……うっ。
もじもじと下を見ながら言われたセリフに、私は罪悪感を感じる。
「でも、アレクが僕の代わりにいっぱい言ってくれたから。ちょっと、すっきりしました」
……うううっ。
そういえばラスは、普段はいい子すぎるくらいいい子。属国の王子で半ば人質の留学生という立場を、彼なりに理解しているのだろう。
「ほら見ろ! ラスだって行きたいんだもん!」
アレクはますます調子に乗って言ってくる、が。
「そろそろ、やめなさい」
静かな声が割って入った。ラスの保護者役でシャダイ教司祭のヨハネさんだった。
「アレク。過ぎた欲求は身を滅ぼします。あなたの姉が駄目だと言っている以上は、従う他にない。わきまえなさい」
穏やかだけど有無を言わせない迫力があった。
アレクはぐっと黙って、次に目に涙を浮かべた。でも泣かないで、目元をごしごしこすって終わらせる。
「分かったよぉ……」
不承不承と顔に書いてある表情で、アレクはやっと引っ込んだ。
おぉ、えらい。去年なら大泣きしただろうに、子供の成長は早いものだ。
アレクもラスもなんだか気の毒になってきた。遊びたい盛りだものね。
そこで私は言ってみた。
「じゃあ結婚式が終わって落ち着いたら、近場に旅行に行こうか。バイオスの温泉とか、どう?」
バイオスは首都から三、四日の距離にある温泉地だ。ユピテル半島は火山があって、温泉文化が根付いている。保養地として人気の場所だよ。
「温泉! 行きたい!」
さっきまでの泣き顔はどこへやら、アレクは目を輝かせた。ラスもぱっと明るい表情になる。
「行きたいです。いいんですか?」
「うん。バイオスにもフェリクスの別荘があったから、ティベリウスさんに頼んでみよう。ラスもアレクもアイスの試食をして、結婚式の準備を手伝ってくれたものね。許可出ると思うよ」
「やったあ!」
前にティベリウスさんが、結婚式が終わったらご褒美をくれると言っていた。温泉旅行をおねだりしてみよう。駄目とは言われないはずだ。もっとも、ちゃんと結果を出すのが先だけれども。
そんなわけで、ちびっこ二人にお土産を買ってくる約束をして、留守番を任せたのだった。