第一章 見つけた!

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怨嗟の大醜猫(E)を倒しました。

経験値を獲得しました。

怨嗟のダンジョン(E)が攻略されました。

報酬:5,953円獲得しました。

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「ふぅ。終わったな」

「お疲れ様です」

ダンジョンのボスを倒すと、ダンジョン攻略のメッセージが現れる。

俺が肩の力を抜くと、京子が俺に飲み物を渡してくれる。

なんか、運動部のマネージャーみたいだな。

「お疲れ様。京子こそ、疲れてない?」

「私はまだまだ大丈夫です! 最近、体力もついてきたので」

京子は両手で可愛くガッツポーズをする。

まだまだ大丈夫なようだ。

ふんすふんすと元気アピールをしている様子が小動物みたいでとても可愛らしい。

「そうか。じゃあ、今日はもう一個行っとくか。次は渋谷のほうかな」

「ぁ」

俺は思わず京子の頭を撫でる。

最近はこうして撫でても怒られるとは思わなくなった。

京子も気持ちよさそうにしているし、多分大丈夫なのだろう。

俺たちは今日もいつも通りEランクダンジョン攻略をしていた。

毎日結構なペースで攻略を進められている。

「本当はDランクダンジョンに潜れれば楽なんだけど」

「Dランクダンジョンにはトラップがありますもんね」

DランクダンジョンはEランクダンジョンと同じような洞窟型のダンジョンだった。

だが、今までなかったトラップがダンジョン内にいくつも存在していた。

まあ、トラップがあるのはいい。

ダンジョンなのだ。トラップがあってもおかしくはない。

問題は俺の忍者もNINJAもトラップの発見にはあまり役立たなかったことだ。

ジョブの能力はどこかの能力が上がればどこかの能力が下がるようになっているみたいだ。

京子の聖女が回復能力や支援能力が上がった代わりにフィジカルが下がってしまったのがいい例だ。

忍者の場合、攻撃力とスピードが盗賊職よりかなり高くなり、隠密能力も獲得しているみたいだが、代わりに罠の察知や罠解除という能力が落ちてしまっているのだろう。

当然、京子の聖女も罠の感知能力は持っていない。

つまり、俺たちパーティはトラップに対しては無力ということだ。

「すみません。私が弱いせいで」

「いや、京子のせいじゃないよ。そんなこと言ったら、俺は多分斥候系のジョブなのに、トラップの対処とかできなくてごめんって言わないといけなくなるし」

Dランクダンジョン程度のトラップであれば、俺は受けても大したダメージにならなかった。

だが、京子はそうもいかない。

聖女はHPがかなり低いので、トラップを受ければひとたまりもない。

一個目のトラップを見つけた時は本当に危なかった。

壁から飛び出した矢がまっすぐに京子の方に飛んでいったからな。

俺が壁になってその矢は防ぐことができたが、そこから先も俺たちはいくつものトラップに引っかかった。

結局、結界系スキルの『聖域サンクチュアリ』スキルを常時発動してダメージを受けないようにしていたが、当然、最奥部まで京子のMPが持たなかった。

そのため、ダンジョン攻略を諦めて脱出することになった。

俺も一発一発は大したダメージではなかったが、何十回も積み重なればある程度のダメージにはなっていたし、京子の回復なしにはたいして進めなかったと思う。

たとえソロでもあのまま最奥まで行くのは無理だっただろう。

というか、流石にDランクのダンジョンでは京子のバフ無しでの戦闘は厳しい。

聖域に支援に回復にとMPを使っていれば足りなくなって当然だ。

「やっぱり盗賊系のジョブの人を仲間に加えた方がいいんですかね?」

「……まあ、そうなんだろうな」

正直、俺は少し迷っていた。

盗賊など、ちゃんとした斥候系のジョブの探索者をメンバーに加えるのが正規の方法なのだろう。

だが、俺にはセカンドジョブがある。

セカンドジョブに見習い盗賊をセットし、盗賊にまで育てれば解決はする。

しかし、その方法にも問題はある。

セカンドジョブに見習い盗賊をセットするためにNINJAのジョブを外さないといけないのだ。

NINJAのスキルは結構有用だ。

それに、京子にはNINJAのスキルをすでに見せている。

突然使えなくなったら、どうして使えなくなったのか聞かれるだろう。

その時、セカンドジョブの話をしないといけない。

別に、京子にセカンドジョブの話をすることはいいのだ。

京子が俺の敵に回ることはないだろうし。

問題は隠し事をしていたことで、京子が傷つくかもしれないということだ。

最近、京子は俺に対する依存度をドンドン高めてきているように思う。

学校から真っ直ぐに俺の家に帰ってくるし、朱莉が迎えに来なければ学校にもいかないんじゃないかと思うくらいだ。

母親との訣別けつべつもその原因の一つだろう。

京子はまだ高校生。

まだ、保護者が必要な時期だ。

一番近くにいた俺を保護者と考えることで、精神の均衡を保っているのかもしれない。

そんな京子に隠し事をしていたとバレれば、相当ショックを受けるんじゃないだろうか?

こんなことなら、最初からセカンドジョブについて話しておけばよかったか?

いや、最初の頃はこの先どうなるかわからなかったので、手の内を隠しておいたのは正解だったはずだ。

それなら、今が話しどきか?

「サグルさん? どうかしたんですか?」

「ん? いや、どうやったら他の探索者に出会えるかなと思ってさ」

「そうですね。掲示板とかも探してみましたが、見つけられませんでしたし」

京子がケンタからネット上に掲示板があるという情報を手に入れていたので、ネットで検索してみたのだが、それっぽいものは見つけられなかった。

俺の探し方がヘボなのか、ダンジョンの謎パワーは検索エンジン大先生のSEOすらもすり抜けてしまうのか。

どちらにせよ、見つからないのであればそれを使うことはできない。

まあ、俺も京子もネット掲示板は使い慣れていないので、見つかったからと言ってうまく仲間を探せるかはわからないが。

「どっかその辺にいい人いないかな?」

「そう簡単には見つからないですよ」

俺たちは頭を捻って今後の対処を考えた。

だが、いい案は思いつかなかった。

「時間的にも次のダンジョンで最後になりそうだな。せっかく渋谷に出るし、晩飯は何か食って帰るか?」

「うーん。実は晩御飯の準備はほとんど終わってるので、サグルさんが嫌じゃなければ家で食べませんか?」

そういえば、今朝、結構時間をかけて料理をしていたな。

あの中に今夜の晩御飯もあったのだろう。

すでに準備が終わってるなら、京子の料理の方が断然いい。

京子の料理は美味しいし。

もう京子なしの生活には戻れないな。

「京子の料理を嫌だと思ったことはないよ。晩御飯楽しみだな。早く帰ろう!」

「はい! あ、お米とお味噌が切れそうなので、帰りにスーパーに寄っていってもいいですか?」

「もちろん。喜んで荷物持ちさせてもらうよ」

「ありがとうございます!」

俺たちはこうしてダンジョンを後にした。

***

「買い忘れはないか?」

「お米、お味噌、お醤油。はい。大丈夫です」

「よし、じゃあレジに行くか」

ダンジョンを攻略して、地元に帰ってくると、ちょうど六時を回ったくらいの時間になった。

この時間はスーパーが混む時間帯だ。

仕事帰りにスーパーに寄る人が多いからだろう。

レジには長蛇の列ができている。

なんか、いつもより心なしか列が長い気がするな。

もし買い忘れがあったら、買い直すのはとても大変そうだ。

「結構時間がかかりそうだな」

「そうですね」

俺たちがレジの列に並ぶと、前には十人弱の人が並んでいた。

しかも、みんな結構な量を買い込んでいる。

中には、カートを引いて、カゴ二つにいっぱいの商品を入れている客もいる。

そのせいか、レジの進みはかなりゆっくりだ。

この感じだと、レジに辿り着くまで十分弱ってところかな?

「そういえば、今日は金曜日か」

「そうですよ」

レジが混んでいるのもみんな買う量が多いのも、多分今日が金曜日だからだ。

金曜日は土日に使う分も一緒に買おうとする人が多いから、一人一人の買う量が多い。

そのため、一人当たりの会計の時間が長くなってしまい、結果的にレジ前に長蛇の列ができあがってしまうのだ。

会社を辞めてから一ヶ月も経っていないが、すでに曜日感覚が怪しくなってきている。

いや、会社を辞める半年前くらいから休日出勤が常態化して、曜日感覚がバグってたっけ?

アニメもサブスクリプションサービスで見るようになってから、曜日なんてあんまり気にしていないし。

「明日は土曜日だから、ずっとダンジョンに潜ってられます」

京子は気合十分という感じで拳を握る。

やる気満々みたいだ。

人の多いところでダンジョンの話を始めたが、どうせ探索者じゃない人にはダンジョンの話は理解できない。

謎技術によって、探索者以外の人が探索者同士でダンジョンの話をしているのを聞くと、『ダンジョンGo!』とかモンスターとかの単語が聞き取れないようになる。

話全体ももやがかかったかのようになるそうだ。

その結果、何の話をしているかわからないけど、二人で会話してるっぽいというふんわりした感じの印象を周りに与えるらしい。

ヘルプにそんなことが書かれていた。

何でも書かれてるよな、ヘルプ先生。

何の会話をしているかわからないため、緊急の用事でもなければ話しかけられることもない。

もし、探索者がいて俺たちの会話が聞き取れたとしても、相手がどれだけの実力かわからないので、話しかけてきたりはしないだろう。

俺たちも、探索者っぽい人たちがダンジョンの話をしていると思われる場面に遭遇したことはあるが、声をかけようとは思わなかった。

もしかしたら、全然関係ないアプリゲームの話とかしてるかもしれないしな。

実際、『ダンジョンGo!』の話をしてるのかなと思って耳を傾けてみると、アプリゲームの話だったってことは何度かある。

それに揉め事になったりしたら厄介だ。

探索者はダンジョン外でもジョブの力が使えるから、ちょっとした小競り合いでも大事故になりかねない。

(そんな感じだから、パーティメンバーを探すのはめちゃくちゃ大変なんだけど)

パーティメンバーを探す場合、普通は同ランクのダンジョン内で会うのを期待するか、掲示板みたいな場所で仲間を探すらしい。

それ以外となると、ダンジョンがたくさん発生する場所でそれっぽい感じの人に声をかけまくるしかない。

どちらにせよ、何らかの手段ですでに探索者をしている人を探すしかないのだ。

ケンタが京子を見つけた時みたいに、ダンジョンに関係ない人の中から適合者を見つけるっていうのは本当にレアなケースだ。

つまり、パーティメンバーを探そうと思うと、ダンジョン内をウロウロしたり、ダンジョンが発生しやすいところで人探しをしたりする必要がある。

当然、その間はダンジョンを攻略するわけでもないので、時給も出ない。

ダンジョン内をウロウロするなら途中でモンスターを倒したりできるかも知れないが。

「……京子ってお金に困ってたっけ?」

「いえ? 毎日数万単位で稼いでますので、お金には全然困ってないですよ? 出費もそれほどないですし。サグルさんもそうですよね?」

「……そうだな」

俺と京子は同じパーティで常に同じダンジョンに潜っているので、報酬の額は同じだ。

十分に稼げているから、京子が学校に行ってるうちにダンジョンに潜ったりもしていない。

つまり、二人ともこの土日は休んでも問題ないということだ。

「……この土日は探索者を探しに行かないか?」

「斥候職の人を探すってことですか?」

「Dランクダンジョンに潜るのには必要だろ? Eランクダンジョンじゃもうレベルも上がらなくなってきたし」

「……そうですね」

俺の忍者のジョブはレベルこそ少しずつ上がっているが、いまだにランクⅡにならない。

NINJAもランクがⅡになったあたりからレベルがほとんど上がらなくなった。

最速ダンジョン踏破者の称号があるにもかかわらずだ。

京子も聖女になってからほとんどレベルが上がっていないらしい。

Eランクダンジョンのモンスターでは経験値が足りないのだろう。

つまり、強くなるためにはDランクのダンジョンに潜る必要があるということだ。

現状維持でもお金には困らないが、探索者という危ない職業をやっている以上、強くなっておくに越したことはない。

(金田たちがまた来るかもしれないしな)

あれから一週間ほど経つが、金田たちはあれ以来現れていない。

諦めてくれたならそれでいいが、俺より強い探索者を仲間に加えようとしているなら厄介だ。

俺より強い探索者なんてたくさんいるだろうし、その中に金田たちみたいな半グレもいるかもしれない。

もしもの時のためにももっと強くなっておいた方がいいだろう。

「やっぱり、パーティメンバーを増やすのは気が進まないか?」

「いえ。そんなことは」

京子は仲間に見捨てられた過去がある。

だから、仲間を増やすことにあまり積極的ではない。

できれば京子があまり怖がらない女性の仲間を増やしたいな。

俺の肩身が狭くなるけど、それは仕方ない。

「そうですね。いつかは増やさないといけないですもんね。でも、どうやって探しましょう?」

「そうだな。とりあえず、歌舞伎町あたりで──」

「お二人さん」

「「うわ!」」

会話中に突然後ろから声をかけられ、俺と京子は跳び上がるようにして驚く。

振り返ると、そこには朱莉が立っていた。

「なんだ、朱莉か」

「ははは! 驚きすぎー!」

「びっくりさせるなよ」

「本当ですよ」

話しかけてきたのは朱莉だった。

そういえば、朱莉の家もこの辺りにあるんだっけ?

京子を毎朝迎えにきてるしな。

いきなり声をかけられたのでめちゃくちゃ驚いてしまった。

「ごめんごめん。でも、前。詰めた方がいいよ」

「「あ」」

俺たちの前には人が数人入れそうなくらいのスペースが空いていた。

しかも、前の人が次の会計だ。

結構長いこと会話に夢中になっていたのだろう。

後ろに朱莉が並んでいることにも気づかなかったくらいだ。

俺たちは慌てて列を詰めた。

「すまん。助かった」

「アカリちゃん。ありがとう」

「いいよいいよ。それより、何か夢中になって話してたみたいだけど、『ダンジョンGo!』って何? スマホゲームの話?」

「「!!」」

俺たちは喉元まで出かかっていた「見つけたーー!!」という大声を必死で噛み殺した。

***

「すごいすごい!」

「この辺にはあまりモンスターがいないみたいだけど、あんまり遠くに行かないでくれよ」

「わかってる〜!」

朱莉はそう言って曲がり角の方まで走っていく。

ほんとにわかってるのかな?

「でも、アカリちゃんが『ダンジョンGo!』の適合者で良かったですね」

「そうだな」

スーパーで朱莉と会った後、俺たちは朱莉を捕まえて『ダンジョンGo!』の話をした。

最初は半信半疑、いや、三信七疑くらいの朱莉だったが、京子のススメでアプリだけはインストールしてくれた。

そして、翌日の今日、一緒に新宿の歌舞伎町へとやってきて、Eランクダンジョンに潜っているところだ。

やっぱりこの辺が一番ダンジョンが多い。

……煩悩、多そうだもんな。

「ダンジョンとか好きそうだとは思ってたが、めちゃくちゃはしゃいでるな」

「朱莉ちゃんは結構趣味が男の子っぽいですもんね」

朱莉は見た目はギャルだが、性格は結構男の子っぽい。

好きな食べ物はハンバーグとカレーだし、いつもいろいろなところを走り回っている。

確か、中学までは陸上部だったはずだ。

高校に入ってからはキッパリ辞めちゃったらしいけど。

今通ってる学校には陸上部がないらしい。

それ以前に運動部がほとんどない。

進学校であるということもあるが、校庭も運動ができるほど広くなく、練習場所がとれないからだそうだ。

東京の都心部にある学校だしな。

仕方ないか。

それでも、今も走るのは好きで、たまに近所の河原とかを一人で走ってるらしい。

……それにしてもはしゃぎすぎじゃないか?

「ねぇねぇ! モンスターはどこにいるの?」

「朱莉。はしゃぎたい気持ちはわかるが、一旦落ち着け」

「そうですよ。とりあえず、ジョブを設定してください」

「そうだね! 見習い盗賊にしたらいいんだっけ?」

朱莉は京子の指示に従ってジョブを設定してしまう。

「……あ」

「サグルっち? どうかした?」

「……いや、なんでもない」

無職の状態だと色々と称号が取得できるのだが、まあ、いいか。

無職じゃないと手に入らない無敵の人はそこまで有用な称号じゃないし、他の称号はジョブをセットした後でも頑張れば取得できる。

「あ! もしかして、あっちの方にモンスターがいる?」

「わかるのか?」

「うーん? 何となく?」

ジョブをセットすると、朱莉は一方の通路を指差し、モンスターがいると伝えてくる。

確かにその通路の先にモンスターがいる。

ジョブ忍者の俺ではぼんやりとしかわからないのに、朱莉は結構しっかりとあっちにモンスターがいると理解しているようだ。

やはり、朱莉の見習い盗賊は俺の忍者より探索能力が高いらしい。

これはDランクダンジョンのトラップの対策にも期待が持てそうだな。

「よし、じゃあ行こう!」

「ちょっと待った」

俺はズンズンとモンスターの方へと向かっていく朱莉の肩を掴んで止める。

「どうかした?」

「わかってるか? 朱莉。とりあえず当分は京子と一緒に後ろで戦闘を見ておくんだぞ?」

「……はーい。わかってまーす」

「……」

本当に大丈夫か?

そこはかとなく不安なんだが。

「大丈夫だって。行こ行こ!」

朱莉だって子供じゃないのだ。

多分大丈夫だろう。

もし、前に出そうなら俺が守ればいいのだ。

庇護対象が一人から二人に増えたとしても、Eランクダンジョンなら十分に対処できる。

Eランクダンジョンではトラップはないし、モンスターは一体ずつしか出てこない。

危険なものが常に一つなら、そっちの方を気にしておけばいいだろ。

念の為に、京子の方にアイコンタクトを送る。

京子も俺と同じような懸念を抱いていたのか、こくりとうなずいてくれた。

そして、すっと一歩朱莉に近づく。

多分危なそうなら聖域を発動するつもりなんだろう。

京子がちゃんと対処してくれるなら、大丈夫だ。

最悪、朱莉の方だけ気にしておけば、京子は多分自分の身は自分で守れるだろう。

Eランクダンジョンにはもう潜り慣れてるしな。

「……わかった。行こうか」

「レッツゴー!」

俺たちは京子に引っ張られるようにして、モンスターのいる場所へと向かった。

***

「よっと」

俺が一撃を加えると、敵モンスターはボフッと音を立てて煙になる。

そして、メッセージウインドウが現れた。

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色欲の醜鳥(E)を倒しました。

経験値を獲得しました。

報酬:177円獲得しました。

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「サグルさん。お疲れ様です」

「ありがとう」

京子がいつものように飲み物とタオルを渡してくれる。

俺はそれを受け取って、飲み物で軽く口の中を湿らせた。

「サグルっちお疲れー! 次は──」

「朱莉、ちょっと待て」

「どうしたの?」

朱莉は不思議そうに首を傾げる。

「ここまでぶっ通しだったし、そろそろ休憩しないか?」

ダンジョンに突入してからここまでずっとバトルを続けてきている。

一階層のモンスターは倒し尽くし、すでに、二階層のモンスターも九割方倒しきっていた。

倒しても倒してもモンスターはポップするから、二階層でモンスターを倒しているうちに一階層のモンスターは半数くらい復活してる。

だから、倒し過ぎてしまったのはどうでもいい。

「……」

チラリと京子の方を見る。

京子は結構疲れているように見える。

戦闘系のジョブについている俺たちと違い、京子の聖女のジョブは体力を底上げしてくれない。

もうすでに六時間以上歩きっぱなしだから体力的にキツそうだ。

ちょっと前から急激にキツそうになってきた。

おそらく、少し前にSPが尽きて、そこからは気合いでついてきていたのだろう。

SPが尽きると、フィジカル的なジョブの恩恵も受けられなくなるからな。

MPやHPが残っているから、魔法を使ったりはできるんだが。

今日は朱莉がどんどん進むからいつもよりペースが早いし。

「ご、ごめん! キョウちゃん! 大丈夫?」

「え、平気だよ! まだまだ大丈夫!」

「絶対大丈夫じゃないじゃん。フラフラしてるよ! 休憩しよ! 休憩!」

俺が視線を送ったことで、朱莉も京子の様子に気づいたようだ。

焦ったように休憩を提案する。

京子はいつものようにやる気アピールをしてくるが、どことなく元気がない。

友人の朱莉にはそれが空元気だとわかったようだ。

朱莉じゃなくても気づきそうだが。

「……ごめんね」

朱莉は鞄から可愛らしい花柄のランチョンマットを取り出して通路の端に敷き、テキパキと休憩の準備をする。

京子は少しぐったりとそのランチョンマットの上に腰を下ろす。

朱莉もランチョンマット持ち歩いてるんだな。

女の子の必須アイテムなのか?

「本当にごめんね」

「ううん。大丈夫だよ。ありがと」

朱莉は鞄から取り出したうちわで京子を仰ぐ。

そんなものまで入ってるのか。

やっぱり女の子の鞄が異次元ポケットっていう説は本当だったのか。

「アカリちゃん。ありがとう」

「これくらいどうってことないよ」

京子は風を受けて気持ちよさそうにしている。

少し頬も上気しているし、俺の予想以上に疲れてたのかも。

よくみると、朱莉も若干汗をかいている。

俺が思ってた以上に朱莉も疲れてたのかも。

俺も朱莉のこと言えないな。

よし、サービスで、二人ともに風を送ってあげよう。

「貸して、俺が煽ぐよ」

「え? サグルっちは疲れてないの?」

「俺は平気だよ」

実際、俺は全く疲れていない。

SPだって残っている。

というか、京子がついてこられるレベルのスピードであれば、移動でSPが減ることはない。

忍者のジョブの場合、戦闘でもSPを使うから、SPがなくなってたら戦闘に支障をきたす。

やばそうだなと思ったらもっと早くに相談する。

京子の場合、SPがなくなっても問題なく魔法が使えるので、戦闘に問題ないと思い、休憩を提案できなかったのだろう。

いや、最後の方は朱莉も戦闘に参加していたから、いちばん運動量が少ない自分が最初にへばるわけにはいかないと思ったのかもしれない。

そんなこと気にせずに休憩の提案をしてくれればよかったのに。

俺たちと京子ではジョブの恩恵が全然違うんだから。

「朱莉も京子の隣に座って」

「……うん」

俺は少し強引に朱莉からうちわを受け取り、朱莉を京子の隣に座らせる。

そして、三歩ほど下がった。

朱莉は少し不思議そうな顔をしているが、これくらい下がらないと風が強くなりすぎてしまう。

ではお見せしよう。忍者×NINJAのフィジカルというものを!

「うおりゃぁぁぁぁぁぁ!」

「「おぉぉぉぉ!」」

俺の発生させた風が二人に当たる。

扇風機で言えば、強ってところだ。

二人の髪の毛が風になびいている。

「すずしー」

「すずしーね」

朱莉もなんだかんだ言って、体がほてる程度には疲れていたのだろう。

二人とも風を気持ちよさそうに受けている。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

俺は調子に乗って風の勢いを上げる。

「え?」

「ちょ、きゃ!」

「あ」

強くなった風は京子と朱莉の髪を今まで以上に靡かせた。

風によって動かされたのは髪の毛だけではない。

風は京子のスカートを舞いあげる。

純白のデルタが俺の目の前に……。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「すいませんでしたぁぁぁぁ!」

俺はその場でジャンピング土下座を敢行した。

***

「……サグルっち。頭を上げて。わざとじゃないんっしょ?」

「誓ってわざとじゃない!」

「じゃあ、仕方ないよ。キョウちゃんもそれでいい?」

「……」

朱莉は京子の方を見る。俺がチラリと顔を上げると、京子は真っ赤な顔で俺の方を見ていた。

「見ましたか?」

「……ナニヲデショウカ?」

ここでの正解は「はぐらかす」のはずだ。

「見た」とか「見てないです」とかいうのは自白してるのと一緒だ。

俺のオタク知識がそう言ってる。