終章


(さて、しばらくは内政だな。このまま人を増やしつつ、家を増やして、食糧生産力を増やして、規模を大きくしていって、拠点の力をつけていく。そんで、住民の訓練ももっとやって、軍隊がめっちゃ強くなったら、クォレスを侵略して、その勢いのまま、リンドクーシールの都市をいくつか侵略すると。そうすると、アレファザレイドから独立しても、文句言われなくなるから、正式に、グロリアセプテム国の建国をする。建国すると、外交とかもしなきゃならなくて、色々面倒にはなるけど、ゲームでは楽しくなり始める頃だったんだよな。現実になると、どうか知らないけど)

 ペペロンは、屋敷にある自分の部屋で、ゲーム時代の攻略法に乗っ取って、これからの戦略を立てた。

 まだ、ゲーム時代の戦略が完全に通用するのか疑問があるので、これでいいのか不安ではあるのだが、もうこうなったら、このまま突っ走るしかないと、開き直ったような気分でいた。

 結局、現実的な戦争の戦略など立てられる知識もセンスも、ペペロンには存在しない。

 この世界にマジック&ソードの攻略法が、きちんと通用するということに賭けて、行動するしか道はなかった。

 部屋の扉をノックする音が聞こえた。

「ララです。報告がありますので、入っていいでしょうか?」

「入れ」

 ペペロンがそう言うと、扉が開きララが部屋へと入ってきた。

「報告とは?」

「実は、来客が来ておりまして。以前、来たスパウデン家の騎士のルーという方ですね」

 スパウデン家。

 現状、タレスヘム草原の所有者である。

 ペペロンたちが戦に勝って得た戦利品を、いくらか寄越せと言ってきたのだろうと、ペペロンは思った。

 もちろん、予想済みである。

 食料は街の成長のために必要な物なので、金で立て替えてもらうことにした。

 ゴールドは以前の遺跡攻略で宝物を得たり、戦利品で獲得した物があったりと、正直、そこまでいらないというくらい、持っている。

 ペペロンはスパウデン家のルーを屋敷に通した。

「やあ、これはペペロン殿。ご壮健なようで何よりだ」

 ルーは、ペペロンの姿を見ると、頭を下げながら挨拶をした。

 最初に会った時とは、態度が打って変わっている。

 これは名声の効果である。

 名声が高まると、今まで上からの態度だった者からも、きちんと丁寧な対応と取られるようになる。ゲームでもこのようにガラッと変わっていたが、現実になっても名声のあるなしで、態度は見事に変わるようである。

 ルーはあくまでスパウデン家の騎士であるので、それほど身分が高いわけではない。

 ペペロンのように規格外の名声を上げた者に、丁寧な対応をするのは当たり前のことであった。

「今日は何の用でしょうか? クォレスとの戦で得た戦利品をご所望でしょうか?」

「いえいえ、クォレスの戦での戦利品は、ペペロン殿のお力で、得た物。我が主、マラウダ・スパウデン伯爵は、全てペペロン殿のものにしてよいと、仰せになっておられます」

 その言葉を聞いて、ペペロンは意外に思った。

 ゲームだった時は、間違いなく渡せと言ってきたはずだが、現実になると言って来ない。

 そこは、現実とゲームで明確に違う点のようだ。

「それでは、何用で……」

「我が主、マラウダ・スパウデン伯爵が、ペペロン殿に会いたがっておられます。ぜひご同行いただけると嬉しいです」

 ルーは笑顔でそう言った。

(会いたがってる? そんなイベントなかったけどな)

 悩むが、ここで断るのは、流石に難しいことにペペロンは気づいた。

 断ったら、敵対していると判断され攻め込んでくるかもしれない。

 下手に名声を上げたことで、実力があるのは理解されてしまった。そんな実力をつけたものが、自分たちに反抗的な態度にあるとなったら、早速潰しに来るかもしれない。

 スパウデン家がなめて侵略してくれれば、撃退も可能だが、名声も上がった今、油断してくることはないだろう。

 恐らく侵略するとなったら、帝国の方に援軍を求め、膨大な兵数で攻めてくるはずだ。

 それこそ十万近い軍勢が来る可能性もある。

 流石に十万はペペロンたちでも、現時点で対処の仕様がない。

 ここは従うしかないとペペロンは考えた。

「もちろんお会いいたします」

 ペペロンはそう返事をした。

「それでは、ペペロン殿。早速私と一緒に、スパウデン家の屋敷にご同行願えますでしょうか」

 今すぐ行くというのは、急な話ではあったが、拠点の運営自体はララかノーボがいれば問題はない。誰か二人くらい同行者を連れて、行こうとペペロンは思った。

「私一人ではなく、部下を二名連れていくことは可能でしょうか?」

「問題ありませんよ」

 許可を得た。

 ペペロンは、ファナシアとガスを連れていくことにした。

「それでは参りましょう」

 ルーの案内で、ペペロンはスパウデン家の屋敷へと向かった。



 拠点から数日移動したところに、スパウデン家の屋敷は存在した。

 極めて豪華な屋敷だった。屋敷というより、城と言った方が適切な表現になるかもしれない。

 ペペロンは屋敷に入る前に、ゲームでのマラウダ・スパウデン伯爵を思い出していた。

 年齢は五十一歳。自分にも他人にも厳しい性格をした男だ。戦闘力は歳なので衰えているが、兵を指揮する能力は、極めて高い。

 アレファザレイド帝国の中でも、強い発言権を持っている。伯爵というと爵位の中では上の方だが、公爵や侯爵など、上の位もあるが、勢力の大きさ的には帝国内でも上位だった。

 ペペロンは屋敷の中に通される。その後、応接室へと案内された。

「ここから先はペペロン殿だけでお願いします」

 ルーがそう言った。マラウダに会えるのは、ペペロンだけでということだ。

 拒否するわけにもいかないので、ペペロンはファナシアとガスに待機するように言い、一人で応接室へと入った。

 応接室にはマラウダ・スパウデンが、険しい表情で座っていた。

 髪は白髪。高級そうな衣服を身に着けている。

 機嫌が悪そうに眉間にしわを寄せているが、特に機嫌が悪いというわけではなく、こういう表情なだけである。

「お主がペペロンか?」

「はい」

「私がマラウダ・スパウデンである。よく来てくれた」

 無表情でマラウダは握手を求めてきたので、ペペロンはその手を握る。

「聞いておるぞ、お主の功績は。何でも、クォレスの軍隊を少ない手勢で退けた上に、侵略まで行ったそうだな。小人族だというのに感心した」

 ペペロンを褒めるマラウダだが、表情はあまり変わらないので、若干怖さをペペロンは感じた。

 特に怒っているとかそういうわけではなく、そういう性格だからなのであろうが。

「わしは近々、リンドクーシール王国へ、侵攻を仕掛けようと思っておる。奴らの土地を得るのが、わしらスパウデン家の悲願だったからだ。お主がそれを手伝ってくれるかどうか、意思を聞きたかった」

 ペペロンはその話を聞き意外に思った。こういう話が来るのは、もっと後になってからだと思っていたからだ。

 マジック&ソードというゲームでも、スパウデン家はリンドクーシール王国へ侵攻をしたがっていたが、アレファザレイド帝国としては、ほかの国を優先したいということで、援軍をそこまでの数貰えないようで、落とすのを断念していた。

 それがペペロンの名声を聞き、これは大きな味方を得たと思って、この話を持ち掛けてきたのだろう。

 ペペロンとしては、まだまだ兵の数で見ると小規模な町に過ぎないので、そこまで高評価は得ていないと思っていたが、そういうわけでもなかったようだ。

「侵略を手伝ってくれたら、もちろんその分褒美として、落とした土地をいくつかお主に分け与えよう。どうだ、やってくれるか?」

 あくまで自分の意思で選ぶように言ってきてはいるが、断ったら間違いなく叩き潰されるだろうということは、ペペロンにも想像がついた。

 ただ、断る理由はなかったので、ここは受けることにした。

 ペペロンの戦略としては、ここでスパウデン家と共闘してリンドクーシール王国を倒すと、働きに応じてある程度土地を貰える。

 ペペロンはそれこそ大活躍するつもりなので、増える土地はだいぶ多いだろう。

 その土地を使用し、勢力を強力にしていって、そこからスパウデン家を倒して、アレファザレイド帝国も最終的には落とすという流れだ。

 当然リンドクーシール王国をスパウデン家と一緒に落とすことで、スパウデン家も新規の土地をかなり得ることになる。

 だが、ペペロンは土地の活かし方や土地に住んでいる人材の育成など、マジック&ソードで得た攻略法をいくつも持っている。

 スパウデン家が新しく土地を得ようと、自分ほどうまく土地を扱えないし、その分だけ力の差はなくなっていくだろう、とペペロンは考えた。

「分かりました。一緒に戦いましょう」

 ペペロンはそう返答し、マラウダと固い握手を交わした。

《了》