朱莉のスマホにも俺にくれたのと同じストラップがついている。

並べてみるが、朱莉のギャルっぽいスマホにもマッチしている。

全然オタクっぽくない。

オタクっぽくないオタクグッズは使いやすくて、結構好きなんだよな。

俺は、グッズは使う派なのだ。

昔は使わずに取っておく派だったのだが、押し入れの中に大量のオタクグッズが溜まってしまい、母さんにキレられて捨てる羽目になってしまった。

それに、作品に飽きた時、新品のままのオタクグッズが箪笥の肥やしになってしまって悲しい気持ちになったりもした。

それ以来、グッズはできるだけ使うようにしている。

朱莉もそのことを知っていたのかもしれない。

カバンとかにもさりげない感じでオタグッズがついてたりするからな。

某バレー漫画のお守り型のキーホルダーとか。

それに、もしかしたら、それを見た同志が話しかけてきてくれるかもしれない。

そこから友達ができるなんてこともあり得るかも。

……まあ、同志どころか、知らない人から話しかけられたことはほとんどないんだが。

やっぱ顔が怖いからなのか?

なんにしてもこれはめちゃくちゃ嬉しいぞ!

「ありがとう!」

「ううん。お礼を言うのはこっちだよ」

朱莉は真剣な顔で俺の方を見てくる。

今日は荷物持ちをしてただけなので、何かお礼を言われるようなことはなかったと思うのだが。

「今日のことだけじゃなくて、一週間くらい前からのこと。サグルっちのおかげで昔みたいな生活ができるようになりそう」

「あぁ。そのことか」

襲撃が来ている間は近所の目も冷たいものだったため、まともに買い出しにも行けていなかったそうだ。

それに、美香さんは日に日に疲弊していき、倒れてしまいそうな感じだったとか。

確かに、久しぶりに会った時はかなりやつれていた。

この一週間でだいぶ回復し、まだ全回復というわけにはいかないが、今朝はだいぶ昔の雰囲気に戻っていた。

今日の事情聴取だって、美香さんの調子が良くなったから行なわれることになったんだろうし。

犯人たちが病死したのは月曜日か火曜日だったはずだからな。

「今日はお母さんが腕によりをかけた料理を作るって言ってたから、期待しておいてよ」

「本当か!? 楽しみだな」

今日はこの後、京子と一緒に朱莉の家にお邪魔することになっている。

今週は朱莉の家の周辺のダンジョンを片っ端から潰していたため、拠点として、朱莉の家を使わせてもらっていた。

美香さんには借金取りに対する用心棒と話していたが、結果的に借金取りたちは来なくなったので、美香さんにはだいぶ感謝された。

確かに強面の俺が美香さんの家に出入りしていたのも来なくなった原因の一つかもしれない。

いや、実際、俺たちがダンジョンを潰しまくって有村家に近寄れないようにしていたから、間違ってはいないのか?

「今日の晩御飯なに?」

「本当はサグルっちが好きだったとんかつにしようとしてたんだけど、事情聴取が入っちゃったからカレーにするって、昨日のうちに作ってあるから熟成カレーだよ!」

「まじか。美香さんのカレー、美味しいから楽しみだな」

美香さんの料理は東京に来てから何度も食べさせてもらった。

地方から出てきた俺にとって、美香さんの料理は東京でのお袋の味って感じだ。

中でも、カレーは絶品だった。

何か隠し味を入れているらしく、スーパーで買うレトルトカレーともお店のカレーとも違う独特な味をしていたのだ。

何を入れているかは教えてもらえなかった。

そういえば、教えてほしければ朱莉をめとって有村家に入ることとか冗談を言われてたっけ?

ことあるごとにその冗談が出てくるので、否定するのがめんどくさかったんだよな。

朱莉もその話が出ると顔を真っ赤にして怒るから、悲しい気持ちになるし。

いつも真っ赤な顔を伏せてプルプルしてたので、相当怒っていたのだと思う。

「お待たせしました」

「全然待ってないよー。じゃあ帰ろっか?」

「そうだな」

京子が戻ってきたので、俺たちは電車に乗って帰路についた。

***

「ふー。食った食った。ごちそうさまです」

「ごちそうさまです(これがサグルさんの好きな味。隠し味はなんだろう? りんごや蜂蜜みたいなありふれたものじゃない)」

「お粗末さまです。ふふ。サグルくんは相変わらずいい食べっぷりね。京子ちゃんも美味しそうに食べてくれて、おばさん嬉しいわ」

今日、俺は有村家で夕飯をご馳走になった。

美香さんのカレーは相変わらず絶品だった。

三回もお代わりしてしまったぜ。

京子もお代わりしていたから、気に入ったのだろう。

一口一口噛み締めるように食べてたし。

「それにしても、朱莉といい、京子ちゃんといい、最近の子はたくさん食べるわね。サグルくん、前よりたくさん食べるようになったんじゃない?」

「……」

俺は冷や汗が流れるのを止められなかった。

俺たちがたくさん食べるようになったのは多分『ダンジョンGo!』のせいだ。

そして、その『ダンジョンGo!』に朱莉を誘ったのは俺だ。

まさか、娘さんの体改造しちゃいましたとかいうわけにもいくまい。

「いやいや、奥さんのカレーが美味しいからですよ」

「あらあら。ありがとう。でも、実は、今日のカレーは私が作ったんじゃないの」

美香さんは意味ありげに朱莉の方を見る。

「今日のカレーを作ったのは朱莉なの。サグルくんに気に入ってもらえたみたいで良かったわ」

「そうなんですか? 美味しかったからてっきり奥さんが作ったのだとばかり」

「まぁまぁ! あの子も色々と練習してるからね。朱莉ー。サグルくん。カレーおいしかったって〜」

美香さんは台所の方に向かって話しかける。

そんなふうに伝えなくても聞こえてただろうに。

朱莉は台所ですでに洗い物を始めており、どんな顔をしているかこちらからは窺えない。

「朱莉と結婚してくれたらいつでも食べられるようになるわよ」

「ちょ、お母さん!」

朱莉は台所の方から出てきて真っ赤な顔をして怒る。

俺と結婚するのはそこまで嫌か?

流石の俺でも凹むぞ?

ぼっちはメンタル弱いんだからな?

「あらあら。怒らせちゃった」

美香さんは朱莉の怒りをするりと流す。

朱莉は真っ赤な顔で台所から出てくる。

美香さんは失敗したという顔をした後、俺たちの前にあった皿を手早く回収すると朱莉と入れ替わるようにして台所の方へと逃げていった。

「サグルっち! お母さんの言ってることは気にしなくてもいいから!」

「わかってる。そんなに必死にならなくても大丈夫だ。朱莉が俺の事をなんとも思ってないのは知ってるから」

俺は入社直後から美香さんに気に入られていたらしく、朱莉が中学生の頃から同じようなからかいを受けていた。

今みたいなギャルっぽい見た目ならまだしも、おとなしそうな見た目の朱莉と強面顔の俺ではどう考えても事案だったけどな。

中学の頃は朱莉は少しおとなしめの女の子だったのだ。

高校入学を機に一気に垢抜けて、今みたいな見た目になった。

中学卒業から高校入学の間に色々リサーチをしていたようなので、おそらく好きな子でもできたのだろう。

俺も、どんな女の子を可愛いと思うかとか聞かれたっけ。

その当時ハマってたオタクに優しいギャルの話をしたら、一週間後くらいにそれっぽい雰囲気になった朱莉が現れたので、度肝を抜かれた覚えがある。

高校入学で開放的になっちゃったんだろう。

朱莉の行ってる学校は私立で結構校則の緩い学校らしいからな。

(いや、中学の頃地味な見た目だったのは嫌がらせにあってたからだっけ?)

中学の頃、朱莉は同級生の女子に目をつけられ、嫌がらせにあっていた。

確か、きっかけは友達の好きな人が朱莉に告白したことだったか。

朱莉はその人が友人の好きな人だと知っていたので、告白をやんわりと断った。

それからしばらくして、仲間外れにされたりするようになり出したそうだ。

元々明るかった朱莉がどんどん暗くなっていっていたので、気になって色々調べてみると、嫌がらせにあってることがわかった。

しかも、その嫌がらせを煽ってたのが、朱莉に振られた男だっていうんだからタチが悪い。

俺は朱莉に気づかれないように男の家を訪問して朱莉のお友達の前で本性を暴いてやった。

まあ、俺の前ではペラペラと話してくれたな。

その時ばかりは父親譲りの強面に感謝……いや、それはないか。

あの時も結局警察を呼ばれてしまったし。

その後、朱莉は友達と仲直りできたらしく、今も高校は別々になってしまったらしいが、たまに会っているらしい。

普通、嫌がらせしてきた友達とは仲直りなんてできないと思うが、女子っていうのは本当に謎だ。

……あれ?

男子もライバルから友達になったりすることがあるし、それと一緒か?

俺にはライバルとかいたことないからわからん。

「……」

「ん? どうかしたか?」

「なんでもない」

朱莉は拗ねたようにそっぽを向く。

絶対なんでもなくないだろ。

だが俺の口から疑問の声が出ることはなかった。

この直後、ガラス窓が割れる音が部屋中に響き渡ったからだ。

***

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「京子!」

ガラス窓をぶち抜いて入ってきた男はまっすぐに京子の方に向かう。

俺は京子と男の間に滑り込み、男の右拳を受け止める。

「『鉄拳アイアンフィスト』!」

「ぐっ」

「サグルさん!」

スキルを使ったということはこいつは間違いなく探索者だ。

なんとか両手をクロスして受けることができたが、直接攻撃を受けた右腕が痺れてしまう。

これほど強いダメージを受けるのは初めてだ。

無敵の人の効果があっても声を出すのが我慢できなかったくらいだ。

間違いなくEランクのダンジョンボスよりも強い。

武器なしではかなりきついかもしれない。

「『二連撃ダブルアタック』!」

「(やっぱり、武器を出す隙はくれないよな)」

男は今度は左手を振りかぶる。

スキル名から言って連撃を繰り出すつもりなんだろう。

こいつはおそらく、拳士だ。

拳士は武器を装備できない代わりに、連続攻撃が得意なジョブとヘルプに書いてあった。

多分、俺に武器を装備する余裕を与えずに倒し切るつもりなんだろう。

「サグルっち! コレ」

!! 助かる」

後ろで様子を見ていた朱莉がアプリから小太刀を取り出し、投げてくれる。

朱莉の『ダンジョンGo!』の中にも俺の武器が格納されていた。

もしもの時のための予備だ。

予備のため、今使っているメイン武器よりは少し劣るが、ないよりは全然いい。

「『斬撃スラッシュ』!」

!!『バックステップ』」

俺が受け取った武器で飛んできた勢いそのままに切り付けると、拳士はスキルの発動を中断し、斬撃をバックステップで避ける。

そして、入ってきた窓際まで下がっていく。

「このまま帰ってくれるなんてことはない?」

「まさか、そんなわけないだろ?」

「ちょっとー。抜け駆けはー、ずるいんじゃないかなー」

「俺としては役割がない方が良かったんだが」

拳士の後ろから、剣をもった戦士っぽい男と、杖を持った魔法使いっぽい男が入ってくる。

おそらく、拳士のパーティメンバーだろう。

「気をつけろ、思っていたよりこいつ、やるぞ」

「まぁねー。Eランクダンジョンをーかなりのスピードでー攻略できるやつだからねー」

「はぁ。本当にめんどくさい」

拳士と戦士の二人が前に出て、魔法使いが後ろに下がる。

そして、戦闘体勢を整える。

「まぁー。三対一ならー。負けないだろうけどー」

「そうだな。むっ!」

拳士は飛んできた何かをはたき落とす。

拳士が確認してみると、それは投擲用のナイフのようなものだった。

飛んできた方を見ると、朱莉がおり、朱莉はすすっと俺の後ろに隠れる。

「『聖域サンクチュアリ』」

そして、京子と朱莉を守るように光の柱が立ち上る。

京子が聖域のスキルを使ったようだ。

聖域のスキルは発動者の一定範囲内に対する防御スキルで、京子の近くにいれば攻撃を受けてもダメージを受けない。

その代わり、京子のMPが受けた攻撃分減少するし、内側から外側への攻撃もできないようになってるんだが。

「『高強化ハイストレングス』、『高加速ハイアクセル』」

そして、立て続けに強化魔法を俺と朱莉にかける。

赤と緑の燐光が俺たちの周りに舞い、ステータスが上昇した感覚がわかる。

「どこに目をつけてるんだ? 三対三だぞ」

「ちっ。そういえば、あの女は僧侶だって話だったな」

「はぁ。めんどくさい」

「でもー。戦えるのはー二人だけでしょー? こっちの方がレベルは上だろうしー。こっちの有利はー変わらないー、よ!」

!!

戦士の男が一歩で距離を詰めてきた。

そして、俺に向かって横薙ぎを繰り出してくる。

しかも、わざわざ武器のない右側を狙ってだ。

俺は左手に持った小太刀を右手に持ち替え、相手の剣を受ける。

「くっ」

そして、そのまま鍔迫り合いになる。

(! 重い)

スピード特化アタッカーの忍者より純粋アタッカーの戦士の方が、パワーはまさっている。

それに、さっきの拳士から受けたダメージが抜けきっていないため、右手にはあまり力が入らない。

京子の支援があるのに押し負けてしまいそうになる。

「俺だけにー、かまけてて、大丈夫かーい?」

「〜〜〜〜『火球ファイアーボール』」

!?

戦士の後ろにいた魔法使いが炎の魔法を放ってくる。

目標は俺の後ろにいる京子たちだ。

今、『聖域』内にいる京子たちには攻撃が効かない。

聖域の魔法については知らないようだ。

だからと言って、やすやすとその事を教えてやるつもりはない。

炎が家に燃え移ったら大変だしな。

「(『水遁・魚心うおごころ』)」

!!

俺は左手を飛んでくる火球の方に伸ばし、水の忍術を使う。

俺の左掌から水の魚が飛び出し、火球の方へと飛んでいく。

魚は火球とぶつかり、相殺する。

『水遁・魚心』は敵の攻撃を相殺する忍術だ。

初めて使ったが、結構便利だ。

MPの消費も少ないし。

「な! 魔法!! っく!」

「ちぃ!」

驚いた顔の戦士と後ろで動き出そうとした拳士の方にナイフが飛んでいく。

朱莉が投げたものだ。

拳士は初動が潰されてしまい、こちらに攻撃して来れなかった。

戦士の方も朱莉のナイフを避けたことで体勢が崩れる。

「サグルっち! 今!」

「ナイス朱莉! うりゃ!」

「くそ!」

体勢が崩れればパワーの優る戦士でも押し切れる。

俺は戦士に攻撃を与えようとしたが、戦士は背後に向かって飛び退き、俺の攻撃を避けた。

「どうやらー。仕切り直した方がーいいみたいだねー」

「何! 俺はまだやれるぞ!」

「バカか。恭平はいいかもしれないが、こんな狭いところでは俺も充も全力が出せない」

「む!」

朱莉の家は普通の民家だ。

こんな狭い場所では剣を使う戦士と、魔法を使う魔法使いは全力が出しにくい。

周りに被害を出していい向こうと違い、家に被害を出したくない俺たちも全力を出せないのは一緒なんだが。

「有村さん! 有村さん!! 大丈夫ですか!?

「うるさいマッポも来たみたいだしー。撤退するよー」

「わかった」

「これでー終わったとー思わないことだよー。お前ら三人はー確実にー殺すからー♪」

「お前らの顔は覚えたからなぁ! 次は決着をつけてやる!」

男たちは捨て台詞を残して自分たちが破壊した窓から脱出していった。

***

「お母さん!?

三人組が帰っていくと朱莉は美香さんのいる台所の方に駆けていく。

美香さんは台所で頭を抱えてうずくまっていた。

「お母さん! お母さん!? 大丈夫?」

「〜〜〜〜〜〜」

美香さんは頭を抱えてぶつぶつと何かを呟いている。

見るからに相当ヤバい状況だ。

おそらく、襲撃が止んで気が緩んだところにさっきの三人組が家の中に突入してきて何かが切れてしまったんだろう。

朱莉が背中をさすっているが、反応を見せない。

こんなことになった人はテレビでしか見たことがない。

どうしたらいいんだ?

「有村さん! 有村さん!」

「斉藤! 男が三人、窓から逃走した! 今、荒木さんたちが追跡中だ! 有村親子の無事の確認をいそげ!」

!! 有村親子の無事を確認するために扉を破ります! 手伝ってください!」

「わかった!」

扉の外で警察官の二人が扉を破ろうとしている声が聞こえてくる。

ちょっと待って!

もう襲撃は終わってるから、今扉を破壊されると壊れ損になっちゃう。

……いや、もしかしたら、美香さんの対処を警察の方なら知ってるかもしれない。

「ちょっと待ってください! すぐ開けます」

!! 大穴さんですか? お願いします!」

俺が声をかけると、扉の外にいる斉藤さんは返事を返してくれる。

どうやら、扉の破壊は阻止できたようだ。

ただでさえ窓が破られてるのに、扉まで破壊されたら修理が大変だ。

扉を開けると、扉の外には斉藤さんと荒木さんが真剣な表情で立っていた。

それにしても、知り合いの刑事さんで良かった。

初対面の人だと顔のせいで犯人グループの一人として捕まえられてたかもしれないからな。

実際、前の会社で初めて斉藤さんたちと会った時、半グレと間違えられて捕まりそうになったし。

「有村さんたちは?」

「二人とも無事です。いや、美香さんの方は無事と言っていいのかわかりませんが」

!! 失礼します」

斉藤さんは急いで中に入って行き、美香さんの方に駆け寄っていく。

「お母さん! お母さん!」

「……朱莉さん。落ち着きましょう。大声を出したらお母さんが驚いちゃいます。お母さんは大丈夫ですから。外傷は無いんですよね」

!! はい。……わかりました」

斉藤さんは朱莉を優しく諭す。

そして、美香さんの背中を優しくさすりながらできるだけゆっくり声をかける。

「有村さん。もう大丈夫ですからね」

「〜〜〜〜〜〜」

しばらくすると、美香さんの呟きが少し小さくなる。

だいぶ落ち着いてきたみたいだ。

「あの、大穴探さんでしたよね? 少しお話を聞いてもいいですか?」

「もちろんです」

「じゃあ、ここではアレなので、こっちに」

「はい」

男性刑事さんは美香さんの方をチラリと見て、場所を変えることを提案してくる。

事件の話が美香さんの耳に入らないようにしたいのだろう。

せっかく少し落ち着いてきたところだしな。

それは俺も賛成だ。

俺は確か、荒木という名前の刑事さんの後について覆面パトカーまでついていく。

途中近所の人にすごい顔で見られたが、あれは多分捕まった犯人と勘違いされたな。

本当、この顔にはいつも足を引っ張られる。

「何があったんですか?」

「実は……」

俺は荒木さんにさっきまで起こったことを話した。

***

「ご協力ありがとうございました」

「こちらこそ、いつもありがとうございます」

「いえいえ。職務ですから。それでは」

荒木さんは応援要員が来たため、警察署の方に帰っていった。

俺は頭を下げて荒木さんが乗ったパトカーを見送った。

「あ、サグルさん。お帰りなさい。お帰りなさいっていうのもおかしいですが」

「ただいま、京子。朱莉は?」

「斉藤さんと一緒に美香さんについて病院に行きました」

「……そうか」

有村家へと戻ってくると、京子が一人アパートの前で待っていた。

壊れた窓は警察の人がブルーシートとガムテープで応急処置してくれたが、現場保存のため、部屋の中に入れなかったらしい。

まあ、この家は京子の家じゃなくて朱莉と美香さんの家だし、当然と言えば当然か。

「……帰るか」

「そうですね」

俺たちはもやもやした気持ちを抱えながら帰路についた。

今ここにいても俺たちにできることはない。

美香さんの行った病院はどこかわからないし、朱莉が一緒に行っているのだから、家族でもない俺たちは近づかない方がいいだろう。

「サグルさん。強くなりたいです」

「……俺もだ」