きっぱりと言い切ると、その場が一瞬水を打ったように静まった。
まさか断られるとは思っていなかったのだろう。エウゼビオも小間使いのアロンソもキョトンとした顔で動きを止めている。私にとっては腹が立って仕方がない御説も、彼らにとってはごく当たり前の価値観で、それが私の気に障ったなんてことにはまったく考えが及んでいなさそうなところがさらに腹立たしい。静まり返った中で、クロエだけが小さく手を叩いている。
なんで関係のない男に自分の職についてあれこれ意見されねばならないのか。なんで私の気持ちを全く理解しない人に衆人環視のもと求婚されなければならないのか。なんでアメリアの学習意欲に言及され価値観を押し付けられなければいけないのか。
ひとかけらも関係がない、たかだか伯爵家の坊ちゃんごときに。
「私、公爵様の妹君にお会いして決めたんです。とても向上心のある方のようで、心を打たれました。あの方のお手伝いがしたいんです」
では、と深く頭を下げると、私はぽかんとしたままの主従を無視し、踵を返して市場を後にしたのだった。