
(今日はソフィアのおうちー)
(草のお店で僕たちが選んだお
(
「くっきー、しょこら、みんと、おはよう。今日も元気いっぱいね」
オルタナ
「くっきー様、しょこら様、みんと様。おはようございます。
(めがねは朝から眼鏡ー)
(元気めがねー)
(めがねは朝でも昼でも夜でも眼鏡だと気づかせてやろうか)
「みんと様。僕が一日中眼鏡であることは僕自身が一番知っています。そして僕はそれを
(めがねが得意げー)
(ドヤ顔めがねー)
(むむ。すでに気付いていたとは不覚だったと反省してやろうか)
オルタナ帝国から帰国して一週間。妖精さん達とお話ができるようになったルイスは、彼らにからかわれながらもいつも彼らに対して
「今日は、ソフィア様のお屋敷にオルタナ帝国のお土産を
妖精さん達に向けていた笑顔のままルイスは
「ええ。料理長のお店で買ってきたオレンジの
(オレンジのはちみつ漬けは私の一押しー)
(グリーンソースは僕のおすすめだよー)
(こっそり
「くっきー、しょこら、みんと。これはソフィア様達へのお土産だからいたずらしたりこっそり食べたりしちゃダメよ?」
(私たちいたずらなんてしないよー)
(ほんの少し
(はちみつをこっそり口に
オルタナ帝国で楽しんだオレンジの蜂蜜漬けとグリーンソースの味を思い出したのか妖精さん達は幸せそうに飛び回った。
「ホワイト
私の言葉に、ルイスは相変わらず笑顔のままで

「マーガレット様。本日はお
ホワイト男爵家に
「おはようございます。今日もいいお天気ですね」
思わず笑顔で
……私、何か困らせてしまうようなことをしてしまったかしら?
「マーガレット様。
執事に言われて、初めて自分が敬語を使っていたことに気がついた。
……私ったら無意識のうちに……。
「……そうね。ごめんなさい。……おはよう」
「マーガレット様。おはようございます」
執事のその一言で、私にとってとても落ち着くその声を聞いて、私の心は温かくなった。……それは……とても幸福な
「申し訳ございませんが、少々お待ちくださいませ」
応接室に通された私は、執事の案内でソファーに
「シャーロット。ありがとう」
「マーガレット様。おかえりなさいませ」
心から安心したように笑うシャーロットを見て、私のことを本当に心配してくれていたのだと改めて感じた。
「ソルト王国に帰ってきたらすぐに、シャーロットに御礼が言いたかったの。……まだ幼かった私の好きな食べ物と
私の言葉にシャーロットは目を見開いた。
「そのようなことでマーガレット様から御礼を言われるだなんてとんでもないことでございます。シルバー公爵家から追い出された当時の私には、マーガレット様のために出来ることはそのくらいしかございませんでした」
「それでも、私は料理長からその話を聞いた時には本当に
「マーガレット様にそのように言っていただけて、光栄です」
シャーロットは顔を
「……ですが……実は、私にマーガレット様のお好きな物やお嫌いな物を教えてくださいましたのは、スカーレット様なのです」
「……お母さまが……?」
「スカーレット様は、毎日マーガレット様がお休みになった後で、とても幸せそうにその日のマーガレット様のお話をしてくださいました。『今日はマーガレットがとても
「……お母さま……」
私はお母さまからの深い愛情を感じて、とても嬉しくて、だけど切なくなった。
「私は、スカーレット様のことを、月のようなお方だと思っておりました」
遠く
「スカーレット様は、お
シャーロットの言葉に、私はお母さまの温かい
「……シルバー公爵家の
「……そんなはずないわ。だってお父様には
「申し訳ございません。余計なことを申し上げました。……ただ私は、旦那様が生前のスカーレット様に向けて、
シャーロットは申し訳なさそうに顔を
きっとシャーロットは
……だって、私はお父様の本当の
お父様が本当に愛していたのは、
しばらく二人で無言になってしまった後で、シャーロットはまた昔を思い出すように言葉を
「スカーレット様はお亡くなりになる数か月前に、とても
お手紙? それはきっと十六歳の私と、未来の旦那様に向けたお手紙だわ。
「けれどスカーレット様が書き上げた三通のお手紙は、私が気付いた時には一通になっていました」
「待って。シャーロット。今、三通と言った? お母さまが
「……いえ? スカーレット様が
シャーロットが見た三通のお手紙のうち、消えた二通のお手紙はお母さまが
「受け取っていない残りの一通は一体……」
思わず
「お手紙はちゃんとマーガレット様の
「ええ。お母さまからのお手紙はちゃんと私の許に届いたわ」
「良かったです。……私は、あのお手紙は時が来たらマーガレット様に届くように、スカーレット様がお
確かに、もしも妖精さん達が預かってくれていなかったら、お母さまが十六歳の私に向けて書いたお手紙はきっと先にメイド長達に見つけられていたわ。そうしたらきっと義母にそのお手紙は
「……一通だけ残ったお手紙は、スカーレット様ご自身がお屋敷の庭園の
「……えっ?」
「ある日の夕暮れ時にスカーレット様がお部屋にいらっしゃらないことに気付いて
……届かなかった三通目のお手紙は、お母さまご自身が燃やしていた? どうしてそんなことを? 私は、シャーロットの言葉に理解が追いつかなかった。
「スカーレット様は、ほんの少し悲しそうに、けれどどこかさっぱりとした顔で、このようにおっしゃいました。『この手紙は決して渡すことの許されない人
……きっとそのお手紙は、私の本当のお父さまに、お母さまが人生でただ一人愛した人に、そのたった一人の人に向けて書いたお母さまの人生
お手紙を燃やした時のお母さまに思いを馳せて私はそっと目を伏せた。
「マーガレット様。大変お待たせして申し訳ございませんでした」
お母さまのことを思いながらシャーロットの
「ソフィア様。おはよう」
笑顔の私を見たソフィア様は安心したように
「マーガレット様がオルタナ
お屋敷に着いてすぐに探検をしに
(私たちのお
(みんな喜んでくれるかなー)
(喜びが足りなければ
自分達の選んだお土産が喜んでもらえるかウキウキしている妖精さん達に
「オルタナ帝国でたまたま入ったお店が、なんと料理長のお店だったの。お土産を買って来たから、もし良ければ
「ありがとうございます! シルバー
「ソルト王国ではあまり流通していないけれど、オルタナ帝国では
「オレンジの蜂蜜漬け? 初めて聞きます! どんな味なのか食べるのがとっても楽しみです! 甘そうなのでバニラアイスにも合いそうですね! それにグリーンソースも料理長からのお手紙に自信満々で『絶対にホワイト
(私の一押し喜んでもらえたのー)
(僕のおすすめ大好評ー)
(我々のセンスを
とても嬉しそうなソフィア様の
妖精さん達のダンスを見て思わずほっこりしていた私の目に、
「ソフィア様? ……何か心配事が?」
私の問いかけに、ソフィア様は
「……マーガレット様」
何かを言いたそうな、だけどなんとか
「……ソフィア様は、先日私に『お友達は、相手のためなら何でもできる』と言ってくれたわよね?」
「はい」
「私もソフィア様と同じよ。ソフィア様は私の大切なお友達だから、困ったことがあればどんなことでも教えてほしいの」
その言葉を聞いたソフィア様は、
「……マーガレット様にそんな風に言っていただけるだなんて……本当に幸せです……」
ソフィア様はゆっくりと言った後で、深呼吸をしてから話し始めた。
「……実は……スミス
ソフィア様に婚約のお話が? それはとても
「ライリー様って、学園時代にキース
私は
「はい……。現在の騎士団長であるスミス伯爵のご子息で、学生時代はずっとキース元殿下の側近候補として仕えていらしたライリー様です……」
「ソフィア様とライリー様は、面識があったの?」
「まさか。身分も
「一方的に命じられている……?」
そのあまりに
(ライリーやっちゃう?)
(さくっとやっちゃう?)
(とりあえずオレンジに見立ててはちみつと一緒に
くっきー、しょこら、みんと。ライリー様をさくっとやっちゃダメよ。ソフィア様の話を聞いてから……場合によっては色々と……考えましょう。
(まだやっちゃだめだってー)
(つまんなーい)
(
心の中でこれから強制的にいたずら祭りに参加させられてしまうシェフに謝罪しながらも私はソフィア様との会話に集中した。
「一方的に命じられていると言ってしまうと
暗い顔をして言葉を
「ライリー様との婚約は、ソフィア様にとって幸せなことではないのね?」
私の質問に対して、ソフィア様はさっきまでの暗いだけの表情ではなくまっすぐな目をして答えた。
「私は、お父様の人を見る目を信じているんです」
「……ソフィア様のお父様の人を見る目……?」
「この
後ろに
その顔は、使用人というよりは家族のような心からいたわるような心配そうな顔だった。
「……スミス伯爵家から婚約のお話が来た後で、ライリー様がこの屋敷を訪問されたことがあるのですが……その時の態度がとても
「……そんなに酷かったの?」
「『伯爵家の
「えっ?」
「……それを聞いた全員が
「……でも、そんなに酷い態度なのにどうしてライリー様は婚約を申し込んだのかしら……?」
「ライリー様がおっしゃるには、二年前に学園で開催された新入生
「では、ライリー様はソフィア様のことが二年前からずっと好きなのね?」
「……正直、あの態度を見ていたらとても信じられませんし……。それに……」
ソフィア様はとても言いづらそうに口を
「ソフィア様。どうしたの? 気になることがあるのなら何でも言って?」
そんな風にソフィア様に言葉の続きを
「……なぜかライリー様から『マーガレット様に会わせろ』と
「えっ? 私に……?」
「……はい。理由を聞いても『お前なんかが知る必要はない』としか答えていただけないのですが……」
ソフィア様はとても申し訳なさそうな顔をしていた。
私は必死でライリー様との思い出を
ライリー様はキース殿下の側近候補だったから顔を合わせたことはあったけれど、個人的にお話ししたことはなかったはずだわ。それなのにどうしてライリー様は私と会いたがっているのかしら……。
「これはスミス伯爵家とホワイト
思わず考え込んでしまった私に、ソフィア様は
「私が、ライリー様に
「「ソフィア様っ!」」
ソフィア様の
「……思わずお話を
我に返って謝罪した執事に対してソフィア様は、いびつではない
「
そうだわ。ホワイト男爵家にはソフィア様しか
スミス
「ソフィア様。私達が心配しているのは、自分達の
執事はとても優しい声でまっすぐにソフィア様を見つめて言葉を伝えた。
「私の幸せなんて……」
悲しそうに言葉を紡ぐソフィア様の様子に、執事はたまらずというように言葉を発した。
「ソフィア様。……実は……私には、子どもがいるのです」
……きっと執事……お父さまに
「……私には父親だと名乗ることは
お父さまのその言葉は、私の心を明るく、温かく、優しく照らしてくれるようだった。私はそっとお父さまの、本当の家族の、その
「そして、同じようにソフィア様の幸せも願っているのです。ソフィア様には
お父さまの言葉は、ソフィア様への深い愛情で満ちていた。
オリバー
私が、私のお母さまを愛していると思うのは、ただ血が繋がっていたからという理由だけではなく、私が生まれてからずっと、お母さまが死ぬ
私が、私のお父さまを大切だと思うのは、ただ血が繋がっているからという理由だけでなく、お母さまがお
だから私は、血が繋がっているからという理由だけでなく、私のお父さまとお母さまを
「私も同じよ。私もソフィア様の幸せを願っているの。ソフィア様の問題なら私の問題だわ。理由は分からないけれど、ライリー様が私と会いたがっているのならいつだってお会いするわ」
私はソフィア様の目を見て微笑んだ。
ソフィア様は、ほんの少し目に
「マーガレット様……。ありがとうございます……」
「だってソフィア様は、私の大切な初めての人間のお友達だもの」
そんな私の言葉にソフィア様より先に答えたのは、いつの間にか
(私たちがマーガレットの初めてのお友だちだよー)
(人間の中ではソフィアがいちばんー)
(友情とは永遠
くっきー、しょこら、みんと。そうね。
(えへへーマーガレットのはじめてー)
(僕たちは永遠なのー)
(喜びに打ち
人間の深刻な空気とは裏腹に、ひとしきりシェフにいたずらをして満足したらしい妖精さん達は元気に応接室中を飛び回っていた。

「ライリーがソフィア様に
ソフィア様のお
「そうなの。ライリー様はソフィア様のことを二年前の新入生
「ライリーとは、当時キース元殿下の側近候補として学園生活で共に行動する時間も長かったのですが……。ライリーがソフィア様に
「どうかしたの?」
「……いえ……。僕は
「ルイスが恋愛に疎いことは知っているわ」
「マーガレットにそこまで
「あっ。ごめんなさい……。えっと……ルイスが恋愛小説を読んだことがないことは知っているけれど……」
「言い
「ライリーは、シンシア様からいただいたクッキーを毎回とても
「……シンシアがクッキー……?」
「キース元殿下達と一緒に昼食を食べている時に、持参したクッキーをシンシア様の手作りだと言ってたまに
ルイスの言葉に私は首を
「シンシアが料理をしているところなんて見たことがないわ」
そんな私の疑問に答えるようにルイスは自信満々に言った。
「あのクッキーは、シルバー
「どうしてルイスがそんなこと……」
「シンシア様からいただいたクッキーには、通常のクッキーよりも
シンシアのクッキーの秘密について熱く語っている間に、ルイスの眼鏡は妖精さん達に
「ルイス……。一体何の話を……」
「ソフィア様からいただいたショコラミントクッキーにはあの滑らかさはなかったので、バニラアイスを加えるというのは元料理長のオリジナルだったのですね」
「ルイス。落ち着いて。曇った眼鏡もずれているし、一体何の話を……」
私の言葉にルイスは我に返って、
「失礼しました。要するにシンシア様は、元料理長に作っていただいたクッキーを自分の手作りだと宣言して僕達に配っていたのだと思います」
それはありえるというか、シンシアがクッキーを手作りしていたというよりもよっぽど
「……だけど……。いくらなんでもキース
「……キース元殿下は、シンシア様からクッキーを
ほんの少し気まずそうにルイスは言った。
第一王子であるキース殿下が、いくら相手が
「だけど、それとライリー様に何の関係が……?」
「すみません。シンシア様のクッキーが元料理長の手作りだったことと、
「……でしょうね」
「ただ僕の目には、ライリーがシンシア様からいただいたクッキーを、まるで
「……それは……」
「それが未来の
「……ライリー様がシンシアを……。キース殿下は、そんなライリー様の様子を見てどんな反応をしていたの?」
「……キース元殿下は、シンシア様に夢中でライリーの様子など目に入っていないようでした」
なんだか学生時代の話を聞けば聞くほどキース殿下って……。元
キース殿下は、王子としてはオルタナ帝国のオリバー殿下も
「だけど、もしルイスのその推測が当たっているのだとしたら……。ライリー様が二年前のダンスパーティーの時からソフィア様を想っていたという話は……」
「
「ソフィア様は、『もしライリー様のその話が真実ならこの婚約ももう少し前向きにとらえられるのに』と言っていたの」
ソフィア様のことを考えて私は胸が苦しくなった。
「ライリー様の言葉が真実か確かめられる方法はないかしら……」
『そんな方法なんてあるわけがない』と思いながらもため息交じりに
(あるよー)
(二年前に
(あの夜に連れて行ってやろうか)
「くっきー、しょこら、みんと。どういうこと? 二年前のダンスパーティーの夜に戻れるの?」
(戻るだけならできるのー)
(過去の人間には僕たちをみることはできないけどー)
(いくら戻っても過去は変えられないのだと非情な現実を伝えてやろうか)
「つまり過去は変えられないし、当時の
(そうだよー)
(僕たちすごいのーえっへん)
(過去に戻ってもクソ王子に
二年前の新入生
「マーガレット?」
考え込む私の顔をルイスが心配そうに
「……本来なら決して自分が見ることのなかった光景を、過去に戻って後からこっそり覗くのは……ずるいのではないかしら?」
「もしもそれが自分自身の利益のためならそうかもしれませんね」
ルイスは、私の目をしっかりと見つめて言葉を伝えてくれた。
「ですがマーガレットが過去に戻りたいと思うのは、自分自身のためではなく、親友であるソフィア様の幸せのためでしょう? 僕は、そのことをずるいだなんて決して思いません」
こんな風に、ルイスはいつだって私を
「ルイス。ありがとう」
ルイスに心からの感謝を伝えた。そんな私の目をルイスはまっすぐに見つめた。
「二年前の僕は、あのダンスパーティーの時には、まさかマーガレットと
そう言ってルイスは、そっと私を
(めがねってばやるー)
(マーガレットとめがねがラブラブしてるー)
(はっ
「すみません。目を
妖精さん達に
ルイスのそんな謝罪さえも愛しいと感じた。私だって同じなの。あの時にはまさかこんな幸せな未来が来るだなんて思ってもいなかった。二年後にこんなに幸せで愛しい未来が来るだなんて……。
「くっきー、しょこら、みんと。私を二年前の新入生歓迎ダンスパーティーの夜に連れて行ってくれる?」
(わ~いマーガレットと過去にお出かけー)
(僕たちも
(過去ではシンシアの炭酸を三十倍に出来ないことが無念だから今やってきてやろうか)
こうして私は、まだキース殿下の婚約者だった二年前の夜に帰ることを決意した。

「マーガレット様。また呼び出してしまってごめんね」
オルタナ
(レオに会いたかったのー)
私がレオナルド殿下に答えるよりも先に、くっきーが嬉しそうにレオナルド殿下の周りを飛び回った。
「くっきー。ありがとう。僕もまた
(オルタナ帝国で
「しょこらもありがとう。オルタナ帝国での大活躍はすごかったね」
(再会の喜びに王宮をシャンパンでひたひたにしてやろうか)
「みんとも喜んでくれて嬉しいよ。でも片づけをする使用人達が大変だから、シャンパンは僕が学園を卒業してお酒が飲めるようになるまで待っていてくれるかな? オルタナ帝国から
(レオと一緒に乾杯ー? 楽しみなのー)
(僕たちもはちみつで乾杯したいのー)
(あと二年待ちわびてやろうか)
レオナルド殿下とたくさんお話をして、一緒に乾杯をする約束もして
「今日来てもらったのは、マーガレット様にお願いがあるからなんだ」
「私にお願い……ですか?」
レオナルド殿下からお願いされるようなことなんて全く心当たりがなくて私は首を
「実は、ソルト王国で年に一度
「……フェスティバル……ですか?」
「『聖女の儀式』はソルト王国民の義務であり、ソルト王国の年に一度の一大イベントでもあるけれど、平民にとっては、ただ儀式が開催されているだけだよね? だから『聖女の儀式』が
レオナルド殿下は目をキラキラとさせて語った。
「広場の装飾作業は貧しい労働者を優先的に採用して働いていただいています。出店では養護院で作ったお
レオナルド殿下の言葉を補足するようにルイスが言葉を
「国民の
私はレオナルド殿下のその行動力に改めて感心させられた。言葉にするのはきっと簡単だろうけど、それを立案して実現するためにどれほどの苦労をされたことだろう。しかもレオナルド殿下は王太子に任命されたばかりのまだ十四歳なのに。
「それで、私にお願いというのは?」
フェスティバルはとても
「当日は、広場にある
世の中には才能があってもそれに気づいてもらえない人間もきっとたくさんいるから、誰かに見ていただけるチャンスがあることはきっととても素晴らしいことだわ。だけど、それと私と何か関係があるのかしら?
「マーガレット様には、フェスティバルの最後にその舞台でスピーチをしてほしいと考えているんだ」
そんなレオナルド殿下の言葉に、私は
「……スピーチ……ですか? ……私が? 一体何の……?」
「何でもいいよ。マーガレット様が思っていることを自由に話してほしい」
「……レオナルド殿下。……私は、自分が
「もちろんマーガレット様を聖女だと公表するなんてことはしないよ。『聖女の儀式』でマーガレット様が手をかざしても『聖なる
レオナルド殿下は、その
「だけどルイスとマーガレット様の
「……それは……」
「自分が何を信じるかを強制することなんて誰にも、国王にだってできないから。国から正式に公表されていることと、国民が信じているものが必ずしも
「……」
「マーガレット様が生まれた十七年前からソルト王国はとても
レオナルド殿下の言葉に私は過去の自分を思い出した。
国が豊かだからと言って国民全員の生活が、その心が、満たされているとは限らないのだわ。
「そういう人間にとってマーガレット様の結婚式での出来事は希望になったと思うんだ」
「……えっ?」
「世界中で起きたあのマーガレットの花びらの奇跡は、たとえば当時この国よりももっと深刻な
「……希望……ですか?」
「奇跡は起きるという希望。マーガレット様の存在は、たとえ聖女だと公表されていなくても、それだけで誰かの希望になると考えているんだ」
私の存在が誰かの希望になる……。そんなこと考えたこともなかった……。
「
レオナルド
「……レオナルド殿下は、ソルト王国の王太子殿下として私に命令をすることだって出来るのに、私に考える権利をくださるのですか?」
思わず聞いてしまった。だって、聖女という存在がいることはソルト王国にとってメリットでしかないはずだわ。それなのに、レオナルド殿下は今まで一度だって私を利用しようとしなかった。今回だってきっと、私が断れば
「マーガレット様が聖女でも聖女でなかったとしても、ソルト王国の大切な国民であることに変わりはないでしょ? 僕は、国民に命令なんてしないよ。たとえどんな答えだとしても、僕はルイスとマーガレット様が決めた
王宮を出て、モーガン伯爵家に帰る馬車の中でも私の頭の中にはずっと先ほどのレオナルド殿下の言葉が
「マーガレット。すぐに答えは出せないと思います。ゆっくりと考えてください」
隣に座っていたルイスが、そっと私の手を
「……私には、この国で『聖女』などと呼ばれる資格はないの……」
「資格……ですか? 聖女様になるために資格なんて必要ないですよね?」
「……えっ?」
「妖精様達に愛されている、それこそが聖女様である
「……だけど……私は……」
私は、本当の意味でこの国の人間ではないのに。
「マーガレットが聖女様でも聖女様でなくても、僕がマーガレットを愛しいと思う気持ちに変わりはありません。だからマーガレットが
「ねぇ、ルイス。たとえば……たとえばもしも……。私が……私が、公爵令嬢でなかったとしても……ルイスはそれでも私を……」
必死で
「何も変わりませんよ。マーガレットがマーガレットなら。
そう。……そうなのね。
『妖精の愛し子だからではなく、マーガレット自身を見つめて、愛してくれる人』
お母さまのその言葉を、私はずっと、私が特別な存在でなくても愛してくれる人のことだと、そう思っていた。妖精さん達の力が目当てではなく、何の力もない私でも変わらず愛してくれる人のことだと。だけど、きっとお母さまの言葉には
私が妖精の愛し子という特別な存在でなくても愛してくれる人は、きっと私が本当は公爵家の
私が世間からしたら
「ありがとう。ルイス。これからしっかりと考えて答えを出すわ」
(めがねとマーガレットがまたラブラブしてるー)
(めがねってばマーガレットのこと好きすぎー)
(生意気めがねの眼鏡にはひびを入れてやろうか)
モーガン