序章
ボルフの塔攻略後、ペペロンは拠点へと無事帰還していた。
ペペロンは『マジック&ソード』というVRゲームをプレイしている時、そのゲームの世界に転移し、その世界で生きることになった。
彼は小人族という、成人しても普通の人間の子供くらいの大きさにしかならない種族でプレイしていたため、現在小人族の姿になっている。
本来弱い小人族であるが、ペペロンはかなり自キャラを強化しており、凄まじい強さを手に入れている。
(さて、ボルフの塔攻略で色々と戦利品を手に入れたし、これからどうやって『グロリアセプテム』を強くしていくか)
ペペロンは、マジック&ソードをプレイしていた時、小人族を含めた弱小七種族だけを配下にして攻略するという、縛りプレイを行っていた。その時、自分の勢力にグロリアセプテムと名を付けた。
色々あって転移した今でも、ゲームと同じく弱小七種族だけを集めての勢力作りをする羽目になり、先行き不安ながら何とかゲームの知識を生かして、強力な勢力を作り出そうと、ペペロンは奮闘していた。
(ボルフの塔ではパワーエンチャントとギガフレイムの魔法書を手に入れることが出来た。どっちも強い魔法だ。特にパワーエンチャントはめっちゃ強い。エリーに研究してもらわないと使えるようにはならないけど、これが使えるようになれば、一気に強くなれて、やれることも増える。早いところ魔法書を研究してもらおう)
マジック&ソードの世界には、魔法が存在している。
魔法を使うには、商人から購入したり遺跡から発掘することが出来る魔法書を、研究所という施設で研究する必要がある。
一度研究した魔法は、必要な魔力量が足りてさえいれば、拠点に所属している全員が使用可能になる。
(これでだいぶ強くなれたけど、まだまだ不十分だ。まだ住民の数が全然少ないし。もうちょっと集めたほうが良いだろう。ほかにも今いる住民の訓練もしないとだし。新しい施設の建築も急いで進めないといけない。頑張って戦って、戻ったからといって、全然休んでいる暇はないな)
マジック&ソードの世界に転移したということは、ゲーム時代のようにセーブ&ロードが出来ない可能性が高い。死んだらそこで終わりである。それは嫌であるので、休まずに勢力の強化にペペロンは努めることにした。
「ペペロン様。BBCのアジトから手に入れた、魔法書の研究が全て終了しました」
ペペロンの重要な配下の一人、賢魔族のエリーが報告をしてきた。
賢魔族は頭の良い種族で、エリーは非常に知力が高い。魔法書の研究をさせるのには一番の人材だった。
BBCのアジトで手に入れた魔法書は、クレナイ、フォー・アームズ、シックス・マジック・アームズ、ビッグボム、ハイ・ヒーリングの五つである。
どれも結構有用な魔法だ。使えるようになったのは大きい。
「研究してもらった直後で悪いんだが、ボルフの塔で得た魔法書二つの研究も早速始めて欲しい」
「かしこまりましたー」
エリーはそう言って、ペペロンのいる村長の家から出ていった。
態度はいいのだが、エリーが内心、不満を持っていないか、ペペロンは少し心配になっていた。
かなり長い時間研究をさせている。マジック&ソードがゲームであるならば、ご機嫌取りは簡単でアイテムなどを渡せばそれでいいのだが、今は現実である。エリーの好感度もゲーム時は見えていたが、今は見ることは出来ない。どう思っているのかは分からない。
不満を持たれて、グロリアセプテムから脱退していったら、大きな痛手になるのは間違いない。しかし、パワーエンチャントの魔法は、一刻も早く研究を終えたいので、現時点で文句を言ってこない以上、任せるつもりだった。
ペペロンは家から出る。
近くに配下の一人、コボルドのポチが巨大な剣を振って鍛錬していた。コボルドは犬の耳や尻尾を生やした人間という感じの種族だ。
「ポチ、少しいいか?」
「何ですかい?」
「兵たちの鍛錬をお願いしたいんだが、やってくれるか?」
「兵士希望のエルフたちをしごけばいいんですかい? ペペロン様がやれと仰せならやりますぜ」
ポチはグロリアセプテムの中でも、トップクラスの実力者だ。新兵の育成を任せるには十分な人材である。
本来は自分でやりたくもあったが、今回はペペロンはほかにやりたいことがあったので、ポチに任せることにした。
「じゃあ、早速始めますかー。軽くしごいてやりますよ」
そう言ってポチは、訓練を始めに行った。軽くと言ったが、本当に軽いのか、ペペロンは疑問に思った。
その後、ペペロンは指示を与えていない重要な家臣であるファナシア、ノーボ、ララ、ガスを呼び出した。
四人はすぐに呼び出しに応じ、ペペロンのところまで来る。
「ペペロン様、何かあったー!?」
元気よく言ったのはファナシアだ。ハーピィーという背中から翼が生えている種族の少女である。この翼は見せかけで飛ぶことは出来ない。
幼い容姿であるが、彼女はグロリアセプテムの中でも、もっとも接近戦に強く、最強の戦力の一人である。
「何なりとお申し付けくださいませ」
優雅にお辞儀をしてそう言ったのは、エルフのララだ。ありとあらゆることが出来る能力があり、ペペロンが一番信頼している家臣である。
「私にお役に立てることならば、何でもやりましょう」
次に巨人族のノーボがそう言った。本来、巨人族には脳筋タイプが多いのだが、彼は非常に頭が良い。
エリーに次ぐ頭脳を誇っている。
「塔から帰ってきて暇だったから、仕事があるなら歓迎するっす」
最後にゴブリンのガスがそう言った。罠を解いたり、鍵のかかった宝箱を開けたり、ばれないように建物に忍び込んだり、密偵や遺跡攻略で非常に重要なスキルを多彩に持っている男である。
「ボルフの塔から戻ってきたばかりで申し訳ないが、皆にはやってもらいたいことがある。まずガスには近くの町を巡って、色々な情報を得てきてもらいたい。何がどれくらいの値段で売っているのか売れるのかとか、町を守る兵の数、家の数など有用な情報を色々収集してほしい」
ペペロンはゲーム時代、マジック&ソードをやりこみにやりこんでおり、ある程度の情報は把握しているが、細かいところまで同じなのかどうかは、まだ分かっていないことだったので、それを調べたいと思っていた。
町を巡っての交易は、資金を稼ぐうえでは非常に重要な物になる。
物の相場が自分の知っている物と同じという確証がなく、万が一間違っていたら、大きく損をする羽目になるので、事前に調べておく必要があった。
「了解したっすー」
ガスは軽い口調で了承の返事をし、すぐさま行動を開始した。
「私はこれから新しい住民を探すため、ハーピィーが住むプレットー村に向かうつもりだ。ファナシアとララは同行してもらいたい。そして、ノーボには私のいない間、グロリアセプテムの管理を任せたい」
ペペロンは拠点のレベルを現在の村から町に上げたいと思っていた。町に上げると作れる施設の数が増えるため、色々なメリットがある。
拠点のレベルを上げるには、住民を増やさないといけない。
プレットー村は、住民の数も結構多く新しい住民を探すには最適だとペペロンは思っていた。
ファナシアは同じハーピィーであるため、説得には必要だ。
ゲーム時代もプレットー村に住んでいる住民を勧誘していたが、自分は行かずファナシアに任せていたので、場所ははっきりとは覚えていなかった。
ゲーム時代はララも同行しており、ファナシアの記憶力は怪しいので、ララにも付いてきてもらう。
ノーボは頭もよく、戦闘能力も高いため、ペペロンのいない間、拠点を任せることが出来る人材である。本来はララに任せるのが一番いいのだが、今回はノーボを残してララを連れていくのが、ベストであるとペペロンは思った。
三人は命令を快く受けた。
その後、ペペロンたちは拠点を出る準備を終わらせて、早速プレットー村へと向かった。