アホか!! なんでこうなった!

いくらユピテル人の医学レベルが低くて人体はブラックボックスだと言っても、これはない。なさすぎる。

私の正しさを証明するのに、お前を解剖してやろうか!?

と、一瞬だけ思ったが、そうもいかない。

なるべく冷静に声を出した。

「これ、出典どこ?」

「我が家に伝わる秘伝の書の一部だ」

「残念だけど、こっちが間違ってるよ。人間の体の中は渦巻きだけじゃなくて、筋肉も内臓もあるもの」

「騙されんぞ。もっともらしいこと言って、言いくるめる気だろう」

んなわけあるか。

「じゃあ、私と一緒に来て。料理人に頼んで豚の解体を見せてもらおう。そしたら、人間の中身と似てると分かるから」

「嫌だね。なぜ豚と人間を一緒にするんだ? 無意味だろう」

無意味なのはお前さんの脳みその中身だと思うがね?

「同じ動物だもの。だいたいのところは一緒でしょ」

「どうだか。人間と豚じゃ違いすぎるだろ。確かめるなら人間をバラしてみなきゃ、分からない」

それができれば苦労しないわ。

するとシリウスは、ぽんと手を打った。

「おっ、そうか。本物の人間の中身を見てみりゃいいんだな」

「え?」

なんかいきなり殺人鬼みたいなことを言い出したので、後ずさる。

「うん。確かに、僕もまだ人間の中身は見たことがなかった。いいだろう、どっちが正しいかは実物を確かめてから決めてやる」

「や、やめてよ。なにする気?」

「何って、人間の死体くらい、貧民街に行けば転がってるだろ。一つその場で切り刻んでみるだけだ」

「駄目!!

顔色変えずに何言ってんだこいつ! 怖いわ!

シリウスはきょとんとした顔で首をかしげた。

「なんで駄目? さすがに生きてるのを殺すのがまずいのは分かる。だから引き取り手のいない死体を……」

「駄目ったら駄目! ……そうだ、猿! 猿の解体でどうよ!? 猿なら人間に似てるでしょ!」

「ああ、うん? まあ豚よりかは似てるか?」

「じゃあどうにかして猿探してくるから、それまで待ってて」

猿は、以前フェリクスの宴会で料理が出ていた。脳みそ食べるやつ……。

どっかで手に入ると思う。がんばって探す。

「猿、見つけたら知らせるから。絶対死体に手を出したら駄目だよ!?

シリウスは「やれやれ」みたいなジェスチャーをした。ムカつく!

マヌケな言動で油断したが、ヤバい奴と関わり合いになってしまった。

本当は猿だって解体なんぞしたくないが、いつまでも難癖つけられても困る。さっさと決着つけておさらばしよう。

「ふぇっくしょん!」

ホコリだらけの部屋でくしゃみも出てきた。こんなところにもう、いたくない。

私は汚部屋ならぬ汚研究室を飛び出すように出て、フェリクスのお屋敷に走ったのだった。