「そろそろ来るね、僕たちの息子が」
「……ああ」
雪の積もる銀面の山頂に、二つの影があった。
一つは灰色の長髪を後ろで一本に結っている若い男。中性的な
「君、先に彼に会ってきたでしょ」
「……」
もう一人は頭から白いヴェールをかぶった女だった。すらりと長い手足に、押せばよろけてしまいそうな細身の身体だが、立ち姿は
「私は……」
女は白いヴェールをおもむろに手で取った。
その下から現れた顔は、おそらくこの世で最も美しいと形容される美貌を宿していた。
「私は、お前らと違って成長したメレアを見たことがなかった……!」
それまで超然とした雰囲気を呈していた女は、不意に感極まったように声に力を込めた。灰色の髪の男を見る大きな目は潤み、頰は熱で紅潮している。
「私のっ、息子だぞ……! 私の……っ」
金色の瞳が涙で潤み、そのまま
「そうだね。君が、誰よりも望んだ、君の息子だ。君が僕たちを説得して、〈異界草〉を使おうだなんて言わなければ、彼は生まれなかった」
「ううっ……」
女は両手で顔を覆って、
「みんな知っている。君が誰よりも彼を愛していることを」
「でも、私はもうメレアに触れられない。近づけば私はメレアを攻撃してしまう」
女はとめどなく
「それは、嫌だ。私は死んでもメレアにだけは害を
男は女の意志の強さを肌で感じた。少女のようでいて、
「でも──」
女はふと言った。嗚咽が大きくなった。
「一度でいいから、抱きしめさせてくれ……っ!」