一度しかないけれど、もっと
「レオナルド殿下ならきっと
「僕も、レオナルド殿下と
「私も一緒に背負うわ。ルイスが背負っているものを一緒に背負わせてほしいの」
「ありがとう。マーガレットが
「ふふっ」
「マーガレット。笑わないで……。たとえマーガレットの前だけだとしても、十七年間慣れ親しんだ敬語を使わないということは、想像以上に僕には難しいので……難しいんだ……」
「不器用でぎこちないその
私はルイスに向かって
それから私の頭を撫でながら何度も言ってくれた。
「スピーチよく
ルイスのその言葉は、その手のぬくもりは、それは泣きたくなるほどの安心感だった。
ソルト王国民の皆様の前でのスピーチだなんてとても緊張した。本当はとても不安だった。それでも、それを認めて、無条件で
ルイスとの
だけど、ハッピーエンドのその後も私達の人生はずっと続いていく。
たとえば年を重ねても毎年結婚記念日には、ルイスと一緒に結婚式の年のワインを飲んでいたけれど、ある年だけ私がワインを飲めない年があったように。
たとえば誕生日に
たとえばルイスのお誕生日に贈るショコラミントクッキーの中に
私達の人生はハッピーエンドで終わりなんかではなくて、これからもずっと続いていく。
ソフィア様の物語も、カナン様の物語も、レオナルド殿下の物語も、私の知らないところでもたくさんの物語が続いていく。
たとえば少し悲しいけれど私が死んだ後だって、新しい妖精の愛し子のもとで、くっきー、しょこら、みんとの新しい物語が続いていくかもしれない。
その一つ一つを愛しいと、大切にしたいと思えるから。
どうかこの世界が
そして、祈りを続ける私の胸にはいつだって愛しい彼らの声が
(私たちはずっとマーガレットと一緒だよー)
(いつだって僕たちはマーガレットの味方なのー)
(
~ happily ever after 続いていく人生がこれからもずっと幸せでありますように ~