
途中で
しかし、
帰還当日は、何の進展もないまま終わった。
翌日も騎馬騎士本部側からアクションがないので、俺が見間違えたか
報告内容はクラスメイトどころかアムニットたちにも話していなかったのに、一部の生徒はなぜか知っていた。話を流したのが、
学校へ戻ってから三日がすぎた。砦の
「ロベール様、お
「ありがとう。
「はいっ」
俺の返答に元気よく返事をしたアムニットは、カップへ
砦に詰める兵士のために何かやりたくても、学校から出た待機命令があるため今も動けないでいる。皇都へ戻って来てから三日が
「私もいただきますわ」
「あっ、私も~」
「僕も……」
「俺も、貰っていいか?」
俺たちがいつも使っている
それは、インベート
実家まで距離があるためなかなか帰ることが出来ないらしく、インベート準男爵や母親の近況を教えてやると、とても喜んでくれた。
二人とも、実家付近の砦で起きていることを
ブロッサム先生とカナンが増えた
俺の体は日常生活を送るうえで、特に問題がない程度には回復している。そのため、ミナに
やることがないのに
マシューに来た
初めは警戒心丸出しだったミナだったが、最近はグッと
「なぁ、アバスよ。何か新しい話はないのか?」
「すまんが、何もない」
アバスとは、毎日同じやり取りをしてしまっている。
しかし、それだけである。
どこの部隊を何人規模で送るか、といったところまでは、話が進んでいないようだ。
それに、人数も少ないので騎馬騎士のように誰にどの任務を
なので
騎馬騎士本部の腰の重さはいつものことだが、今回はことがことなので待機している
まぁ、騎馬騎士本部は騎馬騎士だけでなく歩兵から
それに、
「失礼しますっ!」
考えごとをしていると、喫茶のドアをノックしながら入ってくる
「やはり、すでに戻られていましたか」
アシュリーは俺の前に立つと敬礼をした。その姿は、空の長旅が
「お
「ストライカー様が早すぎるんです。これでも、大急ぎで帰って来たんですよ」
「なるほど、それは大変だった。他の奴らは?」
「
「先に戻っていろって言ったのに、何やってんだよ……」
「私もそれを
残念ながら、あの時に言った俺の言葉をアシュリーと、早く帰りたがっていた一部の候補生以外は誰も信じていなかったようだ。
日が落ちてから砦を
「でも、帰って来てくれたのは良かった。証言者が俺しかいなかったから、砦が敵に攻め込まれているのが、俺の見間違いか功名欲しさに
「分かりました。戻って来た者と共に、一度、
「頼んだ」
アシュリーが喫茶を出ていこうとすると、それに入れ違いになるように
「ストライカー様、たった今この手紙を受け取りまして、急いで持ってきました」
中に使われている紙も外装と同じく上質な紙が使われている。こんな上等な紙で送ってくる奴はどこのどいつだ、と思いながら手紙の内容に目を走らせていくと、
「あのクソ野郎……」
手紙の送り主は、あの日、酒を飲んだ帰りに
その手紙の内容は、簡単に言ってしまえば「ミナが騎馬騎士に戻りたがっているので
「あの……ロベール様……?」
隣に座っているアムニットが心配そうに聞いてきた。
それに気が付き顔を上げると、あまり顔の造形がよろしくないことになっていたのか、テーブルについている皆の表情が心配そうな顔つきになっていた。
「心配ない。ちょっと出かけてくる」
これ以上、印象が悪くならないように笑顔で対応するが、先ほどの言葉と表情から明らかに何かある、と察した皆の表情は複雑だった。
「ロベール、何か手伝えることがあったら、言ってくれ」
ただならぬ様子に、アバスが声をかけてくれたが、俺はそれを
相手は、本物のロベール・シュタイフ・ドゥ・ストライカーの顔を知っている。
この世界でも
ここは、大人しく金を貰ってミナをヴァンデスに渡した方がいいのか……?
「あの……、もしかしてミナさんに何かあったのでは……?」
どう対処すべきか黙考していると、静かに座っていたミシュベルがズバリ
問うと、俺が蛮族調査に行ってすぐに、騎馬騎士の訓練場で訓練を始めたそうだ。アバスもそのことを知っていたらしいが、皆は俺が許可を出したものとばかり思っていたそうだ。
そこで、キナ臭さを感じた。ミナの性格から昔の仲間を
いや、あの性格だ。こんなことができるような奴ではない。
「ロベール様は最近落ち着いているから、
「ちょっ、お姉ちゃん!」
ブロッサム先生が場の空気を全く読むことなく発した言葉に、弟のカナンが顔を
「
目つきの変わったミシュベルが何かを言おうとする前に、俺は
「よしっ! 確かにそうだな。何をするにしても、まずは本人に聞いてみないと」
「でっ、ですが、もし──ロベール様の意に
マシューでミナと共に料理を作り、同じ
「その時は、その時だ。
一度は、ことを大きくしないようにヴァンデスの言う通りにしようと思った。だが、ミナは紙や
ここで資金源となる知識を流出させるわけにはいかないし、流出してしまっては俺の計画がどんどんと
いや、もうかなり崩れているが、ここで行動を起こさなければ後は
なにより、ミナから直接聞かない限り、あの手紙は信じるに
ヴァンデスは、俺が
危険だが、ストライカー侯爵家に助けを求めるのが一番だろう。
俺が本物のロベールから入れ替わりを持ち掛けられて、入れ替わっていること。そして、そのことがよりにもよって、騎馬騎士の人間にバレそうになっていることを。
ストライカー侯爵家は上級貴族であり、国の行く末を決める国議会にも参加できるほどの貴族だ。今の地位を守るためにも、全力で俺のために動いてくれるだろう。
ならば、出ていく前に急いで手紙を書いて、ストライカー侯爵家まで送らなければいけない。
「俺はでかけるから、
俺に続き、アバスをはじめアムニットとミシュベルも立ち上がった。しかしこれ以上、
□
ヴィリアと出発しようとすると、待機している
お陰で俺が出ていくための理由を説明するのに時間がかかってしまった。その時間を取り戻すためにもヴィリアに
「全く、
昼寝していたヴィリアは寝起き早々あのような騒ぎが起きたことに、少々イラついていた。
俺が会いに行く時はいつも起きているイメージだったので、寝起きで機嫌が悪いヴィリアを見るのは初めてだった。
「悪いな。ちょっと前に
「ロベールは貴族でも偉い方なんだろ? そんな奴に喧嘩を売るとは、そいつも偉いのか?」
「それは分かんないけど、ちょっと弱みを
「弱み?」
「俺は、本物のロベールじゃないんだ」
そうなったら、ヴィリアはどうするだろうか、と考えた結果だった。
逃げるのは俺だけの理由だし、それにヴィリアが付き合うこともないのだが、新天地へ行くまで背中を貸してほしかった。
我ながらセコイと思う。
「──そうか」
少し黙考した後、ヴィリアは静かに答えた。
「それを話して、ロベールは何をして欲しいんだ?」
「今から会いに行く騎馬騎士は、俺が
何をしてほしいのか、という問いに対して答えると、ヴィリアは何が面白いのか
「なるほど、替え玉と言うものか。今までずっと黙っていたのは気に食わないが、ずいぶんと面白いことをしているじゃないか」
「黙っていたのは、謝る。ただ、ヴィリアが言うほど面白いもんじゃないぞ」
貴族に
「失敗したときは、その時だ。私もまだ死ぬつもりはなく、またロベールが何を
「ありがとう、ヴィリア」
先ほどまでの不機嫌さが噓のように、ヴィリアは軽やかな声で笑った。
手紙で指定されたキリッカ第三訓練場というのはすぐに見つけることができた。だだっ広い平原に、騎馬騎士が十数騎集まっているのだから目立ってしょうがない。
あいさつ
「貴様! ドラゴンで目の前に降りるだけではなく、我々に
砂埃が
「すんませんねぇ。こちとらまだまだ候補生なもんで、どうにもドラゴンを
俺の成績を知っていれば噓だと分かることだが、相手はそこまで調べていなかったのか、俺が慣れていないというと
「それで? 俺の奴隷のミナが騎馬騎士の訓練場にお
いやらしく笑いながら周囲を見渡して、ミナを探すフリをした。上空からここへ降りてくる間に、ミナがいないことは確認済みだ。
「貴様が知る必要はない。ストライカー侯爵様が何を考えられているのか俺には分からないが、今の私には関係ない。金をやるからとっとと
ミナを俺の奴隷と言ったことが
さすがに、ロベールのことを知っていても、本物のロベールはすでに死んでおり俺が入れ替わっている、とまでは考えが
これは
「騎馬騎士というのは頭が悪いのか? それとも、貴様の頭が一等悪いのか? 俺は、ミナはどこだ、と聞いたんだ。もう一度だけ聞いてやる。ミナはどこにいるんだ」
「貴様! ストライカー侯爵家の身内だからとこちらが大人しくしていれば
またヴァンデスの隣の奴が
「おっと、これは失礼しました。騎馬騎士の皆さまが下馬していなかったために、こちらもそれが礼儀だと思い、ドラゴンから降りることなど
「ならば、降りたらどうだ!」
「騎馬騎士の皆さまが下馬していなかったために、こちらもそれが礼儀だと思い──」
「貴様ッ!!」
馬鹿にしているのに気付いたのか、騎馬騎士は顔が
「とにかく、ミナを呼んで来い。話はそれからだ」
ヴァンデスはそれに答えることなく、近くにいる騎馬騎士に命じてミナを呼びに行かせた。
自ら馬を
「ヴァンデス、これはどういうこと?」
今回のことは、ミナに知らされていなかったようだ。元クラスメイトが先走っただけということか。
「ストライカー侯爵家の身内が、君に最後の別れを言いたいと来ているんだ」
「最後の別れ!?」
ミナは驚き俺の方を向いた。
その表情は、奴隷として買われた当初よりも悲壮感に
「そいつの話では、ミナは騎馬騎士へ戻りたいということになっているらしい。俺としてもその意思を
「それは
「いちいち
「
今まで何とか冷静に俺とやり取りをしてきたヴァンデスだったが、この一言には我慢できなかったのか、怒鳴り声を上げながら剣に手をかけた──。
「ゴアァァァァァア!!!!」
──瞬間に、ヴィリアからも怒声が上がった。
それまで大人しくしていた
吠えたヴィリアは牙を
騎馬騎士の方が数は多いが、純粋な力ではドラゴンの方が何倍も勝っている。目の前で暴れられでもしたら、特に落馬をした騎馬騎士たちに逃げ場はなかった。
俺と騎馬騎士たちの間に嫌な緊張感が流れ始める。
「ロベール様! お願いします、
馬が屈倒したために落馬してしまったミナが、俺と騎馬騎士の間に飛び出して来て土下座した。
「何のつもりだ?」
「……彼は、家族に売られた私を
ミナがヴァンデスを
庇われているヴァンデスはミナの行動と言葉に
「何をしているんだ、ミレニウス! そいつは、噓で
「お願いだから、もう
「君だって、騎馬騎士になりたいって言っていたじゃないか! だからこそ、今も訓練場で共に訓練していたんだろう」
「訓練はしたかった! でも、騎馬騎士になりたいだなんて、もう言ってない! 私の人生なのに、何でみんな勝手に決めるの!?」
ミナは、子供がヤダヤダをするように頭を振った。奴隷として来た時は、感情を表に出そうとしない