ペペロンが話を切り出すと、ハーピィーたちが困惑したような表情を浮かべた。
前回エルフの住むアーシレス村に勧誘に行ったときは、BBCからの襲撃を受けた後で、村人がこのままではやっていけないと思っていたため、向こうから配下にしてくれるよう頼んできたが、今回のプレットー村は、そこまで村人たちは困ってはいなかったようなので、勧誘を受けるかどうか戸惑っている様子が見て取れる。
村についての説明が足りなかったのかと思い、ペペロンは説明を加えようとすると、
「俺、その……グロリア何とかの住民になります! この村にいても!!」
と若いハーピィーが名乗り出てきた。
それを機に、次々とグロリアセプテムの住民になりたいと、名乗り出る者が出てきた。三十人くらいは名乗り出ている。
ペペロンは村長であるギジャールが反対するかと思ったが、
「若い者は元気があっていいのう。わしらは村に愛着があるから、外には今更出れんが、頑張ってこい。このお方に付いていけば、もしかしたら凄いものが見れるかもしれんしのう」
割と和やかな反応を見せていた。
労働力が足りなくなっても大丈夫なのかとペペロンは思ったが、プレットー村は結構ハーピィーの数が多いので、逆に人口が多すぎて問題になっているのだろうと、考え直す。
人の数は重要ではあるが、多すぎるとそれはそれで問題発生する。食料が足りなくなったり、諍いが頻繁に起きるようになったり。
ハーピィーはあまり強い種族ではなく、狩りなどで食料を取って来ることも難しいため、人口が下手に増えすぎるとまずいのだろう。ペペロンはそう推測した。
今はグロリアセプテムの領民は一人でも多いほうがいい。人材の優秀さでえり好みをしているような状況ではないので、志願してきた者たち、全員を領民として受け入れることにした。
最終的に約五十人、ハーピィーが新しい住民となった。
(結構集まったが、まだ足りないな。一度、ハーピィーたちを連れて拠点に戻ったら、もう一度領民を募集するため、村があるところに行くか)
拠点レベルを上げるためには、まだまだ住民が必要である。
ペペロンは新しく領民となったハーピィーたちを連れて、拠点へと帰還した。
○
ペペロンたちが、プレットー村に人材を集めに行っている間。
パナとリーチェは、ポチから戦闘訓練を受けていた。
パナは、小人族の女だ。グロリアセプテムの住民の中では、ペペロン以外の唯一の小人族である。BBCの奴隷から解放され、グロリアセプテムの住民になった。
リーチェは、エルフの少女だ。BBCに捕まり奴隷にされた後、パナと一緒に脱走しようとした。パナとはそれ以来、大の仲良しとなっている。
二人はペペロンに強い想いを抱いており、少しでも強くなってペペロンの役に立てるようになりたい、と思っていた。なので、こういう訓練があると、人一倍張り切るのだった。
「今日の訓練どうすっかなぁ……そうだなぁ……とりあえず、誰かと組んで一対一で、模擬戦でもやっとけ。魔法の使用はなしな」
投げやり気味な様子で、ポチはそう言った。
「じゃあ、パナ! 私と模擬戦やろう!!」
模擬戦が始まると聞いて、リーチェがいち早くパナを誘う。
「お前と……?」
どちらかというと、リーチェの方が接近戦の腕はいいので、模擬戦をすると勝率は決して高くない。
負けまくるのも何だか癪なので、どうしようか迷っていたが、リーチェが返事を聞かずにやる気満々で準備を始めたので、断り辛くなる。
「仕方ない……やるか……まあ、自分より強い奴と戦わないと、訓練にはならないしな」
諦めて模擬戦の準備を始める。
リーチェの武器は片手剣なので、模擬戦では木剣を使用する。パナの武器はナイフだ。木で出来たナイフを二本持つ。
二人は武器を構え向かいあった。
「各自好きに始めていいぞー」
気の抜けた感じでポチが指示を出す。
「よし、じゃあ行くよ!」
とリーチェから攻撃を仕掛けた。
パナは素早くリーチェの攻撃を回避する。
一対一の実力では、リーチェに劣るパナであるが、リーチェにはスピードでは勝っていた。
ただ、リーチェの方も決して遅いわけではないので、一方的に優位に立てるほどスピードに差はなく、パワーの方では逆に大きな差があり、そこが二人の実力差となっていた。
リーチェは構えもしっかりしており、パナが色々動いて隙を作ろうとするが、中々隙が出来ない。
最終的に焦れたパナが焦って攻撃をして、カウンターにあって、勝負がついた。
「ふふん、初戦は私の勝ちだね!」
「ちっ、てめーに負けるとムカつくから、やりたくないんだよな」
ドヤ顔をするリーチェを、イラついた表情でパナは見る。
「私はガスさんみたいに、戦うってよりサポートするって感じになりたいから、一対一じゃなくてもっと別の訓練したいんだがな」
「うーん。でも、それでも一対一である程度強さはあった方がいいと思うよ。ガスさんも戦ってもめっちゃ強いし」
「それもそうではあるな……」
パナの目標としているのは、ペペロンではなくガスであった。ペペロンほどの強さを手に入れるのは、自分では無理だけど、ガスのように敵を撹乱したり、罠を解除したりするのは、すばしっこくて、手先も器用な自分には向いていると思っていた。
「てか、お前は私と模擬戦してていいのか? 正直一対一だと実力が違くて、練習にならないんじゃないか? 私としてはいいんだけどな」
「それもそうだね」
「あっさりと肯定されるとムカつくんだが」
「……じゃあ、誰と模擬戦すればいいんだろ……」
リーチェは模擬戦相手を探すが、重臣六人以外に、強力な力を持っている者はまだいなかった。
ボルフの塔に同行したリーチェは、あまり活躍出来なかったとはいえ、その経験で大きな成長を遂げており、現在のグロリアセプテムの中では、ペペロンと重臣六人を除けば、一番の実力者と言ってよかった。
「私の次に強いのって……うーん、パナだよね。一緒にボルフの塔に行ったし。じゃあ、やっぱりパナと模擬戦するのが一番じゃない」
「ポチさんにお願いしてみたらどうだ?」
「え、えー? そ、それはそれで畏れ多いっていうか……ポチさんは皆の模擬戦見るので忙しいだろうし……」
「忙しいのか……? あれ」
パナは、ポチを指さす。
あくびをしながら、ダルそうに模擬戦を見ているポチの姿が。
「い、忙しくないのかな……? い、いやでも別に訓練から目を離しているわけじゃないし、皆の実力を測ってるんだよ!」
「あー、うだうだ言って面倒な奴だなぁ。お前だって模擬戦して欲しいんだろ?」
「う、うん。そりゃそうだね」
「だったら行きゃいいじゃねーか。断られたら、私が何回でも模擬戦付き合ってやるよ」
パナにそう言われたリーチェは少し悩むも、意を決してポチの下へと向かった。
「私と模擬戦してください! お願いします!」
「あぁ? 俺と模擬戦?」
不機嫌そうな表情でポチが睨んできたので、これは駄目かとリーチェは諦めかける。
すると、ポチはニィと笑い、
「面白れぇじゃねーか。ちょうど退屈してたところだ。やろうぜ」
そう言ってきた。
「あ、ありがとうございます!!」
リーチェはすぐにお礼を言いながら、頭を下げた。
その様子を傍から聞いていたパナは、
(やっぱ退屈してたのかよ)
と心の中でツッコミを入れた。
「ハンデとして……俺の武器は……まあ、これでいいか」
とポチが手に取ったのは、その辺に落ちていた木の枝だった。
「なっ!」
リーチェも流石にその行動には驚くと共に、ムッとした。
ポチの武器は大剣で元々片手剣で戦うタイプではないうえに、枝を使うというのは非常に大きなハンデである。
実力差がかなり開いているとは言え、そこまでのハンデは流石になめすぎだとリーチェは思った。
リーチェが少し睨みつつ、ポチを見ていると、
「お、良い目つきだな。いつでもいいぜ。かかってこいよ」
余裕の表情でそう言ってきた。
「では行きます!」
リーチェは叫んで、全力で斬りかかった。
ポチは持っていた枝で、あっさりとリーチェの攻撃を受け止める。
ポチは力強く、全然押し勝つことが出来ない。
「くっ……」
リーチェは一旦距離を取った。
それから果敢に攻めていくが、回避され受け止められ、有効打を打つことが出来ない。
ポチはリーチェ相手に、攻撃はしていない。
やろうと思えば一瞬で決着が付くだろうが、意図的に勝負を長引かせているようだった。
「次はどう来んだ?」
ニヤリと笑いながら、ポチが言った。
一連の攻防で、現時点での実力差は、とてつもなく離れているということは、リーチェも理解した。
しかし、このまま何も出来ずに終わるのは嫌だと思ったため、何とか一泡吹かせる方法がないか考える。
(パワー、スピード全部ポチさんが圧倒的に上。構えは適当だけど、隙があるかといえばない……隙がないなら……作らないと……でもどうやって……)
簡単に答えは出ない。考え続けて数十秒経過。
「もうやめにすんのかぁー?」
ポチにそう言われたリーチェは、
「やめません!」
と叫びながら真っ直ぐにポチに向かって突撃する。
結局考えてもいい方法は思い浮かばなかった。
今自分が出来る最高の攻撃をすることだけを考えて、木剣を上段に構えて走る。
そして、思いっきりポチの頭めがけて振り下ろした。
剣はあっさりと受け止められる。
「今までで一番良い太刀筋だったぜ」
そう言いながらポチは若干後ろに下がった後、目にも止まらぬ速度で、リーチェの木剣を枝で攻撃した。
凄い力で剣を攻撃され、持っていることが出来ず、あっさりと払い落とされてしまった。
「なかなか見込みあるぜお前。まあ、俺に勝つのはまだまだ無理だがな」
かなりのハンデがあってなお、勝ち目を感じず、リーチェはポチとの力量さが大きすぎることを改めて感じた。
(でも、ポチさんくらい強くならないと、ペペロン様の役には立てない……)
リーチェはどれだけ差があろうと、追いついてみせると覚悟を決め、
「頑張ります!」
真っ直ぐな瞳でそう言った。
「さて、十分楽しめたし、俺は休憩するから、適当に模擬戦やっとけ」
ポチは適当にそう言った後、あくびをしながら草原で横になった。
その後、リーチェは再びパナと模擬戦を行った。
基本的にはやはりリーチェが勝つが、たまにパナが奇策を仕掛けて勝つこともあった。
「よーし、模擬戦はそこまでだぁー」
とさっきまで横になっていたポチが、起き上がった瞬間そう言った。
「次は何やらせるかー。全員同じトレーニングってのも、効率悪そうだし、それぞれの力量に合ったことをやらせるのがいいかもなぁ」
模擬戦を見ていたのは最初だけで、後は寝ていたとはいえ、それぞれの力量をある程度把握していたようで、一人一人に訓練の内容を言っていく。
まだまだ、兵たちは弱いため、基礎的な訓練を命じられた者が多かった。
そしてポチは、パナとリーチェに訓練内容を告げた。
「あー、お前らはあれだ。二人で近くにある洞窟を攻略してこい。お前らの力量にちょうどいいレベルのモンスターが出てくる洞窟が、近くにあったんだよ」
「モ、モンスターが出る洞窟ですか……」
「場所は遠くない。ちょうど南に行ったところにある。さ、行ってこい」
そう言われたので、リーチェとパナは準備をした後、向かった。
「大丈夫か、私たちだけで洞窟なんて……」
「わ、分かんないけど……ポチさんは力量に合うって言ってたし、何とかなる……はずよ」
二人はかなり不安になっていた。
だいぶ力量を付けたとはいえ、まだまだ経験は浅い。前回、遠出をした時も、ペペロンたち実力者が一緒にいたため、そんなに不安はなかったが、二人だけで行くとなると、話は別である。
強力なモンスターが出てきてピンチになっても、助けてくれる人は誰もいないのだ。
「まあ、やばい敵にあってもいざとなったら、逃げればいいか。私は逃げ足には自信がある」
「戦う前から逃げ腰はダメでしょ……」
逃げるのを前提に話しているパナを、リーチェは呆れた目で見る。
「お、あれが言われた洞窟か?」
草原の中に穴がぽっかりと開いていた。
「分かんないけど……多分そうじゃないの?」
「間違って、めっちゃやばいモンスターがいる洞窟だったら、死ぬぜ」
「こ、怖いこと言わないでよ。ちゃんと言われた通り南に行ったし、あってると思うけどぁ……」
不安な表情を浮かべるリーチェ。
しばらく二人は悩みながら、洞窟の入り口を見つめる。
「悩んでても仕方ないよ! 行こう!」
「だな」
二人は意を決して、洞窟に入ることを決めた。
洞窟には誰が設置したのか、鉄製の梯子がかけられてあった。その梯子を使い、穴の下へと降りていく。
少し錆び付いていたため、壊れて落ちてしまわないか、不安に思いながら、二人は降りていったが、途中で壊れることはなく、何とか降り切ることが出来た。
「う、うわ、真っ暗~」
洞窟内は真っ暗でとても前が見えるような状況ではなかった。
「ライト」
パナがそう言った瞬間、光の玉が発生し、パナの頭上にぷかぷかと浮く。光を灯して、周囲を明るく照らす魔法だ。
非常に初歩的な魔法で、フレイムなどと同じく、初期から誰でも使える魔法である。
洞窟は嫌な雰囲気を漂わせており、先に進むのを躊躇わせたが、二人は勇気を出して先に進んだ。
しばらく進むと、ガシャとリーチェが何かを蹴る。
「ひゃっ! 何か蹴っちゃったみたい」
「な、何だ、びっくりさせんな」
クールぶったところのあるパナであるが、この場面では普通に緊張しているようだった。
リーチェは何を蹴ったのか確認する。
人の骸骨が地面に散らばっていた。
「ッ!?」
あまりに驚いて、リーチェは声にならない悲鳴をあげた。
「誰かここで死んだのか……やっぱやばそうなところだなここは……」
パナはなるべく冷静を装ってそう言った。
「だ、大丈夫……ポチさんが行けるって言ったから……私たちも間違いなく成長したし……大丈夫……大丈夫……」
自分に言い聞かせるように、リーチェはぶつぶつと呟き始めた。
二人はいつも以上に、慎重に一歩一歩洞窟を進んでいく。
ズルズル……
何かを引きずるような音が、二人の耳に届いた。
音が聞こえた瞬間、反射的に歩くのをやめ、武器を構える。
ライトが照らせる範囲は、そう広くはないので、まだ音を出している正体を見ることは出来ない。
徐々に音は近づいてきていた。
自分たちに向かってきていると判断し、そのまま武器を構え続けて、音を出している者を待ち構える。
数秒経過。
巨大なナメクジのようなモンスター、キングスラッグが、見える範囲にやってきた。
かなり見た目は気持ち悪い。ナメクジではあるが鋭い牙を持っており、人間を捕食することだってある。
「ひ、ひぃ……」
と悲鳴を漏らしたのはパナだった。ゴキブリが苦手なパナであるが、ゴキブリだけでなく、ナメクジなど気色悪い見た目の生物は基本的に得意ではなかった。
ただ、ゴキブリほど嫌いというわけではないので、何とか正気を保ち、キングスラッグを見続ける。
キングスラッグは、液体を吐き出した。二人は咄嗟にそれを避ける。
液体は地面に当たる。
シューと音を立てて、地面を溶かしていった。溶解液のようである。
「あ、アレに当たっちゃ駄目だね……」
「分かってる。てか、仮に溶けなくても、あんなキモい奴の吐いた液体に当たるのはごめんだ」
キングスラッグは動きは決して速くない。パナとリーチェは素早く動いて、後ろに回り込み、切った。
しかし、弾力のある体をしており、中々剣で斬ることが出来ない。物理攻撃が効きにくそうな相手であった。
「魔法を使うしかないか」
「うーん、私たちあんまり魔法得意じゃないんだけどな」
二人は近接戦闘を磨いてきたので、あまり魔法を練習していなかった。
リーチェはそのうち、魔法も上達するつもりではあったが、まだ練習はほとんど出来ていなかった。現時点ではどちらかといえば、パナの方が魔法は上手だった。
「やるしかないだろ。フレイム!」
炎の玉を発射する魔法、フレイムをパナが使用。
キングスラッグの体に見事命中した。
火を当てられるのは苦しいのか、のたうちまわり始めた。
間違いなく有効的な攻撃だと判断し、リーチェもフレイムを使う。
キングスラッグは動きが非常に遅く、反撃を受けるほど二人は鈍間ではない。一方的にフレイムを撃ち続けて、最終的に無傷で倒すことに成功した。
「倒せたぁー」
「最初の一匹だし、大したことなかったな。てか、臭ぇー」
キングスラッグを焼いたためか、周囲に異臭が立ち込めていた。鼻の利くパナは、顔を歪める。
最初に出会ったモンスターを楽に倒せたためか、さっきまでより少し楽な気分で二人は先へと進んだ。
次に出てきたのは、赤黒いモグラのモンスター、ブラッドモールだった。
凶悪な目つきと、赤黒い毛と爪。
見た目は非常に凶悪なモンスターで、二人は少しビビる。
ブラッドモールは二人を見つけ次第、すぐに攻撃してきた。
鋭い爪で二人に斬りかかる。
リーチェは剣で爪を受け止めた。動きは遅くはないが、単調で読みやすいので受け止めるのは容易かった。
パナが素早く後ろに回り込み、ブラッドモールの背中を斬る。
攻撃力がさほどないパナでは、一撃で倒すまでは無理だった。
ブラッドモールはパナの攻撃に気を取られ、パナを爪で切り裂こうとするが、パナはあっさりとそれを回避する。
リーチェがそれを見て、背後から斬りかかる。パナより力の強いリーチェは、あっさりとブラッドモールを切り裂いた。
簡単な連携でブラッドモールを倒すことが出来た。
「モンスターってあんまり頭良くないし、さっきみたいに、パナが気を引いて私がその隙をついて倒すって感じでやっていけば、確実だね」
「お前に全部とどめを譲らないといけないのか……まあ、確かに今回はそれが最善だし、別に良いけどよ……」
パナとしては陽動役に徹することには、若干不満があったが、受けることにした。
さらに先に進む。
「三体いるね……」
ブラッドモールが三体
「数が増えても今までと同じやり方でいいのかな?」
「敵を引きつけて隙を作ってから、奇襲するのは敵が何体いようが有効だろ。数が多いと難易度は上がるがな」
数が増えても同じやり方で倒すと決め、パナはブラッドモール三体の前に出て、敵を挑発する。
怒って三体同時に攻撃をしてきた。
リーチェが素早く後ろに回り込み、まず一体を斬る。
仲間がやられたことにブラッドモールが気づいた瞬間に、リーチェはもう一体の首を落としていた。
仲間を二体やられた残りの一体は、怒ってリーチェに襲いかかる。
自分から意識が完全になくなったのを見て、パナはブラッドモールの腹の辺りをナイフで斬る。
一撃では倒せないが、痛みで怯んでいるのを見て、首にナイフを突き刺してトドメを刺した。
「よし、倒せたね!」
「このくらいは楽勝だな」
二人だけでモンスターを倒すのは初めてとはいえ、ボルフの塔に行く道中や、ボルフの塔内部で、もっと強いモンスターと戦闘を繰り返してきたリーチェとパナには、レベルの低い敵であった。
さらに先に進むと、分かれ道があった。
「右だな」「左だね」
全く同じタイミングで、違うことを言う二人。
「じゃあ、右でいいよ」
リーチェがそう言った。特に根拠はなく左と言ってたようで、あっさりと意見を変えた。
二人は右側に進んで行く。
モンスターは出てこなかったが、行き止まりだった。
「あー、間違ってんじゃんー。だから左だって言ったじゃんー」
「お前、あとで右で良いって言っただろうが……」
自分が意見を変更したことを棚にあげて文句を言うリーチャを見て、パナは呆れた表情になる。
「ん?」
チラリと下の方を見て、パナは何かに気づく。
壁が一箇所だけ色が違っていた。
気になったパナは、その壁を触ってみると、壁は薄く、あっさりと壊せそうだと思った。
蹴ると壁は壊れて崩れた。先に道があるようだった。
「おー、隠し通路?」
「こっちで正解だったようだな」
「も、文句言ってごめんなさい……」
リーチェは素直に謝った。
二人は現れた道を進む。
先には宝箱が置いてあった。
「やったー、宝箱だ! だけど、ここで行き止まりみたいだね」
「あの隠し通路は、この宝箱を隠してただけのようだな。先に進むなら左だったか」
「でも宝箱は嬉しいし、やっぱ右で正解だったよ。何が入ってるかなぁ~」
不用意に開けようとするリーチェを、パナが慌てて止める。
「待て! 罠の可能性があるだろうが! 迂闊に開けるな!」
「そ、そっか。そうだね……」
宝箱は、開けたらミミックだったり、誰かが罠を仕込んでいて、爆発したり毒矢が飛んできたりと、色々危険がある可能性が高いと、パナは以前ガスに教わった。
すぐに開けたいと思っても、我慢して問題ないかまずは調べないといけない。
パナは戦闘訓練だけでなく、ガスにも色々教えてもらっていた。元々鍵の開け方などは、器用だったため上手であり、罠の解き方もすぐに上達して、簡単な罠程度ならすぐに見破って、解くことが出来る。
パナは宝箱に近づいて、罠がないか調べた。
数分調べて、
「罠はないな。ミミックでもない。だが、鍵がかかっている」
「鍵なんて持ってないよ。開けられないじゃん」
「鍵は持ってなくても、開けることは出来る」
パナは鍵をピッキングするための道具を取り出した。かちゃかちゃと、鍵をいじる。
「これは余裕で開けられるやつだな」
そう言った後、数秒でガチャと鍵が開いた。
「パナ、凄い!」
「このくらい当然だ」
「凄いけど……私の金庫を開けたりしないでね……」
不安な表情でリーチェはパナのピッキング技術を見る。
「開けねぇーよ。てかお前金庫なんか持ってねーだろ」
「こ、これからお金貯まったら金庫作るの!」
「そんなに貯まるかねぇ。どっちにしろ盗むならグロリアセプテム以外の金持ってそうな奴からだな。お前なんて金が貯まったとしても、たかが知れてるだろ」
「盗みは駄目だよ!!」
「冗談だ」
パナは笑いながらそう言い、宝箱の中を確認した。
中には真っ白い丸い球が連なっている、ネックレスが入っていた。
「こ、これって真珠のネックレスじゃないの? 高いやつ……」
「真珠……なのかこれ? そんな高いもんがこんなとこにあんのか?」
真珠はマジック&ソードの世界でも、非常に貴重で高い品物である。
一個でも高いのに、ネックレスになっているとなると、二人では予想もつかないほどの値段になる。
「ほ、本物だったら山分けかな……?」
「いや、まずペペロン様に渡すだろ。まあ、そっからご褒美もらえるかもしれないけどな」