第二章 グレイス地下牢跡攻略


「さて、そろそろ次の遺跡攻略を始めようと思う」


 ペペロンはララ、ノーボ、エリー、ガス、ファナシア、ポチを集めて、そう切り出した。

 パワーエンチャントやギガフレイムを習得したことで、大幅に強化されたので、今ならボルフの塔より難易度の高い遺跡攻略も可能だ。

 ボルフの塔からパワーエンチャントを入手出来たことは、僥倖ではあったが、まだまだ拠点を強力にしていくうえで必要な魔法は山ほどある。

 ちなみに、ペペロンを含めた七人は、すでにボルフの塔で手に入れた、パワーエンチャントは、使いこなすことが出来ている。

 ゲーム時代の修練度をそのまま引き継いだようだ。

「やったーダンジョン攻略だー!」

 ファナシアは喜んだが、

「今回はファナシアは留守番だ」

 ペペロンはそう言った。その言葉を聞いた瞬間、ファナシアは不満げな表情を浮かべる。

「え!? 何で!?

 ファナシアは、グロリアセプテムでは、最高クラスの戦力であるので、基本的には連れていきたい。

 しかし、やはりずっと連れて行くと、ほかの部下たちから不満を持たれる可能性がある。

 ファンシアと同じような役割を担っている、ポチは基本的に留守番をしているケースが多い。

 何回も続けると、もしかしたら、扱いに不満を持つかもしれない、とペペロンは危惧を抱いていた。

 ポチは性格的に面倒くさがりやな感じもするので、もしかしたら今のままでも大丈夫かもしれないが、念には念を入れる必要がある。

 好感度が落ちて反乱でも起こされたら、たまったものではない。

 また、好感度だけでなく、あまり拠点でサボらせておくと、ポチの力量が下がってしまう恐れがある。

 ゲーム時代でも、戦闘をさせず放置させておくと、徐々にステータスが下がるというシステムがあった。

 そのシステムは、現実になってもあってもおかしくない。定期的に戦闘には出す必要がある。

 ポチを連れて行くとなると、拠点を守る役目は、ファナシアに任せるしかない。

 防壁を強化し、バリスタも作ったとはいえ、まだまだ拠点の守りは盤石というわけではない。

 誰か残しておかないと、万が一の危険性がある。

「えー、行きたいー!」

 ファナシアは駄々をこねる。

「今回は我慢してくれ。お前の力で拠点を守ってほしい」

「むー。分かったよー」

 相当行きたいようだ。

 もしかしたら、ファナシアの好感度が下がってしまうかもしれない。もしかしたら、間違えたかと思ったが、今更取り下げるのは難しいので、このまま貫くことにした。

(ま、まあ、ファナシアは結構好感度が高そうだし、多分大丈夫だろ……)

 今までの態度を見る限りでは、そう簡単に裏切ったりはしないだろうと、ペペロンは判断した。

 ほかに行くメンバーは、ララ、エリー、ガス、最後は当然ペペロンだ。

 今回は行く場所の難易度が、ボルフの塔より間違いなく高いので、リーチェとパナは連れていかないことにした。

 遺跡に行かなくても、パワーエンチャントの練習をしていれば、一気に強くなれるので、拠点で訓練するだけでも、強くはなれるだろう。

「あれ? 私も行くんですか今回は」

 行くメンバーを伝えると、エリーが意外そうな表情をしていた。

 基本的にエリーには研究を任せていたが、今回は連れていくことにした。

 好感度を下げない、定期的に戦闘をさせてステータスを下げないという理由は、ポチと同じであるが、エリーを連れていくのはほかにも理由があった。

「ああ、今回はグレイス地下牢跡に行くからな」

「なるほど」

 ペペロンがそう言うと、エリーは全てを理解したように呟いた。

 今回ペペロンたちが攻略を目指すグレイス地下牢跡には、賢魔族が設計に携わったという設定があり、攻略をする際、エリーのような賢魔族がいると、攻略がしやすくなるという特徴がある。

 知力がないと解けない罠も複数仕掛けてあり、さらに出てくる敵も魔法攻撃が通りやすいのが多い。

 ノーボを連れて行ってもいいのだが、今回はララも連れていくので、住民たちに指示を出す者を残しておく必要性があった。

 ララは前回のボルフの塔攻略時は置いていったので、今回は連れていった方が良さそうだとペペロンは判断していた。

 ファナシアは多少ぐずったが、ノーボの方は特に文句はないようだった。

 きっちり準備を行い、グレイス地下牢跡へとペペロンたちは向かった。


 グレイス地下牢の近くには、ボルフの塔のように町がない。

 数百年前に滅んだ大都市、王都グレイスには、罪人たちを閉じ込める地下牢があり、そこは現在では大量のアンデッド系モンスターが、発生しているというのが、マジック&ソードでの設定だった。

 どうやら地下牢に入れられていたのは、ただの罪人ではなく無実の罪で投獄された者も非常に多かったようで、その者たちの強い無念が、強いアンデッドを生み出しているようだ。

 闇が深い設定と、遺跡内にある手記が鬱っぽい内容だったりと、マジック&ソードのプレイヤーからは、トラウマ遺跡扱いを受けていた。

 もっとも、設定だけでなく、その難易度の高さもトラウマの要因の一つにはなっているのだが。

 ペペロンたちは、グレイス地下牢のある、王都グレイス跡地に、だいぶ近付いてきていた。

 この辺りまで来ると、廃墟がポツポツと道の近くに立っていたり、周囲が薄暗くなったりと、嫌な雰囲気を感じるようになる。

(転移する前の俺はこんな場所、苦手なタイプだったけど、今は全く怖くないな)

 現実世界のペペロンは、怖がりな性格であったが、今ではステータスの影響で精神力が強化されているため、怖い雰囲気も普通に耐えることが出来ていた。

「さて、そろそろ気を引き締めるんだ」

 部下たちがペペロンの指示に頷く。

 地下牢に入らなくても、王都グレイス跡地は、強力なアンデッド系モンスターが大量に出てくる、極めて危険な場所である。

 道中は楽に倒せる敵ばかりだったので、適当にあしらいつつ進んでいたが、王都グレイス跡地のアンデッドはそうはいかない。

 ペペロンたち並みの強者でさえ、気の緩みがあれば、痛い目を見るくらいの敵が出てくる。

 あくまで気が緩んだらまずいというだけで、まともに戦って負けるようなモンスターは出てくることはない。

 グレイス王国跡地の入口には、巨大な門がある。

 滅んだ王国の門なので、ボロボロになっており、開きっぱなしなので入るのも容易である。

 門を越え中に入る。

 家は壊れており、道も石畳が剥がれて、悲惨な状態である。

 人骨が道の脇には散らばっており、大型の魔物が引っ掻いたような爪痕が残っている。

 しばらく歩くと、動く人骨であるスケルトンが数体現れた。

 何も身につけていない、ただのスケルトンである。

 このスケルトンは、最弱級の魔物だ。

 ペペロンは、剣を振るってあっさりと倒す。レベルの高い魔物が多い王都グレイス跡地ではあるが、スケルトンのように弱い魔物も出てくる。

 今度は、魔法のローブを身につけたスケルトンが現れた。

 これはリッチという非常に強い魔物だ。

 魔法使いが死ぬとリッチになるようで、通常のスケルトンより遥かに強い。

 闇属性の魔法、『ダーク・ボール』を連打してくる。

 当たるとダメージを受ける、闇の球を高速で飛ばす魔法だ。

 ペペロンたちは魔法を避けた。

 基本的に魔法は避けることで対処する。防御魔法もあるのだが、今は魔法書を手に入れてないので、使うことは出来ない。

 ペペロンたちは、スピードが速く、その上、反射神経が高いので、そうそう当てることは出来ない。

 リッチには魔法が効きにくいので、ポチが斬り込んで行く。


「おらっ!」


 一撃でリッチを粉砕し倒した。

 リッチはマジック&ソードの中でも、それなりに強い方のモンスターであるが、ペペロンたちには相手にならない。

 しばらく王都グレイス跡地を探索する。

 どこに何があるかは、ゲーム時代と変化はないようである。

 王都グレイス跡地にも、それなりにレアな物を入手することが出来るので、地下牢に入る前に、全て取っておこうとペペロンは思った。

 中央に塔があるので、そこに入る。

 ボルフの塔ほど高い塔ではないが、それなりに高い。

 一番上に、魔法書が入っている宝箱があるので、ペペロンはそれを取りに行く。

 入った瞬間、魔法攻撃を受けた。慌ててペペロンたちは避ける。

 モンスターがいた。

 赤い半透明の浮遊するアンデッド系モンスター。レッド・ゴーストである。

 リッチより極めて危険な魔物で、炎属性の強力な魔法を使ってくる上に、攻撃力が高いので接近戦になっても強い。耐久力も高いため、中々死なない。

 何より厄介なのは、物理攻撃があまり効かないという点だ。

 ノーダメージというわけではないが、物理攻撃に耐性があり、八割ほどダメージが減ってしまう。

 魔法でなければ、まともにダメージを与えることが出来ないモンスターであった。


「ブリザード」


 エリーが氷属性の魔法、ブリザードを使用した。

 ギガフレイムなど、ブリザードよりハイレベルな魔法はあるが、レッド・ゴーストは炎属性であるため、炎属性の魔法には、物理同様耐性を持っている。

 逆に氷属性は、弱点属性であるため、効き目が強い。

 エリーはそのことを考慮して、ブリザードを使ったようだ。

 氷の吹雪を浴びて、レッド・ゴーストはかちんこちんに凍りついた。

 これで倒せたというわけではないが、完全に凍った場合は、物理攻撃への耐性がなくなり、逆に非常に効きやすくなる。


「ビッグ・ボム」


 エリーは今度はビッグボムの魔法を使い、爆発を起こした。

 レッド・ゴーストは、木っ端微塵に吹き飛んだ。

(最初レッド・ゴーストと戦った時は、勝てるかこんな奴、と思ったもんだけど、成長したなぁ)

 ペペロンはレッド・ゴーストをこうもあっさりと倒す姿を見て、感慨に耽った。

 マジック&ソード初プレイ時、意気揚々と王都グレイス跡地に入り、レッド・ゴーストに出くわして、瞬殺された記憶がペペロンにはあった。

 近接攻撃を重視するプレイスタイルだったので、魔法が全然使えずダメージすら与えられなかった。攻略法を聞いて、魔法を強くしていったのだが、それでもなお敵わない。

 生半可な魔法使いでは駄目で、上級者と言えるほどの実力がないと、まともにダメージを与えることも出来ない。

 中級者くらいのプレイヤーでは、勝ち目がないのがレッド・ゴーストである。

 一体を倒して上に行くと、今度は黄色のイエロー・ゴーストが四体出現した。

 電気属性の魔法を使用してくる。

 狭い部屋で魔法を何度も撃たれたため、ペペロンは何発か喰らってしまったが、耐性があったためそれほどダメージは入らなかった。

 イエローゴーストは、炎属性の耐性がないが、ギガフレイムを使うのは、魔力が少し勿体ないため、さっきと同じようにブリザードで凍らせて、ビッグボムで爆殺していった。

 ペペロン、ララ、エリーが攻撃魔法を高いレベルで扱えるため、三人が中心になって敵を倒していった。

 ガスとポチは、敵の攻撃を引きつけたり、防いだりサポートに回る。

 ポチの大剣は、攻撃するだけでなく、防御にも使える。彼自身防御力と耐久力が非常に高いため、壁役のような役割をこなすことも出来た。

 そのまま、上に登っていく。

 道中出てきたゴーストたちは、それほど苦戦せず倒して行った。

 そして、最上階へ到着。

 予想通り宝箱があった。

 鍵がかかっていたので、いつも通りガスがピッキングして、鍵を開けて、中を調べてみる。

 魔法書が入っていた。

「第五級、マジック・シールドか」

 魔法の盾を作り出す魔法である。

 物理攻撃ではなく、魔法を防ぐ盾だ。これがあれば、避けるだけでなく、防御も可能になる。

 ただ、マジック・シールドは正面から来た魔法にしか効果がないため、ハイレベルの魔法だと全体に攻撃がくるので、そういう魔法は防げない。

 本来欲しいのは、「マジック・スフィアシールド」という、球体で全身を包み込み、全方向からの攻撃も守り切れるようにする魔法だ。

 マジック・スフィアシールドがあれば、広範囲の魔法でも完全に防ぎ切ることが出来る。

 魔法書のレア度は高いので、そう簡単に手に入れることは出来ないが。

 マジック・シールドでも、ある程度守ることは出来るので、何もないよりかは全然マシである。

 魔法書はバッグに入れて、ペペロンたちは塔を降りて、外に出る。

 ほかに寄り道する場所はないので、ペペロンたちはグレイス地下牢跡に向かう。

 グレイス地下牢は、王都グレイスの北側にある。

 移動中、完全に崩れてしまっている王城跡があった。

 この王城に、王様が住んでいたようだ。

 王城の前には、それを守るかのように、首なしの騎士デュラハンが、鎧を身につけた漆黒の馬に跨っていた。

 背景を想像してしまうような光景だ。

 倒さなくてもグレイス地下牢跡には行けるのだが、デュラハンの後ろには、宝箱が配置してある。

 ペペロンはデュラハンを倒すと決めた。

 その意図を汲んだのか、最初にポチが大剣を構えて、デュラハンに向かって走り、そして斬りかかる。

「おら!」

 デュラハンは剣で攻撃を受け止めようとしたが、ポチの攻撃はその剣を破壊して、デュラハンを肩から一刀両断した。

 中途半端な硬度の武器なら、それごと破壊する凄まじい攻撃力をポチは持っていた。

 デュラハンは倒したが、乗っていた馬はまだ倒しておらず、馬が暴れ出す。

 デュラハンも危険なモンスターであるが、馬も同じくらい危険であった。

 ポチが馬の足で蹴られそうになったが、ペペロンが馬の足を素早く切り裂いて、ポチを助ける。

 足を失い倒れた馬の頭を斬った。

 頭を失ってもなお、馬は動いてはいるが、前足がないのでバタバタとするしかない。

 最後、フレイムを使って焼いてとどめを刺した。

「助かりましたぜ」

 ポチはお礼をペペロンに言った。

 馬の攻撃力はあまり高くなく、攻撃を食らっても、ポチの耐久力からすると、ほぼノーダメージになるだろうが、攻撃されそうなところを見て、咄嗟に体が動いていた。

 あまり意味はなかったかもしれないと、ペペロンは思ったが、お礼を言われると悪い気はしなかった。

「宝箱開けるっす」

「頼んだ」

 デュラハンの後ろにあった宝を、手際よくガスが開けた。

 出てきたのは剣だった。

「ソウルイーター」という、敵を斬ると体力を回復する効果を持つ片手剣である。

 効果は強いが、攻撃力自体はペペロンたちが装備している剣に比べると、数段劣る。

 ただ、それでも、そこらで買える剣に比べると遥かに斬れ味も鋭く良い剣であった。

 まだまだ、いい武器を持っている住民たちは少ない。

 拠点に持ち帰り、優秀な誰かに持たせようと思った。

(リーチェあたりが適任かもな)

 そう考えてソウルイーターをバッグに入れた。

 どうするかは、自分だけでなく、離脱中住民たちの訓練も任せるファナシアの意見も聞こうと思ったが、ペペロンの意見としてはリーチェが一番よさそうだと思っていた。

 デュラハンを倒した後、しばらく歩き続けて、グレイス地下牢跡の入り口へと到着した。

 全員に緊張感が走る。

 グレイス地下牢跡の難易度は、身をもって味わっていたからだった。

 王都グレイス跡に出てくる、アンデッド系モンスターも非常に強いが、油断さえしなければ、今のペペロンたちなら新しく習得した支援魔法「パワーエンチャント」を使用しなくても、あっさりと倒せるレベルである。

 だが、グレイス地下牢跡のモンスターのレベルは、そこからさらに急上昇する。

 王都グレイス跡のアンデット系モンスターを倒せるようになり、得意げになって探索して、グレイス地下牢跡を発見。

 たぶん、王都グレイス跡に出てくるモンスターと、強さは同じだろうと思って、中に入り探索をしてたら、あっさりとやられる、というのはマジック&ソードのプレイヤーの多くが経験したことである。

 ペペロンたちは、気を引き締めて、グレイス地下牢跡へと入っていった。



「ううーーーー!! アタシも行きたかったー!!


 ペペロンたちがグレイス地下牢跡に入った時、拠点に残っていたファナシアは大声でぐずっていた。

「拠点を守るというのも、大事な仕事だ」

 ノーボがぐずるファナシアを諭す。

「ファナシアには、ペペロン様から拠点の防衛以外にも、兵たちの訓練を任せられている。きちんと仕事をするんだ。でなければ、戻ってきた時、ペペロン様にがっかりされてしまうぞ」

「が、がっかり。それは嫌ぁー! よし、頑張って皆をしごきまくるぞ!!

 ファナシアはかなり気合を入れて、外に出て行った。

「思った以上にやる気になってしまった……これは兵たちには可哀想なことをしたか……」

 ファナシアの様子を見て、ノーボは心の中で兵たちに謝った。


「今回は連れていってくれなかったか……やっぱり前回、足を引っ張ってたから……」

 留守番となったパナは、今回連れていかれなかったことに、だいぶ落ち込んでいた。

「こ、今回はボルフの塔よりかなり危険な場所に行くようだし、万が一があったらまずいから連れていってくれなかったんだよ! ま、まあ確かに前回は活躍出来たわけじゃないけどさ!」

 リーチェは、がっくりと落ち込むパナを慰めていた。

「とにかく、どんなところにでも、連れて行ってもらえるようになるには、訓練するしかないよ! 落ち込んでる暇なんてないよ!」

「……そうだな」

 リーチェの言葉が正しいと思ったパナは、訓練をいつも以上頑張ると心に決めた。


「皆、集合ーー!!


 その瞬間、大声が拠点中に鳴り響いた。

「ファナシアさんの声だよね……」

「行った方が良さそうだな」

 二人は家から出て声が聞こえた方に向かう。

 ファナシアは拠点の中央にある広場に、腕を組んで立っていた。

 すでにリーチェとパナ以外に、住民たちが集まってきている。

「皆、遅いぞ!」

 ファナシアは頬を膨らませて怒っているようだが、容姿が幼いのであまり迫力は感じない。

「な、何なんですか?」

 住民の一人が、ファナシアに尋ねた。

「これから訓練を始めるよ! ビシバシ行くからねー!」

 ファナシアは質問に答える。

 ビシバシ行くと言っているが、何となくそんなに厳しくはなさそうだな、とパナとリーチェは思っていた。

「アタシはポチみたいに甘くないからねー。まずは、拠点の周りを百周走ってきて!」

 ファナシアの言葉を聞いて、集まった住民たちは全員キョトンとする。

 今の拠点はそれなりに広くなっており、百周となると相当な距離を走らないといけない。

 走り切るために、一体全体どれだけの時間走れば良いのか、想像もつかないくらいだ。

「体力を付けるのは、戦うのには重要だよ! どれだけ強くても、疲れてしまったら、思ったように戦えなくなるからね!」

 体力を付けることが大事だというのは、その説明を聞いてもっともだと、住民たちは理解はしたが、それにしたって百周は走りすぎでは? と全員が思っていた。

「そんで走った後は、パワーエンチャントの練習! その後は、剣の練習をする!」

 走って終わりではなく、終わった後にまだ訓練があると知って、住民たちは絶望する。

 ポチは結構緩い雰囲気で訓練をしていただけに、ファナシアのポチほど甘くないという言葉は、真実以外の何物でもなかったと、理解した。


「さあ! 始め!」