「朱莉〜!! 早く解除してくれぇぇ!!」
「アカリちゃん! お願いしますー!」
「ムリムリムリ! 動いてるトラップなんて解除できないよ!」
「「えぇぇぇぇぇ!」」
「ごめーん! でも、見つける前にトラップが発動するなんて思わないじゃん!!」
俺たちは慎重にトラップのある道を進んだが、朱莉がトラップを見つける前に大玉のトラップは発動してしまった。
朱莉はトラップ解除に少し時間がかかるらしく、すでに発動してしまったトラップは解除できないらしい。
すでに上り坂が始まったところは通り過ぎているが、大玉トラップは止む気配を見せない。
ここから先はかなり長い一本道だったはずだ。
つまり、トラップから逃げ切れるのは当分先になる。
もしかしたら、このトラップのために長い一本道だったのかもしれない。
唯一の救いは、行きに全部のトラップを解除しているので、トラップを気にせず逃げられることか。
小さいトラップも全部解除してもらっておいてよかった。
今後も避けられそうなトラップでも解除してもらうようにしておこう。
だが、問題はある。
「……」
「「はぁ。はぁ」」
俺はチラリと朱莉と京子の方を見る。
俺はジョブ補正もあり、まだ余裕だが、朱莉と京子は結構きつそうだ。
一本道の出口まで持つかは微妙なところだ。
何より問題なのはこの間と違い、今日は京子が聖域を発動していない。
つまり、トラップのダメージをHPで受けることになるということだ。
朱莉も京子もレベルは上がってきているが、生き残れるかわからない。
(やるしかないか)
俺はトラップに対処する決意を決めた。
「朱莉! あのトラップ、五秒、いや、十秒止められれば解除できそうか?」
「はぁ。はぁ。多分! ううん。絶対解除してみせる」
「わかった。俺が止めるから、トラップの解除を頼む」
「!! はぁ。はぁ。了解!」
動いているトラップが解除できないなら、俺がトラップを止めている隙に解除してしまえばいい。
俺ならトラップを喰らっても少しの間なら耐えられる。
坂も終わったし、一度大玉が転がるのを止めてしまえば、大玉は止まるかもしれないが、ここはダンジョンの中だ。
あの大玉が物理法則に則って動いているとは限らない。
一度止めても謎の力で転がり出すと思っておいた方がいい。
「京子は余裕があれば聖域の発動を頼む」
「はぁ。はぁ。わか、はぁ。りま、はぁ。はぁ。はぁ」
「無理はしなくていいから。トラップは俺たちがなんとかする」
「はぁ。はぁ。任せておいて」
「じゃあ、行くぞ!」
俺が立ち止まると、京子と朱莉も立ち止まる。
朱莉はいつでもトラップの解除に取り掛かれるようにトラップ解除ツールを取りだす。
必要なものだけ引っ掴み、ツールボックスの方はその辺に放り投げてしまった。
京子も杖を構えて聖域を発動しようとしている。
だが、息が整わず、発動はされていない。
間に合うかは微妙なところだ。
「『一閃』!」
小太刀を構えてスキルを発動すると、いつものように時間が引き延ばされる独特の感覚がやってくる。
引き延ばされた時間の中で、ゆっくりと転がってくる大玉を認識する。
だが、いつもは見える急所が今回は見えない。
俺の技量ではあれが破壊できないということがわかった。
それどころか、有効なダメージを与えられるかどうかも微妙なところだ。
どれだけ硬いんだよ。
だが、可能な限り多くのダメージを与えて、少しでも長く大玉を止めるため、大玉の全体像を確認し、重心を割り出す。
そこに最大のダメージを与えられるように一撃を繰り出した。
「しっ!」
大玉に攻撃を加えた小太刀はガラスが砕けるような音を立てて砕け散る。
だが。これまでで最高の一撃が決まったと思う。
その証拠に、俺では有効なダメージを与えられないはずの大玉は一瞬ではあるが後退した。
つまり、勢いは完全に殺せたということだ。
「やっ……てない!」
だが、案の定、大玉はすぐに俺たちの方に転がり始める。
やっぱり、物理的な力じゃなくて、魔法的な何かによって動いていたようだ。
このままだと三秒もしないうちにまた俺たちに向かって転がってきそうだ。
流石に、三秒では朱莉もトラップの解除はできないだろう。
「うおぉぉぉぉ!」
「サグルっち!?」
俺はアメフトのタックルみたいにして大玉にぶつかっていく。
攻撃で止められないなら体で止めるしかない。
「朱莉! 今のうちに頼む!」
「!! わかった! 『トラップ解除』!」
朱莉はトラップの解除に取り掛かる。
どうやら、結構大変みたいだ。
その表情はかなり厳しい。
(俺のHPはもつか?)
なんか身体中がめちゃくちゃ痛い。
身体中を引きちぎられるみたいな感覚だ。
多分、トラップの周りに力場みたいなのが発生していて、触れている相手にダメージを与えるようになっているんだと思う。
自分のHPがガリガリ減っていってるのがわかる。
でも、五秒くらいなら持ちそうだ。
十秒持つかは微妙だが、気合いでなんとかするしかない。
「はぁ。『聖……』はぁ。はぁっ『聖域』! はぁ。はぁ」
「!!」
直後、京子の聖域が発動した。
次の瞬間、俺へのダメージが無くなる。
同時に身体中の痛みもどこかへいってしまった。
だが、俺のHPの代わりに京子のMPがガンガン減っているはずだ。
さっきのダメージの感じから言って、持って五秒というところか。
俺の残りHPも足せば、十秒は余裕で持つはずだ。
俺は、再びダメージが来ることに身構えながら、大玉を押さえ続ける。
「うぉ!?」
だが、ダメージが来る前に大玉はガラスが砕けるような音を立てて砕け散った。
「解除成功〜〜〜」
どうやら、トラップの解除に成功したらしい。
朱莉はばたりとその場で横になった。
俺もその場にへたり込む。
京子も杖をついてへたり込んでいた。
「やったね!」
「あぁ」
俺たちは心地よい達成感と共に、しばらくの間、その場所で休憩した。
ちなみに、トラップの奥にあった宝箱の中身は中級ポーションだった。
二度とこんなところくるか!
◇◇◇
【ダンジョンは】探索者情報共有掲示板389【成熟期!】
1:名前:名無しの探索者
ここは『ダンジョンGo!』ユーザーの情報共有掲示板です。
謎パワーによって一般ぴーぽーは見つけられないので、安心して書き込みましょう。
称号の取得方法や効率的なモンスターの倒し方など有益な情報の情報共有をしましょう。
ここで嘘や煽りなどはお控えください。
こう言っても、嘘や煽りをする探索者はたくさん出るので、話半分で聞くように心がけてください。
10:名前:名無しの探索者
すみません。生産職先輩いますか?
11:名前:名無しの探索者
>>10
いるぞ。
なんかその呼び名が定着してしまったな。
先輩って言うほどの歳でもないんだが。
12:名前:名無しの探索者
>>11
掲示板民はいつも生産職先輩にお世話になってるからな。
うちの近くの山にできたCランクダンジョンがなんとかなったのも先輩のおかげだし。
敬称を外しては呼べない。
もうコテハンにすればいいのに。
13:名前:名無しの探索者
>>11
俺も、先輩のおかげで探索が捗ってるから、敬称なしでは呼べない。
>>12
コテハンは俺も賛成。
前に、同じような口調の全然違うやつがいて、困ったし。
そいつは何にも答えてくれなかったんだよな。
14:名前:名無しの探索者
>>12
俺も上級冒険者だが、コテハンは賛成だな。
フリーの生産職先輩は俺たちじゃ答え難いことも答えてくれてるし。
それに、説明もわかりやすい。
異議のあるやつは申し出ろ。
15:名前:名無しの探索者
>>14
異議なし。
16:名前:名無しの探索者
>>14
異議なしっす
17:名前:名無しの探索者
>>14
異議なしです
18:名前:名無しの探索者
>>14
異議なしー
19:名前:生産職先輩
>>12-18
じゃあ、お言葉に甘えてコテハンをつけさせてもらう。
名無しあらため生産職先輩です。
これからもよろしくお願いします。
20:名前:名無しの探索者
>>19
やったー!
21:名前:名無しの探索者
>>19
おめでとう!
22:名前:名無しの探索者
>>19
先輩呼びはもういいのか。
23:名前:生産職先輩
>>22
そこは諦めた。
わかりやすいほうがいいだろ。
>>10
話は戻すが、何の用事だ?
24:名前:名無しの探索者
>>23
そうでした。
今日、初めてDランクダンジョンに入ったんですけど、武器がガンガン壊れちゃうんですが、あれの対処法ってありますか?
斥候職の人の話では、トラップにかかったとかではないそうなんですが。
Eランクの素材を使った武器じゃ倒せないのかもしれませんが、現状だとDランクのモンスターが倒せずにドロップアイテムも手に入らないので、新しい武器にも換装できません。
生産職の人もDランクのドロップアイテムを持っていかないとDランクの武器を作ってくれないんですよね?
突破方法がわかれば教えてほしいです。
25:名前:名無しの探索者
>>24
あー。あるある。
Dランクに行くと最初みんなそうなるんだよな。
26:名前:名無しの探索者
>>24
Dランクからはトラップがあるからハードルが上がるっていうのが一番有名だが、武器が壊れ出すのもハードルの一つだよな。
俺はEランクまではチュートリアルで、Dランクからが本番って感じなんだと思ってる。
27:名前:生産職先輩
>>24
Eランクのドロップアイテムから作ったEランクの武器でも、生産職が作ればDランクモンスターを倒せるぞ。
見習い鍛冶師が作ると、武器の品質が最低品質になってしまうが、生産職が武器を作れば武器の品質が普通以上になる。
普通以上の品質の武器を使えば、Dランクダンジョンでの戦闘に数回は持ち堪えられる。
そのうちにDランク以上のドロップアイテムを手に入れて、Dランクの普通品質以上の武器に換装していく感じだな。
生産職が作った高品質の武器だろうとDランクのドロップアイテムを使った武器だろうと壊れることは変わらないけどな。
トラップの対処はできてるみたいだし、東京周辺なら俺が作ってやってもいい。
まあ、割引とかはできんから結構値は張ることを覚悟しておいてほしいが。
五人分で十万円くらいは最低でももらうことになる。
>>26
ダンジョンの本番は一般にCランクからだと言われてる。
Cランクからは洞窟型以外のダンジョンも出てくるし、モンスターもDランクまでは全部醜○だったのが、狛犬とか因幡の白兎みたいに名称がちゃんとついてくるからな。
名持ちのユニークモンスターも出てくるらしい。
そういう理由もあって、Cランク以上のダンジョンに潜る探索者をそれ以下の探索者と分けて上級探索者と呼んでいる。
28:名前:名無しの探索者
>>27
Cランクからが本番なのか。
上級冒険者の定義とか適当に決めてると思ってた。
29:名前:名無しの探索者
>>27
うー。東京周辺ですが、十万はちょっときついです。
一人分を二万円とかでお願いできますか?
30:名前:生産職先輩
>>29
可能だが、あまりお勧めはしないな。
それに、Eランクダンジョンを五個くらい攻略すれば十万は貯まるはずだから、十万はそこまで大きな数字じゃないぞ?
Eランクダンジョンを五つも攻略できないようなら、Dランクダンジョンにはまだ潜るべきじゃないと思う。
31:名前:名無しの探索者
>>30
ダンジョンのボスは倒せるんですが、ボスのところに行こうとすると邪魔してくる探索者がいるんですよね。
「ダンジョンを攻略すれば他の探索者の迷惑になるから、攻略はするな」とか言ってくるんですよ。
そいつらがいるせいで、少し早いけどDランクダンジョンに挑戦しようって話になったんですし。
32:名前:名無しの探索者
>>31
あー。いるいる。
品川のFランクダンジョンにもそいついるぞ。
まじで迷惑だよな。
しかも、複数パーティいて結構強いから、無理やり攻略することもできないし。
確か、金竜会って言ったっけ?
33:名前:名無しの探索者
>>32
そうそう。金竜会。
俺の潜ってるEランクダンジョンにもいるわ。
最近東京周辺のリーダーが代わったらしくて、かなり横暴になったんだよな。
しかも、あいつら、ランクアップ現象が始まるとボスを倒して、一ランク上の報酬をもらってるらしいぞ?
知らんけど。
34:名前:生産職先輩
>>31
む。そうなのか?
迷惑なやつもいるもんだな。
まあ、だからといって、俺が割引をする理由にはならんが。
うーむ。やっぱり、五人分作ったほうがいいというのも変わらない。
一人分だけの武器作成は悪いが拒否させてもらう。
もし、一人分だけ作ってほしいなら別の生産職を当たってほしい。
自分が武器を作った相手が無謀な挑戦をするのは見ていられないからな。
>>32-33
金竜会か。
最近あまりいい噂を聞かないな。
うちにも結構無理に契約を迫ってきているし。
俺は探索者に戻ることを諦めていないから断っているが。
35:名前:名無しの探索者
>>33
ランクアップ現象を使って一ランク上の報酬をもらってるってどういう意味?
ランクアップ現象って危険だから避けるべきなんじゃないの?
教えて、生産職先輩!
36:名前:生産職先輩
>>35
多分だが、ランクアップ現象が始まるまでボス部屋の前で待って、ランクアップ現象が始まったら速攻でボスモンスターを倒しているんだろう。
ランクアップ現象が始まれば、ダンジョン全体のモンスターのランクが一ランク上がる。
これはボスモンスターも一緒だ。
そして、そのボスを倒せば、一ランク上の攻略報酬がもらえる。
ランクアップ現象の対処についてはダンジョンはボスモンスターが倒されれば攻略となり、他のモンスターたちも消失するからそれを利用しているんだと思う。
これはランクアップ現象中でも同じだからな。
37:名前:名無しの探索者
>>36
なるほど。
ダンジョン内でかなりの時間を過ごさないといけないけど、ただでさえ雑魚モンスターの百倍もらえるボスの討伐報酬が10倍もらえるなら元は取れるってことか。
よく考えられてるな。
普通なら、先に他の探索者に攻略されてしまうことが多いから、差し引きマイナスになる。
だが、組織的に動いて他の探索者を妨害することで、自分たちが確実にランクアップ後の報酬を取りに行ってる。
大組織ならではのやり方だな。
まじでふざけんなと言いたい。
38:名前:名無しの探索者
>>37
はぁ!?
ふざけんな!
誰か何とかしろよ!
こういう時こそ上級探索者の出番だろ。
39:名前:生産職先輩
>>38
金竜会は歴史こそそれほど長くないが、戦後からある結構大きな組織だからな。
個人ではどうしようもない。
まあ、周りの探索者に迷惑をかけ続けてると、旧家の人とかがそのうち動くだろうから、それまで我慢するしかないな。
これで東京周辺から探索者が減ったりしたら困るのはあの人たちだし。
あの人たちも自分たちの特権を妨害しようとしてくる奴らには容赦ないから。
40:名前:名無しの探索者
>>39
まじか。
その旧家っていうのはいつ動くんだ?
41:名前:生産職先輩
>>40
わからん。
とりあえず、知り合い経由で連絡をあげてみるが、半年後になるか数年後になるか。
42:名前:名無しの探索者
>>41
まじかよ。
それまで俺はどうやって稼いでいけばいいんだ!
43:名前:名無しの探索者
>>42
普通にバイトでもしろよ。
探索者のフィジカルがあれば現場仕事とか余裕だから。
44:名前:名無しの探索者
>>43
その手があったか!