焚火台の下には、防熱シートが敷かれている。焚火の熱で地面に悪い
(そういう話も、みんなじっちゃんが教えてくれたんだよなぁ)
祖父は
焚火の
(あー……なごむなぁ……)
咲弥がそのように考えたとき、タープのシートが大きくゆらめいた。
次の
「グッドタイミングだねぇ、ドラゴンくん。キミに負けないぐらい首を長くして待ってたよぉ」
「うむ。そちらも息災なようで、何よりである」
大きな翼を背中にたたみつつ、
3
「今日はもっとも西側に位置する峰まで見回っていたので、参じるのが少々遅くなってしまった。サクヤを待たせてしまったのなら、
ドラゴンがそのように言いつのったので、咲弥は火ばさみで薪を動かしながら「いやいや」と手を振った。
「待ち合わせの時間を決めてたわけでもないんだから、
「うむ。
「あらら、お
「それこそ、詫びる必要はない。サクヤと無事に再会できたことを、心から喜ばしく思う」
本日も
これが二度目の交流であるし、相手は人間ならぬ存在であるわけだが――咲弥は、心から安らいだ気分である。もしかしたら、咲弥はこのドラゴンに亡き祖父の
(ドラゴンくんって、包容力がムンムンだもんなぁ。
咲弥がそのように考えていると、ドラゴンは不思議そうに小首を
「ところで、
「うん。そういえば、じっちゃんはタープを持ってなかったっけ。ドラゴンくんとのキャンプで、不便はなかったのかなぁ?」
「うむ。雲行きのあやしい日は、ブルーシートなるものを張っていたな」
ドラゴンの言葉が、咲弥のシナプスを
「じっちゃんのキャンプギアはまるまる残されてたけど、ブルーシートは見当たらなかったなぁ。ずいぶん年代物だったから、軽トラと
「ふむ。トシゾウが使用していたあの車は、処分されてしまったのであるか」
「うん。あたしの面倒にならないように、自分で処分したっぽいよ」
咲弥が
「まったく、手回しがよすぎるよねぇ。最後ぐらい、自分のことを一番に考えればいいのにさ」
「うむ。しかしそれこそが、トシゾウという人間なのであろうな」
そのように語るドラゴンの声は、とても
「何はともあれ、こっちの準備は
咲弥の言葉に、ドラゴンはもじもじと
「それは我にとって、限りなくありがたい申し出だが……サクヤは腰を落ち着けたばかりであろう? 我のために無理をさせるのは、忍びない」
「あはは。無理なんてしてないし、あたしもそこそこお
ということで、咲弥は調理の準備を始めることにした。
「この前は簡単なバーベキューだったから、今回はちょっと気合を入れるよぉ。ほどほどに期待して待っててねぇ」
「うむ。そのような言葉を聞かされると、期待はつのるばかりであるな」
そのように告げるなり、ドラゴンの姿は真紅の
「うーん。何回見ても、愛くるしいねぇ。さあさあ、それでは
「うむ。招待に感謝する」
ドラゴンはしなやかな足取りで、タープの下に踏み入ってきた。小さくなっても風格に変わりはないが、ただその
「ま、今日の
咲弥がコンテナに仕舞い
「トシゾウもたびたび、そちらのダイコンなる野菜を持ち込んでいた。ハツ・タナベなる
「おー、ドラゴンくんは、田辺のばっちゃんのことも知ってたんだぁ?」
「うむ。
「ほほー。ほんじゃあ、あたしのことはどういう評価なのかなぁ?」
咲弥が何気なく問いかけると、ドラゴンは
「……解析とは、対象者の思考や心のありようをくまなく精査するという意味である。サクヤに対して、解析の術式を施すことは
「あ、そーなの? じゃ、じっちゃんのことも解析しなかったのかなぁ?」
「
咲弥はきょとんとしてから、「そっか」と笑った。
「そりゃまあ、じっちゃんのほうが正論なんだろうね。それでもじっちゃんはドラゴンくんと仲良くなれたんだから、なんも気にすることないよぉ」
「うむ。トシゾウの度量には、何度となく救われている。サクヤもまた、同様である」
「あたしなんて、じっちゃんの足もとにも
咲弥は綺麗に洗い清めたブッシュクラフトナイフで、ダイコンを十五センチほどの長さで切り分けた。それをニンジンとともにスライサーで千切りにしたならば、水気を
「はい、どうぞ。あくまでおまけの前菜だから、そのつもりでねぇ」
「うむ。サクヤの
どこからともなくスポークを取り出したドラゴンは、それを器用に
「簡素ながらも、
「うんうん。田辺のばっちゃんに感謝だねぇ」
それなりの量であった千切りサラダは、あっという間になくなってしまう。余ったダイコンをラップでくるもうとした咲弥は、「うーん」と思案した。
「ドラゴンくんは人並みの量で十分だって言ってたけど、あたしよりは
「しかしそちらは、サクヤにとっても貴重な食材であろう?」
「いやいや、食べきれないぐらいもらっちゃったから、なぁんも気にする必要ないよぉ。でも、どうせだったら別の料理に仕上げたいけど……ダイコンって、
咲弥の独白に、ドラゴンは小首を傾げた。
「確かにトシゾウもダイコンを煮込む際は、長きの時間をかけていた。手早く仕上げたいときは、焼いていたな」
「えー? ダイコンを焼いて食べるのぉ? ドラゴンくん、その手順を覚えてたりする?」
「うむ。それほど入り組んだ内容ではなかったので、
ダイコンは二センチていどの輪切りにして、断面に十字の切れ込みを入れたのち、ゴマ油で両面を四、五分ずつ焼いていく――それが、ドラゴンの記憶していた焼きダイコンのレシピであった。
「なお、焼きあげる際には
ドラゴンが
「よーし、それじゃあチャレンジしてみよっかぁ。あたしもお初の料理には、興味をかきたてられちゃうからねぇ」
斯様にして、自宅ではずさんな食生活を送っている咲弥も、キャンプの場ではきわめて能動的であるのだった。
まずはバーナーを点火して、そこにメスティンをセットしてゴマ油を投入する。しかしメスティンでは輪切りにしたダイコン二枚でいっぱいになってしまうため、けっきょく焚火台とラージサイズのコッヘルで同じ調理に
「焚火だと、火力を一定に保つのが難しいんだよねぇ。ま、
メインディッシュの調理に備えて焚火台に炭を追加してから、咲弥は「うーん」と大きくのびをした。
「あー、楽し。ダイコン一本で楽しめるもんだねぇ」
「うむ。咲弥は調理そのものを楽しんでいるのだな。それを目にしているだけで、我も楽しき心地を得ることができている」
「それは何よりでございます」と、咲弥はまたチェアの背もたれに身を預けた。
そうして
(こういう時間も、なんかじっちゃんとのキャンプを思い出させるんだよなぁ)
もとより咲弥は、祖父以外の相手とキャンプに取り組んだ経験もなかった。咲弥はなるべく自由気ままにキャンプを楽しみたかったので、
(きっとドラゴンくんがこういう人柄だから、じっちゃんもすぐに仲良くなれたんだろうなぁ)
咲弥がそんな想念にひたっていると、やがてキッチンタイマーが鳴り
「よーし、どんな感じかな?」
咲弥がメスティンの蓋を開けて確認してみると、ダイコンの
「おっと、コッヘルのほうは焦げる寸前だ。危ない危ない」
「うむ。やはり調理とは、
「あはは。あたしなんて、油断の合間に生きてるようなもんだけどねぇ」
適当な
然して、その味わいは――なかなかの仕上がりである。
「へー。しんなりした食感が、なんか独特だねぇ。ゴマ油の
「うむ。まさしく、この味わいである。ただ、
「あー、じっちゃんはいちいちミルを使ったりしないもんねぇ。でも、じっちゃんの料理も
「うむ。トシゾウとサクヤの料理には、それぞれ異なる
「もー、お上手なんだからぁ。じゃ、ぼちぼちメインディッシュに取りかかりますかぁ」
二人で四枚の焼きダイコンを食べ終えたのち、咲弥はクーラーボックスの中身をまさぐった。そこから取り出された品を見て、ドラゴンはまた瞳を輝かせる。
「それは、肉であるな」
「そー、ぶつ切りのステーキ肉に『ほりこし』をすりこんで、
4
ファスナー付きのプラスチック・バッグに詰め込まれたステーキ肉をテーブルに置いた咲弥は、コンテナボックスから新たな調理器具を取り出した。
コッヘルとメスティンに続く、第三の調理器具――
「まずはこいつにどっぷりオリーブオイルを注いで、弱火でじっくり温めます」
ドラゴンのために口頭で説明をしながら、咲弥は作業を進めた。
「その間に、具材のマッシュルームとニンニクを切り分けます。マッシュルームは石づきを落として真っ二つ、ニンニクは頭と
「ふむ……察するに、
「あはは。じっちゃんは、ハーブの類いにも関心が
祖父の面影を追いながら、咲弥はニンニクとローリエをオリーブオイルの海に投じ入れた。そちらに熱が通って香りが出たならば、ステーキ肉とマッシュルームも投入である。
「ま、
「なるほど。しかし、これほど大量の油を使う料理を目にしたのは、初めてであるな」
「うんうん。アヒージョってのは、オリーブオイルで具材を煮込む料理なんだよぉ。キャンプ飯としては、定番のひとつみたいだねぇ」
薪の量を
「お次はドラゴンくんもお馴染みの、ホイル焼きだよぉ。今日はあくまで副菜なので、タマネギとニンジンのみでございます」
「ふむ。そちらはアヒージョなる料理の具材には不向きなのであろうか?」
「そんなことはないだろうけど、具材を増やすと肉の割合が少なくなっちゃうからねぇ。限られた容量でがっつり肉をいただこうという所存にございます」
ドラゴンは心から
「で、お次はパスタの準備だけど……ドラゴンくんは、
「うむ。トシゾウから、うどんやカップラーメンを
「へー。じっちゃんも、カップラーメンなんて食べるんだぁ?」
「うむ。他なる料理で足りなかった際は、そちらを供して我の心を満たしてくれたのだ」
と、ドラゴンは
食いしん坊のドラゴンに、咲弥は「にひひ」と笑ってしまう。
「カップラーメンはないけど
パスタはお湯が余らないように、必要最低限の水しか使わない。食材の成分が混入したお湯を山中に捨てることはご
キッチンペーパーでゴマ油をふき取ったメスティンでパスタを茹でている間に、スキレットのステーキ肉もじわじわと色づいていく。五分もあれば、
「おっと。蓋のほうも
バーナーでパスタを茹で、焚火台の火加減もチェックしながら、咲弥はキッチンペーパーでコッヘルとメスティンの蓋を
なかなかの
(今さらながら、これってどういう心理なんだろ)
キャンプとは、自ら不自由を背負うようなものである。自宅にこもっていればテントやタープを設営する必要もないし、ガスコンロのスイッチをひねるだけで火をつけることができる。雨風や寒暖や虫の
(だけどまあ……だからこそって話なのかなぁ)
料理ひとつ取っても、咲弥は自宅だと気合が入らない。食事などは生存に必要な栄養とカロリーを
しかし現在の咲弥は、大いなる意欲でもってキャンプ料理の調理に取り組んでいる。この苦労の末に美味しい料理が待っているかと思うと、胸が
(こういう楽しみがないとどんだけ心がささくれるかは、この二年弱でがっつり証明されたもんなぁ)
咲弥がそのように考えていると、ドラゴンはまた大型犬サイズの体をもじもじとさせた。
「我は細かな作業を苦手にしているため、こういう際には見守ることしかできぬのだ。何か力仕事が必要な際は、遠慮なく申しつけてもらいたい」
我に返った咲弥は、「あはは」と笑ってみせた。
「あたしもたいていの力仕事はこなせるつもりだけど、いざというときにはよろしくねぇ」
「うむ。その機会が
そのように語るドラゴンは、ずいぶん神妙な
もしかしたら――ドラゴンは楽しい気分ばかりでなく、苦労も分かち合いたいと思ってくれているのだろうか。そんな風に考えると、もともと浮き立っていた咲弥の心がいっそう浮き立ってしまった。
「よーし。パスタは、こんなもんかな」
気づけばメスティンのパスタは、すっかり水気がとんでいる。それを一本すすりこんでアルデンテの仕上がりを
「よしよし。あとはアヒージョの完成を待つばかり……って、見るからにもう食べ頃だなぁ」
グローブを装着した咲弥は熱いスキレットをスチール製のグリルスタンドに移して、空いたばかりのメスティンに四割ぐらいの見当で具材とオリーブオイルを取り分けた。あとはホイル焼きの包みを開けば、イブニングディナーの
「ほんでもって、今日のお供は赤ワインでございます」
咲弥がコンテナボックスから赤ワインのボトルを引っ張り出すと、ドラゴンはいっそう瞳を輝かせた。
「また異なる酒を馳走してもらえるのか。我はどのようにして、サクヤの温情に
「そんな
咲弥が心からの
スクリューキャップを開けたボトルをその上で
「ではでは。無事な再会を祝して、かんぱーい」
「
「こちらは先日のビールという酒よりも、
「うんうん。蓋は開けておくから、あとはご自由にどうぞぉ。それじゃあ、料理をいただこうかぁ」
咲弥はドラゴンとおそろいのスポークを取り上げて、まずはメインのステーキ肉をすくいあげた。オリーブオイルにねっとりと
「おー、上出来上出来。やっぱ、『ほりこし』の下味がきいてるねぇ」
こちらは『ほりこし』をまぶした肉を、オリーブオイルで煮込んだだけの料理である。あとはローリエとニンニクとマッシュルームしか使用していないため、それ以外の味が生まれる道理はない。そして、それ以外の味など必要がないぐらい、力強い仕上がりであった。
これこそが、手間暇をかけた成果である。なおかつ、自宅であればもっと簡単に作りあげることもできるはずだが、こんなに心が満たされることはないはずであった。
「これは……油に広がったニンニクの香りが『ほりこし』なる調味料と深く
ドラゴンも、
「喜んでもらえて何よりだよぉ。あ、パスタやタマネギやニンジンも、オリーブオイルにひたすと美味しいと思うよぉ」
「おお……こちらも、
「うんうん。ちっちゃくなった
「まったくである」と、ドラゴンは微笑むように目を細めた。赤ワインでほろ
そういえば、咲弥はアルコール類も自宅では飲むことがない。三日前のビールなどは、実に半年ぶりのアルコールであったのだ。咲弥はそれなりにアルコールに強い体質であるし、今も赤ワインの味わいに心から満足しているが――やっぱり自宅では、アルコールを摂取する意義を見いだせなかったのだった。
(たとえソロキャンでも、焚火を眺めながら楽しむお酒は最高の味わいだもんなぁ。ほんでもって……)
ドラゴンと語らいながら楽しむ酒は、それ以上の味わいである。
咲弥がそんな想念を浮かべながらにやついていると、ドラゴンは不思議そうに小首を傾げつつ、優しく目を細めてくれたのだった。
5
咲弥とドラゴンが楽しいイブニングディナーの時間を過ごしていると、頭上のタープに何かがぽつんと
ドラゴンは優美なラインを
「どうやら、雨のようであるな」
「ありゃりゃ。今日は夜まで快晴の予報だったのになぁ。やっぱ、山の天気は変わりやすいねぇ」
「うむ。これは、こちらの世界の雨であるようだな」
ドラゴンのそんな返答に、咲弥はきょとんと目を丸くした。
「あー、にゃるほど。この山は、二つの世界の天気に左右されるってこと? 晴れてるときは、どっちの世界も晴れてるってわけだぁ」
「左様。ただし、こちらの世界のこちらの区域は、雨が降ることも
「えー? 砂漠のど真ん中に、こんな立派なお山がそびえたってるのぉ?」
「うむ。よって、こちらの世界では『
「あはは。あたしにとっても、楽園そのものだけどねぇ」
咲弥はいっそう楽しい心地で、食事を進めた。
が――アルコールで
「うひゃー。二月とはいえ、なかなかの
「否。砂漠地帯でも夜は寒冷が厳しいものであるし、そもそもこちらも時節は冬である。それでも緑が
「ついでに気温も上げてほしかったなぁ。……まあ、四季おりおりを楽しむのもキャンプの醍醐味だけどねぇ」
すっかり暗くなってきたので、咲弥はタープのポールに設置しておいたLEDランタンで明かりを灯した。そうすると、ますます周囲の
しかしまあ、それしきのことで
ただし、寒さのほうだけは
「あー、これはちょっと、暖を取らないとダメなやつだ。いったんテントに
「うむ。それでは我は、こちらで待機していよう」
「いやいや。タープがあっても、ばんばか雨が
「しかし……そちらの世界には、男女七
「それって格言なのかなぁ? まあ何にせよ、めっちゃ古い言葉のはずだし……たぶん、思春期の人間に対する
「左様であるか。我もその言葉にどのような
そのように語りながら、ドラゴンは
「しかし我は、このように
「そんなもんは、タオルでちょちょいと拭けば大丈夫さぁ。じゃ、
さらに咲弥はバーナーをコンテナに
「あとは、雨がやんでから片付けるよぉ。さあさあ、ずずいとどうぞぉ」
「うむ。失礼する」
前室までは足もとも地面であるため、ドラゴンはそこまで歩を進めた。咲弥はひと足先にシューズを
「では、おみ足を拝借」
「うむ。爪で手を傷つけないように、十分注意してもらいたい」
今は大型犬サイズであるため、鉤爪も相応に縮んでいる。しかしおそらく、これでも
「ありゃ。ドラゴンくんって、ずいぶん体温が高いんだねぇ。もっとひんやりしてるんじゃないかって思い込んでたよぉ」
「うむ。我は、
「不快どころか、湯たんぽみたいにぽかぽかだねぇ。いいなぁ。
そんな言葉を
かくして入室の資格を得たドラゴンは、テントの
シュラフの下に
ただ昨今は、コットと呼ばれる簡易ベッドを使用するのが主流であるのかもしれない。コットを使えば地面から浮くため、おおよその地熱から解放されるのだ。さらにその上にフォームマットを敷けば、いっそうの効果が期待できるはずであった。
ただしコットというのは、それなりにかさばる器具である。十八歳になるまで自転車や原付バイクで移動していた咲弥はコットを
あとはキャンプの定番アイテムとして、
(そもそもあたしは、けっこう寒さに強いからなぁ)
しかし、そんな咲弥にしてみても、本日の寒さは厳しかった。防寒ジャケットを
「あー、ドラゴンくんドラゴンくん。ちょっとご相談があるのですが……火竜族としての
「うむ? 先日にも説明したかと思うが、我の
「いやいや。テントで火を吹けなんて言わないよぉ。そのお
ドラゴンは、不思議そうに小首を傾げた。
「言葉の意味が、よくわからないのだが……もしや、我の身を湯たんぽの代用にしようという
「あー、やっぱり失礼な申し出だったかしらん?」
「否。それでサクヤの苦痛が少しでもやわらぐのであれば、安いものだが」
ドラゴンはしなやかな足取りで、咲弥のほうに近づいてくる。というか、
「えーと、あたしが
「うむ。風邪は万病のもとと聞く。サクヤには
「では、遠慮なく」と、咲弥はドラゴンの身を横合いから
「あいやー、これはいかん。
「ふむ。サクヤはまるで、幼子にかえってしまったかのようであるな」
ドラゴンは笑いを
「あー……もしも焚火の炎が固形物だったら、絶対にシルクやサテンみたいにすべすべの質感だと思うんだよねぇ。炎って見るからにやわらかそうだし、すっごくきめの細かい感じがするからさぁ」
「ふむ。その心は?」
「あたしの
咲弥はまぶたを閉ざして、ドラゴンのなめらかな首に
(そういえば……ちっちゃい
そんな
テントに当たる