他人の空似だと言い切る。そうだ「どこの貴族女性が冒険者のまねごとを? そんな貴族はいないよ」と笑ってごまかそう。

「お代わり持ってきましたよ!」

 カイが大量のソーセージを持ってきた。

「一人追加で五本ずつ」

 うんうん。たくさんお食べ。そしてアルフレッド様みたいな立派なおなかになるといいね。でもお姉さんはできればガルダ様のように成長してほしいと思っているよ?

 その日の午後は、みんな虹が作れるようになったので、虹色のお絵描きをして遊んだ。

 いや、遊びじゃないよ。いろいろな形でいろいろな色で光を出す訓練をしたんだよ。初めのうちは思った色にできても形が定まらないとか、形に気持ちを集中させると色がおろそかになるとか結構大変だった。月光や日光や火球、それから虹もだけど、見たことのあるものの再現は簡単だけどね。虹色で虹以外の形でってなると途端に難しくなる。

 私は、イルミネーションにしてもネオンサインにしてもいろいろ見た記憶があるから割と容易にできた。

 目標は冬場のクリスマスイルミネーション。って思いながら、赤鼻のトナカイ出しちゃったよ。

「ねぇ、なんでこの鹿、鼻が赤いの?」

 うん、鹿じゃないよ? トナカイ、知らない? ……ん? 私が出したの本当にトナカイかな? 鹿に見えなくもない。あれ?


 楽しかった~と言って、子供たちは帰っていった。

 いや、光魔法の実験の依頼なんだけどね? まぁ実験っていっても、今日はブラックライトが皆も使えるかなぁ実験で、あっというまに使えるようになったんだけど。

 地下室の自室で、冒険者の服装から公爵夫人の服装に着替えて部屋に戻る。

 ふふふ、部屋のクローゼットから地下室へ出たり入ったり。なんか秘密組織の基地みたいで楽しいよね!

 掃除の依頼をする約束をした。

 必要なものを準備しないとなぁ。雑巾。ぼろ布とはいえ、貴重なんだよね。布は。

 水は水属性の人にも手伝ってもらわないと。ギルドだと、冒険者といっても魔物系以外の依頼もあるわけだよね。街の雑用とか。ってことは掃除の依頼も普通にあるだろうから、不自然じゃないよね? 水属性の人は普段一日でどれくらい稼げてるのかなぁ? 依頼料はどうすればいいのか。光属性の子と差をつけるつもりはない。掃除の依頼の相場ってことでいいか。

 ……っていうか、ブラックライトでカビを可視化するための光属性の子。掃除用の水を出してくれる水属性の子。……広い地下室だから、人手はもっと欲しいから、あとは属性にかかわらずってことでいいのかな?

 掃除道具も揃えないといけないし。

「ユメリアから、早く届かないかしら? ユメリアが私の想像通りに動いてくれれば……いいものが届くはずなんだけどなぁ。 ……っと、刺繡もしなくちゃね。マーサ、サラは戻った?」

 と、声をあげてみたものの、マーサは控えの間にいなかった。

 そっか。水属性の者はワーウルフの肉の加工に引っ張りだこ……。

「あ、サラ、おかえり!」

 廊下に出たところでサラに遭遇。

 なんか、涙目になってる。

「え? サラ、どうしたの? 何があったの?」

 サラがふにゅんって顔をした。

「ずるいですぅ」

「え?」

「依頼を終えた子供たちが、すっごく楽しかったって」

 うん、それはよかった。

「私が使えない虹の魔法が使えるようになってて」

 ああ、自慢げに見せたのかぁ。

「リリアリス様、私にも教えてください!」

 あ、うん。分かった、分かったよ。

「あ! そうだ! 忘れるところだった! あとでちゃんと全部教えるからね?」

 でも今は、調理場の件が先ね。


■ユメリア視点■


「何よこれっ!」

 リリアリスに刺繡をするようにと書いた手紙の返事が届いた。

「汚い封筒……って、私が送った手紙の封筒に宛名を上書きして送り返してきたのね!」

 嫌がらせ? まさか、中身も見ずに送り返してきたわけじゃないわよね?

 封筒の口は一度開けられた跡がある。

「お姉様のくせに、まさか、私の頼みを断るつもり? ……もしそうなら許さない」

 私を誰だと思っているの。

 いくら公爵夫人になったからって、侯爵令嬢の私を下に見ているつもりじゃないわよね。

 私は、皇太子の婚約者よ。未来の王妃なのよ?

 そうでなくとも、貴重な聖属性魔法が使える「聖女」よ!

 もし断りでもしたら……。

 そうね、お仕置きが必要だわ。お父様もお母様も、お姉様がいなくなってイライラしているもの。

 リリアリスのせいで恥をかいたとか、リリアリスのせいで寝不足だとか、お姉様をひどく恨んでいる。きっと、お仕置きしてくれるわ。

 封筒から手紙を取り出すと、私が書いた紙の裏に返事が書いてあった。

 はぁ、失礼ね!

 イライラしながら内容を確認する。

 ひとまず、断りの手紙ではないことにホッと息を吐き出す。

 って、なんで私がホッとしないといけないのよ! むしろ、お姉様がお仕置きされなくてよかったと喜ぶところでしょう!

 で、……はぁ? 刺繡の材料がない? 送れですって?」

「はぁ? 何、私に要求してるのよ! 生意気に!」

 ああでも、アシュラーン領って、流刑地だものねぇ。刺繡の材料なんて売ってないか。

 仕方がない。送るしかないわね。さすがにぼろ布に刺繡されても困るものね。

 どうせこれからも何度も刺繡させるわけだし、一度にたくさん送ればいいわね。

 それから……酒を送れ?

「ばっかじゃない。刺繡の材料は分かるけど、調子にのって酒を要求するとか。何様のつもり!」

 確かに流刑地には酒もないのかもしれないけれど、知らないわよっ!

 イライラして思わず親指の爪を嚙んで手紙の続きを読む。

 公爵とは一回しか顔を合わせてない?

「あはははっ、ざまぁ!」

 思わず、大笑いしてしまう。

「リリアリスってば、お前を愛するつもりはないとでも言われたんじゃないの? そうよね、みすぼらしい役立たずの娘なんて、誰にも愛されるわけないのよっ!」